レッドリアリティ

アタラクシア

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5日目

終局

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至るところで叫び声が聞こえる。至るところで爆破音が聞こえる。至るところで人が死んでいく声が聞こえる。

常世の地獄とはよく言ったものだ。ここはまさに地獄以上。大の大人が泣き叫ぶ。燃え尽きる。死んでいく。

消えていく命。そして歴史。ずっと八月村のことを愛していた蓮見の目から涙が溢れ出てきた。

「……逃げないんですか?」
「あぁ……」

まだ蓮見は動いてなかった。十字架を抱えている2人の村人も。瀕死の美結も。

「ならお供します」
「……死ぬと決まったわけじゃない。俺達には――義明がいる」
「そうですね……」

蓮見は信じていたのだ。

ずっと一緒だった幼馴染を。
最強と信じ続けている親友を。
家族のように愛している遠藤義明を。


(桃也……)

美結も同じ思いだ。ずっと変わらぬ想いを抱いている。ずっと変わらぬ信頼を持っている。

かつて助けてくれたナイトウォーカーを。
残虐非道で冷酷な殺人鬼を。
自分を愛してくれている夫を。
自分が愛している羽衣桃也を。


互いが互いに信頼している者がいる。互いが互いに愛している者がいる。

終わりそうにもなかった地獄は――最終局面を迎えようとしていた。





「――」

約40分。殺戮を続けた。もう桃也に襲いかかってくる者はいない。全員を殺害した。

民族虐殺。ジェノサイド。部族同士、ましてや国同士ですら行われる悪夢。それを桃也はたった1人で成し遂げた。

しかし賛辞する声はなし。どれだけ凄いと言っても殺人。褒められることじゃない。貶されても文句は言えない。桃也は単なる人殺しの最低な人間だ。

「――ふぅ」

「死ね」と言われるだろう。「くたばれ」と言われるだろう。「なぜお前は生きているのだ」と言われるだろう。

それでも桃也は生きている。生きて笑っている。苦しむどころか、笑っている。不条理で理不尽な世界だ。

「――ようやく来たか」



殺人鬼『ナイトウォーカー』の目の前に現れたる巨漢。姿は巨艦とも比喩できる。名は何度も聞いたはずだ。

「――遠藤義明」
「ようやく会えたな――羽衣桃也」

瓦礫からなんとか逃れた義明が目にしたのは死体の山だった。それが誰に起こされたのかはすぐに理解できる。

だから一直線に桃也の元まで来た。殺すために。息の根を止めるために。魂を地獄へと送るために。





八月村の子供は凛や巽だけじゃない。炎渦登竜門は16歳からでしか見ることは許されていなかった。

なので山の中にある小屋に子供たちは移動している。巽や他8名。村の子供はひっそりと祭りが終わるのを待っていた。

しかし爆発音が聞こえたためか、全員が心配して外へ様子を見に来ていた。――そして全員の目に姿が映る。


半分に割れた面。子供たちはちょうど面の部分を見ていた。真っ黒な顔に赤いペンキで書かれたニッコリマークの面を。

「……き、きょくやさまだ」

子供たちの誰かが言った。村に伝わる妖怪。『極夜様』の名前を。





「――最期に1つ。聞かせてくれ」

服を脱ぐ。牧師の姿を脱ぎ捨てる。肥大した筋肉はそれだけで圧を放っていた。体に付いた傷も圧を増長させている。

「貴様はなぜ人を殺せる?」

桃也はさっき拾ったライフルの弾を確認していた。きちんと入っているか。ちゃんと撃てるのかを。

「私たちは村を守るためだ。この村を存続させるためだ。我らの先祖が守ってきたこの村を」

拳を握る。

「人は立場が変われば簡単に人を殺せる。上流階級の子供と戦場の中に産まれた子供では、捉える命の重さが違う。私たちも同じだ」

息を吐く。

「我らの価値観と貴様のような都会に住んでいる者たちの価値観は違うのだろう。……分かっているさ。人を殺したらダメなのが貴様の社会なんだろう。社会からすれば、我らは悪なのだろう」

覚悟を決める。

「――だから尚更分からない。なぜ貴様は人を殺せる。殺したらダメな価値観があるはずなのに。なぜお前は殺せる」

後は答えを話すのみ。

「応えろ。羽衣桃也」










「――さぁ。俺には分からん」
「……」
「1つ言えることはある。価値観が全てじゃないってことだ。どんな時代、どんな場所にもは存在する。それが俺だったってだけだ」
「……それが答えか」
答えそれにはなってないだろ。まぁお前が満足したら別にいいが」
「――満足だ」

問答は終わった。これがラストバトル。終わりの始まりである。
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