レッドリアリティ

アタラクシア

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2日目

儀式

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――思っていたよりも広い。学校の教室くらいの大きさか。縦はその半分くらい。ただ窓もないので圧迫感は感じた。

中にいたのは村人たち。人数は……30~50か。ギュウギュウだ。地面に正座していたが、肩と肩がピッタリとくっつくほど狭い。

見たことのある顔ぶれが多い。昼間は元気に田畑を耕していた人たちが、今は静かに座ってブツブツと呟いている。何を言っているのかは聞こえなかった。

奥の方。村人たちの前に――鴨島蓮見がいた。隣には蓮見よりひと回り小さい女の子がいる。


(――マジかよ)

思わず声を出しそうになった。この異様な景色にでは無い。そもそも予想はしていたことだ。驚くまでもない。

声を出しそうになった理由は、蓮見のにあった。そこに全てがあった。










大の字に寝かされて拘束された女が居た。いや、もう拘束など意味が無くなっている。がほとんどないのだ。

両脚。右腕。無いのだ。しかも傷口から見るからに、切り落とされている。桃也もしたことがあるから分かった。

寝かされているので遠くからじゃ女の顔は見えにくい。だが酷い状態だ。

目がない。
鼻もない。
唇もない。
舌もない。
耳もない。

顔のいたる部位が見当たらない。もう顔だけで誰かを判別することができない状態になっていた。

乳房も無くなっている。血も流れてないから、結構前にやられたようだ。こんな場所に麻酔があるとも思えない。痛みを感じたままだ。

それでも息がある。目を凝らせば女がピクピクと動いているのが見えた。耳を澄ませば喉の鳴る音もかろうじて聞こえる。こんな状態でも生きているのだから人間は不思議だ。


蓮見が動いた。女性の左手、まだ残っていた指に手を置く。5本の指の1本ずつ丁寧に拘束されている。

だが拘束されているのは根元だけ。他の指は空中でプラプラと動いている。

(なんで全部拘束しない……?)

――理由はすぐに分かることとなる。



台の下に置いてあった物を取り上げる。アイスピックのような、ドライバーのような、ベルトの穴あけのような。

とにかく先端の尖ったものだ。それを女性の親指。それも爪の真ん中に――叩き落とした。


「っゅぃ――!!??」

女性の声にならない声が出る。声は村人たちの念仏のような声にかき消されていった。

針は指を貫通。骨ごと貫通している。穴の隙間から血が滲み出てきた。

「――」

ブツブツ呟きながら針を抜く。抜く時も女性は苦痛に満ちた声を漏らしている。――誰もそんな声を気にすることはない。


蓮見はさらに突き刺す。人差し指。中指。薬指。小指。流れるように。流れ作業のように。無駄な感情など入れずに刺し続けた。

全ての指に穴が空く。――洞窟にあった指。確かアレも穴が空いていた。爪の部分にだ。


つまりそういうことだろう。だがまだ分からないところもある。あの傷口だ。あれはネジ切れていた。捻じ切れるとはどういう状況だ。

ただ単に切るなら分かる。だって桃也もやっていたから。だけど捻じ切るなどしたことがない。ハサミとか包丁で切り落とすくらいしかしたことがない。

何をするつもりなのか。何をしようとしているのか。興味が湧いた。もう常人から目を離してしまう景色であるが、桃也は視聴を続行した。


蓮見は穴の空いた指に太い鉄の棒をねじ込んだ。これも先端が尖っている。ミチミチと押し広げていく指の傷。女性はまた声を上げる。

棒は半分くらいまでねじ込まれた。親指に穴あけパンチで開けられたくらいの穴が空く。棒は突き刺さったままだ。

「――」


蓮見は両手で棒を握る。まるでハンドルを握るかのように。皮膚に鉄を食い込ませながら。蓮見は息を大きく吐いた――。





――棒をグルっと回転させる。

「なっ――!?」

思わず声が出てしまった。気が付かれてはないようだが、これにはさすがに驚いてしまう。

無理もない。考えもしなかった。切り落とすのではなく捻じ切る。全てが合致した。あの傷口はこうやってできたのだ。


指の抵抗は強い。簡単に捻じ切ることはできなかった。根元の関節がささやかな、それでいて精一杯の抵抗を示す。

しかし人間の力では限界があった。指は180度回転。ゴリゴリとゴマをすっているような音を出している。

まな板の鯉のように跳ね上がる体。拘束されていて必要分も動くことができない。指も回転限界に近づいていた。

まず最初に骨が外れる。外れれば残った抵抗は筋肉だけ。一気に回転が進んだ。

角度は210度くらい。筋繊維がこれ以上伸びないと痛みとして警告を鳴らすが、警告を聞いているのは本人である女性だけ。

ブチブチとちぎれていく筋繊維。目があったら涙を流しているだろう。


ミチャ。

生肉を掴んだような。魚の内蔵を掴んだような。何かが潰れたような。

蓮見の腕はスムーズに動いた。棒はついに360度動ききった。何を意味するのかは、言わなくてもいいだろう。
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