レッドリアリティ

アタラクシア

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2日目

愚者

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家の扉を開ける。心配だった。もしかしたら美結や凛が連れ去られてる可能性があった。だから心配だった――。


――結果的に心配は杞憂だった。安心そうに眠っている凛を寝かしつけている美結。美結もそのうちに眠ってしまったようだ。

胸を撫で下ろす。傷もない。どうやら最悪の想像はしなくてよかったらしい。

「……」

眠っている2人の髪を撫でる。安らかに眠っている2人の顔を見てる時は自分が父親だと自覚することができた。


「……さて」

10時。おそらく22時だ。つまり夜。夜に蓮見の家。その地下に行けば儀式が見られる――。

「これは……行くしかないな」

上手くいけば生贄……乙音がいるかもしれない。危険だが行く価値はある。

夜なら出歩いてもバレにくい。問題は――。

「どうやって儀式を覗くかだな」

これに関しては考えていても仕方ない。間取り図でもあれば作戦が考えられるが、あいにくそんなものは持ち合わせていない。

「もう直接行って見るしかないか……」

元々作戦なんて考えるタイプじゃない。昔からそうだ。人を殺していた時も作戦とかなかった。行き当たりばったりだった。

もっと昔からそうだ。どのみち見つかれば殺されるか、死ぬよりも嫌な目に会うんだ。死ぬか生きるかだ。どっちも変わらない。

なら本来やろうとしていたことをしよう。乙音を探す。見つかれば御の字。見つからなければ村から逃げればいいだけのこと。

「――心臓が鳴ってきた」





――凛が瞼を開けた。時間は夜。電気はついていない。辺りは真っ暗になっていた。

隣にいるのは美結。実の母親。スヤスヤと眠っている。ぐーっと背伸びをして、母親に自分の額を擦り付けた。

「……パパ?」

桃也がいない。居間の方にいるのかも。重い瞼を頑張って開けながら立ち上がる。


居間も暗かった。そして桃也はいなかった。真っ暗な部屋。妙に気持ち悪い色をした机が置いてあるだけ。

怖くなって小走りで美結の元へ帰ってくる。眠っている美結の腕にキュッとしがみついた。

柔らかい。暖かい。母親に触れているだけで安心してくる。美結はそんな凛の行動によって目が覚めた。

「――凛?」


起き上がる。まず周りが暗いことに戸惑う。寝たのは12時前。それがいつの間にか夜になっていたのだ。

スマホで時間を確認する。デジタル時計が記していたのは9時55分。――儀式の時間の5分前である。

そして気がつく。桃也がいない。夫がいない。見当たらない。


凛と同じく居間へ行く。ここも真っ暗。そして桃也はいない。見にくいので電気をつけた。

「っ――」

眩む視界。目の前に広がったのは普通の居間だった。真ん中には黒い机。その上には今朝作った朝ごはん。その食器がおいてあった。

食べられてる。食べたのは桃也だ。夜ご飯を作らなかったのか。少し不自然だ。桃也ならご飯を作るくらいできるのは知っている。

じゃあなんでわざわざ冷たい朝ごはんを食べたのか。答えは横に置いてある書き置きで分かった。


『気になることがある。朝までに帰ってこなかったら凛を連れて村を出ろ。車は使うな。誰かが戸を叩いても決して開けるなよ』


書き置きにはそう書かれてあった。

「あの人……ほんと自分勝手」

ひとつの文句が口から出てくる。美結は凛の頭を撫でてあげた。

「お腹空いてる?」
「空いたー」
「そっか。今から作るから待っててね」

10時にご飯を食べさせるなど普段はしないこと。そもそも8時半には寝かしつけてるし。体にも悪い。だけど食べない方がもっと悪い。今回は特例だ。

「何を作ろうかな」と呟く。冷蔵庫には食材が結構入っていた。簡単なものならすぐ作れる。……帰ってくるであろう桃也のためにも作っておかないと。


凛は母親の背中を見ていた。テレビもないから特にすることも無い。夕食を待つだけの時間は退屈だ。

しかし外に出るのも億劫。今朝のこともある。まだ怖さが拭いきれてない。縁側の庭ですら怖かった。

ほんのりと流れる風に煽られる草。カサカサという虫の音。都会の方と違って、田舎の夜は暗い。暗所恐怖症あんしょきょうふしょうの人は死んでしまいそうだ。


――凛の耳に異様な音が潜り込んできた。何かを踏みつける音だ。

好奇心旺盛な凛はその音が気になった。恐怖より少しだけ興味が上回ったのだ。ゆっくりと音の発生源まで歩いていく。

木の縁側。そこから玄関にかけての道を覗き込んだ。――吸い込むような暗闇。ブラックホールと表現できそうだ。






そんな暗闇に――誰かが――立っているのが見えた。





「――凛ちゃん。迎えに来たよ」
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