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愛を育む
隣からそっと、ずっと。
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お前は気づいていないだろうけど。
自分は常々、そんな性格だと自覚している。
小さい頃からずっと一緒で、
笑う時も、泣く時も、怒られる時も、楽しい時も、ずっと、時間を過ごしてきた。
幼馴染みのお前に、想い人が出来た。
俺なんかより背も小さくて、可愛くて、柔らかくて、守ってやりたくなるような、そんな、愛おしい想い人が。
「なぁ、これ、可愛くね?」
そう言って、スマホの写真を見せてくる。
「はは、本当だ。これ、この前行ったところ?」
「そう、めっちゃ綺麗だったんだぜ?」
「へぇ…良かったな」
「へへっ」
幸せそうに、彼女との写真を見せてくるお前の、その笑顔が好きだった。
幼馴染みで、親友の、俺の好きな人。
思い足りないくらい、愛おしい想い人。
彼女に入れ込んでいるお前が、好きだ。
振り向かせたい訳でもなく、
自分のものにしたい訳でもなく、
彼女の虜になってしまっているお前を、
俺はずっと好きでいる。
この思いは、一生死ぬまで抱えていく。
お前にも、絶対に告げることはないだろう。
親友で、大切な人だからこそ、尚更…。
伝えてしまって、この関係を壊したくない。
何よりも、この気持ちを知ったお前が、俺なんかのことで悩んでいるところを、見たくはない。
お前は優しいから、俺の気持ちを知ったら、困ってしまうだろう。
悩んで悩んで、優しく断ってくれるんだろう。
そんな姿を、見たくはないんだ。
一緒に過ごしてきたから、お前のことは、よく分かってる。
伝えない、と、決めているから。
だから、せめて、この場所から、
幸せでいるお前のことを、
隣からそっと、ずっと、見ていてもいいだろうか?
きっと俺は、他の誰かを思って、幸せそうにするお前が好きで、
その誰かが俺になってしまった時、俺はお前を恐ろしく思うかもしれない。
他の誰かに思いを馳せ、
笑顔を浮かべるその姿が、
俺は好きなんだよ。
それが、俺の性分だよ、全く。
「どうした?」
「いいや…で?彼女さんの誕生日だっけ?」
「そうそう!」
「何か考えてるのか?」
「それがさぁ、何しようかなって」
「去年とは、違うことしてやりたいんだろう?」
彼女の誕生日に、サプライズを考えるお前は本当に楽しそうで、俺もなんだか嬉しくて。
彼女の誕生日サプライズを成功させたと連絡をもらってから数日後、部活を終えて帰宅する途中で、お前からメールが来た。
『今日は俺んちで夕飯だって!早く帰ってこい!』
いつもの、たわいもない幼馴染みのメール。
小さい頃から何百通と届いた、同じ文面のメール。
それすらも愛おしいくらいに、
俺の思いは募っている。
お前の家のインターホンを押し、
鍵は空いていると聞かされ中に入ると、
パァン!!
クラッカーの音が鳴り響いた。
「おかえりー!」
そこには彼女さんと笑顔を並べるお前がいて、声を揃えてこういうんだ。
「誕生日おめでとうー!」
彼女さんまで呼んで、何してんだよ、お前。
驚く俺をみて、彼女とハイタッチして大成功だと喜ぶ。
「俺の親友が、お前でよかった。生まれてきてくれて、ありがとうな。大好きだぞ!」
「なんだよ、改まって…でも、ありがとうな。俺もだよ」
お前にとってはなんでもない言葉なんだろうけど、俺にとってはとんでもない言葉で。
何回も繰り返してきたこのやり取りも、
俺の中で、積もり積もって、溢れてく。
でも、こうやって時々吐き出させてくれるから、俺の気持ちもバランスを保てているのかもしれないな。
お前の幸せの中に、俺もいるんだな。
それは勿体ないくらい光栄なことで、
喜ばしいことで、
泣けてくる。
そんなことも、あったなと、思い返す。
お前の結婚を知らされて、
結婚式でこうして幸せなお前を見てる。
嬉しいのに、苦しくて、
涙が出た。
「なーに泣いてんだよ、お前はお父さんか」
「ははっ…悪い…止まんね…」
お前の左肩に、ふいに頭を擦り付けた。
お前は左手を、その頭にのせてくれたんだ。
「ありがとうな」
そういってお前は、泣きじゃくる俺を、
まるで子供をなだめるように背中をさすった。
嬉しいんだ。本当に。
お前が幸せで、それが、俺の幸せだった。
ずっと、隣で見守ってきた。
お前をずっと、見てきたんだ。
俺がお前を大事に思う気持ちは、
誰にも負けない自信がある。
そしてそれを、このまま抱えて、
お前にだけは、絶対に、伝えない。
だからこそ、お前のそばで見てこれたんだ。
ここまで。
「幸せになれ…」
震えた声で、でも確かに、言葉にできた。
「おう!」
力強く、そう答えてくれる。
そんなお前だから、好きになったんだ。
俺は、それだけで、お前を思っているだけで、これからも生きていける。
お前の隣で、そっと、これからも。
ずっと。
自分は常々、そんな性格だと自覚している。
小さい頃からずっと一緒で、
笑う時も、泣く時も、怒られる時も、楽しい時も、ずっと、時間を過ごしてきた。
幼馴染みのお前に、想い人が出来た。
俺なんかより背も小さくて、可愛くて、柔らかくて、守ってやりたくなるような、そんな、愛おしい想い人が。
「なぁ、これ、可愛くね?」
そう言って、スマホの写真を見せてくる。
「はは、本当だ。これ、この前行ったところ?」
「そう、めっちゃ綺麗だったんだぜ?」
「へぇ…良かったな」
「へへっ」
幸せそうに、彼女との写真を見せてくるお前の、その笑顔が好きだった。
幼馴染みで、親友の、俺の好きな人。
思い足りないくらい、愛おしい想い人。
彼女に入れ込んでいるお前が、好きだ。
振り向かせたい訳でもなく、
自分のものにしたい訳でもなく、
彼女の虜になってしまっているお前を、
俺はずっと好きでいる。
この思いは、一生死ぬまで抱えていく。
お前にも、絶対に告げることはないだろう。
親友で、大切な人だからこそ、尚更…。
伝えてしまって、この関係を壊したくない。
何よりも、この気持ちを知ったお前が、俺なんかのことで悩んでいるところを、見たくはない。
お前は優しいから、俺の気持ちを知ったら、困ってしまうだろう。
悩んで悩んで、優しく断ってくれるんだろう。
そんな姿を、見たくはないんだ。
一緒に過ごしてきたから、お前のことは、よく分かってる。
伝えない、と、決めているから。
だから、せめて、この場所から、
幸せでいるお前のことを、
隣からそっと、ずっと、見ていてもいいだろうか?
きっと俺は、他の誰かを思って、幸せそうにするお前が好きで、
その誰かが俺になってしまった時、俺はお前を恐ろしく思うかもしれない。
他の誰かに思いを馳せ、
笑顔を浮かべるその姿が、
俺は好きなんだよ。
それが、俺の性分だよ、全く。
「どうした?」
「いいや…で?彼女さんの誕生日だっけ?」
「そうそう!」
「何か考えてるのか?」
「それがさぁ、何しようかなって」
「去年とは、違うことしてやりたいんだろう?」
彼女の誕生日に、サプライズを考えるお前は本当に楽しそうで、俺もなんだか嬉しくて。
彼女の誕生日サプライズを成功させたと連絡をもらってから数日後、部活を終えて帰宅する途中で、お前からメールが来た。
『今日は俺んちで夕飯だって!早く帰ってこい!』
いつもの、たわいもない幼馴染みのメール。
小さい頃から何百通と届いた、同じ文面のメール。
それすらも愛おしいくらいに、
俺の思いは募っている。
お前の家のインターホンを押し、
鍵は空いていると聞かされ中に入ると、
パァン!!
クラッカーの音が鳴り響いた。
「おかえりー!」
そこには彼女さんと笑顔を並べるお前がいて、声を揃えてこういうんだ。
「誕生日おめでとうー!」
彼女さんまで呼んで、何してんだよ、お前。
驚く俺をみて、彼女とハイタッチして大成功だと喜ぶ。
「俺の親友が、お前でよかった。生まれてきてくれて、ありがとうな。大好きだぞ!」
「なんだよ、改まって…でも、ありがとうな。俺もだよ」
お前にとってはなんでもない言葉なんだろうけど、俺にとってはとんでもない言葉で。
何回も繰り返してきたこのやり取りも、
俺の中で、積もり積もって、溢れてく。
でも、こうやって時々吐き出させてくれるから、俺の気持ちもバランスを保てているのかもしれないな。
お前の幸せの中に、俺もいるんだな。
それは勿体ないくらい光栄なことで、
喜ばしいことで、
泣けてくる。
そんなことも、あったなと、思い返す。
お前の結婚を知らされて、
結婚式でこうして幸せなお前を見てる。
嬉しいのに、苦しくて、
涙が出た。
「なーに泣いてんだよ、お前はお父さんか」
「ははっ…悪い…止まんね…」
お前の左肩に、ふいに頭を擦り付けた。
お前は左手を、その頭にのせてくれたんだ。
「ありがとうな」
そういってお前は、泣きじゃくる俺を、
まるで子供をなだめるように背中をさすった。
嬉しいんだ。本当に。
お前が幸せで、それが、俺の幸せだった。
ずっと、隣で見守ってきた。
お前をずっと、見てきたんだ。
俺がお前を大事に思う気持ちは、
誰にも負けない自信がある。
そしてそれを、このまま抱えて、
お前にだけは、絶対に、伝えない。
だからこそ、お前のそばで見てこれたんだ。
ここまで。
「幸せになれ…」
震えた声で、でも確かに、言葉にできた。
「おう!」
力強く、そう答えてくれる。
そんなお前だから、好きになったんだ。
俺は、それだけで、お前を思っているだけで、これからも生きていける。
お前の隣で、そっと、これからも。
ずっと。
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