三頭身オンライン~デフォルメキャラで行くVR世界~

太郎

文字の大きさ
1 / 5

プロローグ

しおりを挟む
  スリーヘッドフィギュアオンライン、通称THF。 
 内容は中世風の世界を舞台にしたロールプレイングで、魔物を倒すもよし、生産に命をかけるもよし、土地を買って農家するもよし。
 言ってしまえば先行で発表されている他社のタイトルと大差はない。
 他社タイトルとの差別化策は、フルダイブ式のリアルさを追求したゲーム最盛期にあって、プレイヤーアバターとして三頭身程度のミニキャラを採用したこと。
 この差別化策がリアルすぎる描写が苦手な女性ゲーマーや、普段は可愛い物好きなことを隠している男性ゲーマーに刺さり、初回出荷から好調な売れ行きを維持している。
 そして今日、初回出荷分を手に入れることができなかった第二陣と呼ばれるプレイヤー達の元にようやくTHFが届けられた。
 ある者は会社を休み、ある者は学校をサボり、ある者は家事を放棄してゴーグル一体型の筐体の電源を入れる。
 そんな第二陣の中に、三十歳目前の会社員がいた。
 越智正利。
 地方都市の信用金庫に勤める彼は、ファミリーなコンピューターを入り口に、プレイするステーションまで王道と思われるゲームを網羅する程度にはゲームに触れてきた。
 そんな彼も歳を重ね、学生時代ほどはゲームに時間を割くことができなくなっていたが、そんな時に発売が発表されたのがTHFだった。
 特段可愛い物好きなわけではないし、VRゲームに興味があったわけでもない。
 ただ、彼は某有名ロボットアニメシリーズが大好きだった。
 勿論それらが出演するゲームシリーズも。
 さらに言うなら、そのロボットの頭身を低くしてデフォルメしたシリーズがたまらなく好きだったのだ。
 そんな彼なのでそれまで食指の動かなかったVRゲームというジャンルにも関わらず、初回出荷分を手に入れるべく予約のためネットにアクセスした。
 が、しかし。
 予想以上に同好の士が多かったようで初回出荷分は抽選が行われることになり、見事落選。
 次回出荷分の権利を得ることで泣く泣く初回分を諦めた経緯がある。
 初回出荷から約二週間。
 もっと時間がかかるかと思ったが、メーカーも旬を逃してたまるかとばかりにラインを稼働させたようで、予想よりはるかに早く正利のもとにTHFがやってきた。
 電源を入れた途端、それまでいた部屋の風景が消える。
 一瞬のブラックアウトののちに目の前に現れたのは神父服を着た三頭身のキャラクター。
 丸顔に白髪、手には聖書的な本を携えていた。

「ようこそTHFの世界へ。私はこの世界を統べる全能の神アデラール様の使徒、アラバンと申します」

 どうやらこの壮年男性がチュートリアル担当キャラということらしい。
 おじさんすらもコミカルな見た目に変える三頭身化に満足をおぼえた正利は、そこで初めてすでに自分も三頭身になっていることに気づいた。

「戸惑うことはありません。この世界では皆一様にそのような姿なのです。では、早速ですがあなた自身のお話を聞かせていただけますか?」

   そこから約30分ほどかけて質疑応答が展開された。
 お決まりのキャラクター名から始まり、運動経験の有無、好きな食べ物や音楽、異性のタイプまで。
 このゲームの三頭身キャラ以外の特徴として、スタート時点で自分の思ったとおりになるのはキャラの名前だけという点が挙げられる。
 職業や各種スキルなどはこのアラバンとの質疑応答によって自動で決定されてしまうのだ。
 もちろんこの点については発売前からアナウンスされていることなのでクレームになることはない。
 むしろそれが面白いと感じるゲーマーしか購入していないのだろう。

「ふむ、よろしいでしょう。私、全能の神アデラール様の使徒アラバンが、あなたに祝福を授けます」

 アラバンがそういうと同時に聖書的な何かから放たれた光が正利のアバターを包み込み、光が収まるとキャラメイクの結果がステータスウィンドウに展開される。

name :マサトシ
job     :投擲師 
a-skill:投擲、歌唱
p-skill:スタミナタンク、コンダクター

 
「投擲師マサトシよ。あなたがこの世界にて何を為すか。楽しみにしていますよ」



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ト・カ・リ・ナ〜時を止めるアイテムを手にしたら気になる彼女と距離が近くなった件〜

遊馬友仁
青春
高校二年生の坂井夏生(さかいなつき)は、十七歳の誕生日に、亡くなった祖父からの贈り物だという不思議な木製のオカリナを譲り受ける。試しに自室で息を吹き込むと、周囲のヒトやモノがすべて動きを止めてしまった! 木製細工の能力に不安を感じながらも、夏生は、その能力の使い途を思いつく……。 「そうだ!教室の前の席に座っている、いつも、マスクを外さない小嶋夏海(こじまなつみ)の素顔を見てやろう」 そうして、自身のアイデアを実行に映した夏生であったがーーーーーー。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

月弥総合病院

御月様(旧名 僕君☽☽‪︎)
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。 また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。 (小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

不倫妻への鎮魂歌 ―サレ夫が選んだ、最も残酷で静かな復讐―

MisakiNonagase
大衆娯楽
「サレ夫、再生。不倫妻、転落。──その代償は、あまりに重い。」 「嘘で塗り固めた20年より、真実で歩む明日がいい。」 失って初めて気づく、守られていた日々の輝き。 46歳の美香にとって、誠実な夫と二人の息子に囲まれた生活は、退屈で窮屈な「檻」だった。若い男からの甘い誘惑に、彼女は20年の歳月を投げ打って飛び込んだ。 しかし、彼女が捨てたのは「檻」ではなく「聖域」だったのだ。 不倫、発覚、離婚、そして孤独。 かつての「美しい奥様」が、厚化粧で場末のスナックのカウンターに立つまでの足取りと、傷つきながらも真実の幸福を掴み取っていく夫・徹の再生を描く。 家族とは何か、誠実さとは何か。一通の離婚届が、二人の人生を光と影に分かつ。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

処理中です...