後宮の棘

香月みまり

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第9章 使、命

第352話 戦果

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戦勝の知らせがもたらされたのは、早朝の事だった。

報告の傷病者、死者の数を見るに、少し犠牲は出したものの、作戦は成功と言っていいところであった。
そして主な傷病者の名前を見て、冬隼は胃が縮んだ。


翠玉と、隆蒼の名前があったのだ。


慌てて華南からの報告書を開く。


翠玉の働きと、隆蒼の怪我の経緯と状況、そして翠玉は貧血で倒れていると書かれていた。

鬼神のような素晴らしい働きでしたからお疲れになったのだと思います。と記されていて、翠玉が大人しくしていなかったことは伺えた。

そして、華南はどうやら翠玉の妊娠を知らされていないらしい。


「悠安、医師の手配を頼む、翠玉が戻り次第すぐに診察させる」

「はい、兄上。手配は出来ております」

報告書を見た開口一番が、それだった事に、泰誠は苦笑する。

結局冬隼は一睡もしないまま朝を迎えた。

側に控えていた泰誠も時折心配になるほどの心配ぶりで、時々何も手が打てない自分を責めるように表情を歪めていた。

「ついでにお前の所の馬車を借りてもいいか? 揺れの少ないものの方がいい、すぐ迎えにやりたい」

「手配しておきましょう」

「たのむ」


短く言って大きく息を吐く。


「さて、戦況だが……あちらがどう出てくるかだな」

そう言って、窓の外の戦場に目を移した冬隼の顔つきはもう禁軍総大将の顔だった。



敵軍にも情報は入っているのだろう。
早朝にもかかわらずあちらも慌ただしい。

李蒙の報告によれば、敵の奇襲部隊は緋堯軍だったらしい。堯雅浪の捕縛にも成功しているとの話だ。
そうなれば、残る敵軍は紫瑞軍のみ。
しかも戦場は緋堯の領土……

色々と複雑になってきた。


冬隼が紫瑞軍の将であれば、和平交渉を持ちかけここは引く。

それが自分たちが唯一安心して自国に戻る事ができる方法だからだ。



「失礼いたします。碧相軍の李周英将軍をお連れしました」


唐突に部屋の扉が叩かれて、文官が声を上げた。

「お通ししてくれ」


報告はたしかに碧相軍にも行っているはずだが、先ほど出したばかりで、まだ碧相軍に届いてる頃合いではないはずなのだが。
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