レッドリアリティ

アタラクシア

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4日目

愉悦

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男が体を起こした。臓物を垂らしながら。今にも死に絶えそうな顔で。

「おい!傷口が開くから寝てろ――」



心配して肩を掴んだ猟師の両目に指を突き刺す。まるで生き返ったゾンビ。誰もすぐに反応することは出来なかった。

突き刺した指を鉤爪のようにして目の中を抉る。猟師の男はそこで何をされたのか気がついたようだ。――真っ暗な視界の中で。


「――ぁああああああああ!!!???」

痛みの根源である指を引き抜こうと両手を持ち上げた。その隙をついて男のマチェットを取り出す。

周りの猟師はようやく状況を読み込むことができた。しかし遅い。男の方がスピードは速かった。

取り出したマチェットを近くの男に振る。断ち切られる頸動脈、そして首。山猫のように素早く近くの猟師たちに襲いかかっていく。

「なっ――!?」
「ま、まて――!!」

命乞いすらさせない。銃すら撃たせない。あっという間に男たちは血を吹き出しながら地面に倒れた。



男は立っている。血の付着したマチェットを持ちながら。腸をぶら下げながら。

「――ふぅぅ」

腸を引き抜いた。まるで生ゴミを捨てるかのように地面へと放る。――腹からは血が出ている。だが切り傷が見当たらない。せいぜい銃弾を喰らった跡があるだけだ。

顔面を。そして――引っこ抜いた。皮は果物のように抜け、奥から本来の顔が露出する。


――羽衣桃也。まさしく彼であった。死んだはずの桃也がそこに佇んでいた。

「作戦成功……だな」





桃也が考えた作戦は単純ながら残虐非道。悪魔のような考えだ。

まずは相手を殺して顔面の皮を剥ぐ。そして腸を引きずり出して自分のに偽装する。服も拝借すれば変装は完璧だ。

ダメージを受けて小声になっていれば、声で気が付かれることも少ない。よって猟虎らは騙されてしまったのだ。





「クソっっ……見誤っていた……!!」

全てに気がついた猟虎らが走る。全力疾走。その顔には焦りが出ていた。

「あんなこと普通の人間じゃできないだろ!」
「アイツのことを『普通の人間』と思っていた俺の責任だ……!!」
「想像なんてできねぇよ。お前のせいじゃない」

まさかこんなことになるとは思ってもみなかっただろう。自分を恥じる。それ以上に――桃也にたいする怒りが沸いた。

「あの男め……死者を愚弄すると――」



――銃声。1秒後に仲間の男が撃たれたことを猟虎は気がついた。

「は――!?」

撃ったのは桃也。木陰に隠れていた。この場所を猟虎たちが通ってくるのを予想していたのだ。

「貴様ァ――!!」


――次の一手。猟虎の隣にいた男にを投げつけた。目の前の視界が途切れ途切れになるのを男は認識した。

そして次の瞬間――大きな金属音と共に男の頭蓋は砕け散った。

「――トラバサミ!?」

桃也は以前に氷華からトラバサミの位置を聞いていた。ちょうど近場にあったので、拝借したというわけだ。


ライフルはコッキングが必要。使える武器はマチェットのみ。

相手は残り1人。猟虎だ。ライフルはおそらく使える。しかし至近距離なら構えて撃つよりも桃也の方が速い。必然的に近接武器で戦うこととなる。

つまり――桃也のフィールドだ。勝機が0%だったのを、なんとか数%にまで引き上げた。

「久しぶり――」
「クソ野郎め――!!」





マチェットを振りかぶる。この距離、この速度。猟虎が武器を取り出す間に攻撃は当たってしまう。

手にしているのはライフル。距離的に撃てない。だが何も使えない、なんてことは無い。使い方は想像力によって人それぞれだ――。


桃也のマチェットをライフルでガードする。金属部分に当たり防御は成功。すぐさま腰からナタを取り出し、桃也の腹を切りさこうと横一文字を放った。

「ちっ」

チャンスは逃してしまった。だが長く続けばチャンスは比例して多くなる。ようやく近づいたのだ。このまま逃げるわけにはいかない。

真っ向勝負でケリをつける。さっさと殺して先へと進む。

目の前の男を殺して無念を晴らす。そして氷華のところへ行く。

2人の決意は武器へと宿る。真っ赤な闘志を揺らしながら、桃也と猟虎は金属の火花を散らした――。
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