63 / 70
第二章 マリーハイツ公約編
第三十九話 悪ガキと白い器
しおりを挟む
宿の食堂は、同じ部屋のはずなのに、別の場所になっていた。
昼間は漁師や旅人でごった返していた長机に、今夜は白い布が掛けられている。
油じみを全部は隠しきれていないが、それでも布一枚あるだけで、木の節や傷が柔らかくぼやけて見えた。壁際には、いつもより多くのランプが吊るされ、炎の数に比例するように、空気に混じる緊張も増えている。
窓の外には、坂を下った先の港の明かりが、点々と揺れていた。
マストに巻きついた灯りの列。その中に、ひときわ高い位置で、帝国旗の影が黒く揺れる。
「……すげえな」
先に座っていたカイが、白布の端を指でつまんだ。
「この宿で、こんなよそ行きな格好見られるとはな」
「あなたの鎧も、だいぶよそ行きですよ」
向かいに座るシュアラが、布の下から肩口を見やる。
「普段は、もう少し傷だらけでした」
「磨いたんだよ。こっちも『視察団』とやらに笑われちゃたまらねえからな」
カイは肩を鳴らし、ちらりと長机の端に視線をやった。そこには零札たちが固まって座っている。
いつもの擦り切れた作業服ではなく、砦から借りてきたまだましな服。着慣れない襟と袖に、誰もが落ち着かない手つきをしていた。
「縁起でもねえ」
誰かが小さく呟き、乾いた笑いが起きる。その笑いにも、どこか硬さが残っていた。
テーブルの反対側には、町側の人々が並んでいた。
クラウスを先頭に、港の網元や魚商人、役所の書記官。皆、普段より固い表情で、自分の手の置き場を探している。
(今日は、三つの視線が一つの机に押し込まれている)
砦の兵と零札。
港町の大人たち。
帝都から来た海務院の一行。
シュアラは、卓上に置かれた空の器を眺めながら、心の中で駒の配置を確認するように、ゆっくりと視線を巡らせた。
開け放たれた扉から、外のざわめきが流れ込んでくる。
坂の上まで響いていた子どもたちの声は消え、今は押し殺した囁きと、革靴が石畳を踏む硬い音だけが近づいてきていた。
やがて、そのざわめきが一つの気配にまとまり、食堂の入口でぴたりと止まる。
「海務院視察団、ご到着です」
宿の主人の声が響き、全員が一斉に立ち上がった。
最初に入ってきたのは、黒い軍服の男だった。
金糸で縁取られた肩章。きっちりと締められた襟。海で鍛えられたのか、壁のように厚い胸板をしている。彼の後ろに、同じような黒衣の技官たちが列をなし、その列の中ほどに、小さな影が混じっていた。
銀鼠色の髪。
片方ずつ色の違う瞳。
黒いミニコートの裾からのぞく細い脚。
その少女が一歩踏み出すたび、厚底のブーツの底が、板張りの床を小さく鳴らした。
「帝国海務院 海洋魔導計算局・少技士――」
先頭の士官が振り返り、少し芝居掛かった調子で声を張る。
「リュシア・フォン・クラウゼ少技士。北方海路再編計画の計算担当官である」
「少技士で構いません」
少女が、軽く手を振った。
にこりと笑った顔は、年相応の子どものようでもあり、どこか人形めいてもいる。
「私、リュシア・フォン・クラウゼと言います。十三歳です。船の位置と数、人と物の流れ、港の深さと潮の癖。そういうものを全部まとめて、『この町と、この冬にとって一番ましな海路はどれか』を計算するのが、今の仕事です」
簡潔で、無駄のない自己紹介だった。
その中に、「十三歳」と「仕事」という二つの単語が、きっちり詰め込まれている。
「十三……?」
零札の一人が、思わず声を漏らした。
「俺の娘と、そう変わらねえ歳じゃねえか」
「歳は勝手に増えるだけですから」
リュシアは、さらりと言った。
「役に立つ頭があるかどうかは、放っておいても増えません。十三の頭が一つあるだけで船が十隻助かるなら、大人の頭が十人分集まるより安上がりですよ」
口調は明るく、説明はわかりやすい。
内容は、ひどく冷たい。
(やはり、この子が)
シュアラは、布の下で眉をわずかに上げた。
(沈む順番の紙を書いてきた子)
「そして、深海契約の器――」
士官の声色が、ほんのわずかに硬くなる。
白いドレスの裾が、静かに揺れた。
長い髪をきちんと結い上げられ、首筋には淡い光を帯びた刻印。
リリーシアは、港で見たときと同じ顔で、同じ姿勢で立っていた。十年前から一歩も進んでいない時間を、その身に貼り付けているかのように。
「リリーシア・アルスリス。帝国海務院 零海域観測隊所属。深海契約者」
士官が代わりに名を告げるあいだも、彼女は口を開かなかった。
宿の空気が、港と同じように固くなる。
厨房から顔を出していた女将が、慌てて頭を下げる音だけが、妙に大きく響いた。
「では、お掛けください」
クラウスの声を合図に、全員がようやく椅子に戻る。
長机の上座に、海務院の士官とクラウス。
その横に、リュシアとリリーシア。
向かい側の列には、シュアラ、カイ、零札たち。
端の方には、網元や魚商人が固まって座り、フィンは給仕の邪魔にならない位置に、さりげなく立っていた。
宿の主人夫婦が、慣れない手つきで皿を配って回る。
今夜の料理は、砦のごった煮とは違って、見た目にも華やかだった。大皿に盛られた焼き魚。貝の身がたっぷり入ったスープ。薄く切られた野菜のマリネに、焼きたての白いパン。
「こりゃまた……」
カイが、目の前に置かれた皿を眺めて感嘆の息を漏らした。
「砦の連中に見せたら、泣くぞ」
「泣く前に、輸送経費を計算します」
シュアラは、軽く返す。
「ここで一度しか食べられない御馳走なのか、それともヴァルムでも再現可能なのか。そこが問題です」
「この状況で、まず金勘定かよ」
カイが呆れたように笑うと、その笑いが周囲の強張りを少しだけ和らげた。
「金勘定、大事ですよ」
向こう側から、ひょいと声が飛んできた。
リュシアは、すでにスープにスプーンを突っ込んでいた。小柄な体には似合わない勢いで、ぱくぱくと口に運びながら、さらりと言う。
「海路の数字を任せておいて、その頭の寿命をあまり大事にしてない感じです」
「それは……」
クラウスが困ったように笑う。
「帝都にも、いろいろ事情があるのでしょう」
「あるでしょうね」
リュシアは、スープを一口飲み込んでから、さらりと付け加えた。
「でも、私が“史上最年少”の少技士だ、という事情もあります。数字ひとつで船と町の行き先を変えられる頭なんですから、もう少し栄養を積んでおいた方が、帝都のためにもいいと思いません?」
誰も頼んでいないのに、自分からきちんと口にする「史上最年少」。
その肩書きの出し方に、シュアラは「盾」として掲げ慣れたものの匂いを感じた。
料理が二品目、三品目と運ばれていくうちに、食堂のざわめきは少しずつほぐれていった。
零札の男たちも、最初は居心地悪そうにしていたが、やがて皿の中身に目を奪われ始める。砦では見たことのない白い魚の切り身。貝から外されたばかりの柔らかな身。
「……ここなら、本当に住めそうだな」
零札の一人が、つい本音を漏らした。
「海が見えて、腹いっぱい食えてよ。砦の雪かきより、よほどましだ」
「勝手に引っ越し先決めんな」
カイが、パンを齧りながら軽く小突く。
「お前らの引っ越し先は、まだ保留中だ。沈むかどうかも、これから決めるんだからな」
「沈む、ねえ」
その言葉に、リュシアがぴくりと反応した。
スプーンの動きが、一瞬だけ止まる。
そして、彼女はわざとらしく首を傾げ、零札の一団を眺めた。
「……いいですねえ」
無邪気な感想のような声だった。
「よく食べて、よく笑って。ちゃんと健康そうで」
零札の何人かが、手を止めた。
「……なんだ、その言い方」
「褒めてるんですよ?」
リュシアは、にっこりと笑った。
「これから海の上で沈めてもいい“予備”としては、すごく状態がいいってことです。零札の方々って、みんなそういう立場ですから」
笑顔のまま、さらりと言う。
「船って、大事なところには、同じ部品をいくつか付けておくんですよ。どれか一つ壊れても、船が止まらないように」
言いながら、指で机の上に並ぶ皿を、とん、とん、と軽く叩く。
「零札も、それと同じです。誰か一人いなくなっても、計画が止まらないように。そういう人たちは、現場からすると、とてもありがたいんです」
誰にでも分かる比喩だった。
その分だけ、容赦がない。
「てめえ、今なんて――」
「やめとけ」
シュアラが、短く遮った。
声を荒げはしないが、その一言には、砦の冬を共に越えた者にだけ伝わる重みがある。
リュシアは、カイとシュアラの顔を交互に見て、楽しそうに目を細めた。
どちらの反応が、どこまで届いたか。値踏みするような視線だと、シュアラは感じる。
「今ので、ちゃんと伝わったみたいですね」
「伝わって嬉しい話じゃねえ」
カイが唸るように言う。
「人を部品扱いするような話がよ」
「でも、実際そうしてきたから、ヴァルム砦は冬を越せたんでしょう?」
リュシアは、少しも悪びれない。
「零札の方々を使って、砦を守って、誰も死なせなかった。そういう報告でした。帝都で聞いたとき、皆、驚いてましたよ。『どうせすぐ潰れる砦だと思ってたのに』って」
カイの指が、無意識に拳を作る。
木のテーブルが、わずかに軋む。
「誰がそんなこと――」
「帝都の“上の人たち”ですよ」
リュシアは、さらりと答えた。
「私は数字しか見ませんから。この冬、ヴァルムで死んだ人がゼロ。零札が三百人。そのうち、今年沈んでもいい人が八十人。計画書には、そう書いてありました」
その数字は、シュアラが帝都からの手紙で見たものと同じだった。
(計画書の数字を、あの子はそのまま口にしている)
シュアラは、スプーンを静かに置いた。
「三百のうち、八十」
布の内側で、かすかに呟く。
「太っ腹なのか、雑なのか、判断に困りますね」
「船は、沈む前提で作っておいた方が安全ですから」
リュシアが即答する。
「先に誰が落ちてもいいように、順番を決めておく。そうすれば、海の上で慌てなくて済みます。零札は、そういう人たちです」
「……人たち、ねえ」
カイの声には、笑いも皮肉もなくなっていた。
「お前にとっちゃ、ほんとに部品なんだな」
「私にとって、ですか?」
リュシアは、首をかしげる。
「違いますよ。私にとっては、数字です。部品だって思ってるのは――」
一瞬だけ、視線が上座の士官たちの方をかすめた。
それから、彼女はわざとらしく肩をすくめる。
「……紙の上で決めた人たち、でしょうね」
淡々とした言い方だったが、その端に、針のようなものがかすかに光った。
リリーシアは、その間中、一度も会話に入らなかった。
白いドレスの少女は、テーブルの端に座り、窓の外の闇を静かに見つめている。
目の前の皿に乗った魚には、ほとんど手を付けていなかった。
給仕の若い娘が、水の入ったピッチャーを持って近づく。
彼女の手は、柄を握ったまま、わずかに震えていた。
「あ、あの……」
言葉にならない囁きが漏れる。十年前に名前を呼んだことのある誰かでも、おかしくない、とシュアラは思った。
リリーシアは、すぐには顔を向けなかった。
窓の外に固定していた視線が、水面に揺れる灯りからほんの少し外れて、ガラスに映る室内の影をなぞる。まつ毛が一度だけ微かに震え、それからようやく、小さく頷いた。
その頷きに、首筋の刻印が淡く光る。
海からの見えない潮気が反応しているのか、光は波のように一度、皮膚の下を流れた。
それを見た瞬間、給仕の娘は、慌ててピッチャーを置き、後ずさるようにその場を離れた。
零札の男が、小さく息を呑む。
「……やっぱり、あれが『深海の魔女』か」
「魔女って呼ぶな」
カイが、低く制した。
「あれは――」
言葉を選ぶように、シュアラが口を挟む。
「帝都と、この町と、十年前の嵐が、三つ巴で作った“結果”です」
砦で聞いた話。
アルスリス家で見た、古い家族台帳。
深海契約の仕組み。
その全てが、今、白い器として椅子に座っている。
(帝都の帳簿に『資源』として書き込まれた器と)
(その帳簿の欄外に追いやられた死人と)
(ただ、潮と明日の飯の心配だけしたい普通の町と)
三つの視線が、一本のテーブルの上で交錯していた。
食事の終盤、クラウスが立ち上がった。
「本日は、ご足労いただきありがとうございました」
ぎこちないながらも、腹の底から絞り出した声だった。
「明日、役所にて、海路のこと、公約のことを、改めてご相談したく存じます。ヴァルム砦とマリーハイツ、そして帝都にとって、少しでもましな道を探すために」
「承りました」
海務院の士官が応じる。
「我々も、帝都の計画書をお持ちしました。明日、その中身をお見せしましょう。誰がどこで沈むか――いえ、どこでどれだけの負担をお願いするか、という話になりますが」
その言い換えに、食堂の空気がまた少し冷えた。
(沈む順番の海図)
明日の会議室に広げられるであろう紙を、シュアラは思い描く。
(向こう側が用意してきた表を、どう書き換えるか)
その前夜としては、今夜の食堂は十分すぎるほど情報が詰まっていた。
宴がお開きになり、椅子が引かれる音と共に人々が立ち上がる。
クラウスたちは港の方へ下りていき、零札たちは坂を上る砦への帰り道を気にしている。海務院の一行は、宿の別棟に用意された客室へと向かうことになっていた。
笑い声と食器の触れ合う音が、扉の向こうでゆっくり薄れていく。
残されたランプの炎が、静まった空気の中で小さく揺れ、魚と酒と油の匂いだけが、温度を失って漂っていた。
シュアラも、帳面を抱えて立ち上がる。
食堂を出て廊下に出ると、足音が板を踏む乾いた音だけになった。
その静けさの中で、背後から軽い足音が追い付いてきた。
「死人文官さん」
振り返る前に、呼び止める声。
そこには、さっきまでスープを食べていた少女が立っていた。
リュシアは、先ほどと変わらない笑顔を浮かべている。
ただ、瞳の奥の光が、さっきよりも冷たく研がれているように見えた。
「帝都の紙の上だと、あなた、一度沈んだことになってるんですよ」
挨拶も前置きもなく、そう言った。
「壊れた部品として、箱にしまわれたはずなんです。でも、こうして歩いてる」
彼女は、シュアラの全身を、上から下まで一度眺める。
「……計算しづらいですね」
淡々とした一言だった。
「紙の上では『捨てました』って印をつけたものが、現場でまだ動いてる。そういうの、計算するとき一番嫌いなんです」
「それは、失礼しました」
シュアラは、穏やかに頭を下げた。
「廃棄予定品が勝手に動き出すのは、帳簿係にとっても悪夢でしょうから」
「そういう話じゃなくて」
リュシアは、少しだけ唇を尖らせる。
「死人文官さんは、自分のこと、何だと思ってるんですか?」
廊下に、ランプの火が一本だけ揺れている。
その光の中で、少女のオッドアイが、色の違う光を宿した。
「“もう捨てた部品”ですか。それとも、“まだ捨てられてない部品”ですか」
問いは、単純だった。
誰にでも分かる言葉で、誰にでも答えづらいことを聞いてくる。
シュアラは、一拍置いてから答えた。
「そうですね」
自分の胸の内にある引き出しを、一つずつなぞるように言葉を選ぶ。
「“もう捨てた”と書いてあるなら、勝手に使っても、誰も文句は言えません」
リュシアの眉が、わずかに動いた。
「壊れた部品だと思っているなら、それで構いません。ただ、その壊れた部品を、どこにどう押し込むと一番得なのかを考えるのが、今の私の仕事ですから」
リュシアは、じっとシュアラの顔を見た。
笑っているようにも見えるし、怒っているようにも見える。
そのどちらにも見えない、静かな表情。
やがて、彼女はふっと息を吐いた。
「……やっぱり、気持ち悪いです」
虫を観察したあとに感想を言う子どものような声だと、シュアラは感じた。
「壊れた部品のくせに、勝手に別の表を作ろうとしてる。報告には、そう書いておきます」
「ご丁寧にどうも」
シュアラは、それ以上なにも言わなかった。
リュシアは、くるりと踵を返し、廊下の奥へと歩いていった。
遠ざかる足音を聞きながら、シュアラは、腕の中の帳面の重さを確かめる。
(壊れた部品が書く表が、どこまで通用するか)
明日の会議室で、それが試される。
昼間は漁師や旅人でごった返していた長机に、今夜は白い布が掛けられている。
油じみを全部は隠しきれていないが、それでも布一枚あるだけで、木の節や傷が柔らかくぼやけて見えた。壁際には、いつもより多くのランプが吊るされ、炎の数に比例するように、空気に混じる緊張も増えている。
窓の外には、坂を下った先の港の明かりが、点々と揺れていた。
マストに巻きついた灯りの列。その中に、ひときわ高い位置で、帝国旗の影が黒く揺れる。
「……すげえな」
先に座っていたカイが、白布の端を指でつまんだ。
「この宿で、こんなよそ行きな格好見られるとはな」
「あなたの鎧も、だいぶよそ行きですよ」
向かいに座るシュアラが、布の下から肩口を見やる。
「普段は、もう少し傷だらけでした」
「磨いたんだよ。こっちも『視察団』とやらに笑われちゃたまらねえからな」
カイは肩を鳴らし、ちらりと長机の端に視線をやった。そこには零札たちが固まって座っている。
いつもの擦り切れた作業服ではなく、砦から借りてきたまだましな服。着慣れない襟と袖に、誰もが落ち着かない手つきをしていた。
「縁起でもねえ」
誰かが小さく呟き、乾いた笑いが起きる。その笑いにも、どこか硬さが残っていた。
テーブルの反対側には、町側の人々が並んでいた。
クラウスを先頭に、港の網元や魚商人、役所の書記官。皆、普段より固い表情で、自分の手の置き場を探している。
(今日は、三つの視線が一つの机に押し込まれている)
砦の兵と零札。
港町の大人たち。
帝都から来た海務院の一行。
シュアラは、卓上に置かれた空の器を眺めながら、心の中で駒の配置を確認するように、ゆっくりと視線を巡らせた。
開け放たれた扉から、外のざわめきが流れ込んでくる。
坂の上まで響いていた子どもたちの声は消え、今は押し殺した囁きと、革靴が石畳を踏む硬い音だけが近づいてきていた。
やがて、そのざわめきが一つの気配にまとまり、食堂の入口でぴたりと止まる。
「海務院視察団、ご到着です」
宿の主人の声が響き、全員が一斉に立ち上がった。
最初に入ってきたのは、黒い軍服の男だった。
金糸で縁取られた肩章。きっちりと締められた襟。海で鍛えられたのか、壁のように厚い胸板をしている。彼の後ろに、同じような黒衣の技官たちが列をなし、その列の中ほどに、小さな影が混じっていた。
銀鼠色の髪。
片方ずつ色の違う瞳。
黒いミニコートの裾からのぞく細い脚。
その少女が一歩踏み出すたび、厚底のブーツの底が、板張りの床を小さく鳴らした。
「帝国海務院 海洋魔導計算局・少技士――」
先頭の士官が振り返り、少し芝居掛かった調子で声を張る。
「リュシア・フォン・クラウゼ少技士。北方海路再編計画の計算担当官である」
「少技士で構いません」
少女が、軽く手を振った。
にこりと笑った顔は、年相応の子どものようでもあり、どこか人形めいてもいる。
「私、リュシア・フォン・クラウゼと言います。十三歳です。船の位置と数、人と物の流れ、港の深さと潮の癖。そういうものを全部まとめて、『この町と、この冬にとって一番ましな海路はどれか』を計算するのが、今の仕事です」
簡潔で、無駄のない自己紹介だった。
その中に、「十三歳」と「仕事」という二つの単語が、きっちり詰め込まれている。
「十三……?」
零札の一人が、思わず声を漏らした。
「俺の娘と、そう変わらねえ歳じゃねえか」
「歳は勝手に増えるだけですから」
リュシアは、さらりと言った。
「役に立つ頭があるかどうかは、放っておいても増えません。十三の頭が一つあるだけで船が十隻助かるなら、大人の頭が十人分集まるより安上がりですよ」
口調は明るく、説明はわかりやすい。
内容は、ひどく冷たい。
(やはり、この子が)
シュアラは、布の下で眉をわずかに上げた。
(沈む順番の紙を書いてきた子)
「そして、深海契約の器――」
士官の声色が、ほんのわずかに硬くなる。
白いドレスの裾が、静かに揺れた。
長い髪をきちんと結い上げられ、首筋には淡い光を帯びた刻印。
リリーシアは、港で見たときと同じ顔で、同じ姿勢で立っていた。十年前から一歩も進んでいない時間を、その身に貼り付けているかのように。
「リリーシア・アルスリス。帝国海務院 零海域観測隊所属。深海契約者」
士官が代わりに名を告げるあいだも、彼女は口を開かなかった。
宿の空気が、港と同じように固くなる。
厨房から顔を出していた女将が、慌てて頭を下げる音だけが、妙に大きく響いた。
「では、お掛けください」
クラウスの声を合図に、全員がようやく椅子に戻る。
長机の上座に、海務院の士官とクラウス。
その横に、リュシアとリリーシア。
向かい側の列には、シュアラ、カイ、零札たち。
端の方には、網元や魚商人が固まって座り、フィンは給仕の邪魔にならない位置に、さりげなく立っていた。
宿の主人夫婦が、慣れない手つきで皿を配って回る。
今夜の料理は、砦のごった煮とは違って、見た目にも華やかだった。大皿に盛られた焼き魚。貝の身がたっぷり入ったスープ。薄く切られた野菜のマリネに、焼きたての白いパン。
「こりゃまた……」
カイが、目の前に置かれた皿を眺めて感嘆の息を漏らした。
「砦の連中に見せたら、泣くぞ」
「泣く前に、輸送経費を計算します」
シュアラは、軽く返す。
「ここで一度しか食べられない御馳走なのか、それともヴァルムでも再現可能なのか。そこが問題です」
「この状況で、まず金勘定かよ」
カイが呆れたように笑うと、その笑いが周囲の強張りを少しだけ和らげた。
「金勘定、大事ですよ」
向こう側から、ひょいと声が飛んできた。
リュシアは、すでにスープにスプーンを突っ込んでいた。小柄な体には似合わない勢いで、ぱくぱくと口に運びながら、さらりと言う。
「海路の数字を任せておいて、その頭の寿命をあまり大事にしてない感じです」
「それは……」
クラウスが困ったように笑う。
「帝都にも、いろいろ事情があるのでしょう」
「あるでしょうね」
リュシアは、スープを一口飲み込んでから、さらりと付け加えた。
「でも、私が“史上最年少”の少技士だ、という事情もあります。数字ひとつで船と町の行き先を変えられる頭なんですから、もう少し栄養を積んでおいた方が、帝都のためにもいいと思いません?」
誰も頼んでいないのに、自分からきちんと口にする「史上最年少」。
その肩書きの出し方に、シュアラは「盾」として掲げ慣れたものの匂いを感じた。
料理が二品目、三品目と運ばれていくうちに、食堂のざわめきは少しずつほぐれていった。
零札の男たちも、最初は居心地悪そうにしていたが、やがて皿の中身に目を奪われ始める。砦では見たことのない白い魚の切り身。貝から外されたばかりの柔らかな身。
「……ここなら、本当に住めそうだな」
零札の一人が、つい本音を漏らした。
「海が見えて、腹いっぱい食えてよ。砦の雪かきより、よほどましだ」
「勝手に引っ越し先決めんな」
カイが、パンを齧りながら軽く小突く。
「お前らの引っ越し先は、まだ保留中だ。沈むかどうかも、これから決めるんだからな」
「沈む、ねえ」
その言葉に、リュシアがぴくりと反応した。
スプーンの動きが、一瞬だけ止まる。
そして、彼女はわざとらしく首を傾げ、零札の一団を眺めた。
「……いいですねえ」
無邪気な感想のような声だった。
「よく食べて、よく笑って。ちゃんと健康そうで」
零札の何人かが、手を止めた。
「……なんだ、その言い方」
「褒めてるんですよ?」
リュシアは、にっこりと笑った。
「これから海の上で沈めてもいい“予備”としては、すごく状態がいいってことです。零札の方々って、みんなそういう立場ですから」
笑顔のまま、さらりと言う。
「船って、大事なところには、同じ部品をいくつか付けておくんですよ。どれか一つ壊れても、船が止まらないように」
言いながら、指で机の上に並ぶ皿を、とん、とん、と軽く叩く。
「零札も、それと同じです。誰か一人いなくなっても、計画が止まらないように。そういう人たちは、現場からすると、とてもありがたいんです」
誰にでも分かる比喩だった。
その分だけ、容赦がない。
「てめえ、今なんて――」
「やめとけ」
シュアラが、短く遮った。
声を荒げはしないが、その一言には、砦の冬を共に越えた者にだけ伝わる重みがある。
リュシアは、カイとシュアラの顔を交互に見て、楽しそうに目を細めた。
どちらの反応が、どこまで届いたか。値踏みするような視線だと、シュアラは感じる。
「今ので、ちゃんと伝わったみたいですね」
「伝わって嬉しい話じゃねえ」
カイが唸るように言う。
「人を部品扱いするような話がよ」
「でも、実際そうしてきたから、ヴァルム砦は冬を越せたんでしょう?」
リュシアは、少しも悪びれない。
「零札の方々を使って、砦を守って、誰も死なせなかった。そういう報告でした。帝都で聞いたとき、皆、驚いてましたよ。『どうせすぐ潰れる砦だと思ってたのに』って」
カイの指が、無意識に拳を作る。
木のテーブルが、わずかに軋む。
「誰がそんなこと――」
「帝都の“上の人たち”ですよ」
リュシアは、さらりと答えた。
「私は数字しか見ませんから。この冬、ヴァルムで死んだ人がゼロ。零札が三百人。そのうち、今年沈んでもいい人が八十人。計画書には、そう書いてありました」
その数字は、シュアラが帝都からの手紙で見たものと同じだった。
(計画書の数字を、あの子はそのまま口にしている)
シュアラは、スプーンを静かに置いた。
「三百のうち、八十」
布の内側で、かすかに呟く。
「太っ腹なのか、雑なのか、判断に困りますね」
「船は、沈む前提で作っておいた方が安全ですから」
リュシアが即答する。
「先に誰が落ちてもいいように、順番を決めておく。そうすれば、海の上で慌てなくて済みます。零札は、そういう人たちです」
「……人たち、ねえ」
カイの声には、笑いも皮肉もなくなっていた。
「お前にとっちゃ、ほんとに部品なんだな」
「私にとって、ですか?」
リュシアは、首をかしげる。
「違いますよ。私にとっては、数字です。部品だって思ってるのは――」
一瞬だけ、視線が上座の士官たちの方をかすめた。
それから、彼女はわざとらしく肩をすくめる。
「……紙の上で決めた人たち、でしょうね」
淡々とした言い方だったが、その端に、針のようなものがかすかに光った。
リリーシアは、その間中、一度も会話に入らなかった。
白いドレスの少女は、テーブルの端に座り、窓の外の闇を静かに見つめている。
目の前の皿に乗った魚には、ほとんど手を付けていなかった。
給仕の若い娘が、水の入ったピッチャーを持って近づく。
彼女の手は、柄を握ったまま、わずかに震えていた。
「あ、あの……」
言葉にならない囁きが漏れる。十年前に名前を呼んだことのある誰かでも、おかしくない、とシュアラは思った。
リリーシアは、すぐには顔を向けなかった。
窓の外に固定していた視線が、水面に揺れる灯りからほんの少し外れて、ガラスに映る室内の影をなぞる。まつ毛が一度だけ微かに震え、それからようやく、小さく頷いた。
その頷きに、首筋の刻印が淡く光る。
海からの見えない潮気が反応しているのか、光は波のように一度、皮膚の下を流れた。
それを見た瞬間、給仕の娘は、慌ててピッチャーを置き、後ずさるようにその場を離れた。
零札の男が、小さく息を呑む。
「……やっぱり、あれが『深海の魔女』か」
「魔女って呼ぶな」
カイが、低く制した。
「あれは――」
言葉を選ぶように、シュアラが口を挟む。
「帝都と、この町と、十年前の嵐が、三つ巴で作った“結果”です」
砦で聞いた話。
アルスリス家で見た、古い家族台帳。
深海契約の仕組み。
その全てが、今、白い器として椅子に座っている。
(帝都の帳簿に『資源』として書き込まれた器と)
(その帳簿の欄外に追いやられた死人と)
(ただ、潮と明日の飯の心配だけしたい普通の町と)
三つの視線が、一本のテーブルの上で交錯していた。
食事の終盤、クラウスが立ち上がった。
「本日は、ご足労いただきありがとうございました」
ぎこちないながらも、腹の底から絞り出した声だった。
「明日、役所にて、海路のこと、公約のことを、改めてご相談したく存じます。ヴァルム砦とマリーハイツ、そして帝都にとって、少しでもましな道を探すために」
「承りました」
海務院の士官が応じる。
「我々も、帝都の計画書をお持ちしました。明日、その中身をお見せしましょう。誰がどこで沈むか――いえ、どこでどれだけの負担をお願いするか、という話になりますが」
その言い換えに、食堂の空気がまた少し冷えた。
(沈む順番の海図)
明日の会議室に広げられるであろう紙を、シュアラは思い描く。
(向こう側が用意してきた表を、どう書き換えるか)
その前夜としては、今夜の食堂は十分すぎるほど情報が詰まっていた。
宴がお開きになり、椅子が引かれる音と共に人々が立ち上がる。
クラウスたちは港の方へ下りていき、零札たちは坂を上る砦への帰り道を気にしている。海務院の一行は、宿の別棟に用意された客室へと向かうことになっていた。
笑い声と食器の触れ合う音が、扉の向こうでゆっくり薄れていく。
残されたランプの炎が、静まった空気の中で小さく揺れ、魚と酒と油の匂いだけが、温度を失って漂っていた。
シュアラも、帳面を抱えて立ち上がる。
食堂を出て廊下に出ると、足音が板を踏む乾いた音だけになった。
その静けさの中で、背後から軽い足音が追い付いてきた。
「死人文官さん」
振り返る前に、呼び止める声。
そこには、さっきまでスープを食べていた少女が立っていた。
リュシアは、先ほどと変わらない笑顔を浮かべている。
ただ、瞳の奥の光が、さっきよりも冷たく研がれているように見えた。
「帝都の紙の上だと、あなた、一度沈んだことになってるんですよ」
挨拶も前置きもなく、そう言った。
「壊れた部品として、箱にしまわれたはずなんです。でも、こうして歩いてる」
彼女は、シュアラの全身を、上から下まで一度眺める。
「……計算しづらいですね」
淡々とした一言だった。
「紙の上では『捨てました』って印をつけたものが、現場でまだ動いてる。そういうの、計算するとき一番嫌いなんです」
「それは、失礼しました」
シュアラは、穏やかに頭を下げた。
「廃棄予定品が勝手に動き出すのは、帳簿係にとっても悪夢でしょうから」
「そういう話じゃなくて」
リュシアは、少しだけ唇を尖らせる。
「死人文官さんは、自分のこと、何だと思ってるんですか?」
廊下に、ランプの火が一本だけ揺れている。
その光の中で、少女のオッドアイが、色の違う光を宿した。
「“もう捨てた部品”ですか。それとも、“まだ捨てられてない部品”ですか」
問いは、単純だった。
誰にでも分かる言葉で、誰にでも答えづらいことを聞いてくる。
シュアラは、一拍置いてから答えた。
「そうですね」
自分の胸の内にある引き出しを、一つずつなぞるように言葉を選ぶ。
「“もう捨てた”と書いてあるなら、勝手に使っても、誰も文句は言えません」
リュシアの眉が、わずかに動いた。
「壊れた部品だと思っているなら、それで構いません。ただ、その壊れた部品を、どこにどう押し込むと一番得なのかを考えるのが、今の私の仕事ですから」
リュシアは、じっとシュアラの顔を見た。
笑っているようにも見えるし、怒っているようにも見える。
そのどちらにも見えない、静かな表情。
やがて、彼女はふっと息を吐いた。
「……やっぱり、気持ち悪いです」
虫を観察したあとに感想を言う子どものような声だと、シュアラは感じた。
「壊れた部品のくせに、勝手に別の表を作ろうとしてる。報告には、そう書いておきます」
「ご丁寧にどうも」
シュアラは、それ以上なにも言わなかった。
リュシアは、くるりと踵を返し、廊下の奥へと歩いていった。
遠ざかる足音を聞きながら、シュアラは、腕の中の帳面の重さを確かめる。
(壊れた部品が書く表が、どこまで通用するか)
明日の会議室で、それが試される。
11
あなたにおすすめの小説
感情の無い聖女様は、公爵への生贄にされてしまいました
九条 雛
恋愛
「――私など、ただの〝祈り人形〟でございます。人形に感情はありませぬ……」
悪逆非道の公爵の元へと生贄として捧げられてしまった聖女は、格子の付いた窓を見上げてそう呟く。
公爵は嗜虐に満ちた笑みを浮かべ言い放つ。
「これからは、三食きちんと食べてもらおう。こうして俺のモノとなったからには、今までのような生活を送れるとは思わぬことだな」
――これは、不幸な境遇で心を閉ざしてしまった少女と、その笑顔を取り戻そうとする男の物語。
一途に愛した1周目は殺されて終わったので、2周目は王子様を嫌いたいのに、なぜか婚約者がヤンデレ化して離してくれません!
夢咲 アメ
恋愛
「君の愛が煩わしいんだ」
婚約者である王太子の冷たい言葉に、私の心は砕け散った。
それから間もなく、私は謎の襲撃者に命を奪われ死んだ――はずだった。
死の間際に見えたのは、絶望に顔を歪ませ、私の名を叫びながら駆け寄る彼の姿。
……けれど、次に目を覚ました時、私は18歳の自分に戻っていた。
「今世こそ、彼を愛するのを辞めよう」
そう決意して距離を置く私。しかし、1周目であれほど冷酷だった彼は、なぜか焦ったように私を追いかけ、甘い言葉で縛り付けようとしてきて……?
「どこへ行くつもり? 君が愛してくれるまで、僕は君を離さないよ」
不器用すぎて愛を間違えたヤンデレ王子×今世こそ静かに暮らしたい令嬢。
死から始まる、執着愛の二周目が幕を開ける!
『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています
六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。
しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。
「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!
酔っぱらい令嬢の英雄譚 ~チョコレートを食べていたら、いつの間にか第三王子を救っていたようです!~
ゆずこしょう
恋愛
婚約者と共に参加するはずだった、
夜会当日──
婚約者は「馬車の予約ができなかった」という理由で、
迎えに来ることはなかった。
そして王宮で彼女が目にしたのは、
婚約者と、見知らぬ女性が寄り添う姿。
領地存続のために婿が必要だったエヴァンジェリンは、
感情に流されることもなく、
淡々と婚約破棄の算段を立て始める。
目の前にあった美味しいチョコレートをつまみながら、
頭の中で、今後の算段を考えていると
別の修羅場が始まって──!?
その夜、ほんの少しお酒を口にしたことで、
エヴァンジェリンの評価と人生は、
思いもよらぬ方向へ転がり始める──
2月11日 第一章完結
2月15日 第二章スタート予定
悪役令嬢を断罪したくせに、今さら溺愛とか都合が良すぎますわ!
nacat
恋愛
侯爵令嬢リディアは、無実の罪で婚約者の王太子に断罪された。
冷笑を浮かべ、すべてを捨てて国外へ去った彼女が、数年後、驚くべき姿で帰ってくる。
誰もが羨む天才魔導師として──。
今さら後悔する王太子、ざまぁを噛みしめる貴族令嬢たち。
そして、リディアをひそかに守ってきた公爵の青年が、ようやく想いを告げる時が来た。
これは、不当な断罪を受けた少女が、自分の誇りと愛を取り戻す溺愛系ロマンス。
すべての「裏切られた少女」たちに捧ぐ、痛快で甘く切ない逆転劇。
拾った年上侯爵が甘え上手すぎて、よしよししてたら婚約することになりました
星乃和花
恋愛
⭐︎火木土21:00更新ー本編8話・後日談8話⭐︎
王都の市場で花屋をしているリナは、ある朝――
路地裏で倒れている“美形の年上男性”を拾ってしまう。
熱で弱っているだけ……のはずが、彼はなぜか距離が近い。
「行かないで」「撫でて」「君がいると回復する」
甘えが上手すぎるうえに、褒め方までずるい。
よしよし看病してあげていたら、いつの間にか毎日市場に現れるようになり、
気づけば花屋は貴族の面会所(?)になっていて――
しかも彼の正体は、王都を支える侯爵家の当主だった!?
「君は国のために必要だ(※僕が倒れるから)」
年上当主の“甘え策略”に、花屋の心臓は今日ももたない。
ほのぼの王都日常コメディ×甘やかし捕獲ラブ、開幕です。
お前のような地味な女は不要だと婚約破棄されたので、持て余していた聖女の力で隣国のクールな皇子様を救ったら、ベタ惚れされました
夏見ナイ
恋愛
伯爵令嬢リリアーナは、強大すぎる聖女の力を隠し「地味で無能」と虐げられてきた。婚約者の第二王子からも疎まれ、ついに夜会で「お前のような地味な女は不要だ!」と衆人の前で婚約破棄を突きつけられる。
全てを失い、あてもなく国を出た彼女が森で出会ったのは、邪悪な呪いに蝕まれ死にかけていた一人の美しい男性。彼こそが隣国エルミート帝国が誇る「氷の皇子」アシュレイだった。
持て余していた聖女の力で彼を救ったリリアーナは、「お前の力がいる」と帝国へ迎えられる。クールで無愛想なはずの皇子様が、なぜか私にだけは不器用な優しさを見せてきて、次第にその愛は甘く重い執着へと変わっていき……?
これは、不要とされた令嬢が、最高の愛を見つけて世界で一番幸せになる物語。
【短編】婚約破棄?「喜んで!」食い気味に答えたら陛下に泣きつかれたけど、知らんがな
みねバイヤーン
恋愛
「タリーシャ・オーデリンド、そなたとの婚約を破棄す」「喜んで!」
タリーシャが食い気味で答えると、あと一歩で間に合わなかった陛下が、会場の入口で「ああー」と言いながら膝から崩れ落ちた。田舎領地で育ったタリーシャ子爵令嬢が、ヴィシャール第一王子殿下の婚約者に決まったとき、王国は揺れた。王子は荒ぶった。あんな少年のように色気のない体の女はいやだと。タリーシャは密かに陛下と約束を交わした。卒業式までに王子が婚約破棄を望めば、婚約は白紙に戻すと。田舎でのびのび暮らしたいタリーシャと、タリーシャをどうしても王妃にしたい陛下との熾烈を極めた攻防が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる