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3日目
証拠
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時斜に連れてこられたのは大きな家の前。名札には『木下』という名前が達筆で書かれてある。
この家にも縁側があった。そこでは男児と老婆が座ってなにかを話している。なにを話しているのかは聞き取れなかった。
戸を叩いて数秒。出てきたのは中年くらいの男であった。
「おはよう木下さん」
「おはようございます。……あなたは?」
「牧野小次郎です。桃也の友人で……あ」
目に付いた。男のこめかみに青アザができている。さっきの「殴られた」という発言が頭に反復する。
殴られた痕だろうか。口を開く前に男が話をしだした。
「アイツの友人か……時斜さんから話は聞いてんだろ。会ったら文句を言っといてくれよ」
「そう……ですか。……1つお伺いしたいんですが?」
「ん?まぁいいけど」
「殴られた時の状況を教えて欲しいんですが」
男は顎を少しさすって口を開く。
「突然だったんだよ。俺が巽を遊ばせてたんだ。そしたら急に現れて殴られてさ。なんか『娘に手を出すな』とか言ってて。娘さん……凛ちゃんとか言ってたっけな。凛ちゃんが巽と遊んでいるのは知ってたよ。でも手を出すどころか、見たことすらなかったんだ」
「突然?どこで遊んでたんですか?」
「遊んでた……っていうか散歩?まだうちの子は5歳だからな。えっと……道路を歩いていた時だよ」
「どこら辺の?」
「え……あ……鴨島さんの家だった……と思う」
「鴨島さん……桃也とは以前から面識は――」
「――おい」
時斜が口を挟んできた。声も低い。怒っていると1発で分かる。
「あんた。私らが嘘をついているとか思っとんか?」
「いえいえ。職業柄、こういう癖がついてて」
「――職業柄?」
胸ポケットからスっと警察手帳を取り出す。――今回は私情で来たわけではない。まぁ半分くらいは私情だが。
前日の乙音の母の証言。いわく付きの村。気になることが多かった。証拠もない。警察としての勘……と言ったところか。ドラマでよくあるやつだ。
「警察……!?」
「質問。答えてくれますか?」
「……はい」
男が下を向いた。特に気にすることなく質問の続きを話す。
「桃也とは以前から面識はありましたか?」
「いえ、ありません……」
「殴られた時間帯とかって覚えてますかね」
「覚え……あー……あ、あり、ありません」
「本当に?」
「は……い」
ぎこちない。怪しさが満載だ。
「最近、この近くで人が攫われてるっていうのはご存知で?」
「……い、いえ」
2人とも狼狽えている感じだった。一瞬の表情だったが、小次郎はその様子を見逃さない。ずっと考えていた質問を放った。
「ふぅむ……じゃあ一つ。桃也はいつからここに来ましたか?」
どちらも鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をしていた。その表情も一瞬。すぐにさっきの平然とした、どこか怖い表情に戻る。
「――二ヶ月前くらいかな?その人攫いはいつ起こったんだ?」
「ちょうど同じくらいの時期ですね」
「そうかぁ……」
男の方は深刻そうな面持ちで顎を撫でている。声も重苦しい。だが――時斜は口角をフックで釣り上げたような、気持ち悪い笑みを浮かべていた。
「桃也がそんなことをか……怒鳴ったりしてすみませんでした」
「いえいえ。友達思いなのはいいことですから」
まだ笑っている。小次郎は何も反応しない。
「お時間を取らせてしまってすみません」
「だいっ、大丈夫です。ちょうど暇でしたから」
「では」
車に乗り込む。座席に背中を預け、息を思いっきり吐き出した。
「……」
無言でメモ用紙を取り出す。さっきまで話してくれたことをメモに書き出していった。
・桃也。今朝失踪
・男に暴力
・こめかみに青アザ
・子供に暴力を奮っているのかも
そうして最後にこう書き足した――。
『――この村は何かを隠している』
この家にも縁側があった。そこでは男児と老婆が座ってなにかを話している。なにを話しているのかは聞き取れなかった。
戸を叩いて数秒。出てきたのは中年くらいの男であった。
「おはよう木下さん」
「おはようございます。……あなたは?」
「牧野小次郎です。桃也の友人で……あ」
目に付いた。男のこめかみに青アザができている。さっきの「殴られた」という発言が頭に反復する。
殴られた痕だろうか。口を開く前に男が話をしだした。
「アイツの友人か……時斜さんから話は聞いてんだろ。会ったら文句を言っといてくれよ」
「そう……ですか。……1つお伺いしたいんですが?」
「ん?まぁいいけど」
「殴られた時の状況を教えて欲しいんですが」
男は顎を少しさすって口を開く。
「突然だったんだよ。俺が巽を遊ばせてたんだ。そしたら急に現れて殴られてさ。なんか『娘に手を出すな』とか言ってて。娘さん……凛ちゃんとか言ってたっけな。凛ちゃんが巽と遊んでいるのは知ってたよ。でも手を出すどころか、見たことすらなかったんだ」
「突然?どこで遊んでたんですか?」
「遊んでた……っていうか散歩?まだうちの子は5歳だからな。えっと……道路を歩いていた時だよ」
「どこら辺の?」
「え……あ……鴨島さんの家だった……と思う」
「鴨島さん……桃也とは以前から面識は――」
「――おい」
時斜が口を挟んできた。声も低い。怒っていると1発で分かる。
「あんた。私らが嘘をついているとか思っとんか?」
「いえいえ。職業柄、こういう癖がついてて」
「――職業柄?」
胸ポケットからスっと警察手帳を取り出す。――今回は私情で来たわけではない。まぁ半分くらいは私情だが。
前日の乙音の母の証言。いわく付きの村。気になることが多かった。証拠もない。警察としての勘……と言ったところか。ドラマでよくあるやつだ。
「警察……!?」
「質問。答えてくれますか?」
「……はい」
男が下を向いた。特に気にすることなく質問の続きを話す。
「桃也とは以前から面識はありましたか?」
「いえ、ありません……」
「殴られた時間帯とかって覚えてますかね」
「覚え……あー……あ、あり、ありません」
「本当に?」
「は……い」
ぎこちない。怪しさが満載だ。
「最近、この近くで人が攫われてるっていうのはご存知で?」
「……い、いえ」
2人とも狼狽えている感じだった。一瞬の表情だったが、小次郎はその様子を見逃さない。ずっと考えていた質問を放った。
「ふぅむ……じゃあ一つ。桃也はいつからここに来ましたか?」
どちらも鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をしていた。その表情も一瞬。すぐにさっきの平然とした、どこか怖い表情に戻る。
「――二ヶ月前くらいかな?その人攫いはいつ起こったんだ?」
「ちょうど同じくらいの時期ですね」
「そうかぁ……」
男の方は深刻そうな面持ちで顎を撫でている。声も重苦しい。だが――時斜は口角をフックで釣り上げたような、気持ち悪い笑みを浮かべていた。
「桃也がそんなことをか……怒鳴ったりしてすみませんでした」
「いえいえ。友達思いなのはいいことですから」
まだ笑っている。小次郎は何も反応しない。
「お時間を取らせてしまってすみません」
「だいっ、大丈夫です。ちょうど暇でしたから」
「では」
車に乗り込む。座席に背中を預け、息を思いっきり吐き出した。
「……」
無言でメモ用紙を取り出す。さっきまで話してくれたことをメモに書き出していった。
・桃也。今朝失踪
・男に暴力
・こめかみに青アザ
・子供に暴力を奮っているのかも
そうして最後にこう書き足した――。
『――この村は何かを隠している』
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