美形×平凡 短編BL小説集2

鯛田オロロ

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俺だけ好きなままかよ(オメガバース・現代)※

俺だけ好きなままかよ※

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俺、山野葵と、内海稜真は幼稚園からの幼馴染である。新興住宅地の隣り合う区画にほとんど同時に移り住んできたのだ。

幼稚園の年長のとき、稜真と俺はふざけていて、稜真が俺のうなじをがぶりと噛んだ。めっちゃ痛かったのは覚えてる。反撃して俺も噛み返したんだけど。

まあ、それで終わればよかったんだけど。俺が稜真に付けた噛み跡はすぐに消えたのに、俺の噛まれた跡は半年経っても一年経っても消えず、見かねた両親が俺を病院へと連れて行った。

それで、検査して、実はめちゃくちゃやばいことになってたのが発覚した。

俺はオメガで、稜真はアルファで、俺達が幼稚園の年長のときに既に番として成立してしまっている、ということが。



まあ、番になっちゃったんだから? 婚約者ってことで? って感じで、高校生の現在に至る。

俺は噛み跡に普段はコンシーラーを塗って隠してるし、周りには俺がオメガだってことも、稜真と婚約してるってことも言ってない。

お互いに好きだって言い合ってるし、お互いの性欲はお互いにしか向かないし、万に一つも妊娠しないように抑制剤飲みつつコンドームしてセックスだってしちゃってるけど。

正直、ときどきすげえ虚しくなる。

だって、こんなの番になっちゃったから本能がそうさせるまでで。

それに、成長するにつれて、俺達の格差っていうのは残酷なまでに開いてるわけよ。

俺はオメガだっていうのに成長すればするほど不細工になり、今じゃ鏡を見るのも苦痛。

少しでも稜真のそばにいたくて無理して稜真と同じ高校に入ったものの、周りとレベル違いすぎて、成績はいつも学年の最下位争いをしている有様。

卓球はまあまあ上手いぜ。でも、別に誇れるほどじゃない。

稜真は全部逆。

成長すればするほど神がかったイケメンになり、成績もトップクラス、サッカー部のスタメンで県大会準優勝。県立高校としては立派じゃん?

もう女の子が放っておかないよ。稜真の隠し撮り写真がネットに出回ってたりする。最悪。

稜真は俺のだ! って叫びたいけど、俺が稜真の番なんて、恥ずかしくて言えない。超格差番って笑われるだろうし、耐えられない。稜真まで笑われてしまうかもしれない。



いつも俺の部屋でセックスしてる。

うちの両親、共働きで帰ってくるの遅いから。

キスしながら正常位、腰掴まれながらガンガン腰振られる後背位、対面座位で子宮口捏ねられて。体位を変えて何度も。

今は、背面座位で乳首いじられながら、子宮口を突き上げられてる。

「あっ、りょ、ま! あっ、あ゛あっ!」

「きもちいい?」

「きも、ちい……!!」

「かわいい、葵」

うなじを甘噛みされる。

「はあんっ……!! うなじ、だめ!」

「葵、ここ弱いもんな」

ぺろりと舐められ、じゅっと吸われる。

「ずっとイッてるね」

眼の前がちかちかして、体が痙攣して、直腸が馬鹿みたいにうねってる。

「大好きだよ、葵」



学校の裏掲示板、みたいなものがある。

そんなん見なきゃ良かったのに。

『ツーンと王子、また一緒なんだけど』

『ツーン、まじブス』

『ツーンて?』

『すぐ質問うざ、前のログ見なよ』

『ヒント わ◯び』

『あー! 山葵!?』

『並んでて恥ずかしくないのかな、ツーン、ハート強いわ』

『王子の引き立て役』

『いや、まじきもいから。王子見たいのに邪魔』

俺、山野葵。山葵はツーンとくるってか。王子は稜真ね。もう、最悪。



そっから、学校では稜真と一緒にならないようにした。

でも、セックスしてても、何してても、掲示板の文言が頭をぐるぐる回るようになってしまった。

他人が何言ってたって、知ったことじゃないのに。

それに、俺が一番わかってんだよ。釣り合ってないのは!

稜真が俺を好きなのだって、番になっちゃったからだし。稜真が噛んでなかったら、俺達、絶対に付き合ってないし、セックスしてないし。

俺ら、だんだんギクシャクしてきて。



そんなときだ。番の解消法が発見されて、日本でも治療が受けられるようになったのは。

毎月、注射を打って、半年ほどで、番が安全に解消できるらしいのだ。

俺はなんかもう、思春期で両親にそういうの話すの無理だったけど、こればっかりは相談した。

両親は最初困惑してたけど、わかってくれて、稜真の両親にも話してくれた。



稜真から、近くの公園に呼び出された。

「なんでそんな大事なこと、まず俺に言ってくれないの!?」

稜真が怒ってる。まあ、怒るか。

「いや、俺ら、うまくいってないじゃん?」

「ずっとうまくいってただろ!? 俺が悪いなら言ってよ!」

「いや、悪くないんだって」

「じゃあ、なに!? 葵が悪いの!?」

「そうじゃなくて、俺達、はじめっから間違ってるんだって。他の番みたいに……愛しあって番になったんじゃなくて、番になったから……愛しあったんじゃんか」

「それのなにが問題なの!?」

「俺は、いやなんだよ! 俺ら、本能に操られてるだけじゃん!?」

「葵は、俺と別れたいの!?」

「別れたいに決まってんだろ!」

違う、別れたいんじゃなくて、わかんない。けど、今のままじゃ、俺は駄目になる。稜真も、もっと違う生き方ができる。

稜真が、すっと冷めた目になった。

「……わかったよ。じゃあ、治療受ける」

なんだよ、そんなに、あっさり。俺ってその程度なの? 自分から切り出しといて、傷ついてる。

勝手だなあ、俺。

稜真が帰っていく。振り返らない。

俺はちょっと泣いた。嘘、大泣きした。

それから、俺と稜真は治療を受けて、無事に番を解消した。



治療終了後、稜真には、すぐに彼女ができた。当たり前か。

修学旅行があって、部活引退して、受験勉強して。

俺は、卒業式、かわいい彼女と歩いてる稜真を目で追って、苦しくて。

なんだよ、番解消しても、俺だけ好きなままかよ。



おわり



初出:2024/12/16
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