レッドリアリティ

アタラクシア

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5日目

絢爛

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ダメ押しのもう一発。うなじに向けてマチェットを振り下ろす――。


――止められた。手首を寸前で抑えられた。更に横腹も掴まれる。

「いづっっっ――!?」

体は弧を描きながら、地面へと向かっていく。後頭部から叩きつける気だ。流石に死ぬ。死なないにしても下手したら一生動けない体になる。それはまずい。

地面に当たる前に後頭部を手で覆った。多少の軽減はできるはず――。



成功だ。叩きつけられた衝撃は緩和され、なんとか動ける程度まで抑えられた。

しかし掌は衝撃を全て肩代わりした。肉と皮だけじゃ守れるものも守りきれない。鈍い音を立てて掌の骨は砕けた。

「――」

顎の一撃が聞いたのか、義明の意識が混濁している。桃也への投げを最後に一時的に体を落とした。

「はぁはぁ……」

これは幸いだ。桃也も動けない状態にある。ズキズキ痛む掌。不幸中の幸いか、折れたのは利き手ではない左手。まだ右手は使える。


立ち上がる2人。戦いはまだ序章だ。顔からは笑みがこぼれてしまう。

負けるのは状況的にヤバい。それはどちらともおなじ。桃也が負ければ美結も凛も殺され、義明が負ければ村は完全に崩壊する。

緊張。殺意。全てが混ざり合うような状況で、2人は同じ感情を抱いていた。――楽しさである。

生死をかけた殺し合い。おおよそ現代社会の日本で経験しないモノだ。それを感じている。今まさに体感している。

興奮は熱狂と共に体を鼓舞する。力は外付けの物が取り付けられているかのように、永遠と湧き続けている。

「――ははは」

何もかも忘れろ。戦い楽しめ。懸念など捨てろ。今は目の前にいる男を――殺すために動くのだ。





攻撃は同時。マチェットと拳が交差する。攻撃が届いたのは――桃也の方だ。

首元に振るわれたマチェットを前腕で防御。沈み込む刃に苦痛の声が盛れる。が、攻撃は封じた。力を入れて刃が抜けないように――。


――ここで追撃。力が強いのが仇となった。体を引き寄せ、勢いをつけて肘を顔面に入れる。

「――」

力が緩んだ。マチェットを引き抜いて構える。2度目の攻撃。同じ攻撃をさせてくれるほど優しい相手じゃないのは知ってる。

だからここで変則的な攻撃。義明も予想できない思考を停止させるような攻撃を。


マチェットを逆手に持った。柄の部分はプラスチック。されど中身は金属だ。

――みぞおちに柄を叩き込む。拳でも効く攻撃だ。それを柄でやる。硬質な物体はみぞおちに深く深く沈み込んだ。

義明の腹筋は鋼鉄にだって例えられる。しかしみぞおちなら関係ない。鉄をも砕く腹筋も、使えなければただの置物だ。


沈む腹部に合わせて頭も低くなる。見上げるような身長差は過去のこと。今なら目線だって合わせられる。

ちょうど鼻は額の位置。引いて力を溜めて解放。頭突きは義明の鼻をへし折った。

血が。感覚が。興奮が。攻撃される前に攻撃する。マチェットを振り上げた――。


「ぬん――!!」

「お返しだ」と言わんばかりの頭突きを顔面に喰らう。ダメージ――それよりも酷いのは眩み。視界が歪むことだった。


――回し蹴り。踵が側頭部に突き刺さる。体が車輪のように一回転し、家の壁に叩きつけられた。

「――」

意識が歪む。歪む。さっき歪んでいたのは視界だ。今度は意識が混濁なんてもんじゃない。体が液状化したように自由に動かない。

「っ――ぁ――」

平衡感覚が消えた。正常な思考の仕方が分からない。ずっと地面が迫ってくる。壁が。目に映るのが壁のような地面しかない。

状況は最悪そのもの。立ち上がることすらままならない。こうしている間にも義明は近づいてきている……はず。

耳は聞こえるが、それが脳に伝わらない。頭蓋骨は割れているのか。正直割れていてもおかしくない。

「ぶづ――」

右手で頭を叩く。揺れ続ける脳に喝を入れた。体は動いてくれる。まだ戦える。


――時間がかかりすぎた。視界が元に戻った時、既に義明は拳を引いていたのだ。

防御。ダメだ。防御しても腕が壊れるだけ。マチェットは蹴られた時に吹っ飛んでしまった。

回避。これもダメだ。間に合わない。意識が戻っても体は完全には動かない。

どうするのか。考えても回らない。拳が接近してくる。動けと命令しても動いてくれない。痺れたように手足が動かない。

(ヤバい――ここまでか――)
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