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第4話 異変
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≪なんだこの新人!?≫
「……え?」
思わず、間抜けな声が出た。
僕の目の前を漂う黒い水晶の表面に、確かにそう表示されている。
幻覚か? いや、違う。文字は消えることなく、はっきりとそこにあった。疲れているのだろうか。
僕が混乱していると、その下に新しい文字が、まるで湧き出るように次々と現れた。
≪採取はええええwww≫
≪一瞬で終わったぞwwwどうなってんだこれ≫
≪スキル何使ってんの? もしかして鑑定系の上位スキルか?≫
≪いや、それだけじゃない。移動ルートまで最適化されてる。チートだろ≫
チート? なんだその言葉は。
だが、それよりも問題は、なぜ僕の行動に対して、誰かが感想を述べているかのような文章が表示されているのか、ということだ。
まさか。
この記録水晶、僕が見ている映像を、どこかに「転送」してるのか?
そういえば、受付のエリアナさんは言っていた。他の水晶に転送できる、と。
まさか、その転送先が……ギルドの共有掲示板とか、そういう場所なんじゃないだろうな。
背筋に、嫌な汗がじわりと滲んだ。
≪てか、この子、さっき勇者レオニールに追放された子じゃない?≫
≪マジか! あの『暁の剣』の支援職か! あんな有能スキル持ちを追放するとか、レオニールは節穴かよw≫
≪無能はどっちだよって話だよなw≫
僕の思考を肯定するかのように、コメントはさらに勢いを増していく。
僕の素性まで割れている。もう間違いない。これはギルドの冒険者たちが見ているんだ。
「な……な……」
僕は完全にパニックになった。
自分の行動が、知らない大勢の人たちに覗き見られていた。
顔から火が出るほど恥ずかしい。今すぐこの水晶を地面に叩きつけて、森の奥深くに逃げ込みたい。
≪これは伝説の始まりの予感≫
≪不遇スキルだと思ったら、実は神スキルでしたってやつか! 熱い! 俺こういう展開大好き!≫
≪頑張れ新人! 腐った勇者パーティなんて見返してやれ!≫
≪とりあえずお気に入り登録しといた≫
お気に入り登録……?
よくわからない単語まで飛び出してきた。なんだそれは。
でも、それ以上に僕の心を揺さぶったのは、そこに並んだ言葉だった。
「有能スキル」「頑張れ」「応援してる」。
僕の胸の奥で、何かがチクリと音を立てた。
それは痛みではなく、追放されてからずっと凍りついていた心の氷が、ほんの少しだけ融けるような、温かい感覚だった。
今まで、誰にも言われたことのない言葉だったから。
レオニールたちからは、罵倒と軽蔑の言葉しか投げかけられなかった。僕自身も、自分は無価値な存在だと信じ込んでいた。
でも、この水晶の向こう側にいる顔も知らない人たちは、僕のスキルを見て「有能だ」と言ってくれている。僕のことを「応援する」と言ってくれている。
信じられない。
でも、それは紛れもない事実だった。
「ど、どうしよう……」
恥ずかしさと、戸惑いと、そして今まで感じたことのない嬉しさがごちゃ混ぜになって、頭がうまく働かない。
僕はただ呆然と、爆発的な勢いで流れ続けるコメントを、ただ見つめることしかできなかった。
その時、記録水晶がひときわ強く輝いた。
そして、僕の使い古した革袋の中に、チャリン、と硬貨が落ちる音がした。
驚いて中を覗くと、そこには一枚の銀貨が。
さっきまで、僕の全財産はゼロだったはずなのに。
≪初見だけど面白そうだから投げ銭しとくわ! これで美味いもんでも食え!≫
投げ銭。
その言葉が、僕のこれからの運命を大きく変えることになるということを、この時の僕はまだ、知る由もなかった。
「……え?」
思わず、間抜けな声が出た。
僕の目の前を漂う黒い水晶の表面に、確かにそう表示されている。
幻覚か? いや、違う。文字は消えることなく、はっきりとそこにあった。疲れているのだろうか。
僕が混乱していると、その下に新しい文字が、まるで湧き出るように次々と現れた。
≪採取はええええwww≫
≪一瞬で終わったぞwwwどうなってんだこれ≫
≪スキル何使ってんの? もしかして鑑定系の上位スキルか?≫
≪いや、それだけじゃない。移動ルートまで最適化されてる。チートだろ≫
チート? なんだその言葉は。
だが、それよりも問題は、なぜ僕の行動に対して、誰かが感想を述べているかのような文章が表示されているのか、ということだ。
まさか。
この記録水晶、僕が見ている映像を、どこかに「転送」してるのか?
そういえば、受付のエリアナさんは言っていた。他の水晶に転送できる、と。
まさか、その転送先が……ギルドの共有掲示板とか、そういう場所なんじゃないだろうな。
背筋に、嫌な汗がじわりと滲んだ。
≪てか、この子、さっき勇者レオニールに追放された子じゃない?≫
≪マジか! あの『暁の剣』の支援職か! あんな有能スキル持ちを追放するとか、レオニールは節穴かよw≫
≪無能はどっちだよって話だよなw≫
僕の思考を肯定するかのように、コメントはさらに勢いを増していく。
僕の素性まで割れている。もう間違いない。これはギルドの冒険者たちが見ているんだ。
「な……な……」
僕は完全にパニックになった。
自分の行動が、知らない大勢の人たちに覗き見られていた。
顔から火が出るほど恥ずかしい。今すぐこの水晶を地面に叩きつけて、森の奥深くに逃げ込みたい。
≪これは伝説の始まりの予感≫
≪不遇スキルだと思ったら、実は神スキルでしたってやつか! 熱い! 俺こういう展開大好き!≫
≪頑張れ新人! 腐った勇者パーティなんて見返してやれ!≫
≪とりあえずお気に入り登録しといた≫
お気に入り登録……?
よくわからない単語まで飛び出してきた。なんだそれは。
でも、それ以上に僕の心を揺さぶったのは、そこに並んだ言葉だった。
「有能スキル」「頑張れ」「応援してる」。
僕の胸の奥で、何かがチクリと音を立てた。
それは痛みではなく、追放されてからずっと凍りついていた心の氷が、ほんの少しだけ融けるような、温かい感覚だった。
今まで、誰にも言われたことのない言葉だったから。
レオニールたちからは、罵倒と軽蔑の言葉しか投げかけられなかった。僕自身も、自分は無価値な存在だと信じ込んでいた。
でも、この水晶の向こう側にいる顔も知らない人たちは、僕のスキルを見て「有能だ」と言ってくれている。僕のことを「応援する」と言ってくれている。
信じられない。
でも、それは紛れもない事実だった。
「ど、どうしよう……」
恥ずかしさと、戸惑いと、そして今まで感じたことのない嬉しさがごちゃ混ぜになって、頭がうまく働かない。
僕はただ呆然と、爆発的な勢いで流れ続けるコメントを、ただ見つめることしかできなかった。
その時、記録水晶がひときわ強く輝いた。
そして、僕の使い古した革袋の中に、チャリン、と硬貨が落ちる音がした。
驚いて中を覗くと、そこには一枚の銀貨が。
さっきまで、僕の全財産はゼロだったはずなのに。
≪初見だけど面白そうだから投げ銭しとくわ! これで美味いもんでも食え!≫
投げ銭。
その言葉が、僕のこれからの運命を大きく変えることになるということを、この時の僕はまだ、知る由もなかった。
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