転生したらなぜか双子になってたけどそれはそれで便利だし気にせずこの素晴らしき世界を楽しみます

気まぐれ八咫烏

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水の精霊編

護衛クエスト

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 釣りは残念な結果に終わったが、さてこれからはお仕事だ。

 船首に来るとジーナとライカがいたので、ジーナと交代した。



 船首部分では、おそらくユイが作ったと思われるボックスが置いてあった。



「これ、なに?」



「なんでも、キラーフィッシュとか獲れたから保管ボックスなんだって」



 俺はボックスを開けてみた。

 見事に捌かれ身とアラに分けられている魚があった。

 底には氷が詰まっているようだ。うん、ユイらしい。



 俺はフタを閉じると、ジーナが座っていた場所に腰を下ろした。



 海面を見ていると、キラーフィッシュ以外にも大きなヤドカリを背負ったシースライムや体長50センチはあるカニの魔物のエイヘイガニ、ワカメや昆布の集合体に目が付いた魔物等、いろんな魔物が寄ってきた。

 でも魔物としては小ぶりなものが多く、どれも船に対して有効な攻撃はできそうになかったが、とりあえず【風球ウインドボール】でやっつけておいた。



 ふと、ユイのボックスの近くを見るとモリが置いてあった。

 拾ってみると、先っぽは鋭いが返しが付いていた。反対側にはロープが付けてあった。



 なるほど、こいつで獲物を仕留めて引っ張り上げたのか。

 それでキラーフィッシュを入手できたんだな。



「これのほうが暇つぶしになりそうだ」



 俺はちょうど寄ってきたキラーフィッシュに目がけて【身体機能強化ブースト】を掛けて銛を投げつけた!

 一発で命中し、貫通した。そのままロープを引っ張り戻した。



「こりゃあ釣りよりもなんぼかいいな」



「初めてゲットだね!」



「ライカもやってみる?」



「ボクはさっき何度かやって獲物をゲットできたからもういいよ。それよりも、せっかく獲れたんだから捌いて保管しておいたらどうかな?」



「うん、そうする」

 俺は魔法鞄から血染めのナイフを取り出すと、キラーフィッシュを捌く。

 身とアラを分けてボックスに入れると、残りは捨てた。



 改めて船首部分に座り、たまに出てくる魔物に魔法を使う作業へと戻った。



 ちょうど、キラーフィッシュに【風球ウインドボール】を使ったところで後ろから声を掛けられた。



「そんな小物まで退治してくれていたのかい?」



 見ると、サーシェさんが俺達の様子を見に来ていた。

 エロいねーちゃんの腰に手を回して。

 オーベルさんををはべらせたサーシェさんは、もうそういう大人の関係なんですねって言い表しているようだった。



「小さめの魔物は退治しなくてよかったんですか?」

 丁度疑問点だったので聞いておく。



「ああ、船に影響ない小物は放置で構わないよ。それよりも、それを相手にして体力魔力を使いすぎて本当に脅威の魔物が来た時に戦力にならないほうが問題だからね」



「なるほど、そうですね。では次からは放置するようにします。ところで、オーベルさんはここにいて操船は大丈夫なんですか?」



「港など難易度が高いところはオーベルがするが、それ以外の簡単なところはガイン達でも問題ない」



「なるほど。確かにずっとオーベルさん一人が操舵するわけにもいかないですもんね」



「そういうことだ」



「それと、キラーフィッシュが多少とれたので食材として提供したいのですがいいですか?」



「もちろんだとも。うちは奴隷にもしっかり食事を与えるようにしているが船旅が続くとどうしても保存食が多くなってしまうから新鮮な食材は大歓迎だよ。あとでレンに取りに来るように伝えておこう」



「うちには魚好きがいますのでこれからもちょくちょく獲りますね」



「うむ、分かった。好きにしてくれて構わない。が、護衛はしっかりやってくれ。基本的に陸地からそう離れていない所を行くだけなので危険性は低いとは思っているがね。それでも大事な商品が積んであるんだから頼むね」



 それだけ言うとサーシェさんとオーベルさんは立ち去って行った。



 オーベルさんと会話していると奴隷が当たり前の世界にいるんだなぁと実感してしまう。





 サーシェさん達が立ち去ったあとしばらくするとレンがやってきた。



「お呼びでしょうか?」



「ああ、ここのボックスにキラーフィッシュがあるから食材として使ってくれないか。うちには魚好きがいるからね」

 するとレンはボックスの中を確認した。

 リンダは目を輝かせていた。



「承知しました。昼食はもう出来ておりますが、夕食にはさっそく料理させていただきます」



「やったにゃ!!」

 結局魚釣りは坊主だったものの、魚にありつけると知って喜ぶリンダ。



「ところで、サーシェさんの仕事ってどんなことをしているの?」



「そうですね、私がサーシェ様の性奴隷になってからは船を手に入れたこともあり、こうやってシーマで仕入れたものをゴカジに運んで販売、ゴカジで仕入れたものをシーマに持って行き販売というのが多いですね」

 あんなに否定されたのに性奴隷って言い続けるんだな(笑)



「私が来る前はシーマから竜車を使って少し離れた町や村に荷物を運んで販売するお仕事をされていたようです」

 所謂貿易商人というやつなのか。



「じゃあほとんど家には帰れない仕事なんだね」



「そうですね、船で移動中は帰れませんがシーマにもゴカジにもそれぞれ自宅を兼ねたお店を持っていらっしゃいますから船旅が終われば自宅におられますよ」



「へぇ、そうなんだ。ちなみに家族とかはどっちにいるの?」



「どっちといいますか、両方に居られます。サーシェ様は二人の奥様がおりまして、お子様もそれぞれ4人ずついらっしゃいます」



 ああ、そうなんだ。

 確かにこの世界は多夫多妻っていうも認められている。

 実際にはお金持ちがそれを取り入れているって言い方の方が近いかもしれないが。

 少なくとも前世日本のように一夫一妻制しかないということは無い。



「ところで、レンは自分から奴隷に志願したって言っていたけど、どうしてなの?」



「私はただ、独自の性なる道を追及しております。そこでサーシェ様の目にはその道の光が宿っているように見えたのです。実際、あの方は結構な実力をお持ちなのですよ」



 それってやっぱり、サーシェさんがサディストってことだよね?

 リンダはたぶん聖なる道って思ってるんだろうな……

 あまり深く聞かない方がよさそうだ。



「そっか。よく分からないけど分かった」



「そしてその光はケン様やユイ様にも宿っていると思います」

 いやいや、俺達にはないって。



「わたしにはあるのかにゃ?」

 ああ、ついにリンダが入ってきちゃった。



「リンダ様は……少しありそうですね」

 ありゃ、リンダちゃんSだったのね。

 確かに猫って鼠を甚振って遊んだりするもんあぁ。



「やったにゃ!」

 リンダは何のことかは理解してないまま喜んでいる。

 だが、このままレンに深入りするつもりはない。さっさと切り上げよう



「じゃあ、とりあえず食材の件よろしくね。あと、暇つぶしにちょくちょく増えるかもしれないからたまに見に来てくれるかい?」



「では、日に何度かこちらへお伺いするようにします」



「ああ、よろしく」

 というと、レンはその体では到底持てそうもない量の食材が入ったユイボックスを持ち上げると、船内に行った。



 魔族が強靭な肉体を持っているというのは本当らしい。

身体機能強化ブースト】したライカくらいは力がありそうだ。



 そんな話をしてしばらく経った頃、ユイがやってきた。

「おつかれ、交代の時間だよ」



「ありがとう。ああ、ユイボックスにあった食材はレンに渡しといたよ。夕食に使うってさ」



「了解」



「あと、サーシェさんに確認したんだけど船に影響ない小物は放置でいいそうだ」



「やっぱりそうだったんだね。それも了解。あ、食堂で昼食が出来ていたよ。食べてきなよ」



「ああ、そうさせてもらう。そろそろ俺もハラヘリメーターがグーグーと警鐘を鳴らしていたんだ」



 そういうと俺は船首部分から船内へと移動した。



 食堂に着くと、レンが昼食の給仕をしてくれた。

 ちなみにメニューは鶏肉とキノコのシチューっぽいものだった。

 昼食を終えた頃、レンが話しかけて来た。



「ケン様、もしよろしければ賞金首を捕まえた時の話の続き、教えてもらえませんか?」



 続きっていうよりも拷問された話を聞きたいのだろうが。



「ああ、そうだね。どこまでは話したっけ? 俺が不意打ちで背中を切られて気が付いたら両手を吊られてたってところからでいいか?」



「はい!ぜひ!」



「まぁ一度捕まった時にすっぽんぽんにはされていたんだが、この時はそこの梁から両手を縛られて吊られていたんだが、両足も縛られていた。ちなみに戦いの最中俺が魔法を使ったのを見ていたからか、詠唱できないように猿轡まで噛まされてだ。背中合わせに同様に両手を吊られていたライカには猿轡なかったから俺の魔法を警戒したんだろうな」



「ライカ様と背中合わせで吊られていたんですね、ふむふむ!」

 興奮するんじゃないの。



「んで、俺達の足元には魔法陣があってな。それが魔法の発動を阻害する魔法陣だった。猿轡で詠唱できなくされた上にこんなものまで設置されてたんだが、最初それが分からなくてね。実は俺は無詠唱で魔法を発動できるから猿轡なんて意味はなかったんだけど、この魔法陣がやっかいだったわけよ。手首からあいつらにバレないように無詠唱で魔法を発動しようとしても発動しなかったときは焦ったね」



「ということは無抵抗のままケーンで打ち据えられたんですか?」



「ケーンっていうか、それも俺が作った棒なんだけど。それであいつらこんな可愛い子供相手に打ち据えるんだ。何度も。もう人としての心は持っていないね」



 自分でかわいいと言って何が悪い!だってかわいいだろ?5歳児だぜ?



「しかも戦闘中に足を燃やしたヤツがいてそいつが仕返しにって縄で俺の息子を根元をぐるぐる巻きにしやがってな」



「おお!それで!それで!」

 だから興奮しなさんなよ。俺はもう息子がいなくなるかと思って大変だったんだからな。



「縄の反対側には石を結びつけたんだ。それを俺に見せながら2メートルほど先の梁の上へ投げたんだ。するとどうなるかって話よ」



「梁を超えて落ちたらぐるぐる巻きにされたところが引っ張られる!」



「引っ張られるなんて生易しいものじゃなかったね!引っこ抜けるかと思ったね!いや、ほぼ引っこ抜けたね!」

 俺も話していたらちょっと大げさになってきたような気がするが、まいっか。



「抜けたんですか!?」

 そういいながら俺の股間を見てくる。



「抜けたと言っても過言ではない衝撃だったということだよ」



「ああ、そうですよね」

 ちょっと残念そうな顔すんなよ!



「その後、引っこ抜けそうな状態のまま棒で殴られてさ。もうどこが痛いのかよく分からなくなってきてさ」



「ああっ!はいっ!それで? それで?」



「このままじゃヤバイと思った俺はまぁ、やり方は企業秘密なんだがその状態から敵を倒し魔法陣を壊し縄を外したわけよ」



「おお!スパイみたいでカッコイイ!」



「それで倒したヤツラを同じ格好にさせてやろうと思ったけど重たいしさ。とりあえず手首を縛って梁に吊っておいたんだ」



「なるほど。でも一人は見たこともない捕縛術で捕らえたんですよね?」



「ああ、俺の息子を虐めたヤツにだけは特別に亀甲縛りをプレゼントしてやったぜ。あれはな、もがけばもがくほど縄が締まっていくんだ」



「おお!あの芸術的な縛り技はそんな効果があったのですねっ!!」



「それで敵を無力化できたから甲板に出たらユイがこっちに救助に来てくれていたんだ」



「なるほど!とてもありがたいお話でした!」



「あれ? まだ無事に港まで戻ってないけど、もういいの?」



「はい!大変参考になりました!あとはできればその亀甲縛りというのを見せてもらえたらうれしいところです」



「あぁ……うん。それはまた機会があったらね」



「では、その時を心待ちにしております!」

 その時が来ないことを祈ろう。



「さて、ご飯食べたら眠くなった。ちょっと俺はお昼寝してくる」



「では寝室のベッド右側をお遣いください」



「わかった。おやすみ」



 そう言うと寝室へ行きベッドに横になるとお昼寝を始めた。





 お昼寝の後見張りの交代に行き、それが終わると夕食を取って仮眠、また見張りと仕事をこなしていった。



 船旅はいたって順調で小物の魔物位しかやってこなかった。

 レンはちょくちょく俺のところにきて様子を聞いてきたが、あいつはきっと亀甲縛りが見たいから様子を伺っていたのだろうと思う。

 それは置いといて、見張りの時に何度かキラーフィッシュを取って食材に回していたのでリンダはいつもご機嫌だった。



 こんな平和な船旅が続くといいなと思っていた。



 事が起こったのは5日目の夜の事だった。



 カーン!カーン!カーン!カーン!

「非常事態だ!来てくれ!」



 俺は丁度仮眠の真っ最中だったが、そこにサーシェさんが来て甲板に出るよう言ってきた。

 隣のベッドからはライカも飛び起きた。

 部屋を出ると丁度食事中だったのかキッチンのある部屋からジーナも飛び出て来た。



 俺達はは急いで甲板に出た!



 出たところでは状況が把握できないため、まずは操舵室へと向かった。



「何があったんですか!?」



「正体不明の船がこちらをずっと追いかけてきている。見えるか?」



 俺は目を凝らしたが曇り空には月明りもなく、暗闇には何も見えなかった。

 目標を確認するためにはこの船の帆先が光っているのが邪魔な位だ。



「どっちの方角ですか?」



「左舷後方、8時の方向です」

 おそらく魔族の卓越した視覚では見えているであろうレンが答えた。



「【照光シャイン】」

 俺は操舵室から出るとマストに登り、魔法を唱えた。

 直進性の光が多いサーチライトのようにだ。



 そこに浮かび上がってきたのは、この船よりもデカい豪華客船だった。

 ただし、この船は動いているのが不思議なほどボロボロだった。



「ゆ……幽霊船!?」



 俺はそこから見張り部隊に光信号を送ると、再度操舵室に戻った。





 すぐに見張りをしていたユイとリンダが操舵室にやってきた。





「あの船はなんですか??」



「まさか……そんな……」

 オーベルさんは震えながら何か言っている



「心当たりがあるんですか?オーベルさん!」

 俺は問い詰めるが精神状態が普通ではないオーベルさんの耳には入っていない。

 そこへ、代わりにサーシェさんが答えた。





「あれは……おそらくスドエの幽霊船だ」



「スドエの幽霊船? なんですかそれは」



「船乗りたちに聞いた噂話だよ。スドエ海賊団の船が嵐で沈んだらしいが、いまだに現世をさまよって幽霊船になったってな。発見されたらどこまでも追いかけられてあの世まで連れていかれるって話だ」



 なんとまぁ、見つけられたらあの世行ですか。ってかその話を聞いた人は見つからなかったのかな?



「どちらにしても逃げるしかない。護衛部隊は逃げ切れるようなんとかしてくれ!」



「わかりました!」

 そういうと俺達5人は左舷後方へと向かった。



 サーチライトに照らされた幽霊船は、マストこそしっかりあるものの、帆はボロボロに破れておりとてもまともに航行可能とは思えない。

 しかし、なぜかちゃんと動いて俺達の船を追いかけてくる。しかも、少しずつ距離が詰まっているようにも感じるからあちらのほうが足が速いのかもしれない。



「さて、どうする?」



「先制攻撃にゃ!」



「いや、幽霊船だからといって邪悪なものとは限らないんじゃない?」



「いや、そこから!?幽霊船なんて邪悪に決まっているでしょ」



「陽気な魔女と船員が宴をしているだけかもしれない。なんて幽霊船の話もあるよね」

 まぁ、前世でだけど。



「そんな話は300歳を超える私も聞いたことがありませんね」

 おや?いつの間にかレンが合流してた。



「じゃあやっぱり撃退方向で考えるか」



「当たり前にゃ!」



「ちなみにレン、魔族といえば召喚魔法が使えるって聞いているんだけど、使える?」



「召喚魔法でしたら使えますが、ここからあの船にとなると有効なものはありません」



「了解。あと、幽霊船だけどさ。別の可能性として、幽霊船に偽装している海賊って可能性はないかな?」



「可能性はありますが、あのボロボロの帆でこうやってまともに航行しているところを見るとかなり少ないのではないでしょうか」



「ふむ、そうだね。よし、じゃあやっぱり遠距離攻撃をして撃退の方向で考えるか」



 というと全員から同意を得られた。

 初級魔法が届くほど近くではないためどうしても上級魔法ベースで考える。







 んじゃま、さっそくやっちゃいますか!





「【上級火炎柱フレイムインフェルノ】」

 俺は幽霊船の方へ手を差し伸べると、魔力を一気に解放し魔法を使った。

 すると幽霊船に炎の柱が出来上がり一気に燃やした!



 船体のあちこちに火が付いた上に帆にもどんどん燃え移ったのを確認。

 魔法を解除する。



 この炎は一度燃え始めると解除してもなかなか消えないのが特徴だ。



「どーよ?」



 船体は燃えているし帆も燃え尽きた。



 しかし、船の速度は落ちず相変わらず追いかけ続けてくる。



「普通あれだけ燃えたら航行できないよね?」



「やっぱり、幽霊にゃ!」



 幽霊だとして普通効きそうなのは火と光属性だよね。

 光は特別攻撃的な魔法を持っていないので火で攻撃してみたんだが。

 効果ないのか?



 だったら次はこいつだ

「【上級濁流渦潮メイルシュトローム



 ユイが幽霊船の方へ手を差し伸べると、魔力を一気に解放し魔法を使った。

 すると幽霊船周辺の海水が渦潮となって航行を妨げる!



 幽霊船は渦潮が障害となり追いかけてくることが出来なくなったようで、俺達は無事、幽霊船から逃げ切ることができた。



「やったぜ。」



 俺達は幽霊船が付いてきてないことを確認して操舵室へ戻った。



「幽霊船はどうなった?」



「上級魔法を使って航行不能にしました」



「よくやってくれた!」



「しかし、倒せたわけではありません。とりあえず追いかけてこれないようにできただけです」



「いや、十分だ。このまま速度を落とさなければ追いつかれることもないだろう」



「わかりました。ただ、見張りについては今までのように前方だけでは不十分だと感じます。つきましては、マスト部分に見張り台を設置してそこで全方向監視にしようかと思いますがいかがでしょうか?」



「それは構わないが、見張り台を設置するような材料はこの船にはない。まして材料を調達するような町もない」



「陸地から木材を切り出してきてはいかがです?」

 操船しながらもオーベルさんが意見をいってきた。



「今止まるわけにもいかないだろう」





「まぁまぁ、材料とかはそこまでこだわらなくても僕たちが何とかします。その代りそんな立派なものは付けれませんが」



「なら、任せよう」



「では早速設置して見張りを開始しますね」



 俺とユイはメインマストまで来ると、縄梯子を上り帆の上までやってきた。

 縄梯子はたぶんガインさん達が帆を畳んだり降ろしたりするために使っていたものだろう。



 丁度帆の上の辺りに位置を定めて、土魔法を使って鉄パイプ(的なもの)をマストに十字に打ち込んだ。

 打ち込んだ十字から今度は円になるように鉄パイプ(的なもの)を伸ばして足場にした。

 それだけだと不十分。鉄パイプ(的なもの)を適当に増やして足場と手すりを作り上げた。



 サイズとしてはマストから突き出た部分が40センチ程。それが360度ぐるりと回れるようにしてある。

 狭いけど、まぁ大丈夫でしょう。

 ついでに手すりに土魔法でハコを作りその中に【照光シャイン】を使ってサーチライトも作っておいた。





 俺達は見張り台が設置できたので甲板まで降りた。

 下にはパーティーの3人とレンが待っていてくれた。



「さて、見張りの順番どこからだったっけ?」



「さっきの戦闘でケンとユイが上級魔法使ったし、二人は休める順番にしたらどうかな」

 ライカちゃん優しい!



「ありがとう、じゃあそうさせてもらうね。となると、ジーナとライカの組み合わせからかな?」



「そうだね。ボクとジーナが上で見張るね」



 そういうとライカとジーナはマストを登っていった。



「それじゃあ俺達は休ませてもらおうか」



「そうするにゃ」



「ではお休みの前にホットミルクを入れましょうか?」



「ああ、頼むわー」



 こうして俺達は仮眠することにした。
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