レッドリアリティ

アタラクシア

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4日目

頭蓋

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――少し前。


桃也は森の中を走っていた。多勢に無勢。猟虎が引き連れていた猟師を全員相手にはできない。まずは撒く必要があった。

「はぁはぁ……」

走りながらも考えを隅々まで巡らせる。頭の中でシュミレーションを動かし続ける。

まず加勢は期待できない。小次郎は動けないだろうし、氷華は走っていった。戻ってくることは無いはず。

そしてさっきも述べたとおり、全員を相手にするのも無理だ。こちらの装備は刀1つ。対して相手はライフルや散弾銃、マチェットなどの近接武器まで揃っている。特殊能力でもない限りはまず勝てない。

つまりこの状況は――とんでもなくやばい。はっきり言って詰みに近い状況だ。

「どうするか……」

氷華を行かせるべきではなかった。だが後から思っても遅い。今、この状況、この状態で打開策を考えないと。


後ろから足音が聞こえない。それが怖い。相手は森での狩猟を仕事にしている奴らだ。森の中に身を隠すのは大得意。

ここは相手の有利フィールドだ。相当のことをしなければ有利にはなれない。

「せめて人を見つけないと――」



――前腕を撃ち抜かれた。血が弾け飛ぶと同時に、鉛の塊が桃也の腕を貫通する。

「なっ――!?」

音の先は20mほど。まったく隠れている様子もない。なのに気が付かなかった。油断していた?そんなことない。

存在感だ。存在感を消していたのだ。どうりで見つけられないはずだ。分からないはずだ。


しかし見つけた。もう見失わない。負傷した右腕から左腕へと刀を持ち替える。

相手はコッキング。距離を詰めることはできるが、次の弾は撃たれてしまう。当たることは覚悟した方が――いいやダメだ。

今度は前腕じゃなく頭か胴体に当ててくる。こんな序盤で致命傷を受けるのは避けたい。だったら避けるのみだ。


地面に手を伸ばして木の葉を握りしめる。同じタイミングで男は指をトリガーにかけた。数秒もしない内に銃弾が放たれるはず。

刀の射程距離内には入っていない。入る前に銃弾が来る。とんでもない幸運が発動すれば銃弾が斬れるかもしれないが、そんなことはやりたくないし出来ない。

なら相手の目を眩ませる必要がある。だからを握っておいた。


桃也の前に木の葉をばらまいた。男の視界には木の葉によって所々途切れた桃也の姿が映った。

「――!?」

困惑。しかしここまで来て撃たない選択肢は無い。引き金をそのまま引く――。


――放たれる銃弾。弾は桃也の頭を――掠った。当たらなかったのだ。斜線上から逸れていた桃也の頭を男は捉えられなかった。木の葉のせいだ。


残り5m。コッキングしてる暇は無い。男はマチェットを取り出そうとするが――そっちも遅かった。

桃也の振った刀は男の腹を切り裂いた。すぐには血が出ない。まるでラグの多いゲームのように。男の脳は痛みを認識した。

「――」

体の動きが痛みによって遮られる。地面に膝が付く時――桃也の刀はもう一度振るわれた。


「ふぅぅ……危なかっ――」

――更なる火薬音。刀をへし折って桃也の脇腹を銃弾が貫通した。

「――ぐぁ!?」

良く考えれば当たり前の出来事だ。銃弾を2発も撃たれた。自分の場所がバレるのは当然のこと。意識が削がれてしまっていた。

相手の位置を補足することはできた。距離だって決して近づけない程じゃない。だが――腹の痛みがそれを許してくれない。

「クソっ――!!」

吹き出そうになる脇腹を抑えながら、また走り出す。この銃声でもっと他の猟師が集まってくるはず。

このまま行けばジリ貧だった。だから逃げる判断は正しいはずだ。……推定が多い。正しい判断ができているのかが心配だ。



しばらく走った。と言っても桃也の体内時計だ。体力のなくなっている桃也では当てにならない。とにかく桃也は走った。

呼吸が止まる。止まりそうになる。そうして倒れ込むように地面に膝を付いた。

「はぁはぁ……」

腹からは血が出ている。前腕からもだ。これだけ負傷しているのに殺せたのはたったの1人。割にあっていない。

「これは……まずいな……」

桃也の言葉には嘘や偽りなどない。まずい状況だ。これはとんでもなく。分かりきっていたことだが、とにかく不利だ。不利すぎる。もはや負けイベントだ。

だが負けたら死ぬ。負けイベントじゃない。ここで勝たないと。

「でもどうやって――」


その時――桃也は1人の猟師を見つけた。まだこちらには気がついていない。服装からして、桃也を殺しに来た猟師だ。

顔は強面。髭は生えていないのか、剃っているのか分からない。まぁとりあえず圧迫感は凄い男だ。

(――)

――桃也の脳裏には1つの作戦が思いついていた。それは倫理観を感じさせないような作戦。しかし桃也には関係ない。

この男に倫理観があるのならば、そもそもこのような事態にはなっていないはずだ。殺人鬼などにはなっていないはずだ。

失敗すれば終わり。だが成功すれば完全に『詰み』なこの現状を『かなり不利』までは持っていける。ハイリスクハイリターン。やる価値は十分だ。

「ははは――」

神はこの殺人鬼を生かすのか。それとも殺すのか。傷ついた体を揺らしながら、桃也は男に近づいていった。
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