3 / 18
見えない星
しおりを挟む
日が昇り始める頃に,海保菜はようやく家に帰った。
「一体,どこに行っていたんだ!?心配したよ!」
尚弥は,珍しく怒っていた。朝目覚めても,海保菜がまだ帰って来ていないのは,初めてのことだった。
「…海。」
海保菜は,疲れ果てて,一言以上答える気力は,残っていなかった。
「何か,あった?」
尚弥は,妻の顔を見て,すぐに一晩泣いていたことがわかった。目元はひどく腫れていたし,表情もこの上ないくらい暗かった。
「うん,色々あった。」
海保菜は,答えた。
「何があったか,訊いていい?」
尚弥は,心配になって,追求してみた。
「ごめん。話せないの。」
海保菜は,項垂(うなだ)れて言った。
尚弥は,カチンと来た。
「考えていたけど、妊娠しているから,あまり海で過ごさない方がいいと思う、なるべく。胎児に影響が出るかもしれないよ。」
「は!?影響は出ても,悪影響なんか出るわけがないのに…
赤ちゃんが,私の体の中で,成長しているよ。私の体が元気じゃないと,赤ちゃんも元気に産まれない。そして私の健康を維持するためには海に行く必要があるの,知っているでしょう?」
海保菜は,またまた面食らった。
「でも、海に行っていたのに、しんどそうだよ。全く眠れていないような顔をしているよ。」
「それは,色々あって,眠れていないから…。」
海保菜は,説明した。
二階から保菜美の泣き声が,聞こえて来た。海保菜は,急いで二階へと向かった。娘をすぐに抱き上げようとした。
すると,ついて来た尚弥が,いきなり言った。
「触る前に手を洗った方がいいんじゃないの?」
「は!?」
海保菜は,また驚いた。
「だって、間接的に海に触ることになるよ。何か影響があるかも知れない。」
尚弥は,自分の考えていることを説明した。
「とうとう頭がおかしくなったの!?手を洗っても,同じだよ。今の姿以上に,人間にはなれない。人間じゃないし,なりたくない。そして,私の子供だよ。悪い影響なんて,出ない!海と触れても,死んだりゃしない!」
海保菜は,泣きそうになりながら,言った。
「おかしくない。慎重に考えているだけだ。子供を守らなきゃ。」
尚弥は,真剣な顔で言った。
「守る!?何から守るの!?私から!?母親だよ。二人目だって,今,私の体の中で成長しているの!それを,どうするつもりなの!?」
海保菜は,狼狽えた。
「それも,考えていた。だから、妊娠中は,なるべく海では,過ごさないようにしてほしい。出来るだけ人間の姿で,過ごしてほしい。あなたの体がしょっちゅう変わっていると、赤ちゃんにも影響が出るかもしれないから。」
尚弥は,続けた。
「何を言っているの!?影響が出ても,別にいいんじゃない!?人魚の子供が生まれたら,嫌なの!?なら、どうして私と結婚したの!?人間の姿でも,人間なんかじゃないし!扮装しているだけだし!この子が,お腹にいる時だって、自由に海に行ったりしていたのに,人間の形で産まれたでしょう?あなたの希望通りに。
どうして,このわけのわからないことを言ってくるの!? 人間じゃないし、我慢して海に行かないのは、無理!純血な人間の赤ちゃんがほしかったら、結婚する相手を間違えたよ。私の体から,純血な人間の子供が産まれるわけがない。この子だって、純血じゃない!今は人間の姿をしているけど、将来どうなるか,わからないよ!」
海保菜は,とうとう気持ちを抑えられなくなった。
「だから、それを防ぐために…。」
「防ぐ必要はない!悪いことじゃない!健康なら、人間でも人魚でもいい!私の事が,そんなに嫌い!?」
海保菜は,激しく泣き始めた。
「違う!嫌いじゃない。好き。大好き。」
尚弥が,慰めようとした。
「それは,嘘でしょう!もう,よくわかった。私を愛してなんかいないわ!」
海保菜は,娘を抱きかかえて,外へ逃げて行った。
娘を海辺に連れて行く誘惑には,やっぱり勝てなかった。海保菜は,娘と砂浜で遊びながら,夜になるのを待った。暗くなってから,母親を呼んでみた。すぐ来てくれた。
「急に,どうしたの!?何が起こるかわからないから,やめとこうってずっと言って来たじゃないの?!?どうして,急に気が変わった?」
母親の仁(ひと)海(み)は,海保菜の保菜美を海に入れてみたいという話を聞いて,すぐに様子の変化に気付いて,訊いた。訝しそうに娘を見た。
「知らなきゃ。もう待てない。もう耐えられない。」
「この間の村長との面談とは,何か関係ある?」
仁海は,尋ねてみた。
図星だったが,本当のことを話してはいけないと口止めされているから,誤魔化した。
「関係ない。小さい頃は,まだ体も弱いから危ないと思っていたけど,もう一歳半にもなったし,もう赤ちゃんじゃないし,いいかなと思って…。」
仁海は,少し迷って,娘をとめるべきかどうか考えたが、人魚の子供である以上、海に入れることによって,何か悪いことが起きるとは考えにくかった。止めないことにした。
「じゃ,やってみたら?」
海保菜は,すぐに頷いた。
娘の足を慎重に、水につけてみた。保奈美は,全然泣かなかった。海保菜は,これを見て、ためらわずに娘を母親に抱かせた。
「海保菜…もし…!?まあ、長い時間,耐えて待ったよね。」
仁海は,また娘をとめるべきかどうか考えたが,止めなかった。止める理由は,思い当たらなかった。
仁海は,孫を大事そうに,水に下半身が浸かるように,しっかりと抱いた。
保奈美は,目を大きく,丸く開けて,戸惑った顔で海保菜を見たけれど、泣かなかった。海保菜の必死な顔とは,大違いだった。
「海保菜、まだ幼いし、まだまだこれからじゃないの?」
仁海は,孫の体が少しも変わらないのを見て,言った。
海保菜は,静かに泣き始めた。
「どうして,泣いているの!?人間でも構わないと,自分で言っていたくせに!まだ一歳半で、これからなのに…まだまだこれからだし、変わるかもしれないよ。まだわからないよ。絶望するのは,まだ早いよ。」
仁海は,娘の意外な反応に驚いて、必死で慰めようとした。
「海保菜、今,人魚に変われるかどうかというのは、どうして,急にあなたを泣かせるぐらい重要なことになったのかな?教えて。話していいよ。」
仁海は,娘は話せないことがあるとわかりながら,尋ねてみた。
「…自分らしく,育てたかったから。」
海保菜は,涙目で言った。
「えー!?そんなこと,関係ないのに。今はまだ変わらなくても、たとえ一生このままでも,自分らしく育てられるよ。体だけじゃないよ。あなたの娘だよ。それは体がどうであれ、変わらないことだ,絶対に。肉親だ。」
仁海は,泣きじゃくる娘を励まそうとした。
「子供は,人間でもいい。でも、私は,人間になれない…。」
海保菜は,泣き続けた。
「なれないし,ならなくていい。関係ない。」
仁海は,冷静に対応し続けた。
「これなら、一生隠さないといけない…。」
海保菜は,小さい声で呟いた。
娘のこの一言を聞いて,仁海は,すぐに村長との面談の内容がわかった。合点した。
「海保菜,言っていることも,様子もおかしいから,心配。今日は,私と一緒に帰って,休んで。保奈美は,体が浸かっても大丈夫なら、私が面倒を見るよ。潜らずに、ここで見ているから,私に任せて。」
「いや、今は,海には帰れない。保奈美も,早くここから離れないといけない。」
海保菜は,暗い表情で言った。
「なんで?いいと言っているのに。」
仁海は,ますます心配になった。
「ここに連れて来るんじゃなかった。」
海保菜は,悔しそうに呟いた。
「なんで?嫌がっていないし、泣いていないし…たまには,私に任せて,休んでもいいんじゃないの?海の中でも,こんなに落ち着いているのだから。」
仁海は,娘をこのまま帰らせるのは,どうしても避けたかった。引き止めて,何とかしないと,娘との間に大きな壁が出来てしまうような気がしたからだ。娘の今悩んでいることは,ただ事ではないのは,今の様子を見れば,誰にでもわかる。一人にしてはいけないと思った。一人になったら,何をするのか,わからない。そう思った。
「いや、だめ。ここに来たら,この子と何らかの繋がりを感じるかなと思ったけど…。」
海保菜は首を横に振りながら,言った。
「この子は,あなたの娘だよ。まだ幼いし,これからだよ。これだけで決めつけるな。娘を否定することになるよ。」
仁海は,厳しい口ぶりで言った。
「嘘だった…人間でもいいとか…自分についた嘘だった!」
海保菜は,苦しそうに嘆いた。
これから一生,娘に嘘をついたり,偽ったりしないといけないと思うと,自暴自棄になりそうで,怖い。発狂しそうなくらい,嫌な話だ。
しかし,村長夫妻の言ったことは,ただの脅しではないことがわかる。逆らったら,実行するに違いない。村長夫妻の命令に逆らって,夜中に突然に姿を消した人の噂は,小さい頃から,度々耳にして来た。逆らったら,大変なのは,充分に想像できる。子供の命を守ろうと思ったら,絶対に背いてはならない。
「海保菜、このまま帰っちゃダメ。この状態では,帰らせない。話せないことは,話さなくていいから,今日は,一緒に帰ろう。」
仁海は,必死で娘を説得しようとした。
「尚弥が,このことを知ったら,激怒するから,言わないでくれる?」
海保菜は,保奈美を母親の腕から奪い返して,お願いした。
「もちろん言わないよ。言う機会もない…。」
仁海は,まだ一度しか婿に会ったことがない。結婚が決まった時に,一度,挨拶に来たきりだ。
「本当に,もう帰るの?海の中にいても、害はない,痛くないとせっかくわかったのに…私に任せていいのに…私と一緒にいても,大丈夫だよ。おばあちゃんだもの。馴染ませても,いいんじゃないの?海を恐れるような、人魚を恐れるような子に育てないでほしい、お願い。」
これまで,努めて平常心を保っていた仁海は,とうとう取り乱して来た。
海保菜は,とてもつらくて重い気持ちで、申し訳なく,悲しい目で,母親を見た。生まれて初めて,本気で死にたいと思った。死んでしまって,存在しなくなるより、今の気持ちの方がずっと恐ろしく感じた。
このままだと、母親を、 自分を恐れるような子供を育ててしまうことになる。そう思うと,耐えられない心苦しさに襲われる。
海保菜は,母の最後の言葉には,結局応答できないまま,別れてしまった。
海保菜は,海岸の一番東側の端まで,彷徨うように歩いた。家から一番遠く、保奈美が生まれた洞窟とは,反対側の方の海だった。一番日当たりが悪く、昼間でも人気のないところだった。洞窟がたくさんあり、どれも尖った岩でできていて,海に突き出ているため、人間にとって,とても危ないところだった。
しかし,海保菜は,人間ではない。
この場所には,人魚にしかわからない趣があるのだ。海がよくシケル場所で,波は高くて,荒い。波が海に突き出ている洞窟の巨大な岩に当たると,すぐに波の花になる。潮騒も,どの時間帯にも,よく聞こえる場所で,海の嵐が宿る人魚の心は,落ち着く。波が激しく打ち寄せ,岩に当たる音は,荒れた心には,子守唄に聞こえる。
感情を酷く取り乱した心境の海保菜を落ち着かせる場所は,ここしかないのだ。
海保菜は,チラッと夜空を見上げたが,星が一つもない,果てしなく真っ暗な空だった。
保奈美をしっかり抱いたまま,洞窟に入り,倒れるように横たわった。
「もう一回だけ。最後に,もう一回だけ。」と呟(つぶや)いて,変身して,本当の姿になった。
眠くなっていた保奈美は,すぐに海保菜の傍までやって来て,尻尾に頭をあてて,すやすやと寝た。
「お願いだから、忘れないで。もう二度と,ここに連れて来れないけど。もう二度と,この姿は,見せられないけど,どうか忘れないで。」
海保菜は,号泣しながら小さな声で囁(ささや)いた。
「ママを忘れないで,本当のママのことを。」
海保菜は,保奈美の小さな手を握って,呪いを唱えるように言った。
海保菜は,朝まで寝ずに泣き続けた。 しかし,彼女の泣き声は,どこにも届かずに,波の音にかき消され,暗闇に包まれて、海に飲み込まれて行くだけだった。
数日後,海保菜は,気を取り直して,両親のところに,自分の正体を子供に話さないつもりでいることを報告しに行った。理由は,尚弥のせいにすることにした。別に,尚弥に対して,何か恨みがあるわけではない。単に,それしか思いつかなかっただけだ。本当は,尚弥には,申し訳ないと思っている。しかし,彼も,人魚のことを子供には話さないでほしいと,ついこの間言っていたのは,事実だし,海保菜の家族と会うことはないから,直接責められることもない。
本当は,両親に嘘をつくのは,とても辛い。これまで,嘘をつかずにやってきたのに。裏切りたくないのに。しかし,逆らえない命令だから,仕方がない。
父親の拓(たく)海(み)は,カンカンに怒った。
「何ですって!?いよいよ,狂ってしまったのか!?自分は何か,忘れちゃったのか!?一番大事なことを、自分の全てを子供には,話さないつもりなのか!?それは,父親としては,遺憾だ。この娘に育てた覚えはない!恩知らずだ!」
父は,怒鳴った。寡黙な人なのに。
「自分の意思じゃない。本当に話せないの…。私が,自分の意思でこのことを選ぶと思っている?私だって,誇りというものは,あるのよ。」
海保菜は,必死で自分の意思ではないということを説明し,弁解した。
「なら,なんでだ!?村長夫妻と話した日から,あなたは,ずっと様子がおかしい…。」
海保菜は,一瞬黙り込んでから,
「関係ない。」
と嘘をついた。
「尚弥は,そう願っているし…。」
海保菜は,続けた。
「なんで,その人間の言いなりになる!?無視すればいい!」
拓海は,苦笑した。
「そういうわけには,いかないの…。」
海保菜は,そろそろ限界だった。
「とりあえず,あなたのこの決断には,がっかりしたし。自分の家族に,私たちに自分の子供を会わせないと? 一生,自分の本当の姿を子供には,見せないと?隠し通すと?あまりにも,あなたらしくないあほらしい決断だ。」
拓海の怒りは,収まらない。
「容易に決められたことじゃない。」
「本当に変わっちゃったね、あなた…まるで,人間になっちゃったみたいだ。もう,知らない!」
拓海は,力強く言い放った。
海保菜は,泣きたかったが,涙は出ない。涙が出ないのは,自分でも不思議だった。
海保菜は,久しぶりにずっと黙っている母親の方を見た。仁海は,涙を堪えて,俯(うつむ)いていた。
「お母さん,私の意思じゃない!お願いだから,わかって!」
海保菜は,やけになり,母親に訴えた。
「わかっているよ。」
仁海は,顔を上げて,海保菜と目を合わせた。
「わかっているよ。」
仁海が,もう一回力強く言った。
海保菜は,
「ごめんなさい。」
と深く頭を下げてから,静かに両親の自宅を後にした。
海岸に上がり,暗い海面を見渡した。空を見上げても,星の姿は,見えない。どこまでも真っ暗だ。
泣きたいが,涙は出ない。なんとか胸の痛みを晴らそうとして、海に向かって,闇雲に石を投げ始めた。でも、どんなに石を投げても,張り裂けそうな胸は,少しも楽にならない。
そこで、いつも首につけている,成人する時に母からもらった首飾りを外し,えいっと海に投げ込んだ。
「私は,これからどうしたらいいのだろう?」
海保菜は,お腹をさすりながら,呻(うめ)いた。
「この子を産みたくない。家のベッドで静かに眠っている子も育てたくない。自分として,育てることが許されないなら,偽りの人生を送るぐらいなら,むしろ今死んだ方が,ずっとマシだ。」
本気で,そう思った。
まだ朝までたっぷり時間はあったので,海竜の姿になって、何時間も海の中を,当てもなく泳ぎ彷徨った。ようやく、元の姿に戻り、浜辺の大きな洞窟の陰に隠れて,何もできずに,惨めな気持ちで海の暗い波を眺めていると,両親が突然海の中から現れた。
「海保菜、さっきは,悪かった。あの後,お母さんと話して,これは,あなたが自分の意思で決めたことじゃないことがわかった。あなたの意思でも、あの人間旦那の意思でもない。わかっている。」
父は,さっきの憤りが去り,落ち着いた表情で言った。
「私…。」
海保菜は,口を開けて何かを言おうとしたが,もう返す言葉が何も思い浮かばない。
「何も言わなくていいよ。わかっているから。」
今度,母が言った。
「またこれをつけて,前向きに,胸を張って生きなさい。自分を捨てるなよ。見失うなよ。
たとえ,子供たちに自分の姿は見せられなくても、何も本当のことは話せなくても、 辛抱強く待っていれば,いつかは必ず,道が開けるよ。
私たちの血の持つ力は,とんでもなく強い。その力を信じなさい。そして、自分の中にある力を信じなさい。」
仁海は,海保菜に海に投げ込んだ首飾りを返し,娘を励ました。
拓海も,強く頷いた。
「何があっても,辛くても,自分を捨てるな。誇りを捨てるな。そうすれば,乗り越えられる。」
「たとえ,私の顔は知らなくても、あなたの子供を愛するし、遠くから見守っているから。いつか会える日を楽しみに,いつまでも待っているから。あなたの事を見捨てたりしないから。味方だよ。私も,お父さんも。」
拓海は,また強く頷いた。
海保菜はジーンときて、両親を強く抱きしめた。
「ごめんなさい。」
海保菜が,申し訳なく言った。
「謝らなくていい。」
拓海は,首を横に振りながら言った。
「そして,絶望するのは,まだ早いよ。あなたの子供なら,私たちの血が静脈の中を流れている。その血の力を信じて。
そして,万が一,一生話せないことになっても,あなたの居場所は,ずっとここにあるからね。」
母が,優しい口調で言った。
海保菜は涙ぐみながら,頷いた。
「じゃ、そろそろ家に帰って、子供の面倒をちゃんと見てあげて。あなたがそばにいてあげるだけで、子供の心がこっちよりになるよ。言葉では言えなくても,あなたがそばにいると,生きている海の力が感じられる。だから、大丈夫。海を見せられなくても,海と無縁に育つことは,あるまい。」
父が言った。
海保菜は,頷いた。
「ありがとう。」
海保菜は,頬に涙をつけたまま,笑った。
「そう。あなたは,笑顔が似合うよ。」
母も笑みを浮かべて,言った。
海保菜は,両親と別れて,帰路についた。チラッと空を見上げると,果てしなく広い,黒い夜空に,星が一つだけ,キラキラと瞬いていた。
その僅かな光を道標にしっかりと人生を歩もうと心に決めた。
「一体,どこに行っていたんだ!?心配したよ!」
尚弥は,珍しく怒っていた。朝目覚めても,海保菜がまだ帰って来ていないのは,初めてのことだった。
「…海。」
海保菜は,疲れ果てて,一言以上答える気力は,残っていなかった。
「何か,あった?」
尚弥は,妻の顔を見て,すぐに一晩泣いていたことがわかった。目元はひどく腫れていたし,表情もこの上ないくらい暗かった。
「うん,色々あった。」
海保菜は,答えた。
「何があったか,訊いていい?」
尚弥は,心配になって,追求してみた。
「ごめん。話せないの。」
海保菜は,項垂(うなだ)れて言った。
尚弥は,カチンと来た。
「考えていたけど、妊娠しているから,あまり海で過ごさない方がいいと思う、なるべく。胎児に影響が出るかもしれないよ。」
「は!?影響は出ても,悪影響なんか出るわけがないのに…
赤ちゃんが,私の体の中で,成長しているよ。私の体が元気じゃないと,赤ちゃんも元気に産まれない。そして私の健康を維持するためには海に行く必要があるの,知っているでしょう?」
海保菜は,またまた面食らった。
「でも、海に行っていたのに、しんどそうだよ。全く眠れていないような顔をしているよ。」
「それは,色々あって,眠れていないから…。」
海保菜は,説明した。
二階から保菜美の泣き声が,聞こえて来た。海保菜は,急いで二階へと向かった。娘をすぐに抱き上げようとした。
すると,ついて来た尚弥が,いきなり言った。
「触る前に手を洗った方がいいんじゃないの?」
「は!?」
海保菜は,また驚いた。
「だって、間接的に海に触ることになるよ。何か影響があるかも知れない。」
尚弥は,自分の考えていることを説明した。
「とうとう頭がおかしくなったの!?手を洗っても,同じだよ。今の姿以上に,人間にはなれない。人間じゃないし,なりたくない。そして,私の子供だよ。悪い影響なんて,出ない!海と触れても,死んだりゃしない!」
海保菜は,泣きそうになりながら,言った。
「おかしくない。慎重に考えているだけだ。子供を守らなきゃ。」
尚弥は,真剣な顔で言った。
「守る!?何から守るの!?私から!?母親だよ。二人目だって,今,私の体の中で成長しているの!それを,どうするつもりなの!?」
海保菜は,狼狽えた。
「それも,考えていた。だから、妊娠中は,なるべく海では,過ごさないようにしてほしい。出来るだけ人間の姿で,過ごしてほしい。あなたの体がしょっちゅう変わっていると、赤ちゃんにも影響が出るかもしれないから。」
尚弥は,続けた。
「何を言っているの!?影響が出ても,別にいいんじゃない!?人魚の子供が生まれたら,嫌なの!?なら、どうして私と結婚したの!?人間の姿でも,人間なんかじゃないし!扮装しているだけだし!この子が,お腹にいる時だって、自由に海に行ったりしていたのに,人間の形で産まれたでしょう?あなたの希望通りに。
どうして,このわけのわからないことを言ってくるの!? 人間じゃないし、我慢して海に行かないのは、無理!純血な人間の赤ちゃんがほしかったら、結婚する相手を間違えたよ。私の体から,純血な人間の子供が産まれるわけがない。この子だって、純血じゃない!今は人間の姿をしているけど、将来どうなるか,わからないよ!」
海保菜は,とうとう気持ちを抑えられなくなった。
「だから、それを防ぐために…。」
「防ぐ必要はない!悪いことじゃない!健康なら、人間でも人魚でもいい!私の事が,そんなに嫌い!?」
海保菜は,激しく泣き始めた。
「違う!嫌いじゃない。好き。大好き。」
尚弥が,慰めようとした。
「それは,嘘でしょう!もう,よくわかった。私を愛してなんかいないわ!」
海保菜は,娘を抱きかかえて,外へ逃げて行った。
娘を海辺に連れて行く誘惑には,やっぱり勝てなかった。海保菜は,娘と砂浜で遊びながら,夜になるのを待った。暗くなってから,母親を呼んでみた。すぐ来てくれた。
「急に,どうしたの!?何が起こるかわからないから,やめとこうってずっと言って来たじゃないの?!?どうして,急に気が変わった?」
母親の仁(ひと)海(み)は,海保菜の保菜美を海に入れてみたいという話を聞いて,すぐに様子の変化に気付いて,訊いた。訝しそうに娘を見た。
「知らなきゃ。もう待てない。もう耐えられない。」
「この間の村長との面談とは,何か関係ある?」
仁海は,尋ねてみた。
図星だったが,本当のことを話してはいけないと口止めされているから,誤魔化した。
「関係ない。小さい頃は,まだ体も弱いから危ないと思っていたけど,もう一歳半にもなったし,もう赤ちゃんじゃないし,いいかなと思って…。」
仁海は,少し迷って,娘をとめるべきかどうか考えたが、人魚の子供である以上、海に入れることによって,何か悪いことが起きるとは考えにくかった。止めないことにした。
「じゃ,やってみたら?」
海保菜は,すぐに頷いた。
娘の足を慎重に、水につけてみた。保奈美は,全然泣かなかった。海保菜は,これを見て、ためらわずに娘を母親に抱かせた。
「海保菜…もし…!?まあ、長い時間,耐えて待ったよね。」
仁海は,また娘をとめるべきかどうか考えたが,止めなかった。止める理由は,思い当たらなかった。
仁海は,孫を大事そうに,水に下半身が浸かるように,しっかりと抱いた。
保奈美は,目を大きく,丸く開けて,戸惑った顔で海保菜を見たけれど、泣かなかった。海保菜の必死な顔とは,大違いだった。
「海保菜、まだ幼いし、まだまだこれからじゃないの?」
仁海は,孫の体が少しも変わらないのを見て,言った。
海保菜は,静かに泣き始めた。
「どうして,泣いているの!?人間でも構わないと,自分で言っていたくせに!まだ一歳半で、これからなのに…まだまだこれからだし、変わるかもしれないよ。まだわからないよ。絶望するのは,まだ早いよ。」
仁海は,娘の意外な反応に驚いて、必死で慰めようとした。
「海保菜、今,人魚に変われるかどうかというのは、どうして,急にあなたを泣かせるぐらい重要なことになったのかな?教えて。話していいよ。」
仁海は,娘は話せないことがあるとわかりながら,尋ねてみた。
「…自分らしく,育てたかったから。」
海保菜は,涙目で言った。
「えー!?そんなこと,関係ないのに。今はまだ変わらなくても、たとえ一生このままでも,自分らしく育てられるよ。体だけじゃないよ。あなたの娘だよ。それは体がどうであれ、変わらないことだ,絶対に。肉親だ。」
仁海は,泣きじゃくる娘を励まそうとした。
「子供は,人間でもいい。でも、私は,人間になれない…。」
海保菜は,泣き続けた。
「なれないし,ならなくていい。関係ない。」
仁海は,冷静に対応し続けた。
「これなら、一生隠さないといけない…。」
海保菜は,小さい声で呟いた。
娘のこの一言を聞いて,仁海は,すぐに村長との面談の内容がわかった。合点した。
「海保菜,言っていることも,様子もおかしいから,心配。今日は,私と一緒に帰って,休んで。保奈美は,体が浸かっても大丈夫なら、私が面倒を見るよ。潜らずに、ここで見ているから,私に任せて。」
「いや、今は,海には帰れない。保奈美も,早くここから離れないといけない。」
海保菜は,暗い表情で言った。
「なんで?いいと言っているのに。」
仁海は,ますます心配になった。
「ここに連れて来るんじゃなかった。」
海保菜は,悔しそうに呟いた。
「なんで?嫌がっていないし、泣いていないし…たまには,私に任せて,休んでもいいんじゃないの?海の中でも,こんなに落ち着いているのだから。」
仁海は,娘をこのまま帰らせるのは,どうしても避けたかった。引き止めて,何とかしないと,娘との間に大きな壁が出来てしまうような気がしたからだ。娘の今悩んでいることは,ただ事ではないのは,今の様子を見れば,誰にでもわかる。一人にしてはいけないと思った。一人になったら,何をするのか,わからない。そう思った。
「いや、だめ。ここに来たら,この子と何らかの繋がりを感じるかなと思ったけど…。」
海保菜は首を横に振りながら,言った。
「この子は,あなたの娘だよ。まだ幼いし,これからだよ。これだけで決めつけるな。娘を否定することになるよ。」
仁海は,厳しい口ぶりで言った。
「嘘だった…人間でもいいとか…自分についた嘘だった!」
海保菜は,苦しそうに嘆いた。
これから一生,娘に嘘をついたり,偽ったりしないといけないと思うと,自暴自棄になりそうで,怖い。発狂しそうなくらい,嫌な話だ。
しかし,村長夫妻の言ったことは,ただの脅しではないことがわかる。逆らったら,実行するに違いない。村長夫妻の命令に逆らって,夜中に突然に姿を消した人の噂は,小さい頃から,度々耳にして来た。逆らったら,大変なのは,充分に想像できる。子供の命を守ろうと思ったら,絶対に背いてはならない。
「海保菜、このまま帰っちゃダメ。この状態では,帰らせない。話せないことは,話さなくていいから,今日は,一緒に帰ろう。」
仁海は,必死で娘を説得しようとした。
「尚弥が,このことを知ったら,激怒するから,言わないでくれる?」
海保菜は,保奈美を母親の腕から奪い返して,お願いした。
「もちろん言わないよ。言う機会もない…。」
仁海は,まだ一度しか婿に会ったことがない。結婚が決まった時に,一度,挨拶に来たきりだ。
「本当に,もう帰るの?海の中にいても、害はない,痛くないとせっかくわかったのに…私に任せていいのに…私と一緒にいても,大丈夫だよ。おばあちゃんだもの。馴染ませても,いいんじゃないの?海を恐れるような、人魚を恐れるような子に育てないでほしい、お願い。」
これまで,努めて平常心を保っていた仁海は,とうとう取り乱して来た。
海保菜は,とてもつらくて重い気持ちで、申し訳なく,悲しい目で,母親を見た。生まれて初めて,本気で死にたいと思った。死んでしまって,存在しなくなるより、今の気持ちの方がずっと恐ろしく感じた。
このままだと、母親を、 自分を恐れるような子供を育ててしまうことになる。そう思うと,耐えられない心苦しさに襲われる。
海保菜は,母の最後の言葉には,結局応答できないまま,別れてしまった。
海保菜は,海岸の一番東側の端まで,彷徨うように歩いた。家から一番遠く、保奈美が生まれた洞窟とは,反対側の方の海だった。一番日当たりが悪く、昼間でも人気のないところだった。洞窟がたくさんあり、どれも尖った岩でできていて,海に突き出ているため、人間にとって,とても危ないところだった。
しかし,海保菜は,人間ではない。
この場所には,人魚にしかわからない趣があるのだ。海がよくシケル場所で,波は高くて,荒い。波が海に突き出ている洞窟の巨大な岩に当たると,すぐに波の花になる。潮騒も,どの時間帯にも,よく聞こえる場所で,海の嵐が宿る人魚の心は,落ち着く。波が激しく打ち寄せ,岩に当たる音は,荒れた心には,子守唄に聞こえる。
感情を酷く取り乱した心境の海保菜を落ち着かせる場所は,ここしかないのだ。
海保菜は,チラッと夜空を見上げたが,星が一つもない,果てしなく真っ暗な空だった。
保奈美をしっかり抱いたまま,洞窟に入り,倒れるように横たわった。
「もう一回だけ。最後に,もう一回だけ。」と呟(つぶや)いて,変身して,本当の姿になった。
眠くなっていた保奈美は,すぐに海保菜の傍までやって来て,尻尾に頭をあてて,すやすやと寝た。
「お願いだから、忘れないで。もう二度と,ここに連れて来れないけど。もう二度と,この姿は,見せられないけど,どうか忘れないで。」
海保菜は,号泣しながら小さな声で囁(ささや)いた。
「ママを忘れないで,本当のママのことを。」
海保菜は,保奈美の小さな手を握って,呪いを唱えるように言った。
海保菜は,朝まで寝ずに泣き続けた。 しかし,彼女の泣き声は,どこにも届かずに,波の音にかき消され,暗闇に包まれて、海に飲み込まれて行くだけだった。
数日後,海保菜は,気を取り直して,両親のところに,自分の正体を子供に話さないつもりでいることを報告しに行った。理由は,尚弥のせいにすることにした。別に,尚弥に対して,何か恨みがあるわけではない。単に,それしか思いつかなかっただけだ。本当は,尚弥には,申し訳ないと思っている。しかし,彼も,人魚のことを子供には話さないでほしいと,ついこの間言っていたのは,事実だし,海保菜の家族と会うことはないから,直接責められることもない。
本当は,両親に嘘をつくのは,とても辛い。これまで,嘘をつかずにやってきたのに。裏切りたくないのに。しかし,逆らえない命令だから,仕方がない。
父親の拓(たく)海(み)は,カンカンに怒った。
「何ですって!?いよいよ,狂ってしまったのか!?自分は何か,忘れちゃったのか!?一番大事なことを、自分の全てを子供には,話さないつもりなのか!?それは,父親としては,遺憾だ。この娘に育てた覚えはない!恩知らずだ!」
父は,怒鳴った。寡黙な人なのに。
「自分の意思じゃない。本当に話せないの…。私が,自分の意思でこのことを選ぶと思っている?私だって,誇りというものは,あるのよ。」
海保菜は,必死で自分の意思ではないということを説明し,弁解した。
「なら,なんでだ!?村長夫妻と話した日から,あなたは,ずっと様子がおかしい…。」
海保菜は,一瞬黙り込んでから,
「関係ない。」
と嘘をついた。
「尚弥は,そう願っているし…。」
海保菜は,続けた。
「なんで,その人間の言いなりになる!?無視すればいい!」
拓海は,苦笑した。
「そういうわけには,いかないの…。」
海保菜は,そろそろ限界だった。
「とりあえず,あなたのこの決断には,がっかりしたし。自分の家族に,私たちに自分の子供を会わせないと? 一生,自分の本当の姿を子供には,見せないと?隠し通すと?あまりにも,あなたらしくないあほらしい決断だ。」
拓海の怒りは,収まらない。
「容易に決められたことじゃない。」
「本当に変わっちゃったね、あなた…まるで,人間になっちゃったみたいだ。もう,知らない!」
拓海は,力強く言い放った。
海保菜は,泣きたかったが,涙は出ない。涙が出ないのは,自分でも不思議だった。
海保菜は,久しぶりにずっと黙っている母親の方を見た。仁海は,涙を堪えて,俯(うつむ)いていた。
「お母さん,私の意思じゃない!お願いだから,わかって!」
海保菜は,やけになり,母親に訴えた。
「わかっているよ。」
仁海は,顔を上げて,海保菜と目を合わせた。
「わかっているよ。」
仁海が,もう一回力強く言った。
海保菜は,
「ごめんなさい。」
と深く頭を下げてから,静かに両親の自宅を後にした。
海岸に上がり,暗い海面を見渡した。空を見上げても,星の姿は,見えない。どこまでも真っ暗だ。
泣きたいが,涙は出ない。なんとか胸の痛みを晴らそうとして、海に向かって,闇雲に石を投げ始めた。でも、どんなに石を投げても,張り裂けそうな胸は,少しも楽にならない。
そこで、いつも首につけている,成人する時に母からもらった首飾りを外し,えいっと海に投げ込んだ。
「私は,これからどうしたらいいのだろう?」
海保菜は,お腹をさすりながら,呻(うめ)いた。
「この子を産みたくない。家のベッドで静かに眠っている子も育てたくない。自分として,育てることが許されないなら,偽りの人生を送るぐらいなら,むしろ今死んだ方が,ずっとマシだ。」
本気で,そう思った。
まだ朝までたっぷり時間はあったので,海竜の姿になって、何時間も海の中を,当てもなく泳ぎ彷徨った。ようやく、元の姿に戻り、浜辺の大きな洞窟の陰に隠れて,何もできずに,惨めな気持ちで海の暗い波を眺めていると,両親が突然海の中から現れた。
「海保菜、さっきは,悪かった。あの後,お母さんと話して,これは,あなたが自分の意思で決めたことじゃないことがわかった。あなたの意思でも、あの人間旦那の意思でもない。わかっている。」
父は,さっきの憤りが去り,落ち着いた表情で言った。
「私…。」
海保菜は,口を開けて何かを言おうとしたが,もう返す言葉が何も思い浮かばない。
「何も言わなくていいよ。わかっているから。」
今度,母が言った。
「またこれをつけて,前向きに,胸を張って生きなさい。自分を捨てるなよ。見失うなよ。
たとえ,子供たちに自分の姿は見せられなくても、何も本当のことは話せなくても、 辛抱強く待っていれば,いつかは必ず,道が開けるよ。
私たちの血の持つ力は,とんでもなく強い。その力を信じなさい。そして、自分の中にある力を信じなさい。」
仁海は,海保菜に海に投げ込んだ首飾りを返し,娘を励ました。
拓海も,強く頷いた。
「何があっても,辛くても,自分を捨てるな。誇りを捨てるな。そうすれば,乗り越えられる。」
「たとえ,私の顔は知らなくても、あなたの子供を愛するし、遠くから見守っているから。いつか会える日を楽しみに,いつまでも待っているから。あなたの事を見捨てたりしないから。味方だよ。私も,お父さんも。」
拓海は,また強く頷いた。
海保菜はジーンときて、両親を強く抱きしめた。
「ごめんなさい。」
海保菜が,申し訳なく言った。
「謝らなくていい。」
拓海は,首を横に振りながら言った。
「そして,絶望するのは,まだ早いよ。あなたの子供なら,私たちの血が静脈の中を流れている。その血の力を信じて。
そして,万が一,一生話せないことになっても,あなたの居場所は,ずっとここにあるからね。」
母が,優しい口調で言った。
海保菜は涙ぐみながら,頷いた。
「じゃ、そろそろ家に帰って、子供の面倒をちゃんと見てあげて。あなたがそばにいてあげるだけで、子供の心がこっちよりになるよ。言葉では言えなくても,あなたがそばにいると,生きている海の力が感じられる。だから、大丈夫。海を見せられなくても,海と無縁に育つことは,あるまい。」
父が言った。
海保菜は,頷いた。
「ありがとう。」
海保菜は,頬に涙をつけたまま,笑った。
「そう。あなたは,笑顔が似合うよ。」
母も笑みを浮かべて,言った。
海保菜は,両親と別れて,帰路についた。チラッと空を見上げると,果てしなく広い,黒い夜空に,星が一つだけ,キラキラと瞬いていた。
その僅かな光を道標にしっかりと人生を歩もうと心に決めた。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
課長と私のほのぼの婚
藤谷 郁
恋愛
冬美が結婚したのは十も離れた年上男性。
舘林陽一35歳。
仕事はできるが、ちょっと変わった人と噂される彼は他部署の課長さん。
ひょんなことから交際が始まり、5か月後の秋、気がつけば夫婦になっていた。
※他サイトにも投稿。
※一部写真は写真ACさまよりお借りしています。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる