3 / 14
姉弟の出会い
しおりを挟む
ホタルが考え事をしながら、浜辺を散歩していると、小さな男の子が砂の上に座り込み、海をぼんやりと見つめているのが目に入った。
母親に,父親に会ったことを報告したら、怒られ,大喧嘩をしてしまったのだった。いつも,昔の夢を思い出すような顔で父親の話を懐かしそうにする母親は,父親を恨んでいるようには,ホタルには見えなかったが,どうやら,わだかまりがあるようだ。
ホタルは,いつまでもボーッとしている男の子の様子が気になり,声をかけてみた。
「大丈夫?」
すると,男の子がふと我に返ったようで,振り向いて,ホタルと目を合わせた。
「大丈夫…あなたは誰?」
「ホタルというよ。僕の名前は?」
「ヒカル。」
「…誰かを待っているの?」
ホタルは,男の子の様子が何かを待っているように見えたので,尋ねてみた。
男の子は,何も言わずに,寂しそうに,小さく頷いた。
「誰を待っているの?」
ホタルが訊いた。
「お母さん。」
ヒカルが小さな声で答えた。
男の子の様子を見て,ホタルはふと,自分と同じような子供なのかもしれないと思った。こんなに海に近い町なら,自分と同じような,セルキーと人間の子供が他にいても,おかしくない。
「お母さんは…海に住んでいるの?」
男の子がまた小さく頷いた。
「私のお父さんも,海に住んでいるみたい…この間,初めて会ったけど。」
ホタルがさり気なく言ってみた。
「え?そうなの!?」
ヒカルが一瞬驚いてから,嬉しそうに笑った。
ホタルは,頷いてから,ヒカルの隣に座った。しかし,いつまで待っても、誰も来なかった。
「今日,お母さんは,忙しいんじゃない?一緒に帰ろう。」
ホタルが男の子をこのまま放っとくのが可哀想な気がして,気が進まなかった。
ホタルが誘うと,ヒカルも,小さくため息をついて,頷いた。
ホタルと一緒に歩いて帰りながら,ヒカルは,さっきの物静かな様子が嘘に思えるくらい,すごい勢いで,お母さんのことや海のことなど,あれこれと喋り続けた。
「でね,アザラシの華と言ってね,お母さんは,渦が作れるの!」
ヒカルが興奮で息を弾ませながら,言った。
「アザラシの華!?何,それ!?」
ホタルは,思わず吹き出した。この子は,自分と歳が離れているが,可愛らしくて,面白いと思った。
「その人の秘めた力だって。セルキーは,みんなあるって!人間にも,あるみたい!僕にも,きっと,何か力があるとお母さんが言ったもん!」
ヒカルは,興奮がまだ収まらずに喋り続けた。
いよいよヒカルの家の前まで来かかった。
「ここだよ!」
ヒカルがホタルに教えた。
「ここか…じゃ,またね。」
ホタルが笑顔で手を振って,ヒカルと別れた。
ホタルは,ヒカルと別れて,すぐに浜辺へ戻った。ヒカルの話を聞いて,父親を呼び出し,アザラシの華について訊いてみたいと思ったからだ。ホタルは,父親を呼び出すためにまた嘘泣きを始め,涙を海に落とした。
少しすると,父親が「またか…。」という顔をして,現れた。
「…どうした?また呼んだ?」
「お父さんのアザラシの華は,何?何かあるの?」
ホタルが単刀直入に訊いた。
「…なんで,そのことを…?」
ホタルが知っているはずがないと思い込んでいたことをいきなり口に出すから,父親が驚いた。
「もう一人のセルキーの親がいる子とたまたま出会って,話を聞いたの。」
ホタルが説明した。
「僕は…自慢にはならないし,どうでもいいけど…イルカみたいに高くジャンプできる。」
父親が言った。
「見せてくれる!?」
ホタルが目を輝かせて訊いた。
「いや,見せられない。」
父親はきっぱりと断った。
「なんで?あの子は,見せてもらったよ。」
ホタルが反論した。
「人間にアザラシの姿を見せてはいけないから…じゃ,そろそろ行くよ。」
父親が逃げるように,姿を消した。
ホタルは,大きなため息をついた。本当の父親に2回会ってみて,話しても,距離は少しも縮まっていないと内心で,声にならない声をあげ,密かに嘆いた。
しかし,ヒカルのことを思い出すと,笑顔になった。また,あの子に会いたいと思った。兄弟のいないホタルには,弟が出来たような気がして,嬉しかった。
母親に,父親に会ったことを報告したら、怒られ,大喧嘩をしてしまったのだった。いつも,昔の夢を思い出すような顔で父親の話を懐かしそうにする母親は,父親を恨んでいるようには,ホタルには見えなかったが,どうやら,わだかまりがあるようだ。
ホタルは,いつまでもボーッとしている男の子の様子が気になり,声をかけてみた。
「大丈夫?」
すると,男の子がふと我に返ったようで,振り向いて,ホタルと目を合わせた。
「大丈夫…あなたは誰?」
「ホタルというよ。僕の名前は?」
「ヒカル。」
「…誰かを待っているの?」
ホタルは,男の子の様子が何かを待っているように見えたので,尋ねてみた。
男の子は,何も言わずに,寂しそうに,小さく頷いた。
「誰を待っているの?」
ホタルが訊いた。
「お母さん。」
ヒカルが小さな声で答えた。
男の子の様子を見て,ホタルはふと,自分と同じような子供なのかもしれないと思った。こんなに海に近い町なら,自分と同じような,セルキーと人間の子供が他にいても,おかしくない。
「お母さんは…海に住んでいるの?」
男の子がまた小さく頷いた。
「私のお父さんも,海に住んでいるみたい…この間,初めて会ったけど。」
ホタルがさり気なく言ってみた。
「え?そうなの!?」
ヒカルが一瞬驚いてから,嬉しそうに笑った。
ホタルは,頷いてから,ヒカルの隣に座った。しかし,いつまで待っても、誰も来なかった。
「今日,お母さんは,忙しいんじゃない?一緒に帰ろう。」
ホタルが男の子をこのまま放っとくのが可哀想な気がして,気が進まなかった。
ホタルが誘うと,ヒカルも,小さくため息をついて,頷いた。
ホタルと一緒に歩いて帰りながら,ヒカルは,さっきの物静かな様子が嘘に思えるくらい,すごい勢いで,お母さんのことや海のことなど,あれこれと喋り続けた。
「でね,アザラシの華と言ってね,お母さんは,渦が作れるの!」
ヒカルが興奮で息を弾ませながら,言った。
「アザラシの華!?何,それ!?」
ホタルは,思わず吹き出した。この子は,自分と歳が離れているが,可愛らしくて,面白いと思った。
「その人の秘めた力だって。セルキーは,みんなあるって!人間にも,あるみたい!僕にも,きっと,何か力があるとお母さんが言ったもん!」
ヒカルは,興奮がまだ収まらずに喋り続けた。
いよいよヒカルの家の前まで来かかった。
「ここだよ!」
ヒカルがホタルに教えた。
「ここか…じゃ,またね。」
ホタルが笑顔で手を振って,ヒカルと別れた。
ホタルは,ヒカルと別れて,すぐに浜辺へ戻った。ヒカルの話を聞いて,父親を呼び出し,アザラシの華について訊いてみたいと思ったからだ。ホタルは,父親を呼び出すためにまた嘘泣きを始め,涙を海に落とした。
少しすると,父親が「またか…。」という顔をして,現れた。
「…どうした?また呼んだ?」
「お父さんのアザラシの華は,何?何かあるの?」
ホタルが単刀直入に訊いた。
「…なんで,そのことを…?」
ホタルが知っているはずがないと思い込んでいたことをいきなり口に出すから,父親が驚いた。
「もう一人のセルキーの親がいる子とたまたま出会って,話を聞いたの。」
ホタルが説明した。
「僕は…自慢にはならないし,どうでもいいけど…イルカみたいに高くジャンプできる。」
父親が言った。
「見せてくれる!?」
ホタルが目を輝かせて訊いた。
「いや,見せられない。」
父親はきっぱりと断った。
「なんで?あの子は,見せてもらったよ。」
ホタルが反論した。
「人間にアザラシの姿を見せてはいけないから…じゃ,そろそろ行くよ。」
父親が逃げるように,姿を消した。
ホタルは,大きなため息をついた。本当の父親に2回会ってみて,話しても,距離は少しも縮まっていないと内心で,声にならない声をあげ,密かに嘆いた。
しかし,ヒカルのことを思い出すと,笑顔になった。また,あの子に会いたいと思った。兄弟のいないホタルには,弟が出来たような気がして,嬉しかった。
0
あなたにおすすめの小説
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
私は、夫にも子供にも選ばれなかった。
その事実だけを抱え、離縁を突きつけ、家を出た。
そこで待っていたのは、最悪の出来事――
けれど同時に、人生の扉がひらく瞬間でもあった。
夫は愛人と共に好きに生きればいい。
今さら「本当に愛していたのは君だ」と言われても、裏切ったあなたを許すことはできない。
でも、子供たちの心だけは、必ず取り戻す。
妻にも母にもなれなかった伯爵夫人イネス。
過去を悔いながらも、愛を手に入れることを決めた彼女が辿り着いた先には――
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
冷遇妃マリアベルの監視報告書
Mag_Mel
ファンタジー
シルフィード王国に敗戦国ソラリから献上されたのは、"太陽の姫"と讃えられた妹ではなく、悪女と噂される姉、マリアベル。
第一王子の四番目の妃として迎えられた彼女は、王宮の片隅に追いやられ、嘲笑と陰湿な仕打ちに晒され続けていた。
そんな折、「王家の影」は第三王子セドリックよりマリアベルの監視業務を命じられる。年若い影が記す報告書には、ただ静かに耐え続け、死を待つかのように振舞うひとりの女の姿があった。
王位継承争いと策謀が渦巻く王宮で、冷遇妃の運命は思わぬ方向へと狂い始める――。
(小説家になろう様にも投稿しています)
彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中
桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。
やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。
「助けなんていらないわよ?」
は?
しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。
「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。
彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる