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1章 血塗れになったエルフ
第19話 麗しきエルフの村!
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丁寧に作られた藁の家。広く取られたまっさらの木の柵。動物の皮が綺麗に干されており、真ん中の焚き火には多くのエルフが集まっていた。
子供のエルフ。青年のエルフ。老人のエルフ。年齢性別問わず、様々なエルフたちがそこにいた。
山の中にある不自然なほど平坦な大地。そこにクエッテの村があった。
「――ラペットガット村。ここが私たちが住んでいるところよ」
クエッテは村の扉を開けた。
「――おい。どういうことだクエッテ」
周りからの侮蔑の視線。軽蔑の視線。悪意の籠った目つきがヘキオンとカエデに向けられる。1人や2人じゃない。村全体から向けられている。
「なんでニンゲンがいる」
「ワタシのせいでこのヒトたちのニモツがモえちゃった。だからそのウめアわせをしようと」
「……ショウキか?ニンゲンだぞ?」
「このヒトたちはワルいヒトじゃないよ。ワタシからシカけたのに、ちゃんとカイホウしてくれたし」
「おマエっ、おマエっ、そんなっ、そんなっ――」
「――サキにイえよー!」
「「……は?」」
――というのは勘違いだったようだ。視線は一気に珍しいものを見る興味の視線へと変わっていった。
「わぁ……スゴい!ミミがマルいよおカアさん!」
「そうねぇ。カミもクロイロだわ」
「ちいさい!ハダキレイ!カワいい!」
「あの……えっと……」
興味津々のエルフたちにヘキオンは囲まれている。周りからの視線を恥ずかしがっているようだ。
「……思ってた反応と違うな」
「ニンゲンはメズらしいからね」
「じゃあなんで攻撃してきたんだよ」
「サイキンはエルフをドレイにしようとしてくるやつがいる。このマエも1人ツカまった。だからピリピリしてた」
「あぁ……なんかごめんな」
「?あなたがアヤマるヒツヨウはない」
クエッテが歩き出した。指をクイクイと動かして『着いてこい』と合図する。
「ヘキオ――ンはいいか」
バーゲンセールのように囲まれている今のヘキオンに言葉は届かないだろう。
「ここにキたのもなにかのウン。ソンチョウにアイサツくらいしてってよ」
「え、大丈夫か。住民はあんなだけど、さすがに村長は嫌がるんじゃ。村人捕まってるんだろ?」
「みんなキラってるのはワルいニンゲン。あなたはいいニンゲンでしょ?」
「そう……自分で言うの恥ずかしいな」
村の中でも一際大きな家。察するにそこが村長の家だ。クエッテの後に続いてカエデも家に入る。
中も広い。鹿や狼、熊に蛇。様々な動物の頭が壁に飾られている。上から吊るされているランタンも綺麗だ。
「ソンチョウ」
そんな家の奥にある玉座のような椅子。簡素で木造の椅子だが、十分すぎるほどの威圧はあった。
「……ソトがサワがしいと思ったらニンゲンがキていたのか」
「お邪魔してます」
「クエッテがツれてきたということは、ワルいやつでもないんだろ。ゆっくりしていくといい」
「じゃあお言葉に甘えて」
短い会話だ。もう話すこともない。居座る理由もないので、2人は出ていこうとした。
「――ちょっとマて」
「はい?どうかしました?」
「……ニンゲン。ジカンはあるか?」
「特に急ぎの用事はないけど……」
「タノみをキいてくれないか」
椅子から立ち上がり、隣にあったタンスを開けた。
「おマエにトってきてホしいモノがある」
「……取ってきて欲しいもの?」
取り出したのは――地図だ。
「こにシルされたバショに『白銀の宝玉』というものがある」
「それを取ってきたらいいのか?」
「あぁ。そこまでのアンナイはムスコにさせる」
「え?案内?地図あるのに?」
「白銀の宝玉はチカダンジョンにある。そこのアンナイだ」
「ふーん……いいよ。わかった」
「――カンシャする」
外へ出ると、カエデは本格的に地図に目を通した。
「ここからそう遠くないな……なぁ白銀の宝玉ってなに?」
「ワタシにもワからない」
「そうか。まぁいいや。ヘキオン!」
子供たちとじゃれあっていたヘキオン。もう村の一員みたいに打ち解けている。「素直にすごい」とカエデは思った。
「どうしましたー?」
懐いた子犬みたいに走ってくる。「素直に可愛い」とカエデは思った。
「頼まれごとを受けた。行くぞ」
「頼まれごと?」
「なんか宝玉持ってこいって」
「……カエデさんが行ってくればいいんじゃないですか?私が行くより、一人で行ったほうが速いでしょ?」
「それはそうだが……それだとヘキオンのためになんないじゃん」
「私は子供たちと遊ぶのに忙しいです」
「いつから育児士になったんだよ」
「一人っ子だったから子供が可愛くて仕方ないです!」
「目覚めかけてんじゃねぇか」
ここで説明。育児士とは、現実世界で言う保育士である。親が仕事で一人になってしまう子や、身寄りのない子供の世話をしている。
「ヘキオンもツカれてるんでしょ。ヤスませてあげたら?」
「ダメだ。休み癖が付くぞ。俺の実体験だ」
「やーでーす!子供に夢と希望を教えるんです!」
「育児士に目覚めてんじゃねぇか」
子供のエルフ。青年のエルフ。老人のエルフ。年齢性別問わず、様々なエルフたちがそこにいた。
山の中にある不自然なほど平坦な大地。そこにクエッテの村があった。
「――ラペットガット村。ここが私たちが住んでいるところよ」
クエッテは村の扉を開けた。
「――おい。どういうことだクエッテ」
周りからの侮蔑の視線。軽蔑の視線。悪意の籠った目つきがヘキオンとカエデに向けられる。1人や2人じゃない。村全体から向けられている。
「なんでニンゲンがいる」
「ワタシのせいでこのヒトたちのニモツがモえちゃった。だからそのウめアわせをしようと」
「……ショウキか?ニンゲンだぞ?」
「このヒトたちはワルいヒトじゃないよ。ワタシからシカけたのに、ちゃんとカイホウしてくれたし」
「おマエっ、おマエっ、そんなっ、そんなっ――」
「――サキにイえよー!」
「「……は?」」
――というのは勘違いだったようだ。視線は一気に珍しいものを見る興味の視線へと変わっていった。
「わぁ……スゴい!ミミがマルいよおカアさん!」
「そうねぇ。カミもクロイロだわ」
「ちいさい!ハダキレイ!カワいい!」
「あの……えっと……」
興味津々のエルフたちにヘキオンは囲まれている。周りからの視線を恥ずかしがっているようだ。
「……思ってた反応と違うな」
「ニンゲンはメズらしいからね」
「じゃあなんで攻撃してきたんだよ」
「サイキンはエルフをドレイにしようとしてくるやつがいる。このマエも1人ツカまった。だからピリピリしてた」
「あぁ……なんかごめんな」
「?あなたがアヤマるヒツヨウはない」
クエッテが歩き出した。指をクイクイと動かして『着いてこい』と合図する。
「ヘキオ――ンはいいか」
バーゲンセールのように囲まれている今のヘキオンに言葉は届かないだろう。
「ここにキたのもなにかのウン。ソンチョウにアイサツくらいしてってよ」
「え、大丈夫か。住民はあんなだけど、さすがに村長は嫌がるんじゃ。村人捕まってるんだろ?」
「みんなキラってるのはワルいニンゲン。あなたはいいニンゲンでしょ?」
「そう……自分で言うの恥ずかしいな」
村の中でも一際大きな家。察するにそこが村長の家だ。クエッテの後に続いてカエデも家に入る。
中も広い。鹿や狼、熊に蛇。様々な動物の頭が壁に飾られている。上から吊るされているランタンも綺麗だ。
「ソンチョウ」
そんな家の奥にある玉座のような椅子。簡素で木造の椅子だが、十分すぎるほどの威圧はあった。
「……ソトがサワがしいと思ったらニンゲンがキていたのか」
「お邪魔してます」
「クエッテがツれてきたということは、ワルいやつでもないんだろ。ゆっくりしていくといい」
「じゃあお言葉に甘えて」
短い会話だ。もう話すこともない。居座る理由もないので、2人は出ていこうとした。
「――ちょっとマて」
「はい?どうかしました?」
「……ニンゲン。ジカンはあるか?」
「特に急ぎの用事はないけど……」
「タノみをキいてくれないか」
椅子から立ち上がり、隣にあったタンスを開けた。
「おマエにトってきてホしいモノがある」
「……取ってきて欲しいもの?」
取り出したのは――地図だ。
「こにシルされたバショに『白銀の宝玉』というものがある」
「それを取ってきたらいいのか?」
「あぁ。そこまでのアンナイはムスコにさせる」
「え?案内?地図あるのに?」
「白銀の宝玉はチカダンジョンにある。そこのアンナイだ」
「ふーん……いいよ。わかった」
「――カンシャする」
外へ出ると、カエデは本格的に地図に目を通した。
「ここからそう遠くないな……なぁ白銀の宝玉ってなに?」
「ワタシにもワからない」
「そうか。まぁいいや。ヘキオン!」
子供たちとじゃれあっていたヘキオン。もう村の一員みたいに打ち解けている。「素直にすごい」とカエデは思った。
「どうしましたー?」
懐いた子犬みたいに走ってくる。「素直に可愛い」とカエデは思った。
「頼まれごとを受けた。行くぞ」
「頼まれごと?」
「なんか宝玉持ってこいって」
「……カエデさんが行ってくればいいんじゃないですか?私が行くより、一人で行ったほうが速いでしょ?」
「それはそうだが……それだとヘキオンのためになんないじゃん」
「私は子供たちと遊ぶのに忙しいです」
「いつから育児士になったんだよ」
「一人っ子だったから子供が可愛くて仕方ないです!」
「目覚めかけてんじゃねぇか」
ここで説明。育児士とは、現実世界で言う保育士である。親が仕事で一人になってしまう子や、身寄りのない子供の世話をしている。
「ヘキオンもツカれてるんでしょ。ヤスませてあげたら?」
「ダメだ。休み癖が付くぞ。俺の実体験だ」
「やーでーす!子供に夢と希望を教えるんです!」
「育児士に目覚めてんじゃねぇか」
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