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プロローグ
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スリーヘッドフィギュアオンライン、通称THF。
内容は中世風の世界を舞台にしたロールプレイングで、魔物を倒すもよし、生産に命をかけるもよし、土地を買って農家するもよし。
言ってしまえば先行で発表されている他社のタイトルと大差はない。
他社タイトルとの差別化策は、フルダイブ式のリアルさを追求したゲーム最盛期にあって、プレイヤーアバターとして三頭身程度のミニキャラを採用したこと。
この差別化策がリアルすぎる描写が苦手な女性ゲーマーや、普段は可愛い物好きなことを隠している男性ゲーマーに刺さり、初回出荷から好調な売れ行きを維持している。
そして今日、初回出荷分を手に入れることができなかった第二陣と呼ばれるプレイヤー達の元にようやくTHFが届けられた。
ある者は会社を休み、ある者は学校をサボり、ある者は家事を放棄してゴーグル一体型の筐体の電源を入れる。
そんな第二陣の中に、三十歳目前の会社員がいた。
越智正利。
地方都市の信用金庫に勤める彼は、ファミリーなコンピューターを入り口に、プレイするステーションまで王道と思われるゲームを網羅する程度にはゲームに触れてきた。
そんな彼も歳を重ね、学生時代ほどはゲームに時間を割くことができなくなっていたが、そんな時に発売が発表されたのがTHFだった。
特段可愛い物好きなわけではないし、VRゲームに興味があったわけでもない。
ただ、彼は某有名ロボットアニメシリーズが大好きだった。
勿論それらが出演するゲームシリーズも。
さらに言うなら、そのロボットの頭身を低くしてデフォルメしたシリーズがたまらなく好きだったのだ。
そんな彼なのでそれまで食指の動かなかったVRゲームというジャンルにも関わらず、初回出荷分を手に入れるべく予約のためネットにアクセスした。
が、しかし。
予想以上に同好の士が多かったようで初回出荷分は抽選が行われることになり、見事落選。
次回出荷分の権利を得ることで泣く泣く初回分を諦めた経緯がある。
初回出荷から約二週間。
もっと時間がかかるかと思ったが、メーカーも旬を逃してたまるかとばかりにラインを稼働させたようで、予想よりはるかに早く正利のもとにTHFがやってきた。
電源を入れた途端、それまでいた部屋の風景が消える。
一瞬のブラックアウトののちに目の前に現れたのは神父服を着た三頭身のキャラクター。
丸顔に白髪、手には聖書的な本を携えていた。
「ようこそTHFの世界へ。私はこの世界を統べる全能の神アデラール様の使徒、アラバンと申します」
どうやらこの壮年男性がチュートリアル担当キャラということらしい。
おじさんすらもコミカルな見た目に変える三頭身化に満足をおぼえた正利は、そこで初めてすでに自分も三頭身になっていることに気づいた。
「戸惑うことはありません。この世界では皆一様にそのような姿なのです。では、早速ですがあなた自身のお話を聞かせていただけますか?」
そこから約30分ほどかけて質疑応答が展開された。
お決まりのキャラクター名から始まり、運動経験の有無、好きな食べ物や音楽、異性のタイプまで。
このゲームの三頭身キャラ以外の特徴として、スタート時点で自分の思ったとおりになるのはキャラの名前だけという点が挙げられる。
職業や各種スキルなどはこのアラバンとの質疑応答によって自動で決定されてしまうのだ。
もちろんこの点については発売前からアナウンスされていることなのでクレームになることはない。
むしろそれが面白いと感じるゲーマーしか購入していないのだろう。
「ふむ、よろしいでしょう。私、全能の神アデラール様の使徒アラバンが、あなたに祝福を授けます」
アラバンがそういうと同時に聖書的な何かから放たれた光が正利のアバターを包み込み、光が収まるとキャラメイクの結果がステータスウィンドウに展開される。
name :マサトシ
job :投擲師
a-skill:投擲、歌唱
p-skill:スタミナタンク、コンダクター
「投擲師マサトシよ。あなたがこの世界にて何を為すか。楽しみにしていますよ」
内容は中世風の世界を舞台にしたロールプレイングで、魔物を倒すもよし、生産に命をかけるもよし、土地を買って農家するもよし。
言ってしまえば先行で発表されている他社のタイトルと大差はない。
他社タイトルとの差別化策は、フルダイブ式のリアルさを追求したゲーム最盛期にあって、プレイヤーアバターとして三頭身程度のミニキャラを採用したこと。
この差別化策がリアルすぎる描写が苦手な女性ゲーマーや、普段は可愛い物好きなことを隠している男性ゲーマーに刺さり、初回出荷から好調な売れ行きを維持している。
そして今日、初回出荷分を手に入れることができなかった第二陣と呼ばれるプレイヤー達の元にようやくTHFが届けられた。
ある者は会社を休み、ある者は学校をサボり、ある者は家事を放棄してゴーグル一体型の筐体の電源を入れる。
そんな第二陣の中に、三十歳目前の会社員がいた。
越智正利。
地方都市の信用金庫に勤める彼は、ファミリーなコンピューターを入り口に、プレイするステーションまで王道と思われるゲームを網羅する程度にはゲームに触れてきた。
そんな彼も歳を重ね、学生時代ほどはゲームに時間を割くことができなくなっていたが、そんな時に発売が発表されたのがTHFだった。
特段可愛い物好きなわけではないし、VRゲームに興味があったわけでもない。
ただ、彼は某有名ロボットアニメシリーズが大好きだった。
勿論それらが出演するゲームシリーズも。
さらに言うなら、そのロボットの頭身を低くしてデフォルメしたシリーズがたまらなく好きだったのだ。
そんな彼なのでそれまで食指の動かなかったVRゲームというジャンルにも関わらず、初回出荷分を手に入れるべく予約のためネットにアクセスした。
が、しかし。
予想以上に同好の士が多かったようで初回出荷分は抽選が行われることになり、見事落選。
次回出荷分の権利を得ることで泣く泣く初回分を諦めた経緯がある。
初回出荷から約二週間。
もっと時間がかかるかと思ったが、メーカーも旬を逃してたまるかとばかりにラインを稼働させたようで、予想よりはるかに早く正利のもとにTHFがやってきた。
電源を入れた途端、それまでいた部屋の風景が消える。
一瞬のブラックアウトののちに目の前に現れたのは神父服を着た三頭身のキャラクター。
丸顔に白髪、手には聖書的な本を携えていた。
「ようこそTHFの世界へ。私はこの世界を統べる全能の神アデラール様の使徒、アラバンと申します」
どうやらこの壮年男性がチュートリアル担当キャラということらしい。
おじさんすらもコミカルな見た目に変える三頭身化に満足をおぼえた正利は、そこで初めてすでに自分も三頭身になっていることに気づいた。
「戸惑うことはありません。この世界では皆一様にそのような姿なのです。では、早速ですがあなた自身のお話を聞かせていただけますか?」
そこから約30分ほどかけて質疑応答が展開された。
お決まりのキャラクター名から始まり、運動経験の有無、好きな食べ物や音楽、異性のタイプまで。
このゲームの三頭身キャラ以外の特徴として、スタート時点で自分の思ったとおりになるのはキャラの名前だけという点が挙げられる。
職業や各種スキルなどはこのアラバンとの質疑応答によって自動で決定されてしまうのだ。
もちろんこの点については発売前からアナウンスされていることなのでクレームになることはない。
むしろそれが面白いと感じるゲーマーしか購入していないのだろう。
「ふむ、よろしいでしょう。私、全能の神アデラール様の使徒アラバンが、あなたに祝福を授けます」
アラバンがそういうと同時に聖書的な何かから放たれた光が正利のアバターを包み込み、光が収まるとキャラメイクの結果がステータスウィンドウに展開される。
name :マサトシ
job :投擲師
a-skill:投擲、歌唱
p-skill:スタミナタンク、コンダクター
「投擲師マサトシよ。あなたがこの世界にて何を為すか。楽しみにしていますよ」
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