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第9章 使、命
第335話 めばえ
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気を張ったせいか、少し疲れた翠玉は、事後処理は特にやる事が無かったので自室で少し横になっていた。
トロトロと微睡みの中で昔懐かしい夢を見た。
「ここに赤ちゃんがいるの?」
母の大きな腹にしがみついてスリスリすると、内側からトントンと押し上げられるような感触を感じて、慌てて頬を離して母を見た。
「ふふ、赤ちゃんにいるよって言われたわね!」
翠玉の頭を撫でて母が楽しそうに笑った。
今のトントンしたのがどうやら赤ちゃんだったらしい。
先日、他の貴妃が産んだ赤子を見せてもらったのを思い出す。
あんな大きさの物がこの腹の中にいるのだと思うと、なんだかとてつもなく怖く感じた。
「母様!怖くないの?」
涙目になりながら母を見上げれば、母はクスクスと笑った。
「全然怖くないわ。貴方も兄様達もこうしてお腹の中にいたのだもの。また可愛い我が子が増えるのですもの楽しみで、しかたないわ」
そう言って彼女はもう一度頭を撫でて、腹に寄せててくれた。
「貴方もいつか、この気持ちが分かる時が来るわ。すごくすごく素敵な事なのよ」
「私も?」
「きっと分かるわ。貴方はどんな母になるのかしらね」
楽しみねぇ~と母に頭を撫でられて、ゆっくりと目を閉じた。
コポコポ、ドクドク
優しい音を聞いた気がした。
目を覚ませば窓から夕日が差し込んでいた。
少しばかり寝過ぎたらしい。延びをしてぼんやりと宙をみつめる。
まだ頭がはっきり働かない。
久しぶりにハッキリとした夢を見た。懐かしい夢だった。母の腹が大きかった頃なので、弟が腹にいた頃だろうか。
たしかに、なんとなくあんなやりとりをした記憶が朧げながらある。
あの頃は、大きくなったらすぐに誰かに嫁いで子供を産むものだと思っていた。
まさか25まで結婚もせずいるなんて思ってもいなかった。
まして、子どもなんていつになる事やら。
まぁいずれは、、、冬隼とそういう行為もするようになったわけだし、、、、。
そこまで考えて、あれ?っと首をひねる。
そう言えば、ここに来てから、月の物が来ていない気がする、、、。
最後はいつだっただろうか。多分兄の所に厄介になっていた頃だっただろうか、、、そう考えると、それからすでにふた月は優に超えていないだろうか?
まぁ慣れない戦場だし、緊張状態が続いているし、少しくらい遅れる事は今まであったわけだし。
そこまで言い聞かせて、、、それでも、その疑念を無視する事はできなくて、翠玉は腹に手を当てる。
居るのだろうか、、、もしかしたらここに
そう思うとふわりと暖かい気持ちになる。
冬隼に今夜話そう。
そして医者に見てもらってはっきりさせなければ。
少し考えて翠玉は寝台から立ちあがった。
部屋を出ると、本部とは反対方向の廊下を歩いた。
トロトロと微睡みの中で昔懐かしい夢を見た。
「ここに赤ちゃんがいるの?」
母の大きな腹にしがみついてスリスリすると、内側からトントンと押し上げられるような感触を感じて、慌てて頬を離して母を見た。
「ふふ、赤ちゃんにいるよって言われたわね!」
翠玉の頭を撫でて母が楽しそうに笑った。
今のトントンしたのがどうやら赤ちゃんだったらしい。
先日、他の貴妃が産んだ赤子を見せてもらったのを思い出す。
あんな大きさの物がこの腹の中にいるのだと思うと、なんだかとてつもなく怖く感じた。
「母様!怖くないの?」
涙目になりながら母を見上げれば、母はクスクスと笑った。
「全然怖くないわ。貴方も兄様達もこうしてお腹の中にいたのだもの。また可愛い我が子が増えるのですもの楽しみで、しかたないわ」
そう言って彼女はもう一度頭を撫でて、腹に寄せててくれた。
「貴方もいつか、この気持ちが分かる時が来るわ。すごくすごく素敵な事なのよ」
「私も?」
「きっと分かるわ。貴方はどんな母になるのかしらね」
楽しみねぇ~と母に頭を撫でられて、ゆっくりと目を閉じた。
コポコポ、ドクドク
優しい音を聞いた気がした。
目を覚ませば窓から夕日が差し込んでいた。
少しばかり寝過ぎたらしい。延びをしてぼんやりと宙をみつめる。
まだ頭がはっきり働かない。
久しぶりにハッキリとした夢を見た。懐かしい夢だった。母の腹が大きかった頃なので、弟が腹にいた頃だろうか。
たしかに、なんとなくあんなやりとりをした記憶が朧げながらある。
あの頃は、大きくなったらすぐに誰かに嫁いで子供を産むものだと思っていた。
まさか25まで結婚もせずいるなんて思ってもいなかった。
まして、子どもなんていつになる事やら。
まぁいずれは、、、冬隼とそういう行為もするようになったわけだし、、、、。
そこまで考えて、あれ?っと首をひねる。
そう言えば、ここに来てから、月の物が来ていない気がする、、、。
最後はいつだっただろうか。多分兄の所に厄介になっていた頃だっただろうか、、、そう考えると、それからすでにふた月は優に超えていないだろうか?
まぁ慣れない戦場だし、緊張状態が続いているし、少しくらい遅れる事は今まであったわけだし。
そこまで言い聞かせて、、、それでも、その疑念を無視する事はできなくて、翠玉は腹に手を当てる。
居るのだろうか、、、もしかしたらここに
そう思うとふわりと暖かい気持ちになる。
冬隼に今夜話そう。
そして医者に見てもらってはっきりさせなければ。
少し考えて翠玉は寝台から立ちあがった。
部屋を出ると、本部とは反対方向の廊下を歩いた。
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