後宮の棘

香月みまり

文字の大きさ
上 下
113 / 234
第9章 使、命

第329話 嵐の前の

しおりを挟む
戦は膠着状態におちいっていた。

翠玉は戦場を櫓から見下ろして大きなため息をもらした。

本当に、一体董伯央は何を考えているのだろうか。


開戦からおよそひと月半が経とうとしていた。
そのうち約半分が雨天でもどかしい日を過ごしている。


敵軍は決定的に何かを仕掛けてくる事がないままだ。
そんな無駄なことを彼がなぜやるのか、読めないまま刻々と日々を過ごしている事に焦燥を感じている。

 
「碧相国陣営、呂参謀より伝令です。」

後方から声をかけられ、兵を見る。
碧相側につけている者で間違いない。

至湧とは毎日決まった時間毎に定期連絡をしている。


「聞くわ」

兵に身体を向けると、彼はもう一度深く頭を下げた。

「晴天3日目、今までにない事が起こるかもしれない。注意されたし。以上です。」


「なるほど、、、ご苦労様。下がっていいわ」

伝令の言葉を聞いて、その言葉を噛みしめる。
軽く手を振れば、彼は一礼して下がっていった。


「たしかに、ここ3日雨は降ってないですけどね」

どういう事でしょうか?と首を捻ったのは華南だった。

「彼等の策が雨ではできない事だった可能性があるって事なのかもね。ねぇ冬隼今朝の戦場の土壌はどんな感じ?」

肩を竦めて華南に説明をしながら、櫓の縁に手をかけて戦場を眺めている冬隼に声をかける。


「だいたい乾いているな。まだ所々柔らかいが、この日差しなら午後には乾くだろう」

どうだ?と彼は自分の横に控える泰誠にも意見を求めた。

「そうですね。砂埃が立つほどではないと思いますけど」

泰誠も頷いた。


「そう、じゃあ午後が勝負時かもね。ならば早い内に、各指揮官たちに懸念は伝えておきましょうか。」

そう言った翠玉が、各部隊への伝令達を集めるように命じたのだった。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

【改訂版】ヤンデレ彼女×サイコパス彼氏≒異世界最強カップル

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:14

片思いの相手に偽装彼女を頼まれまして

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,057pt お気に入り:13

幼子は最強のテイマーだと気付いていません!

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:1,853pt お気に入り:10,281

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。