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兎と狼 第1部
第28話 謎多き人①
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「ただいま」
「おかえり、景斗。どうやら1回紋章を使ったみたいだね」
「はい。黒白様」
「だから戻ってるよ」
ログアウト直後。部屋にはなぜか結人さんがいた。だけど、疑問がひとつ。どうして、結人さんは景斗が紋章を使ったことを知っているのだろうか?
やっぱり紋章作成者として管理がしっかりしているからなのか? 俺にはまだ無縁の存在である能力。
「えーと、他に使ったのは……。フォルテさんとバレンさん。だけど、景斗。昨日3回も使ったのに、また行使するって、かなりゲーム内荒れてるみたいだね」
「はい。また、ロゼッタヴィレッジがプレイヤー狩りをしようとしているみたいです」
「ロゼッタヴィレッジねー」
会話の輪に入れないまま。景斗さんと結人さんの会話が続く。ロゼッタヴィレッジになにか因縁でもあるのだろうか?
アーサーラウンダーの歴史を知らない俺と大樹は、会話で盛り上がる2人を横目にはてなを浮かべる。
「君たちはわからないよね。おれから説明するよ。これは翔斗は知ってると思うけど、アンデスで拠点となる建物がロゼッタヴィレッジに占領されてるって受付嬢が言ってたよね?」
「言ってたな……」
「景斗。それってなんかあるんですかな?」
大樹がゲーム内口調と織り交ぜた話し方をする。リアルだと違和感のある口調に、結人さんと景斗さんが苦笑した。俺もこれにはどうしようもできない。大樹はゲーム内口調が抜けにくいタイプなんだと知った。
「それで、景斗さん。ロゼッタヴィレッジがアンデスを占領しているって関係があるのか?」
「多分ね。僕の勘だけど、君たちの学校で何かおかしいこと起こらなかった?」
「そういえば」
今日俺の学校で景斗の手の甲にある紋章の話題が挙がっていた。張り紙には坂東先輩の名前。彼の紋章のことを知ってるのは、アーサーラウンダーのメンバーと坂東先輩だけ。
やっぱり、外部に紋章のことを漏洩させたのは先輩しかいない。けど、今回、アリスに攻撃目的で現れなかった。それどころか、全く姿を見せなかった。
「きっと、ヤサイダーはおれが弱るのを狙っているんだと思う。22歳になってまだ紋章を扱いきれてないおれは、そこまで体力も持久力もない。さすがに昨日は無理したことになるけど」
「それはすまない。俺のせいで……」
「いいんだ。あの後黒白様に微調整してもらったし」
「そうか」
紋章のことがだんだんわかってきた。結人さんに頼めば微調整もしてくれる。ただ、能力が俺に合ってない時はどうなるのだろうか? きっとその辺りも考えてくれるだろう。
「ところで、結人さん」
「なにかな? 翔斗くん」
「紋章っていったいなんですか?」
この言葉に結人さんは考え込むような顔をした。俺は返答を待つ。そして、返ってきた言葉は……。
「残念だけど今は種明かしできない。まだ君たちをメンバーとして認めたわけじゃないからね。そのための一ヶ月って覚えといて。少し前まで入っていた人は、景斗の能力を見ていなくなったから。そうならないようにね」
たしかに、景斗の紋章の能力を見て驚いたのは俺も同じだ。だけど、俺は景斗をしっかりしたリーダーだと思っている。
「私は、驚きもしなかったぞ!!」
「それは本当にそうだった」
「うん」
大樹はあまりビビることがない。これも陸上部で培った精神の強さなのだろう。彼はやり投げ以外にも、走り高跳びの練習をすることがある。俺も走り高跳びをしたことがあるがバーが近づくにつれて怖くなり、毎回手前で立ち止まってしまった。だけど、彼はその恐怖もものともせず、綺麗に確実に飛び越える。
だから目の前に起こった現象にもなにも感じないのだろう。このメンタルを見習いたいくらいだ。何に対してもビビリな俺。景斗はその気持ちを汲み取ってくれたのか、こう声をかけてくる。
「もしも、翔斗が紋章を手に入れたとき、翔斗が考えてる以上に怖い思いをすると思う。でも、臆病にならずにまっすぐ見ていれば乗り越えられるよ。今怖いって感じてるものは何?」
「怖いもの……」
怖いものと言われても、一番なのはアリスを失うこと。それ以上に怖いのは坂東先輩だ。だけど、今坂東先輩に立ち向かえるのは景斗しかいない。走り高跳びよりも別のものを怖くなったのは、ビースト・オンラインを始めたからだろう。
「なるほどね……」
「結人さん?」
「翔斗くん。ちょっと僕の部屋に来て」
「わ、わかりました」
俺は結人さんに呼ばれ、彼の部屋がある2階に来た。そこにはものすごく大きいファミリーサイズベッド。そして、見たことがない道具の数々。
いつの間にか結人さんは仮面を身につけていて、何が始まるのかわからな……。結人さんの髪が白い。純白に染まっている。
「さ、この歪みの中に入って」
「は、はい……」
恐る恐る入ってみる。地面を踏んだような感覚はない。逆に身体が浮いている? 普段感じることが無い出来事に、俺は理解が追いつかない。
「かなり混乱してるみたいだね」
「ッ!?」
「大丈夫。肩の力を抜いて、深く息を吸って」
俺は言われるがままに深呼吸をする。だけど、質量が違うのか空気が肺に入ってこない。この空間はどこ?
「ここは亜空間の中だよ。まずは、僕が紋章を作ったきっかけを話すね」
「おかえり、景斗。どうやら1回紋章を使ったみたいだね」
「はい。黒白様」
「だから戻ってるよ」
ログアウト直後。部屋にはなぜか結人さんがいた。だけど、疑問がひとつ。どうして、結人さんは景斗が紋章を使ったことを知っているのだろうか?
やっぱり紋章作成者として管理がしっかりしているからなのか? 俺にはまだ無縁の存在である能力。
「えーと、他に使ったのは……。フォルテさんとバレンさん。だけど、景斗。昨日3回も使ったのに、また行使するって、かなりゲーム内荒れてるみたいだね」
「はい。また、ロゼッタヴィレッジがプレイヤー狩りをしようとしているみたいです」
「ロゼッタヴィレッジねー」
会話の輪に入れないまま。景斗さんと結人さんの会話が続く。ロゼッタヴィレッジになにか因縁でもあるのだろうか?
アーサーラウンダーの歴史を知らない俺と大樹は、会話で盛り上がる2人を横目にはてなを浮かべる。
「君たちはわからないよね。おれから説明するよ。これは翔斗は知ってると思うけど、アンデスで拠点となる建物がロゼッタヴィレッジに占領されてるって受付嬢が言ってたよね?」
「言ってたな……」
「景斗。それってなんかあるんですかな?」
大樹がゲーム内口調と織り交ぜた話し方をする。リアルだと違和感のある口調に、結人さんと景斗さんが苦笑した。俺もこれにはどうしようもできない。大樹はゲーム内口調が抜けにくいタイプなんだと知った。
「それで、景斗さん。ロゼッタヴィレッジがアンデスを占領しているって関係があるのか?」
「多分ね。僕の勘だけど、君たちの学校で何かおかしいこと起こらなかった?」
「そういえば」
今日俺の学校で景斗の手の甲にある紋章の話題が挙がっていた。張り紙には坂東先輩の名前。彼の紋章のことを知ってるのは、アーサーラウンダーのメンバーと坂東先輩だけ。
やっぱり、外部に紋章のことを漏洩させたのは先輩しかいない。けど、今回、アリスに攻撃目的で現れなかった。それどころか、全く姿を見せなかった。
「きっと、ヤサイダーはおれが弱るのを狙っているんだと思う。22歳になってまだ紋章を扱いきれてないおれは、そこまで体力も持久力もない。さすがに昨日は無理したことになるけど」
「それはすまない。俺のせいで……」
「いいんだ。あの後黒白様に微調整してもらったし」
「そうか」
紋章のことがだんだんわかってきた。結人さんに頼めば微調整もしてくれる。ただ、能力が俺に合ってない時はどうなるのだろうか? きっとその辺りも考えてくれるだろう。
「ところで、結人さん」
「なにかな? 翔斗くん」
「紋章っていったいなんですか?」
この言葉に結人さんは考え込むような顔をした。俺は返答を待つ。そして、返ってきた言葉は……。
「残念だけど今は種明かしできない。まだ君たちをメンバーとして認めたわけじゃないからね。そのための一ヶ月って覚えといて。少し前まで入っていた人は、景斗の能力を見ていなくなったから。そうならないようにね」
たしかに、景斗の紋章の能力を見て驚いたのは俺も同じだ。だけど、俺は景斗をしっかりしたリーダーだと思っている。
「私は、驚きもしなかったぞ!!」
「それは本当にそうだった」
「うん」
大樹はあまりビビることがない。これも陸上部で培った精神の強さなのだろう。彼はやり投げ以外にも、走り高跳びの練習をすることがある。俺も走り高跳びをしたことがあるがバーが近づくにつれて怖くなり、毎回手前で立ち止まってしまった。だけど、彼はその恐怖もものともせず、綺麗に確実に飛び越える。
だから目の前に起こった現象にもなにも感じないのだろう。このメンタルを見習いたいくらいだ。何に対してもビビリな俺。景斗はその気持ちを汲み取ってくれたのか、こう声をかけてくる。
「もしも、翔斗が紋章を手に入れたとき、翔斗が考えてる以上に怖い思いをすると思う。でも、臆病にならずにまっすぐ見ていれば乗り越えられるよ。今怖いって感じてるものは何?」
「怖いもの……」
怖いものと言われても、一番なのはアリスを失うこと。それ以上に怖いのは坂東先輩だ。だけど、今坂東先輩に立ち向かえるのは景斗しかいない。走り高跳びよりも別のものを怖くなったのは、ビースト・オンラインを始めたからだろう。
「なるほどね……」
「結人さん?」
「翔斗くん。ちょっと僕の部屋に来て」
「わ、わかりました」
俺は結人さんに呼ばれ、彼の部屋がある2階に来た。そこにはものすごく大きいファミリーサイズベッド。そして、見たことがない道具の数々。
いつの間にか結人さんは仮面を身につけていて、何が始まるのかわからな……。結人さんの髪が白い。純白に染まっている。
「さ、この歪みの中に入って」
「は、はい……」
恐る恐る入ってみる。地面を踏んだような感覚はない。逆に身体が浮いている? 普段感じることが無い出来事に、俺は理解が追いつかない。
「かなり混乱してるみたいだね」
「ッ!?」
「大丈夫。肩の力を抜いて、深く息を吸って」
俺は言われるがままに深呼吸をする。だけど、質量が違うのか空気が肺に入ってこない。この空間はどこ?
「ここは亜空間の中だよ。まずは、僕が紋章を作ったきっかけを話すね」
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