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C級の絶望(1-11)
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「ああ。もう…」
フェリスは目覚めて早々、カーテンの隙間から差し込む陽光に溜息を漏らした。
…夜明けと共に準備をして出発するつもりだったのに…
昨夜は冒険者ギルドから自宅に帰るとすぐに、ギルドカードの請求明細の確認を始めた。
見るのが嫌になるほど、細々と毎日の食事代や乗り合い馬車代などの請求があり、1人分ではない請求もあり、相手とはどんな関係なのかは分からないが、フェリスの稼ぎで誰かに奢っていたと思われるものも多かった。
…もしくは、代金を立て替えて現金を受け取ることで、現金を手にしていたか…。
一夫多妻も認められたこの国では、浮気だと咎めることも出来ないが、その借金をなぜ自分が返済しなければならないのか、フェリスは納得がいかなかった。
フェリスがいつかは食べてみたいと思っていた有名飲食店の請求や服屋の請求…全く我慢する様子のない、請求の明細を見れば見るほど苛立ちが募り、なかなか寝付けず、やっと寝付いたのは明け方だった。
「仕方ない。向こうで何か食べるか。」
フェリスはさっと着替えて武器を装備すると自宅を後にした。
馬に揺られること2時間。
川溜まりがあるオアシスが見えたところで、馬を降り適当な岩に手綱を結んだ。
「少しだけ待っててね。」
馬を撫でながらそう言葉を残すと欠伸混じりに川溜まりの方へ歩き出す。
何やら川溜まりの方が騒がしい。
半裸の男女がこちらに走って来ていた。
後ろにスナッピングタートルが迫っている。
女が何かこちらに向かって叫んだ。
…まぁ、状況から見て、真っ昼間から盛り上がってるところを襲われたんでしょうね…。お盛んですこと…。叫んだのは「助けて」か「逃げて」だろうし、戦闘を譲る必要はなさそうね…
フェリスは気にせずそのまま歩いた。
半裸の男女がもつれて転倒し、男が縋る女を突き飛ばした。
「悪いけど、底辺F級はここで喰われて時間を稼いでくれ。C級の俺が生き残った方がより多くの人間を救えるんだ…。」
もう言葉が聞こえる距離になっていた。
…クズだな。
フェリスは溜息をついた。
男が再びこちらに走りだした。
突き飛ばされた女の手には男が腰に巻いていた布が残されていた。
「きもっ!」
全裸でこちらに全力疾走してくる男_ランスにフェリスは独り言のように悪態をついた。
「悪いが、この状況を見て正常な判断が出来ない馬鹿を連れて逃げるつもりはない。馬は貰って行くよ。君はあの女と喰われて、せいぜい時間を稼いでくれ。」
ランスはそう言いながら、馬を奪おうとフェリスの横を走り抜け__
「あっっ!!あっあっあぁ!!!!」
ランスは情けない声を出しながら、全力疾走の勢いのまま転倒し、顔面スライディングを見せた。
走り抜け__ようとすれ違った瞬間、フェリスに膝裏を槍の柄で突かれたのだ。
いわゆるひざカックン_つまり抗いようのない身体の反射作用により盛大に転倒した_そして、更に驚いた馬に蹴りあげられ、白い欠片と共に宙を舞った。歯が数本折れたようだ。
「あはは。おかしっ…」
…ふふっ。死ぬ前に面白いものが見れて良かったわ。スカッとしちゃった。
全裸の女_シェリルは頬を伝う涙を拭いながら笑った。
__微笑むシェリルの上にスナッピングタートルの大きな影が重なり、シェリルは目を閉じた__
フェリスは目覚めて早々、カーテンの隙間から差し込む陽光に溜息を漏らした。
…夜明けと共に準備をして出発するつもりだったのに…
昨夜は冒険者ギルドから自宅に帰るとすぐに、ギルドカードの請求明細の確認を始めた。
見るのが嫌になるほど、細々と毎日の食事代や乗り合い馬車代などの請求があり、1人分ではない請求もあり、相手とはどんな関係なのかは分からないが、フェリスの稼ぎで誰かに奢っていたと思われるものも多かった。
…もしくは、代金を立て替えて現金を受け取ることで、現金を手にしていたか…。
一夫多妻も認められたこの国では、浮気だと咎めることも出来ないが、その借金をなぜ自分が返済しなければならないのか、フェリスは納得がいかなかった。
フェリスがいつかは食べてみたいと思っていた有名飲食店の請求や服屋の請求…全く我慢する様子のない、請求の明細を見れば見るほど苛立ちが募り、なかなか寝付けず、やっと寝付いたのは明け方だった。
「仕方ない。向こうで何か食べるか。」
フェリスはさっと着替えて武器を装備すると自宅を後にした。
馬に揺られること2時間。
川溜まりがあるオアシスが見えたところで、馬を降り適当な岩に手綱を結んだ。
「少しだけ待っててね。」
馬を撫でながらそう言葉を残すと欠伸混じりに川溜まりの方へ歩き出す。
何やら川溜まりの方が騒がしい。
半裸の男女がこちらに走って来ていた。
後ろにスナッピングタートルが迫っている。
女が何かこちらに向かって叫んだ。
…まぁ、状況から見て、真っ昼間から盛り上がってるところを襲われたんでしょうね…。お盛んですこと…。叫んだのは「助けて」か「逃げて」だろうし、戦闘を譲る必要はなさそうね…
フェリスは気にせずそのまま歩いた。
半裸の男女がもつれて転倒し、男が縋る女を突き飛ばした。
「悪いけど、底辺F級はここで喰われて時間を稼いでくれ。C級の俺が生き残った方がより多くの人間を救えるんだ…。」
もう言葉が聞こえる距離になっていた。
…クズだな。
フェリスは溜息をついた。
男が再びこちらに走りだした。
突き飛ばされた女の手には男が腰に巻いていた布が残されていた。
「きもっ!」
全裸でこちらに全力疾走してくる男_ランスにフェリスは独り言のように悪態をついた。
「悪いが、この状況を見て正常な判断が出来ない馬鹿を連れて逃げるつもりはない。馬は貰って行くよ。君はあの女と喰われて、せいぜい時間を稼いでくれ。」
ランスはそう言いながら、馬を奪おうとフェリスの横を走り抜け__
「あっっ!!あっあっあぁ!!!!」
ランスは情けない声を出しながら、全力疾走の勢いのまま転倒し、顔面スライディングを見せた。
走り抜け__ようとすれ違った瞬間、フェリスに膝裏を槍の柄で突かれたのだ。
いわゆるひざカックン_つまり抗いようのない身体の反射作用により盛大に転倒した_そして、更に驚いた馬に蹴りあげられ、白い欠片と共に宙を舞った。歯が数本折れたようだ。
「あはは。おかしっ…」
…ふふっ。死ぬ前に面白いものが見れて良かったわ。スカッとしちゃった。
全裸の女_シェリルは頬を伝う涙を拭いながら笑った。
__微笑むシェリルの上にスナッピングタートルの大きな影が重なり、シェリルは目を閉じた__
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