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5日目
遺産
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「――とりゃ!!」
高校の修学旅行で北海道にスキーに来ていた桃也。お昼ご飯も食べて休憩中のことだ。
高校生もまだまだ子供。雪がほとんど降らない徳島県の産まれである桃也は友人たちとはしゃぎ回っていた。
そんな中の出来事だ。小次郎とじゃれあっていた桃也は、雪の上で小次郎の『一本背負い』を受けた。
「わー……め、目が回った」
「はは!どうだー!」
柔道の技は初めて喰らった。北海道の雪は柔らかいのでダメージはない。それよりも衝撃的だったのは流れだ。
投げられている時。桃也は全く抵抗出来なかった。動けなかった。
「……おっしゃ!俺もやるぞー!」
「やれるもんならやってみろー!」
周りにいた友人たちが「いいぞー」「やれー」と野次を飛ばす。中には乱入しようとしてくる者もいた。
とても楽しい思い出だ。こんな歳になっても脳裏に焼き付くほどに。アルバムを見る度に思い出す。
しかし子供のじゃれ合いだ。あくまでそれまで。単なる楽しい思い出にすぎない。
「――」
走馬灯か。それとも神様がチャンスをくれたのか。
義明は右ストレート。拳の先は桃也の顔面。これほどまでお膳立てされた状況は、後にも先にも今だけだ。やるしかない――。
――拳が頬を切った。体を回転して義明の腕を掴む。左手は使えないので、腕を蛇のように絡みつかせた。
力は水と同じ。小次郎がやっていた時のように『流れ』を掴む。見様見真似。矢印として力を操作する。
できるかできないかじゃない。やるかやらないか。やれないのなら死ぬ。それだけのこと。
スピードは落とさせない。そのまま力を下へと向ける。――流れはついた。今度は自分の体重も乗せる。
相手の体が浮き上がった。のしかかるのは巨木のような重さ。両足が悲鳴を上げる。しかし膝は緩めない。
「ぬぅぅぅおおおおおお!!!」
――掴んだ。『流れ』の確信を。体の動きを。土壇場で桃也は掴み取ったのだ。
壁を壊して地面に叩きつける。綺麗な『一本背負い』だった。死んだ小次郎が見たら、手を叩いて笑いそうなほど。
桃也も同じだったようだ。顔から笑いが漏れ出ている。
「ははは――」
――油断した。義明は死んでいない。桃也の胸元を掴んで奥に投げ飛ばした。
「ぐぉ――!?」
キッチンに衝突。皿やコップが机から落ちて地面で割れる。
「いでで……よしよし」
未だに有利な状態では無い。それでも着実に義明の命を削っている。脳内物質は更に活性化し、桃也のボルテージは上昇していった。
「ぐっ……妙な技を……!!」
「小次郎から習ったもんでな」
「……あの男か」
効いていた。確実に効いていた。難攻不落の要塞にヒビが入っていた。
このまま負けてはいられない。流れ出る血を軽く拭う。
「あの男も随分と手こずらせてくれた」
「……殺したのか?」
「あぁ。顔面をぶん殴って殺した」
「――そうか」
情なんてない。桃也からしたら赤の他人と変わらない。ただ幼馴染ってだけだ。別になんとも思ってはいない。
現に今の発言を聞いても何にも感じなかった。怒りも悲しみも。「死んじゃったのか」と思っただけ。
「そうか知らなかったか。敵討ちでもするか?」
「誘ったのは俺だ。罪悪感はある。だが敵討ちはしないさ。そういうタチじゃない」
「だろうな」
小次郎は警察だった。警察は一応敵だ。つまりは小次郎は敵。むしろ死んで安心したと言ってもいい。
「――お喋りは終わりだ」
「そうだな。時間もないし」
美結も限界が近い。もしかしたら蓮見が美結を連れて逃げる可能性だってある。殺し合いは楽しい。だがこれ以上は時間をかけられない。
そろそろ決着をつけないと。凛も心配だ。氷華が助けていてくれたらいいが、そうじゃない場合だってある。
ボルテージは上がったまま。流れも習得した。コンディションは上場。ここで決着をつける――。
高校の修学旅行で北海道にスキーに来ていた桃也。お昼ご飯も食べて休憩中のことだ。
高校生もまだまだ子供。雪がほとんど降らない徳島県の産まれである桃也は友人たちとはしゃぎ回っていた。
そんな中の出来事だ。小次郎とじゃれあっていた桃也は、雪の上で小次郎の『一本背負い』を受けた。
「わー……め、目が回った」
「はは!どうだー!」
柔道の技は初めて喰らった。北海道の雪は柔らかいのでダメージはない。それよりも衝撃的だったのは流れだ。
投げられている時。桃也は全く抵抗出来なかった。動けなかった。
「……おっしゃ!俺もやるぞー!」
「やれるもんならやってみろー!」
周りにいた友人たちが「いいぞー」「やれー」と野次を飛ばす。中には乱入しようとしてくる者もいた。
とても楽しい思い出だ。こんな歳になっても脳裏に焼き付くほどに。アルバムを見る度に思い出す。
しかし子供のじゃれ合いだ。あくまでそれまで。単なる楽しい思い出にすぎない。
「――」
走馬灯か。それとも神様がチャンスをくれたのか。
義明は右ストレート。拳の先は桃也の顔面。これほどまでお膳立てされた状況は、後にも先にも今だけだ。やるしかない――。
――拳が頬を切った。体を回転して義明の腕を掴む。左手は使えないので、腕を蛇のように絡みつかせた。
力は水と同じ。小次郎がやっていた時のように『流れ』を掴む。見様見真似。矢印として力を操作する。
できるかできないかじゃない。やるかやらないか。やれないのなら死ぬ。それだけのこと。
スピードは落とさせない。そのまま力を下へと向ける。――流れはついた。今度は自分の体重も乗せる。
相手の体が浮き上がった。のしかかるのは巨木のような重さ。両足が悲鳴を上げる。しかし膝は緩めない。
「ぬぅぅぅおおおおおお!!!」
――掴んだ。『流れ』の確信を。体の動きを。土壇場で桃也は掴み取ったのだ。
壁を壊して地面に叩きつける。綺麗な『一本背負い』だった。死んだ小次郎が見たら、手を叩いて笑いそうなほど。
桃也も同じだったようだ。顔から笑いが漏れ出ている。
「ははは――」
――油断した。義明は死んでいない。桃也の胸元を掴んで奥に投げ飛ばした。
「ぐぉ――!?」
キッチンに衝突。皿やコップが机から落ちて地面で割れる。
「いでで……よしよし」
未だに有利な状態では無い。それでも着実に義明の命を削っている。脳内物質は更に活性化し、桃也のボルテージは上昇していった。
「ぐっ……妙な技を……!!」
「小次郎から習ったもんでな」
「……あの男か」
効いていた。確実に効いていた。難攻不落の要塞にヒビが入っていた。
このまま負けてはいられない。流れ出る血を軽く拭う。
「あの男も随分と手こずらせてくれた」
「……殺したのか?」
「あぁ。顔面をぶん殴って殺した」
「――そうか」
情なんてない。桃也からしたら赤の他人と変わらない。ただ幼馴染ってだけだ。別になんとも思ってはいない。
現に今の発言を聞いても何にも感じなかった。怒りも悲しみも。「死んじゃったのか」と思っただけ。
「そうか知らなかったか。敵討ちでもするか?」
「誘ったのは俺だ。罪悪感はある。だが敵討ちはしないさ。そういうタチじゃない」
「だろうな」
小次郎は警察だった。警察は一応敵だ。つまりは小次郎は敵。むしろ死んで安心したと言ってもいい。
「――お喋りは終わりだ」
「そうだな。時間もないし」
美結も限界が近い。もしかしたら蓮見が美結を連れて逃げる可能性だってある。殺し合いは楽しい。だがこれ以上は時間をかけられない。
そろそろ決着をつけないと。凛も心配だ。氷華が助けていてくれたらいいが、そうじゃない場合だってある。
ボルテージは上がったまま。流れも習得した。コンディションは上場。ここで決着をつける――。
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