美形×平凡 短編BL小説集2

鯛田オロロ

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とっくにおちてる(現代・オナホ扱いしていたセフレを切る話)

とっくにおちてる

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ヤるために呼んだ真下誠を、一人暮らしのアパートに招き入れる。

真下は同じ大学の同じ専攻。マッチングアプリでマッチして会ってみたら真下だった。

それから、ブスの真下を、セフレ以下のオナホとして、まあまあ便利に使っていた。ブスだけど、穴の具合は悪くない。

ブスで要領の悪い真下は、唯一の取り柄としてまじめに講義も出てるから、ノートのコピー取るのにも、テストの情報聞くにも便利だった。

でも、この関係も十ヶ月ぐらい経って、最近無性にむかつくようにもなっていた。

こいつが笑うたびに、いらっとする。

最近は、呼び出そうにも真下はバイトで忙しくて、それもむかついていた。

ベッドに直行しようのする俺を、真下が止める。

「あのさ」

「なに?」

「あの、これ。誕生日、おめでとう」

鞄からがさごそと箱を出して、俺に差し出してきた。

開けてみて、といわれて、俺は包装紙を開けた。

「は? 財布?」

「うん、このまえ、これ欲しいって言ってたでしょ?」

ああ、真下は中古の軽自動車に乗ってて、それで足代わりにショッピングモールに連れて行かせたんだ。

そのとき、たしか、いいなって言ったと思う。

ざらっと、俺の心臓を不快感が撫でた。

気持ち悪い。

いや、この前って、いつの話だよ。

三ヶ月も前だ。

もう、そんなん、別のやつから貰ったんだわ。風俗で稼いでる女と、実家が金持ちのお嬢様から。

そんで、片方は、もう売った。使ってるの見せるには一個で十分だから。

ああ、なんだよ。すげえむかつく。腹立つ。

こいつ、馬鹿かよ。

ここ数カ月、バイトのシフト、たくさん入れてたの、これ? 生活費足んないからとか言って?

そんで、哀れに思ってサイゼで奢ってやったら、やたら喜んでたっけ。媚びてんな、ってそんときもキショって思ったけど。

何やってんだよ、こいつ。

お前、なに、思い上がってんだよ。

お前みたいなブス、ちょっとムラっときたとき用の、セフレ以下のオナホなんだよ。

まじで馬鹿じゃねえの。

やば、外箱、握りつぶしそう。売るときに必要なのに。

このまま黙って受け取って、まあ、ありがとうって言って、また売っ払えばいいんだよ。別に。

なのに、俺は無性に胃のあたりが締め付けられて、気持ち悪いし、むかついてる。

「……いらない」

財布を突っ返すと、真下は一瞬傷ついた顔して、すぐにそれを隠すみたいに笑った。

「そっか……うん、わかった」

それだけ言って、鞄に再び箱をしまった。

その態度に、すっげえいらいらする。

俺は、大きく息を吐いてから、言った。

「……ああ、もういい」

真下が、え、とこっちを見る。

「すげえ萎えた。お前とはもう終わり。帰れ」

もう、最悪。

真下は、びっくりしたみたいに、固まって俺を見ている。

まじで腹立つ。こういう察しの悪い馬鹿、すげえ嫌い。

こいつ、日本語わかんねえのかな、と、いらいらしながら真下にもわかるように言葉を加えてやる。

「か、え、れって言ってんの。二度と連絡してくんな」

真下にも、ようやくわかったようだった。

真下の顔がみるみる歪む。

「な、なんで……?」

「いつまで居る気だよ、玄関あっち」

親指で玄関を指し示す。

あ、泣きそう。泣くかな? 泣いたらもっとブスだろうな。

真下はぎゅっと眉根を寄せて、歯を食いしばった。

なんだよ、泣かねえのかよ。泣いても、泣かなくても、うざい。

荷物をまとめて、真下は、玄関に向かう。

その背中を見ていたら、更にむかついてくる。

ソファに置いてあるクッションを投げつけたくなった。

それか、振り返らせてぶん殴るか、背中を蹴り飛ばすか。

むかつく、むかつく、むかつく。

なんでこんなにムカつくんだか意味わからないくらい、腹が立つ。

暴力はだめ。こんなブスのために、人生棒に振ることない。

がちゃんと玄関ドアを開け、真下が部屋を出て、がちゃんと玄関ドアが閉まる。

俺は大きく息を吐き出した。不快感を全部吐き出すように。

ああ、よかった。これでいい。俺は、ブスからようやく解放されたんだ。

完全に人選ミスってたわ。

「あーあ、これから講義のノート、どうするかなー」

自分で言って、あいつのせいで面倒くせえなと、床に立ててあったハイボールの空缶を力まかせに蹴っ飛ばした。

「……だっる」



おわり



初出:2025/05/08
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