美形×平凡 短編BL小説集2

鯛田オロロ

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夢の中※(サラリーマン・現代)

夢の中※

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椅子の背もたれに寄りかかり、両手を組んで上げ、思い切り伸びをした。椅子が軋むと同時に肩の関節がばきばきと音を立てた。

向かいの席の三年後輩の無駄に顔のいい安藤がパソコンのモニターを凝視していた目をこちらに向けた。ああ、今日も無駄に顔がいい。俺は安藤が入社してきたときの、とっつきにくいほど整った顔に屈託ない子供のような笑顔が浮かぶのをみたときから、恐らく片想いをしている。

「詠さん、音やばくないっすか?」

安藤は声もいい。詠さん、と下の名前を呼ばれてどきりとする。社内に高橋が数人いるものだから、高橋姓を持つ人間は下の名前で呼ばれていて深い意味はまったくない。そもそも入社初日に自ら俺のことは、詠一さんとか詠さんとか呼べばいいと言った結果なのだ。

しかし、人が少ないから私語がやたらと響く感じがした。とは言っても、咎める上司もとっくに帰路についている。

「そうそう、最近肩がな。三十肩かな?」

「そんなのあんすか?」

「知らん」

「うわ、信じそうになったじゃないですか」

しゃべるとアホっぽいところもいい。

「チョロいな、お前」

俺が鼻で笑うと唇を軽く尖らせ非難めいた顔をした。そんな顔もいい。

「ひど」

「はは。でも、クリスマスに残業ってなあ……」

金曜日のクリスマスイブの八時を周り、上司も同僚もほとんどが退社している。フロアに残っているのはもうほんの数人だ。

実家を出て以来、毎年クリスマスはテンションが上がらない。一緒に過ごす大切な相手が俺にはいない。友人だって家族もいれば、もっと仲の良い友人、彼女がいるわけで、そこに割って入りたいとは思わない。

ゲイであることを誰にもカミングアウトしておらず、誰にも打ち明けずに死んでいく予定の俺にとっては、クリスマスなんて恋人の有無を無遠慮に確認され寂しさを増幅させる、うっとうしいことこの上ないイベントだ。

まあ、俺が誰かの恋愛対象になるなんてことはこれまでもこれからもないのだ。並以下の容姿にくわえて、セックスアピールに乏しいということは重々承知している。それならせめて、クリスマスに対して無感情でいられるようになりたいものだ。

それでもクリスマスに残業していれば、祝日に働かされているような変な感慨があった。

「クリスマスじゃなくて、イブですよ、イブ」

安藤が、どこか勝ち誇った顔で今日がクリスマスイブであることを強調した。

「細けえことはいいんだよ」

「大雑把っすね」

俺はふんと笑うと、エクセルを上書き保存した。もう今日はここまででいい。上司に進捗と退勤のメッセージを入れておいた。

「お前は帰らなくていいの?」

「まあ、恋人もいないしクリスマスなんて関係ないっすよ」

へえ、今、恋人いないんだ。意味もないのに喜んじゃった。

去年面倒そうにクリスマスのデートプラン考えたり、クリスマスにネックレスをプレゼントしていたのを覚えている。そんなに面倒なら別れろよと思ったし、実際に言いもした。顔も知らない安藤の恋人に同情もした。

同時に、激しく嫉妬もした。だって、安藤から愛を囁かれて一緒の時を過ごし、当然セックスもするんだろう。


しかし、クリスマスのすぐあと、大きくため息をつきながら彼女と別れたと安藤から宣言された。別れたのを知って女子社員は色めき立ったが、その中からも彼女になったものはいなかったようだ。

別れた理由を聞けば、面倒くさくなっちゃって、だった。

万に一つもあり得ないが安藤と俺がもし付き合うことになったらこんなふうにめんどくさがられるのかと思うと、やはりいい男は観賞用に留めるのが吉だなとしみじみ思う。断じて、すっぱい葡萄ではない。

「ご両親がご馳走とケーキ用意してお待ちになってるんじゃねえの?」

安藤は実家で両親と暮らしているから今日も家族が待っているのではとなんとはなしに聞いた。

「ないない。今日は二人でディナーいくからお前も外で食ってこいって言われましたよ」

「ラブラブじゃん」

二人でディナーなんてうちの両親では考えられない。

「まあ。でも、親がラブラブって見てて微妙っすよ」

「仲悪いよりいいじゃん」

「そりゃまあ」

ふと、これはチャンスかもしれないと思い立つ。緊張を悟られないようにつとめていつもの調子を心がけて提案する。

「じゃあ、俺と飯行かね? 奢ってやるから」

「えっ、いいんすか!? ちょっと待ってください、きりいいとこまでやるんで!」

安藤がぱっと顔を輝かせた。奢るって言葉は効果絶大だ。

「なんか手伝える?」

「いや、大丈夫っす!」

先程まで緩慢だった安藤のキーボードを叩く速度がぐんと上がった。俺は、パソコンの電源を落とすと先にロッカーへと向かった。



会社を出たところで、白い息を吐きながら安藤を待つ。そこに、小走りでやってきたは安藤は、待ち合わせの場所まで来るとかっと目を見開いた。そして、俺の隣に立つ男を指さして叫んだ。

「なんで塚田さんがいるんすか!?」

「俺がいたっていいだろ」

俺の隣に立つ男、塚田がむっとするポーズを取る。これがポーズなのは分かりきっているので、問題ない。塚田は安藤を後輩として可愛がっているのだ。

塚田は俺の同期で安藤とも仕事上の絡みがある。それに、俺、安藤、塚田、それに他の同僚が入ったり入らなかったりして、何度も飲みに行ってる。塚田を誘うのはむしろ当然といった感がある。

「塚田は俺が誘ったの。二人より三人のがいいだろ」

安藤が仕事を片付けているときに、ロッカーに先に行くとたまたま塚田がいた。なんだかクリスマスに好きな男と二人きりなんて耐えられないと急に思い、塚田を誘うことにした。今はフリーの塚田も誘いにひょいひょい乗ってきた。

「ええー、塚田さん飲むとウザいじゃないっすか!」

「たまにはいいだろ、お前ら仲良いし」

ばっと二人が示し合わせたように俺を見た。

「仲良くないっすよ!」

「そうだそうだ! 同期がうざいって後輩に言われてんだから否定しろよ、詠一!」

「ちょっと、詠さんのこと呼び捨てしないでくださいよ!」

「同期なんだからいいだろ!」

うん、塚田を呼んで正解だ。間違っても、安藤とクリスマスデートしている、なんて虚しい妄想をしないで済む。



「じゃあな」

「おう、またな」

一時間ほど飲み食いをして塚田と別れた。違う路線の塚田の背中が駅舎の中へ消えていくのを見送る。俺はもう少し三人で飲んでいたかったのだが、安藤が早く店を出たがったのだ。

二人切りになってしまうと安藤が拗ねたように言った。

「もう、俺、今日、詠さんと二人だと思ったのに」

「楽しそうにやってたじゃん」

二人の喧嘩漫才のようなやりとりを俺はゲラゲラ笑いながら眺めていた。俺は楽しかったのだが、安藤は違ったらしい。

「飲み直しましょうよ」

「ん……俺、もう金ねえよ」

それにすでに結構酔っ払っている。

「それじゃ、詠さんち、行っちゃだめ?」

安藤が上目遣いで見つめてくる。実際身長は変わらないのだが、やっぱりいい男だな。上目遣いは可愛くて反則だ。

だめだめ、歯止めがきかなくなったらどうする。なのに気づけば首を縦にふってしまっていた。どきりと胸が高鳴り、股間に血が集まりそうになる。あわてて、気を散らした。欲情しているのに気づかれたら一巻の終わりだ。

「やった!」

無邪気な笑顔を見ると、まあいいか、と思えてしまう。それに、男同士、俺が襲わなければ間違いなんて起きようがないのだ。そもそも俺は挿れられたい方で、相手はイケメンのヘテロセクシャルで、この俺に欲情する可能性なんてゼロだ。安藤の身の安全は保障されている。

街にはイルミネーション。街路樹に白と青の発光ダイオードが巻きつけられている。夜に見ると、冬の冴え凍る空によく映える。

「きれいっすね」

イルミネーション、隣には安藤。光に照らされた思わず見とれてしまう美しい横顔。

街の雑踏のなか、本物のカップルたちはぴったりと寄り添ってまるで街には自分たちしかいないかのようにうっとりと歩いている。

クリスマスのたびに、俺はかなわない片想いの美しい思い出の一片として、この光景を思い出すかもしれない。



スパークリングワインと、発泡酒ではなく奮発してビールを買い込み、安藤を自宅に連れてきた。安藤が来るのは初めてではないが、塚田や他の数人と安藤、というように、これまで安藤一人を連れてきたことはなかった。

「お邪魔しまーす」

安藤をクッションに座らせ暖房をつけ、グラスを用意した。

安藤が俺のグラスに酒を注いでくれた。

「悪い」

「今日は飲み明かしましょ」

「はは、そうだな」

そう自分で言っておきながら、緊張をごまかすために、いい歳してハイペースで酒を飲んでしまった。普段飲まないスパークリングワインのアルコール度数にやられてしまった感がある。

座っていられなくなって、ごろんとラグの上に横になる。ふわふわと脳みそが浮遊する感じがして、体が重力で床に吸い込まれるような感覚がした。

俺はいつのまに眠りに落ちてしまったようだった。



「あれ、詠さん?」

安藤が俺の顔を覗き込んでいる。楽しかったなあクリスマス。すぐに夢に反映されるんだな。あ、クリスマスイブか。

優しい目だなあ。好きだなあ。手を伸ばし頬に触れた。安藤はびっくりしたような顔をしたが、手を振り払われることはなかった。面白くてぺたぺた触る。

「はは、すげえ」

触ったことはないが、本物もこんな頬の感触だろうか。

「……詠さん?」

「おまえさ、もう、おんなのこと、つきあうなよ」

「え?」

「おれと、まいとし、クリスマスすればいいじゃん」

えい、と頬をつんつんとつつき、ふにふにとつまんだ。柔らかい。安藤はやめろと言ってこない。夢でもいなければ到底できないことだ。

「……詠さん、毎年、俺とクリスマスしたいんすか?」

「うん」

「……詠さんは、俺が、好き?」

「うん、だいすき」

夢だから、つるんと大好きが出た。

「……それって、告白?」 

「うん」

夢だと素直に言える。現実では失うものしかなくて言うつもりもないことが。

「キスしても、いい?」

安藤になら何をされたっていい。夢なのに変なことを聞く。

「うん」

安藤の顔が近づいてきて、俺の顔の上に影ができる。

すごく近くに格好いい顔があるのがなんだかおかしくて笑っていると、熱くすべらかなものに口を塞がれた。

続いて熱くなめらかなものが口内に入ってくる

なめらかなものが、俺の舌に絡んだ。

それは、安藤の舌で、俺は安藤といつのまにかキスをしている夢を見ていた。

夢なのに息が苦しくて、息を止めていたことに気づいて、鼻があるじゃないかと思いだして、鼻から呼吸を再開すると夢なのに楽になった。

これまで誰ともキスをしたこともないのに随分ともっともらしい粘膜の感触のように感じる。熱い舌が俺の舌を追いかける。

ふわふわと気持ちが良くて、全身が熱くなる。キスが終わると、耳元で安藤の声がした。

「詠さん、キスやじゃない?」

吐息が耳にかかり、びくりと体が震えた。

「やじゃない、ずっとあんどうと、キスしたかったもん」

ずっとその唇に触れてみたかった。無理なことは知っていた。でも夢では願いが叶う。

そう言うと安藤はもう一度キスをしてくれた 。

今度は舌を吸われ、甘噛される。くちゅくちゅと音までする。

「んっ、ふっ……んっ」

ワイシャツとインナーの裾がスラックスから引きずり出され、そこから手が入ってきた。

「あん、ど……あ、ん……っ」

肌を熱い手がまさぐる。脇腹を大きな手が撫でる。

「くすぐったい、んっ……」

「くすぐったいだけ?」

「きも、ち……あうっ」

首筋に安藤が顔を埋めた。熱い唇が首を優しく食む。じわじわと快感がそこから波のように走った。

「あうっ、あ、あんど……」

俺の肌を優しく撫でる安藤の手が上へとのぼり、俺の平らな胸を優しく揉んだ。手の平がときどき乳首に触れる。胸全体と乳首からじんじんと体の奥まで根が伸びるように快感が広がっていく。乳首には自分でも自慰のときに触るが夢の中の安藤に触られるほうが段違いに気持ちがいい。

男の胸なんて面白くないだろうに、夢の中の安藤は優しく揉んで時折きゅっきゅっと乳首をつまみ、指先で優しくはじき、指の腹で軽く潰した。

首筋に軽く歯があてられて、熱い吐息が当たる。

「んっ、や、うっ……ああ、あ……」

「詠さん、おっぱい気持ちいいの?」

「おっぱいじゃなくて、胸っ……あっ……」

おっぱいという響きが恥ずかしい。夢の中で恥ずかしがることないのに。くすくすと安藤が笑う。

「胸、気持ちいい?」

「うん」

「じゃあもっと触ってあげる」

今度はキスしながら、胸を触られる。

舌と舌を絡ませて、乳首をつままれると、徐々に下腹部に熱がたまっていく。腹の奥と、股間が熱くなる。スラックスの下で窮屈になったそれを、無意識に安藤に擦り付けた。夢に意識も無意識もあるのかは置いておいて。

「詠さん、エロすぎ」

安藤も俺に下腹部を押し付ける。安藤のそこも固くなっているのが嬉しい。安藤は固くなったそれで、俺の固くなったそれを捏ねるように腰を使ってきた。ぞくぞくと体が喜びに震えた。

キスをしながら、胸を愛撫されて、性器を互いの性器で刺激される。もう全身がびくびくと震えていた。非常にエロい夢にくらくらする。

「はっ、あっ、待って、でちゃう、でちゃうっ!!」

「一回出しちゃいなよ」

「あっ、あっ!!」

ぐりぐりと腰を押し付けられて、きゅっきゅと乳首をつままれると、もうどうしようもなく気持ちよくて、そのまま果ててしまう。キスしたまま、どくんどくんと射精してしまった。

「は、あ……あっ……」

そのあまりにリアルな感覚にばつが悪くなる。

「スラックス、汚れちゃったね。脱がないとね」

かちゃかちゃと音がして、ジッパーを下ろす音がする。

「詠さん、腰あげて」

「え?」

「汚れちゃったから、脱がないと」

そう言われて、生ぬるいものにまみれた、射精したばかりで重たい下半身をどうにか持ち上げる。

出したばかりのそこに布がこすれると、敏感になったそこには過度な刺激だった。

パンツとスラックスをすっかり脱がされた下半身にひんやりした空気を感じる。

安藤が俺のワイシャツのボタンを外していくのをなんとはなしに見ていた。

下着のシャツを目一杯たくしあげられる。

「あんどう? 何してんの?」

これでは裸も同然だ。隠さなければいけないところが隠せていない。夢でも恥ずかしいので脚をとじて、かろうじて股間だけは隠そうとする。

「もっと気持ちよくしてあげる」

そう言うなり、安藤は俺の乳首を口に含んだ。熱い粘膜に乳首が包まれる。ちゅっと吸われ、甘く噛まれ、舌で転がされる。

「はうっ、あっ……あっ……んっ!」

たまらず声をあげる。

最近、仕事が忙しくて自慰をしていなかったからこんな夢を見るのだろうか。

安藤が俺が閉じた足の間に割って入る。固い下半身を押し付けられると、ふにゃふにゃの俺の性器も再び固さを取り戻した。

今度は、優しく俺の股間を安藤の手が揉みしだく。竿や玉をやわやわと揉み込まれ、先端のくびれをくりくりと弄られ、先走りの滲む穴を優しく撫でられ、滲んだ先走りを裏筋に塗りたくられた。

たまらず、安藤の頭に触れるとくしゃりと柔らかい髪が気持ちよかった。ずっと触ってみたかった。夢だから好きに触っていいんだ。

「詠さん、俺、詠さんの中に挿れたい」

そういうと、安藤は身を起こして俺の尻の穴にそっと触れた。びくりと体が一瞬こわばる。

現実では決して起こらないことが起こる。やっぱり夢だな。ご都合展開だ。これまでも安藤とセックスする夢を見たことがあるが、どれも肝心なところはぼやけていて、ここまでリアルな夢は初めて見る。

「……うん、挿れて」

「詠さん、ちょっと待っててね」

「うん」

安藤が鞄の中から真新しいチューブとコンドームを出した。

チューブを開けて、中の軟膏を指に取る。それが俺の尻穴に塗りつけられた。ひやっとして、体がこわばる。

「大丈夫だよ、すぐあったかくなるから」

「んっ……」

いつも安藤を思いながらアナニーしてきた。軟膏の感覚も知っている。

いつも見ていた安藤の指。それが入口を解している。まるで、俺のそこが壊れ物みたいに、くにくにと優しく開くのを待ってくれている。それが嬉しくてもどかしい。

「んっ、あん、ど……んんっ……指、挿れて」

「大丈夫? ちゃんと解さないと」

「変なの……おれ、いつも、安藤にしてほしくて自分でしてるから大丈夫なのに」

けらけら笑ってしまう。夢のシナリオは俺の脳みそが生成しているはずなのに、持ち主の想像を超えてくる。こんな経験のないことをリアルに感じられるんだから不思議だ。

「俺と、したかったの?」

「うん、あんどうとしたかった」

「俺もだよ、俺も詠さんとずっとしたかった」

すごいな。やはりご都合展開だ。随分、都合のいい台詞を言ってくれる。

安藤の指がゆっくりと中に入っくる。それだけでもう気持ちよくて、腰がくねる。

「んっ、きもちいいっ……あんど、あっ、そこ」

「ここがいいの?」

「うん、好き、そこ、ぐりぐりして、あっ、んんんっ、あっ」

安藤が中の、もうすっかり期待に膨れたしこりを優しく捏ねてくれる。

「ここが、前立腺? 」

「そ、う、あっ、あっ!」

安藤の指一本で信じられないほどの快感だ。夢の中でドライオーガズムを繰り返している。目の前がちかちかして腹がきゅんきゅんとして、中がうねり、安藤の指を食い締める。

指とローションが足され、さらにとろとろにされる。

「詠さん、気持ちいい?」

「あんど、あっ、きもちいい、あんっ、やっ……! あうっ! 挿れて、も、あっ、あっ!」

「うん、挿れるね」

俺の足を開かせて、コンドームを手早くつけた安藤の先端が入口に触れる。

「あうっ……うっ……」

夢なのに、苦しいくらいに大きい。みしみしと尻の穴が広がっていく。一際太い先端がそこを抜けると、安藤はゆっくりと最奥まで俺を貫いた。

俺が、持ってるディルドより太くて、長い。

広げられ、奥をぐいと押され、粘膜をみっちりと安藤が埋めている。それが何よりも幸せでたまらない。

「うっ、詠さん、大丈夫?」

「大、丈夫、はっ、あうっ……きもち、いい、あんど、きもち、いい」

「詠さんのなか、気持ち良すぎ……」

安藤が小さく腰を揺すった。

「くふっ、うっ、あっ、あっ……!」

奥をゆすられて、腰が反る。

「んっ……だめだ、良すぎる、動くね、詠さん」

安藤がゆっくりと腰を前後に使う。次第に速度が早められ、たまらず安藤を引き寄せしがみついた。安藤の少し伸びたひげがちくりと俺の肌を刺す。粗い息が、耳元で聞こえる。汗ばんだ肌はしっとりとして触れているだけで快感がさらに引出される。

「はうっ、あっ、ああっ……!! んぐ、うっ!」

もう、俺は馬鹿みたいにいきっぱなしだった。安藤に揺さぶられて何度も休みなく絶頂を繰り返している。頭も体ももう馬鹿になっていた。肉を打つ音と、ぐちゅぐちゅと恥ずかしい音と俺の喘ぎ声がして、安藤の粗い息遣いがそれに交じる。

「すき、あ、んどう、すき、だいすき……!! ひっ、あっ、あっ……! ああっ!」

しがみつきながら安藤に馬鹿みたいに大好きを繰り返す。

「うっ……俺も、詠さん、愛してる」

それに安藤が答えてくれて、どちらともなくキスをした。キスをすると、また絶頂が深くなる。

安藤が一際深く打ち付けて、俺の奥に押し付ける。

「ふっ……」

安藤が達したのが分かった。しばらくキスしながら、繋がっていた。俺が軽くいきっぱなしでいると、安藤のものが再び固さを取り戻した。

「やば、何度でも出来ちゃいそう」

そう言って、いたずらっぽく安藤が笑い、俺の胸を優しく揉み、乳首をかりかりと引っ掻いた。

「えっ、うそ、あんど、ひうっ……!」

第二ラウンドが始まった。

それから、いつ夢が終わったのかはわからない。夢の中で何度も何度も絶頂させられ、気づけば俺は夢も見ない深い眠りに落ちていた。



カーテン越しに光が入ってきて目が覚めた。俺は裸でベッドの中で目を覚ました。隣には、裸の男、安藤が眠っており、心臓が止まるほど驚いた。

ベッドの宮に置いた時計を見れば、昼の十二時近い。

落ち着け。どうなっている。状況を整理しよう。

昨日は、信じられないくらいエロい夢を見た。隣でその夢の中で致した安藤が裸で寝ているが、この問題は一旦置いておこう。置いておこう、と思って置いておけるものではないが、とりあえず一旦置いておく。

体はさっぱりしているが、全身が痛い。動くと体がみしみしときしんで筋肉痛のようになっている。

それに、快感の残滓ともいうべき気だるさがある。

隣で安藤が身じろぎした。

「ん……詠さん」

何も言えずにパニクってはいるが、表面場は機能停止している俺を安藤が抱き寄せた。

「おはよ」

そう言って、硬直している俺を知ってか知らずか、安藤はキスをした。

それは、優しく甘い、夢の中と同じキスだった。



おわり


初出:2021/12/29
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