レッドリアリティ

アタラクシア

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5日目

練磨

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先回りしてきた村人たちが桃也の目の前に現れる。距離にして12mほど。すぐに攻撃できる距離ではない。――桃也を覗いて。


路地裏に隠していたのは1つではない。掴み取っていた爆弾に火をつけて村人に投げる。

「はは――!!」

爆風が風を揺らす。血飛沫のような、砂粒のような物が顔にふりかかる。


「やぁぁぁぁ!!!」

後ろからも来た。どこからか持ってきた槍を突き刺しにくる。遅くはない。前の桃也なら普通に刺されていただろう。

だが今の桃也なら避けられる。脳のリミッターが解除されかかっている今の桃也なら。


刺してくるのは腹部。横にズレて回避しつつ、槍を踏み付ける。軌道が変えられた槍は地面に突き刺さるのではなく、曲がってへし折れた。

すかさず自分の親指を村人の首に突き刺す。怯む。呼吸ができなくなって怯む。

更に後から来た村人。冷静に的確に。桃也は村人の髪を掴んで盾にした。

「――!?」

村人の鎌が背中に突き刺さった。

「ひひっ――!!」

顎に肘をぶち当て、背中に刺さっていた鎌を抜く。勢いはついたまま。怯みが消えていた村人の首を鎌で刈り取った。


まだまだ村人は来る。蛆のように湧いてくる。切って殺す。殴って殺す。踏んで殺す。抉って殺す。燃やして殺す。

いくら殺しても減ってる気配がない。それでも確実に減ってはいるのだ。隠している爆弾も沢山ある。

体から溢れる血は固まっている。皮膚と服は引っ付いていた。その姿はまさに人外。まさに悪魔といった様相。

殺し続ける姿は地獄から来た鬼か。それとも命を奪う死神か――。





迫ってくる拳を避ける。銃の引き金を引こうと指をかけるが、引く隙を与えずに義明が拳を振るった。

「ちぃ――」

つま先を義明は踏んでいた。動けない。意識が一瞬だけ削がれてしまった。

「やば――!!」

――拳が顔面に沈み込む。脳が頭でピンボールのように揺れる。目に映る視界は子供が書いた絵のように歪となった。

鼻血がドプドプとひっくり返したペットボトルのように流れてくる。ガクガクと神経が麻痺しているのか、両手が震えていた。


「――!!」

義明の追撃。腹に目掛けて放ってきたサッカーボールキックを転がって避けた。

「ふぅふぅ……!!!」

ライフルを向ける。狙いは頭部。片手で構えてるので不安定だ。だが狙いは定まる。外れても体には当たるだろう。


放った銃弾は防御しようとした義明の両腕と頬を貫通した。

「くそっ、惜しい!!」

もう少し横なら頭を貫通させられたのに。しかし過ぎたことだ。くよくよしても仕方ない。

「んん――!!!」


義明は怯む。無意識にそう思っていた氷華はコッキングしようとしていた。――悪手だ。選択肢を間違えた。

怯むことなく義明は攻撃してきたのだ。前蹴りを肋の部分に放つ。

「――」

既にへし折れている。そこに絶大な威力で追撃された。脳に数秒のタイムラグを経て――痛みと呼吸困難が降り注いだ。


気絶。消えた意識。膝から崩れ落ちる。

――髪を掴んで倒れるのを阻止。グイッと持ち上げた。気絶しているので手足がダランとしている。

「ふん!!!」

隕石。巨拳。右ストレートがみぞおちに突き刺さった。


数メートル先まで殴り飛ばされる。壊れそうな家屋の壁を壊して地面に叩きつけられた。

「――ゴブっっ!?」

過呼吸が体を巡る。目眩がする。殴られた影響で意識は取り戻した。しかし動けないことには変わりない。

お腹と背中がくっ付く、という表現はよくある。――まさにそれだ。壊れる。壊れそうなほどの苦痛。

立つことができない。濁る。鈍る。飲み込もうとする唾が喉を通らない。

唯一残った耳は近づいてくる足音を聞き取っていた。特徴的な足音。地面を揺らすかの如き重さ。存在感。


「はぁはぁ……」

落ち着いて呼吸――なんてしてる場合じゃない。次まともに喰らったら死ぬ。確実に死んでしまう。

どうにか打開策を。乱雑にツギハギされた脳内で策を考える。

「はぁはぁ――」


義明が家に入ってきた。残りの距離は3m。死にかけの体じゃ逃げられない。

「これで終わりだ――」

――言い終わるよりも早く。氷華は天井に向かって発砲した。
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