転生したらなぜか双子になってたけどそれはそれで便利だし気にせずこの素晴らしき世界を楽しみます

気まぐれ八咫烏

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水の精霊編

幽霊船の中ってこうなっているんだね。

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 そっと扉を開けた俺が目にしたのは、魔物のいない部屋だった。



「お、やっと降りる階段がある部屋だ」



「どうやら見た目の2~3倍程度の広さだったようですね」



「それでも十分広かったけどな」



「大丈夫ですか?かなり魔力を消耗したのではないですか?」



「まぁ多少消費しちまったな。次の部屋からはユイに先頭をお願いしようかな」





 階段を降りるとまた部屋になっていた。

 この部屋から続く扉はまたしても一つだけ。



 俺はいつでも攻撃できる準備だけすると、ユイが扉をそっと開けた。



 が、何も襲ってはこなかった。



 扉を開き、ユイが【照光シャイン】で光源を確保すると部屋の中がよく見えた。



 部屋は広く中央に一つの鎧。



 貴族の屋敷にインテリアでありそうな、フルメタルプレートメイル、顔も見えないくらいしっかりした鉄仮面。

 手には剣と盾を持っている。



 このシュチエーションでこんなのが出てくるってことは、絶対動くよね。



 ちなみに中央にあるこの鎧に注目してしまったけど、部屋自体は中世ヨーロッパの宮殿とかにありそうな絵画が飾ってあったりしたが、結局扉は向こう側に一つあるだけだった。



「この鎧、絶対動くよね?」



「鎧からはなんの気配も感じませんよ?」



「ボクもあの鎧からは何も感じないよ」



「ハーフエルフや魔族の感覚ですら何も感じないという鎧。しかし、この状況で動かないほうが不思議だと思う。な、ユイ」



「だね」



 どうしても前世日本での記憶から、こんな状況で何もないなんてことはどんなゲームや漫画でもあり得ないでしょ。



「ま、念のためってことで。【火球ファイアーボール】」



 ユイは鎧に向けて魔法を放った。

 鎧は一時的に燃えたが、鉄で出来ているようでそのままの形で残った。



 多少ススはついたけど。



「うん、なんともないね」



「やはりその鎧からは気配を感じません。慎重になるのはいいですが、それくらいでいいのではないでしょうか」



 え?なんか俺達がビビってるみたいやん?



 全然ビビってなんかないんだからねっ!



 でも一応剣は構えたまま部屋に入っていく。



 俺達全員が部屋に入っても何も起こらなかった。



 部屋に入ると退路が断たれて鎧が動き出すパターンじゃないのか?



 この世界はお約束とか関係ないようだ。



 まぁ、俺としては危険な場面は少ないほうがいいので文句は言わない。



 俺とユイはガッツリ警戒しながらも鎧の横を通り過ぎる。



 何も起きない。



 ライカやレンが言う通りなんの気配も感じなかったし、何もないならいいか。



 俺達は次の扉の前までやってきた。



 チラッと振り返ると、鎧がこっち向いていた。



「ちょ!いつの間にあれ動いた?」



 こうなると次の部屋も警戒しないといけない上に後ろの鎧も警戒しないといけない。

むしろ鎧が動いて倒した後次の部屋に行く方が気が楽だったようにすら思う。



「じゃあ、扉あけるよ」



ガチャ!ガチャガチャ!



「開かない」



 鍵がかかったように次への扉が開かない。



 とその瞬間背後から物音がした!

 鎧が剣を振り上げてこちらに斬りかかってきていた!!





 ガンッ!!



 俺は構えていた剣で受け止める!

 すぐさまユイが応戦に加わる!

 受け止めた剣を払いつつ剣気を纏い横なぎに斬る、が避けられる。

 同時にユイに斬りかかっていたので一瞬で貯めれるだけの剣気をためて、3連突き!

 鎧は俺の突きを盾で受け止めつつユイを攻撃、ユイはそれを躱しつつ下から剣を振り上げる!

 が、それを躱して一歩下がる鎧。



 一瞬の間に俺とユイ二人で攻めて一撃も入れれなかった。



 こいつ、強い!



一歩下がった鎧が再度ユイに斬りかかる!



「援護します!」



 レンは小太刀を構えて一撃を受け止める。

 その動きに合わせて俺とユイが2方向から斬りかかる!

 が、俺の剣は盾に、ユイの剣は蹴りで剣を弾かれたかと思うと鎧は上半身をグルリと振り回すように横なぎにくる。

 俺は飛び上がり上から、ユイは身をかがめて下から斬りかかる!

 レンは一歩下がって再度踏み込み正面から斬りかかる!



「【火壁ファイアーウォール】」

 ライカが鎧の後ろに魔法で壁を作り、逃げ場を消した!



 ガキンッ!



 俺の剣は鎧の剣に、ユイの剣は盾に防がれる!

 レンの剣は鎧の肩の部分にヒットしたがダメージは無さそうだ。



 どうやらレンは剣気を纏うことができないらしい。

 しかも得物が小太刀のため火力は低い。



 ただ、俺とユイは剣気を纏っているが相手の剣を折ったり盾を貫いたりはできていない。

 そこまで出来ないということは、相手も剣気を纏っているかもしくは相応の実力者である証拠でもある。

 通常剣気を纏って打ち合いした場合相手の動きというか気配を鋭く察知できるため後の先を取りやすかったりするがこの鎧の場合全くそういう気配を察知できない。相手が人ではないからなのかもしれない。



 俺とユイとレンVS鎧の図式はその後もしばらく続いた。

 ライカは援護しようと様子を伺っているが、なかなかそんな隙はなく構えている状態が続く。



 俺とユイは相手の攻撃を掠ったりしていたが装備のおかげで無傷だ。レンはかすり傷が増えて来た。

 鎧はというと、何度か攻撃を入れれることはでき鎧に傷はついたがダメージがあるのかは分からない。



 生物が相手ではないため長引けば体力的に厳しくなるのはこちらだ。

 かといって、この互角の打ち合いを打開できるような隙はない。



 完全な死角からの攻撃も完璧なタイミングで対応する鎧。



 ん?



 俺とユイのらいとせーばーを受けても何の反応もない鎧。



 んん?



「「【認識疎外ミラージュ】」」



 俺とユイは魔法で自分の存在を希薄にして、特に相手の死角から攻撃を仕掛ける!

 が、問題なく対応する鎧。



 んんん?



 違和感。
 


 俺とユイは鎧と戦いながらも周囲の様子を探る。



「レン、こいつに召喚魔法で対応できるか?」



「こいつからは相変わらず気配を感じません。精神的なものが無い相手には効果がないので無理です」



 ということはロボットか?

 いや、そんな感じではない。



 そうか!

 なら試してやる!





 俺とユイは打ち合いながらも数歩後ろに下がり距離を取ると剣を持っていない左手を鎧に向ける



「「レン!下がれ!!【火球ファイアーボール】」」



 威力は大きめ、速度は遅めの火の球が鎧に襲い掛かる!



 鎧は一歩俺の方に近寄るとユイの放った火の玉を避けると同時に俺の放った火の玉を盾で受けた。



「ビンゴだ!」



「どういうこと?」

 対して早くもない魔法が命中したことが不思議に思ったライカが尋ねる



「つまりはこういうことさ」



「「【火球ファイアーボール】」」



 再度俺は同じ方角へ、ユイは俺の撃つ方角へ魔法を放つ!



 鎧は俺の放った火の玉を盾で受ける。

 が、ユイの放った火の玉は鎧と関係なく壁にある絵画に命中した!



「ギャアアアアアアアアアアアアア!!!!!」



 絵画から悲鳴が聞こえたと同時に鎧はその場で崩れ落ち部品ごとにバラバラになった。



 俺とユイは剣を納めると、
 


「あの絵が本体で、鎧を操っていたってこと」



 と説明した。



「そういうことだったんだ」

 ライカはそれを聞いて理解したようだ。



「しかし、戦いながらよくそんなことが分かりましたね」



「ああ、普通、死角からの攻撃には多少ズレが生じるものなのにこいつは死角からの攻撃もすべて対応していただろ? だから別の場所から見て操ってるんじゃないかなって思ったんだ。周りにそれっぽいものはなかったけど、これまでの部屋と違う物っていったら絵画くらいしか思いつかなかったからそれを目がけて魔法を撃ったんだよ」



「そしたら、絵画直撃コースの魔法は避けれるのに避けずに受けた。つまりは予想通りだったってわけ」



 俺とユイが説明した。



「さすがです!」

 レンは目を輝かせながら言った



「しかしレン。お前その恰好だと危なっかしいな。防具とかないのか?」



 かすり傷とはいえ、体中が傷だらけになってしまったレンが傷口をうっとりしながら撫でている。

 とりあえず回復魔法をかけてやる。



「ありがとうございます。わたくしは性奴隷ですので個人的な所有物はありません。この小太刀もサーシェ様のものをお借りしているのです」



 サーシェ本人が雑用奴隷って言ってるのに、この性奴隷への拘りはなんなんだ(笑)



「サーシェさんに言って防具買ってもらいなよ」



「そんな滅相もありません。性奴隷がそのような事を主人に言えません。それに魔族なので人族よりもずっと強靭なんですよ」



 まぁ、体力とかはあるのかもしれないがしっかり切られてるところを見ると素直に賛同できない。



「まぁ、無理して前衛に出なくてもいいからな」



「お気持ちは感謝します。が、何かあればわたくしが盾になります」



 すごい奴隷根性。

(前世で)俺の知っている魔族ってこんなんじゃないのにな。



「じゃあ進もうか」



 ガチャ!



 ユイはそういいながら扉を開けた。

 いつのまにか扉は普通に開くようになっていた。

 次の部屋は先ほどの部屋よりもさらに広かった。



「【照光シャイン】」

ゴゴゴゴゴゴ……ギギギギギ……



 部屋を明るくすると鎧がいた部屋よりも幅は同じだが奥行きが2倍くらいはあり、中央には大きなテーブルがあった。

 左右それぞれに20の椅子が余裕をもって並べられ、テーブルクロスの上には蝋燭立てにいくつもの火のついていない蝋燭が飾られている。

 天井には灯りは点いていないがシャンデリア風のものも見えた。

 なにやら豪華な貴族のお屋敷を思わせる部屋だ。



 そして一番遠くの席、いわゆるお誕生日席には人影がった。



「【照光シャイン】」

ゴゴゴゴゴゴ……ギギギギギ……



 人影は光源一つではよく見えないから俺とユイで灯りを追加した。



「よく来たな」



 姿が見えたと同時に人影が喋った。



 人影はドクロのマークの付いた帽子、片目には眼帯、顔にはいくつもの傷跡の大男が座っていた。

 見るからに海賊ですという出で立ちだ。



 半透明なのを除けばだが。





「ようこそ、スドエ海賊船へ。おれがキャプテンスドエだ。そんなところに突っ立ってないで、まぁ座れよ」



「その前に、あなたの目的を聞いても?」



 いきなり敵地で座れと言われて落ち着けるわけがない



 と思ったら、レンが椅子に座った。



 おい。敵地だぞ!?



「そっちの坊主はなかなか度胸があるじゃねーか。見ての通り俺は武器なんざ持っちゃいねーぜ?」

キャプテンスドエは両手を上げて何も持っていないことをアピールする



 俺はチラッとライカに目配せすると、剣を鞘に戻し向かって右側の席についた。

 ライカは俺の後ろ、ユイはレンの前、左側の席に着いた。



「キャプテンスドエさん、ここで何をしているのですか? あなたの目的は何ですか?」



「おーいおい、せっかちなボウズだな、女に嫌われるぜ?」

 キャプテンスドエは手のひらを上にして体の横に上げ、大きく首を振りながら言った。



 お前はアメリカンホームドラマか!!



「サイージョっ子は早寝早起き早風呂早飯が基本なんでぃ!」



 こっちは江戸っ子風で対抗してやった。

 ライカは当然キョトンとしていたが。



「ああ、そうかい。まぁそんなことよりも、お前たちの戦いを見ていたぜ。なかなか強いじゃないか、気に入ったぜ。俺の部下にしてやる」



「お断りだ!」



「まぁ、そういうなよ。スドエ海賊っていやぁこの辺の海域すべてを支配してる名の知れた海賊だぜ? この俺様がキャプテンだからまぁ当然なんだけどな」



「海賊なんてお断りだと言っているんだ」



「お前、海賊ってもんを勘違いしてないか? 海賊ってのは権力に屈せず!弱きを助け!強きを挫く!己の正義に従って海を駆ける!それが海賊の矜持ってもんよ!」



「だったら善良な船を襲ったりしないのか?」



「バカだな、俺達の海を勝手に航行するような不届き者は粛清が必要だろ。それだけの力を見せつけるのも海賊ってことよ」



「やっぱりただの不埒ものってことじゃないか。それにこの船もあんたもすでに死んでいるんだぞ?」



「そう! 死すら乗り越える力を持つこの俺様だ! その俺様がお前らのような弱者を部下にしてやるって言ってるんだぜ?素直に従ったらどうだ?」



「冗談じゃない。俺達は冒険者だしやらなきゃいけないこともあるんだ。こんな海で幽霊船をやるなんてお断りだ」



「フハハハ、だがお前はすぐにこう言うんだ。部下にしてくださいってな。その時部下にしてやるかどうかは俺の気分次第だがな」



「何をバカな」



 ガタンッ!!!



 反論しようとした瞬間、床に穴が開き椅子ごと落ちた。



 一瞬のことで何が起きたか分からなかったが、急に無重力感、次にお尻に激痛、そのまま後ろに倒れて後頭部の激痛。

 視界は真っ暗のなかに天井部分の一部、落ちたところだけ明るい。



「しばらくそこでゆっくり考えてみな! フハハハハハ」

 上から声が聞こえて来た。



「いてぇ」



とりあえず【小回復ヒール】をかけて、周囲の様子を伺う。天井の俺が落ちて来た穴はふさがれて真っ暗・・・いや、一応ヒカリゴケがあって微妙に部屋の輪郭とかは分かるが暗い。



「【照光シャイン】」



ゴゴゴゴゴゴ……ギギギギギ……



壁の天井付近に魔法で光を付けると、船が揺れた。



ゴゴゴゴゴゴ……ギギギギギ……



 その直後、また船が揺れた。

 ユイが同じことをしたのだと分かった。



 周りを見ると、どうやら狭い部屋のようだ。それも独房のようで、3方向の壁と残りは檻になっている。
 
 床には俺が座っていた椅子がバラバラになって転がってたが、それよりも気になったのは人の骨と思われるものがあることだ。

 ここに閉じ込められてそのまま死んだ人だろうか。ナンマンダブ。



 檻から外の様子を見ようとするが、暗い。

「【照光シャイン】」

「【照光シャイン】」

「【照光シャイン】」



ゴゴゴゴゴゴゴゴ……ギギギギギギギギ……

 連続で光魔法を使ったのでいつもより多く揺れております。



 俺は手だけ檻から出して適当にあちこちに光源を確保した。



ゴゴゴゴゴゴゴゴ……ギギギギギギギギ……

 今度の揺れはユイかな。



「ケン?」



 すると声が聞こえた。



「その声はライカか?」



「うん、そうだよ。よかった、ケンも無事だったんだね」

 聞こえてくる声はどうやらすぐ隣のようだ。



「ここは牢屋みたいになっているけど、そっちは?」



「こっちも牢屋。たぶん同じだと思う」



「ユイとレンが心配だな。ユイーーー!レンーーー!」



 俺は周りにユイとレンがいないか確認した。

 しかし、どこからも返答はなかった。



 まぁ、俺が光魔法を使ったタイミングじゃない時に船が揺れたので、おそらくその時にユイが光魔法を使っていただろうから無事だとは思う。

 なんとなく、無事だと分かるしね。位置的におそらく俺とライカのようにユイとレンも近くにいるだろう。



「返事はないね」



「まぁ、でもユイはたぶん無事だろうからあっちはあっちで何とかしてもらうとして、こっちはこっちでどうするかってことだな」



「この檻、金属だし結構頑丈そうだよ?」



「ふむ」



 俺は剣を抜くと剣気を纏い、さらに剣に剣気をためる。

 一気に振りぬく!



 ガキィィィン!



 ダメか。



「この檻なんの金属で出来てるんだ?結構硬いぞ??」



「大丈夫?」



「ああ、斬り付けてみたけどちょっと切れそうにないな」



 だったら。



「【火壁ファイアーウォール】」

 檻がある一部、俺が通り抜けれる範囲、幅40センチ程に絞って火の壁を展開。

 檻の鉄を熱していく。



「さすがにこの檻は燃やせないと思うんだけど」



 俺の声や音を聞いて何をしているのかライカにも分かったようだ。



 確かに【火壁ファイアーウォール】で金属を燃やし尽くす程の熱量まで温度はあげれない。

 しかし、しばらくすると檻の金属部分は熱されてだんだん赤くなっていく。



 ギンギンに熱くなったところで【火壁ファイアーウォール】を解除する。



「【氷壁アイスウォール】」



 熱された部分を急激に冷やす。



 完全に凍り付いたところに剣を構える。



 再度剣気をためて一気に振りぬく!!



 ガァアアアンン!!



 金属の檻は切ったというよりも部分的に砕けた。



 ヒートショックってやつだ。



 砕けた部分に蹴りを加えてさらに崩す。
 
 そして俺が通り抜けられるスペースを確保できたら通り抜ける。



 牢屋をでて回りを見ると、いくつもの牢屋が続いていることが分かった。

 俺のすぐとなりのライカの前に行く。



「どうやったの!?」



 俺の姿を見て驚いているようだ。



「まぁ見てなよ。【火壁ファイアーウォール】」



 俺はライカの牢屋の檻部分を熱しはじめる。手順は先ほどと同じだ。ライカを檻から出してあげた。



「ありがとう。でもなんで壊れたの?」



「温度差で金属が歪んだところに衝撃を与えると壊れやすいんだよ」



「へぇ~、そうなんだ。おかげで助かりました、ありがとう」

 うん、守りたいこの笑顔。


 ライカを檻から出すと、そっち方向は行き止まりになっていた。

 反対方向には檻が続いているのでそっちに向って歩き出す。



 牢屋はライカのところから19部屋に分かれていた。

 上の豪華なテーブルにもそういえば20個のイスが左右にあったな。ということはあの海賊の幽霊の一番近くの椅子に座っていれば落とされなくて済んだのかな。それに壁を挟んで反対側も同じ作りになってそうだ。ユイとレンはそっちかな。



 通路を進んでいくと、その先には扉があった。

 また、20個目の牢屋があるであろう場所には普通の扉があった。



「ここ、何があるのかな?」



 俺は警戒しながらもゆっくり開ける。
 
そこには小さな部屋があった。

 倉庫、かな?

 反対側にも扉がある。


 
 反対側の扉がゆっくり開いた。



「あ!ユイ!」



「よかった、合流できたね」



 ユイとレンが入ってきた。

 やっぱり左右対称の作りになってたっぽい。



「この部屋はなんなんだろう? ただの通路かな?」



「にしては何だか違和感があるよ」



 そうなのだ。ただの倉庫ならそれでもいいし、通路ならそれでもいいんだけどこの狭い部屋は何か違和感がある。牢屋の倍のサイズとはいえ小さな倉庫。調べてみるか。



「「【照光シャイン】」」



 ゴゴゴゴゴゴゴ……ギギギギギギ……

 相変わらず光魔法に反応して船が揺れる



 光源が確保できこの狭い部屋は隅々までよく見えるようになった。



 よく見ると、床の一部に切れ込みがあるのを発見した。



 これって、床下収納?



 よく見ないと分からないが押すと取っ手が出てくる仕掛けがあり、その取っ手を持って床を上げる。



 すると下の階へ行ける梯子があった。



「まだ下の階があったのか。まぁ行ってみるか」



「【照光シャイン】」

ゴゴゴゴ……ギギギ……



 下の階に向って光源を確保すると、俺は梯子を下りた。



 そこは上の倉庫と同じくらいの広さの部屋に扉が一つだけあった。

 今までの扉よりも大きく、そして金属製なのか頑丈そうに見えた。金属製の閂がかけられ、何かを閉じ込めているようだった。



「あの強気な海賊が閉じ込めておきたいもの??」



「お宝部屋ってことかも?」

 ライカが言った。



「それか、拷問室かもしれませんよ」

 レンはちょっと嬉しそうに言う。



「何があるか分からんが、開けてみるか!」



 俺は閂を外し、ゆっくりと扉を開けた。


 誰もいない。



「【照光シャイン】」

 ゴゴゴゴ……ギギギ……



 光源を確保して中を観察する。



 先ほどの倉庫サイズよりも大きな部屋だ。他の部屋同様沈没船のような暗い雰囲気の中、テレビでみるような社長室にある、立派な机と椅子がある。

 机の上には大きな丸い宝玉が置かれていた。



 それ以外は何もなさそうだ。



「レン、この宝玉って何か分かるか?」



「はじめてみますね。しかもかなり大きな力を感じます。ただ、邪悪な気配はないですね」



『玉座に座れ』



「ん? なんか言ったか?」



「え? 何も言ってないよ?」

 ライカには聞こえなかったらしい。



『玉座に座れ』



「ほら、また聞こえた」



「え? 何も聞こえなかったよ? レンは聞こえた?」



「いえ、何も聞こえませんでしたが……」

 レンにも聞こえないらしい。



『王の資格を持つ者よ、玉座に座れ』



 玉座ってこれか?じゃあ座ってみるか。



 俺は宝玉の置いてある机を回り込み、立派な椅子に腰かけた。

 すると宝玉は光を放ち始めた



『我はあなたのような膨大な魔力の持ち主を望んでいた。我の王となってくれるのであれば、我はどこまでも王のために力を振う事を誓う。我が王になって頂きたい!』



「おう!」



 うん、なんかノリで答えちゃった。

 声に応えると同時に宝玉がさらに光輝き視界が奪われた!



 しばらくすると光は収まったが、同じ部屋なのが嘘みたいにキレイになったし明るくなった。



『この船は一部を除き私の管理下になりました』



「え? 何今の声? どうなったの?」



「急に光ったと思ったらこの部屋から神聖な空気で満たされました。どうなったんですか?」



 ライカとレンはよく分かっていないらしいが、声は聞こえたらしい。



「この宝玉は俺みたいな魔力の持ち主に所有されるのを望んでいたらしいんだ。だから俺に王になってほしいって言うから了承したらこうなった」



「なにそれすごい。けど、この宝玉ってなんなの?」

 ライカさん、当然の疑問ですよね。俺も疑問だわ。



『私は深海にある魔素の吹き溜まりに出来た微精霊。幾千年という長い年月を経て意思を持つようになったモノです』



「微精霊と精霊の中間位の存在ってことかな?」



『精霊様は世界に影響を与える力を持ちますが、私はこの船を管理下に置く程度の存在です』



「深海にいたならなんでこの船にいるの??」



『私がいた場所にたまたまこの船が沈んできたのです。ただ、この船には悪霊が住んでおり私の力を悪用して現世を彷徨っていたようです。今は悪霊をこの船の一部に隔離しましたが、願わくばこれらを排除して頂きたいです』



「さっきのキャプテンスドエとかいうヤツのことかな」



「私達を牢屋に閉じ込めるようなヤツですからね。退治しましょう!」

 レンさんいつになくやる気じゃないですか。



「退治するのはいいとして、ヤツはどこにいるんだ?」



『では、この部屋の扉と繋げます』



「じゃあ行ってみるか」



 そういうと俺達は剣を持ち部屋を出た。



 さっき入った時は倉庫っぽいところだったのに、今回扉を開けるとキャプテンスドエと最初に会った広い部屋に出た。



「ここ、落とし穴のあったところだ」



「あいつ、ずっとあそこにいるのかな」

 見るとキャプテンスドエはテーブルの一番向こう側、お誕生日席に座っていた。



「……を…………せ……」



「お……ら…………えせ……」



 警戒しながら少しずつ近寄っていくと、何か呟いている。

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