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第9章 使、命
第360話 火事
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「ねぇ冬隼、あれは何?」
夜、冬隼が湯あみを終えて寝室に戻ると、翠玉が窓から目を外す事なく呆然と聞いてきた。
なんの事だろうか?
まだ湿っている髪を拭って、不思議に思いながら彼女が凝視している窓辺に寄ってみて、目を見張った。
窓の外に広がるのは、数日前まで戦場となっていた平原で、その少し奥にぼんやりと明るい紫瑞軍の天幕群が広がっている。
それ自体はなんら変わらない、いつもの風景だ。
問題なのはその奥……
地平線の先にぼんやりと赤い光が等間隔で点っていて、その頭上には黒い煙のようなものがもくもくと上がっている。
よく目を凝らしてみれば、紫瑞軍の天幕から、わらわらとバラバラに、騎馬だろうかそちらへ向かって駆けて行くのが見える。
「火事?」
「やっぱり火よね? あの辺りって……」
互いに顔を見合わせる。
紫瑞軍の退路にある川のあたり。
互いに理解してもう一度窓を見る。
同時に部屋の扉を叩く音が響いた。
顔を出したのは、泰誠で
「殿下! やはり気づかれましたか!」
入室するなり、窓に注視していた体制の2人を認めた彼は、話は早いと息を吐いた。
「あれは……橋が燃えているのか?」
「そのようです。たしか、あの河には3本橋があったはずですので!」
「でも誰が?」
「分かりません。うちはそんな指示をしておりませんので……しかし碧相からもそんな事は聞いておりませんし、ですがまずい事になりました」
泰誠の言葉に翠玉も冬隼も頷く。
「すぐに紫瑞に我が軍は無関係である事を伝えろ。気休めにもならんかもしれんがな! 報復があるかもしれない。兵を展開して備えろ! 俺もすぐ本部に行く」
冬隼の厳しい声が飛び、言い終わると泰誠が一礼して退室していく。
「いったい、何が起こっているの?」
ぼんやりと翠玉が呟く。
自軍はもちろん、兄が独断でこんな無茶な真似はしないはずだ。
しかし3つの橋が全て同時に……と言うのは、たまたまとは思えない。
何者かの作為が働いている?
ぞわりと背筋が冷えた。
ふわりと暖かい冬隼の手が頬を包んだ。
「心配するな。戦闘に持ち込むつもりはない。とにかく俺は行ってくる。子に障るから眠れなくても横にだけはなっておいてくれ。華南をよこそうか?」
額に口付けを落として、柔らかく頬を撫でた冬隼の力強い瞳を見上げて、翠玉は小さく首を振る。
「大丈夫よ。いってらっしゃい。」
くしゃりと翠玉の髪を撫で、冬隼が立ち上がる。
「おやすみ」
「ん、お先に」
笑いあって、そして部屋を出て行った。
夜、冬隼が湯あみを終えて寝室に戻ると、翠玉が窓から目を外す事なく呆然と聞いてきた。
なんの事だろうか?
まだ湿っている髪を拭って、不思議に思いながら彼女が凝視している窓辺に寄ってみて、目を見張った。
窓の外に広がるのは、数日前まで戦場となっていた平原で、その少し奥にぼんやりと明るい紫瑞軍の天幕群が広がっている。
それ自体はなんら変わらない、いつもの風景だ。
問題なのはその奥……
地平線の先にぼんやりと赤い光が等間隔で点っていて、その頭上には黒い煙のようなものがもくもくと上がっている。
よく目を凝らしてみれば、紫瑞軍の天幕から、わらわらとバラバラに、騎馬だろうかそちらへ向かって駆けて行くのが見える。
「火事?」
「やっぱり火よね? あの辺りって……」
互いに顔を見合わせる。
紫瑞軍の退路にある川のあたり。
互いに理解してもう一度窓を見る。
同時に部屋の扉を叩く音が響いた。
顔を出したのは、泰誠で
「殿下! やはり気づかれましたか!」
入室するなり、窓に注視していた体制の2人を認めた彼は、話は早いと息を吐いた。
「あれは……橋が燃えているのか?」
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「でも誰が?」
「分かりません。うちはそんな指示をしておりませんので……しかし碧相からもそんな事は聞いておりませんし、ですがまずい事になりました」
泰誠の言葉に翠玉も冬隼も頷く。
「すぐに紫瑞に我が軍は無関係である事を伝えろ。気休めにもならんかもしれんがな! 報復があるかもしれない。兵を展開して備えろ! 俺もすぐ本部に行く」
冬隼の厳しい声が飛び、言い終わると泰誠が一礼して退室していく。
「いったい、何が起こっているの?」
ぼんやりと翠玉が呟く。
自軍はもちろん、兄が独断でこんな無茶な真似はしないはずだ。
しかし3つの橋が全て同時に……と言うのは、たまたまとは思えない。
何者かの作為が働いている?
ぞわりと背筋が冷えた。
ふわりと暖かい冬隼の手が頬を包んだ。
「心配するな。戦闘に持ち込むつもりはない。とにかく俺は行ってくる。子に障るから眠れなくても横にだけはなっておいてくれ。華南をよこそうか?」
額に口付けを落として、柔らかく頬を撫でた冬隼の力強い瞳を見上げて、翠玉は小さく首を振る。
「大丈夫よ。いってらっしゃい。」
くしゃりと翠玉の髪を撫で、冬隼が立ち上がる。
「おやすみ」
「ん、お先に」
笑いあって、そして部屋を出て行った。
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