レッドリアリティ

アタラクシア

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3日目

探知

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(なにも情報は得られなかった……か)

予想していたことだ。しかし時間の無駄とは思わない。亜依は最後に小次郎の職業を聞いてきた。

反応は他の村人たちとは違う。意外。予想外。それらが耐えきれない声の感じだったのだ。

理由は――まだ分からない。ただ珍しかっただけなのかも。しかし。それが気になった。

長年の経験からの勘。直感。そんなもので疑うのは警察としてはダメなのかもしれない。それでも小次郎は気になってしまった。


――ただでさえ疑問点が多い。だがすぐにもう1つの疑問点を見つけることになった。

鴨島家の近くにあった茂み。そこにはけもの道のような、誰かが歩いた跡があった。地面の木の葉はそこだけない。そこだけ所々土がむき出しになっている。

まぁこんな田舎だ。子供が山に入ることも珍しくはないはず。でも気になった。その道が頭にこびりついた。

「……」

一応周りを見渡す。畑を耕している農家の人は居た。道を歩いている人はいない。誰も小次郎のことを見ている人はいない。

見られたら困る。その時は思っていなかった。ただなんとなく周りを見渡して、自分が見られてないか。それが気になっただけだ。


歩く。現役刑事なので体力はある。そうだとしても茂みを歩くのはキツい。

土。木の根。木の葉は滑るから特に嫌であった。コンクリートの地面が恋しくなってくる。家に帰りたくなってきた。

だが帰るわけにはいかない。下手したら桃也が殺されているかもしれないのだ。友人が、幼馴染が。

興味もあった。刑事の性だろうか。自分の気になる情報は徹底的に調べる。――それが小次郎のモットーだ。





――ソレを見つけたのは、茂みに入ってすぐだった。

「――切れ込み?」

木を隠すなら森の中、という言葉がある。アリの大群よりも多い木の数。その中で小次郎は1つのが気になったのだ。


その木には切れ込みがあった。獣が付けたようなものではない。刃物で切りつけたような跡だ。

傷は深い。斧でその木を切り倒そうとしている、と表現できるほどだ。ただ切り倒そうとしたのなら不思議な点がある。

なぜ手前の木ではなく、こんな奥の方の木を選んだのか。なぜ中途半端にやめたのか。理由が思い浮かばない。

じゃあ考えられる訳としては――誰かが意図的に付けた。こう考えるのもアリだろう。

「じゃあなんの為……なにかの目印か?」

指で切り込みを撫でる。ボコボコとした感触が指の腹から伝わってきた。

「傷跡が綺麗だな」


……それ以上のことは分からない。これで手詰まりだ。お手上げ状態と言うやつ。

「ここまで来たのにそれはないだろ……」

小次郎は地面に座った。





――木々の隙間。途切れ途切れの景色。写真のようにその景色は瞳に張り付いた。

亜依。それともう1人。男だ。猟銃を持っている。猟師だろうか。小次郎は面識がない。――猟虎だ。

亜依と猟虎は一緒に歩いていった。何かを話しているようにも見える。

「――随分と都合がいい時にデートをするんだな」

ボソッと呟いて立ち上がり、2人を尾行しようと走る。さっきまでの疲れが嘘のように吹っ飛んでいた。

情報を掴める。可能性だけかもしれないが、それが分かっただけで気分が上がってくる。やる気が出てくる。


茂みからは出なかった。しかし2人からは目を離さない。人混みをすり抜ける時のように木々を避ける。

道路を歩く2人。多少の身長差はあるが、並べばカップルのように見える。そう考えると不思議なことはない。

全てはタイミングだ。タイミングが小次郎を動かしていた。錨のように引っかかった疑問が体を前へ引っ張っていく。
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