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水の精霊編
護衛クエスト完了
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サーシェさんとの交渉から丸二日、俺たちは遂にはゴカジに到着していた。
船の甲板から見えた町はバリやシーマと違っていた。
遠くに見える街並みは、中心に行くほど高い建物があり、離れるほど低くなっている。一番遠いところから海のところまで大きな壁があるのはバリと一緒だ。だが、この町は厳密には海まで届いていない。海の直前で壁が終わり、港と町の間に3メートルほどの金網やそれ以上の高さの建物があるのだ。
これだと港から町に入るためには建物の中を通るか金網を飛び越えるしかない。ただ、兵隊さんがあちこちにいるのでそんなことをしているとすぐに怒られそうだ。
俺達パーティーはシーラック号に乗っていたが、船が港の陸地に接舷したらすぐに、町の兵隊さんがやって来た。
「この町に来た用件と身分の分かるものを提示して下さい」
「あちらの商人の護衛できました。これが冒険者ギルドカードです」
俺達はギルドカードを差し出しつつ、サーシェさんの一行であることを説明した。
「ああ、サーシェ殿の護衛でしたか。しかし、Cランク冒険者ですか?」
サーシェさんたちは到着してすぐに荷物を降ろす作業に入っていた。
俺のギルドカードを見てCランクが信じられないような顔をしている。
さらに、
「魔法剣士……ですか。魔法はどの程度使えますか?」
「はい、各属性上級レベルまで使えますよ」
「え? いや、真面目に答えてくださいね」
まぁ、そうですよねー。子供が上級魔法を各属性使えるってこの世界ではあり得ない位珍しいですしねー。
「えっと、まだまだ駆け出しですが初級魔法、使えます」
言葉は足りてないが、嘘は言っていない。
初級魔法、使えます。中級魔法も使えます。
……ダメかな?
「どの属性の初級魔法かな?」
そんなことまで聞いてくるのか。
「火と水と風と土と光と……」
光というと、ぴくっとした。が何も言わないので続けた。
「と闇です」
「はい、分かりました。その歳ですごいですね。」
と返された。
「ではそちらの~」
と言って全員の職業を確認したあと魔法がどの程度使えるのか聞かれた。
俺とユイは初級、ライカは中級、ジーナとリンダは使えないと説明した。
「はい、分かりました。では、これからの予定はどうなりますか?」
言いながらギルドカードを返してくれたので受け取る。
「サーシェさんの護衛任務が終わったのでギルドにて完了報告、その後商取引をした後に出航予定です」
「商取引というのは?」
「奴隷商と、あと食材関係です」
「この船の積み荷はありますか?」
「いえ、からっぽなのでこの町で補給したいと思っています」
「そうですか。分かりました。では、このパーティーには町へ入る許可は降ろせませんが港に商店の出張所がいくつかあります。そこで売買などは行ってください。奴隷商の出張所があったか……は分かりませんが。また、ギルドも出張所がありますのでそちらを利用してください」
「わかりました。え? 町へ入れないのですか?」
「そうですね。現在ゴカジはこの町を納めるカジット伯爵家が緊急事態になっており部外者の出入りをかなり絞っています。この町に住んでいる場合や住んでいる者の家族や所有奴隷でないとお断りしております」
「そうなんですか。ちなみにその緊急事態になっている期間はいつまでですか?」
「未定です」
あっさりとまぁ。緊急事態って何事なんだろう。
しかし町には入れないのか。残念だ。
「そうですか。分かりました」
「では、港の使用料がこちらで」
港に船を置いておくだけでも料金が発生するなんて、ファンタジーじゃない!
が、それらの手続きをすると兵隊さんは去っていった。
俺達はとりあえず町に入れないらしいのでサーシェさんに報告した。
「ああ、そうだった。すっかり忘れていたよ。君たちは船を手に入れたから問題ないと思うが通常は帰りの足が無い事を見越してシーマで雇った護衛を、格安でシーマまでの護衛にしていたんだった。ハハハ」
なんとまぁ、そういう裏があったのか。
この人は全く油断ならない人だったんだな。俺達は船が手に入ったのでよかった。
「格安すぎて護衛を引き受けない場合には船賃を貰って小銭を稼いだりもしていたな。この町は近くに別の町とかがないからね、ほぼ100パーセント護衛か船賃かを稼げていたんだよ」
もともと今回の依頼は内容に見合ってないということでシーマのギルドでも余っていた依頼だったものな。熟練の人たちはそういうからくりを知っていたのかもしれない。
「帰りの便の話はいいとして、僕たちは町に入れないらしいです」
「ああ! そうか! そうだな、それは困ったな。ギルドや普通の商店は港に出張所があるが奴隷商は町の中に行かないと無いんだ。せっかく白銀貨80枚の取引だからなんとかしないとな」
「70枚の間違いでしょう?」
油断も隙もないヤツだ。
「おいおい、油断も隙も無いな。75枚だろう」
あんたが言うなとしか言えないわ。
「さて、俺達は荷を降ろしたり仕事がある。その後君が町に入れないか兵隊と交渉してくるからしばらくは船で待機していてくれるか? もちろん、港での買い物などは自由にしてもらっていい」
「分かりました。ところで、伯爵家の緊急事態ってなんなんですか?」
「ああ。この町に長居するつもりはないんだろう? だったらあまり知らないほうがいいだろう。ただし、ここでは絶対に回復魔法は使わないほうがいいとだけ言っておこう」
といって教えてくれなかった。
「なにはともあれ、護衛依頼についてはこれで完了ということで構わない。いろいろあったが、無事ここまでたどり着けた事に感謝するよ。ありがとう」
「いえ、こちらこそです。では後ほどギルドに完了報告に行ってきます」
しかしまぁ、回復魔法が禁止されている町なんてどういうことかサッパリわからん。
が、サーシェさんからこれ以上の情報はもらえないようなので俺は改めてシーラック号に戻りみんなと相談することにした。
まずはギルドへの報告、その後食事をして買い出しってことで話はまとまった。
皆で船から離れるので、防犯のためシーラックには俺達以外が船に入ってきた場合、船内で監禁しておくよう命令しておいた。
まぁ、盗まれる物なんてないんだけどさ。
ギルドでは、依頼達成報告と報酬を貰った。魔石も買い取ってもらおうと思ったが出張所ということで手に入れた魔石の半分も買い取ってもらえなかった。
でも普通に買い出しには十分だったので、港にある食堂に入った。
どうやらゴカジではサツマイモによく似たゴカジ芋と、この地方にしかいないゴカジトレントを食材として与え育てた鶏肉が名産なんだそうだ。あとは港町らしく海産物もメニューに並んでいた。
そして大事なのがゴカジ味噌というのがあったこと。
鶏肉を使ったメニューも海産物を使ったメニューも、基本的にはゴカジ芋と一緒に煮る・炒める・焼くのどれかで味噌が入っていた。それも使い方が意外にも上品。和食に近いので俺とユイはモリモリ食べた。
ジーナはもちろん鶏肉メニュー、リンダはもちろんお魚メニューだった。
食後、買い出しに出掛けた。
といっても出張所にはあまり商品がなく、一度注文しておいて後で取りに来るという形になるそうだ。
まずは、食材を買うならとサーシェさんに紹介された店を尋ねてみることにした。
「ハイ、いらっしゃい」
ラミーレ商会と書かれた建物に入ると人のよさそうなおばちゃんが出迎えてくれた。
「こんにちは、食材をいろいろ買いたいのでサーシェさんに聞いたらこの店がお勧めと教えてもらいました。商品を見せてもらってもいいですか?」
「あら、旅人さんかい? どんなものを探してるんだい?」
といいつつ、俺達のことを上から下までじ~っと見られた。
「ああ、すまないねぇ。こっちの店に子供だけのお客さんは珍しいからねぇ」
そうか、町の子供だったらお遣いにしても出張所じゃなく町中のほうのお店に行くか。
「いえ、気にしていません。えと、探しているのは船旅に出るので食材を探しています。それと、いろいろ調味料なんかもあるといいのですが」
「そういう事だったらいろいろあるよ」
といって、極力日持ちする食材や調味料をどんどん注文していった。
もちろん、ゴカジ味噌も注文した。これで味噌・醤油・米を確保できたので自炊が楽しみだ。
あとはみりんと砂糖なんかも欲しいが、みりんはこの世界では見かけない。砂糖は貴重なのか精製技術の差なのか黒っぽいものが少量で結構お高い。
まぁ、購入したけどね。この世界を楽しむのに食費をケチってどうする!
少々なら余裕もあるしね。
支払い方法は半額この場で支払い、残りは商品受け取りの時に支払う形になるらしいので今回は半額だけ支払った。この後どの位の船旅になるのか分からないので結構な量を注文したが、すべて明日には用意しておくということだった。この辺の商人は優秀なんだね。
「うちでは商品の販売だけじゃなくて冒険者から魔物なんかを素材として買い取りもしているわよ? そっちでの御用はないかしら?」
「最近戦ったのはアンデッド系の魔物ばかりでしたので素材になりそうなものはないんですよ」
「あら、アンデッド系の骨は魔術……というか、呪術師に結構売れるから買い取りできるわよ?」
「そうなんですか? でも魔法で燃やし尽くしたから何も取れてないんですよ」
ボーンソルジャーやインドアフィッシュの骨だけ回収とかなんか嫌だな。
「危険を犯してまで取る必要はないけど、次に余裕があったら持ってきてね」
「分かりました」
「じゃあ、明日またおいでね商品を用意しておくわね」
ラミーレ商会のおばちゃんに見送られ店を出た。
「さて、とりあえずの予定は終わったけどどうする?」
「まだ他にもお店があるみたいだし見て回らない?」
ライカの意見採用!
「俺もそう思ってた」
というわけで、おばちゃんの店を出て俺達の船が停めてある方向へ順番に入ってみることにした。
隣の建物は商人ギルドと書かれていたのでスルー。
その隣は魔法薬のお店だった。
一応入ってみたが、回復薬などが俺達が知っている相場よりもべらぼうに高く売られていた。
まぁ、慌てて必要なものでもないし購入はしなかったけどね。
次の建物まではフェンスが続いていたので少し距離があったが、急ぐわけでもないのでゆっくり歩いた。
その建物は先ほど一度行った冒険者ギルド出張所。
そういえば、ここでは依頼を張り出している掲示板とかはなかったな。
運よく火の神殿まで護衛してほしいとかって依頼があればいいのに。ってそれは都合よすぎか。
そしてお次のお店は魔法道具店だった。
魔法鞄や血染めのナイフなど、すでに持っている物が多かった。
が、ここでもエクスカリバールが売られていたので買おうか迷ってしまった。
買わなかったけど。迷ったけど。
魔法道具店を出ると陽が暮れ始めていたので俺達は船に戻ることにした。
戻りながら建物ではなく露店みたいなお店がいくつかあったのでそこで今夜の食材を購入した。
肉・魚介・野菜など露店でも結構いろいろ入手できたので食事を
作ろうってことになった。
船に戻るとシーラックに言って船内の一部をキッチンに改造した。
これは思い描くだけであとは自動的にシーラックがやってくれたので簡単だしすぐに終わった。
さってと、まずは買ってきたダシ昆布を水に入れてゆっくりゆっくりと過熱していく。
沸騰した直後に火を止めて小魚の煮干しと感想したシイタケを入れる。
今日は完全に和風出汁だ。
続いて今日手に入れたばかりのエビ・ホタテ・ゴカジ芋・カボチャ・人参・ピーマン・一口サイズに切ったゴカジ鶏・白身の魚をそれぞれ出して、水と卵と小麦粉を溶いた液体に潜らせ食用油で揚げる!
そう、今日のメニューは天ぷーら!
だし汁に醤油と砂糖を加えて少し煮詰めて、天だしも完成っと。
隣ではユイが白ご飯を炊いて、味噌汁まで作っている。
ライカは興味深そうに俺達の料理を見ている。
が、見てるだけじゃというわけで、大根をライカに手渡すとおろし金を魔法で作った。
使い方を説明したのでしばらくすれば大根おろしもできあがるはずだ。
そうこうしていると、甲板で剣術の稽古をしていたはずのジーナとリンダがキッチンにやってきた。
出来上がるタイミングを完全に読んでいたかのようだ。
ほどなくして白ご飯も炊けたのでそれぞれを器に盛り本日の夕食が完成した。
じゃじゃーん!
てんぷらてーしょくー!!
三人とも揚げ物料理は初めてだったが、めちゃくちゃ喜んで食べてくれた。
食後はお風呂に入ろうと思ったが今のままだと外から丸見えなのでシーラックに言って甲板に作ったお風呂の周囲に目隠しを作ってもらいみんなで入った。
ちなみに寝室もシーラックに作ってもらい、そこで就寝となった。
さあ、明日は町に入れるかな?
船の甲板から見えた町はバリやシーマと違っていた。
遠くに見える街並みは、中心に行くほど高い建物があり、離れるほど低くなっている。一番遠いところから海のところまで大きな壁があるのはバリと一緒だ。だが、この町は厳密には海まで届いていない。海の直前で壁が終わり、港と町の間に3メートルほどの金網やそれ以上の高さの建物があるのだ。
これだと港から町に入るためには建物の中を通るか金網を飛び越えるしかない。ただ、兵隊さんがあちこちにいるのでそんなことをしているとすぐに怒られそうだ。
俺達パーティーはシーラック号に乗っていたが、船が港の陸地に接舷したらすぐに、町の兵隊さんがやって来た。
「この町に来た用件と身分の分かるものを提示して下さい」
「あちらの商人の護衛できました。これが冒険者ギルドカードです」
俺達はギルドカードを差し出しつつ、サーシェさんの一行であることを説明した。
「ああ、サーシェ殿の護衛でしたか。しかし、Cランク冒険者ですか?」
サーシェさんたちは到着してすぐに荷物を降ろす作業に入っていた。
俺のギルドカードを見てCランクが信じられないような顔をしている。
さらに、
「魔法剣士……ですか。魔法はどの程度使えますか?」
「はい、各属性上級レベルまで使えますよ」
「え? いや、真面目に答えてくださいね」
まぁ、そうですよねー。子供が上級魔法を各属性使えるってこの世界ではあり得ない位珍しいですしねー。
「えっと、まだまだ駆け出しですが初級魔法、使えます」
言葉は足りてないが、嘘は言っていない。
初級魔法、使えます。中級魔法も使えます。
……ダメかな?
「どの属性の初級魔法かな?」
そんなことまで聞いてくるのか。
「火と水と風と土と光と……」
光というと、ぴくっとした。が何も言わないので続けた。
「と闇です」
「はい、分かりました。その歳ですごいですね。」
と返された。
「ではそちらの~」
と言って全員の職業を確認したあと魔法がどの程度使えるのか聞かれた。
俺とユイは初級、ライカは中級、ジーナとリンダは使えないと説明した。
「はい、分かりました。では、これからの予定はどうなりますか?」
言いながらギルドカードを返してくれたので受け取る。
「サーシェさんの護衛任務が終わったのでギルドにて完了報告、その後商取引をした後に出航予定です」
「商取引というのは?」
「奴隷商と、あと食材関係です」
「この船の積み荷はありますか?」
「いえ、からっぽなのでこの町で補給したいと思っています」
「そうですか。分かりました。では、このパーティーには町へ入る許可は降ろせませんが港に商店の出張所がいくつかあります。そこで売買などは行ってください。奴隷商の出張所があったか……は分かりませんが。また、ギルドも出張所がありますのでそちらを利用してください」
「わかりました。え? 町へ入れないのですか?」
「そうですね。現在ゴカジはこの町を納めるカジット伯爵家が緊急事態になっており部外者の出入りをかなり絞っています。この町に住んでいる場合や住んでいる者の家族や所有奴隷でないとお断りしております」
「そうなんですか。ちなみにその緊急事態になっている期間はいつまでですか?」
「未定です」
あっさりとまぁ。緊急事態って何事なんだろう。
しかし町には入れないのか。残念だ。
「そうですか。分かりました」
「では、港の使用料がこちらで」
港に船を置いておくだけでも料金が発生するなんて、ファンタジーじゃない!
が、それらの手続きをすると兵隊さんは去っていった。
俺達はとりあえず町に入れないらしいのでサーシェさんに報告した。
「ああ、そうだった。すっかり忘れていたよ。君たちは船を手に入れたから問題ないと思うが通常は帰りの足が無い事を見越してシーマで雇った護衛を、格安でシーマまでの護衛にしていたんだった。ハハハ」
なんとまぁ、そういう裏があったのか。
この人は全く油断ならない人だったんだな。俺達は船が手に入ったのでよかった。
「格安すぎて護衛を引き受けない場合には船賃を貰って小銭を稼いだりもしていたな。この町は近くに別の町とかがないからね、ほぼ100パーセント護衛か船賃かを稼げていたんだよ」
もともと今回の依頼は内容に見合ってないということでシーマのギルドでも余っていた依頼だったものな。熟練の人たちはそういうからくりを知っていたのかもしれない。
「帰りの便の話はいいとして、僕たちは町に入れないらしいです」
「ああ! そうか! そうだな、それは困ったな。ギルドや普通の商店は港に出張所があるが奴隷商は町の中に行かないと無いんだ。せっかく白銀貨80枚の取引だからなんとかしないとな」
「70枚の間違いでしょう?」
油断も隙もないヤツだ。
「おいおい、油断も隙も無いな。75枚だろう」
あんたが言うなとしか言えないわ。
「さて、俺達は荷を降ろしたり仕事がある。その後君が町に入れないか兵隊と交渉してくるからしばらくは船で待機していてくれるか? もちろん、港での買い物などは自由にしてもらっていい」
「分かりました。ところで、伯爵家の緊急事態ってなんなんですか?」
「ああ。この町に長居するつもりはないんだろう? だったらあまり知らないほうがいいだろう。ただし、ここでは絶対に回復魔法は使わないほうがいいとだけ言っておこう」
といって教えてくれなかった。
「なにはともあれ、護衛依頼についてはこれで完了ということで構わない。いろいろあったが、無事ここまでたどり着けた事に感謝するよ。ありがとう」
「いえ、こちらこそです。では後ほどギルドに完了報告に行ってきます」
しかしまぁ、回復魔法が禁止されている町なんてどういうことかサッパリわからん。
が、サーシェさんからこれ以上の情報はもらえないようなので俺は改めてシーラック号に戻りみんなと相談することにした。
まずはギルドへの報告、その後食事をして買い出しってことで話はまとまった。
皆で船から離れるので、防犯のためシーラックには俺達以外が船に入ってきた場合、船内で監禁しておくよう命令しておいた。
まぁ、盗まれる物なんてないんだけどさ。
ギルドでは、依頼達成報告と報酬を貰った。魔石も買い取ってもらおうと思ったが出張所ということで手に入れた魔石の半分も買い取ってもらえなかった。
でも普通に買い出しには十分だったので、港にある食堂に入った。
どうやらゴカジではサツマイモによく似たゴカジ芋と、この地方にしかいないゴカジトレントを食材として与え育てた鶏肉が名産なんだそうだ。あとは港町らしく海産物もメニューに並んでいた。
そして大事なのがゴカジ味噌というのがあったこと。
鶏肉を使ったメニューも海産物を使ったメニューも、基本的にはゴカジ芋と一緒に煮る・炒める・焼くのどれかで味噌が入っていた。それも使い方が意外にも上品。和食に近いので俺とユイはモリモリ食べた。
ジーナはもちろん鶏肉メニュー、リンダはもちろんお魚メニューだった。
食後、買い出しに出掛けた。
といっても出張所にはあまり商品がなく、一度注文しておいて後で取りに来るという形になるそうだ。
まずは、食材を買うならとサーシェさんに紹介された店を尋ねてみることにした。
「ハイ、いらっしゃい」
ラミーレ商会と書かれた建物に入ると人のよさそうなおばちゃんが出迎えてくれた。
「こんにちは、食材をいろいろ買いたいのでサーシェさんに聞いたらこの店がお勧めと教えてもらいました。商品を見せてもらってもいいですか?」
「あら、旅人さんかい? どんなものを探してるんだい?」
といいつつ、俺達のことを上から下までじ~っと見られた。
「ああ、すまないねぇ。こっちの店に子供だけのお客さんは珍しいからねぇ」
そうか、町の子供だったらお遣いにしても出張所じゃなく町中のほうのお店に行くか。
「いえ、気にしていません。えと、探しているのは船旅に出るので食材を探しています。それと、いろいろ調味料なんかもあるといいのですが」
「そういう事だったらいろいろあるよ」
といって、極力日持ちする食材や調味料をどんどん注文していった。
もちろん、ゴカジ味噌も注文した。これで味噌・醤油・米を確保できたので自炊が楽しみだ。
あとはみりんと砂糖なんかも欲しいが、みりんはこの世界では見かけない。砂糖は貴重なのか精製技術の差なのか黒っぽいものが少量で結構お高い。
まぁ、購入したけどね。この世界を楽しむのに食費をケチってどうする!
少々なら余裕もあるしね。
支払い方法は半額この場で支払い、残りは商品受け取りの時に支払う形になるらしいので今回は半額だけ支払った。この後どの位の船旅になるのか分からないので結構な量を注文したが、すべて明日には用意しておくということだった。この辺の商人は優秀なんだね。
「うちでは商品の販売だけじゃなくて冒険者から魔物なんかを素材として買い取りもしているわよ? そっちでの御用はないかしら?」
「最近戦ったのはアンデッド系の魔物ばかりでしたので素材になりそうなものはないんですよ」
「あら、アンデッド系の骨は魔術……というか、呪術師に結構売れるから買い取りできるわよ?」
「そうなんですか? でも魔法で燃やし尽くしたから何も取れてないんですよ」
ボーンソルジャーやインドアフィッシュの骨だけ回収とかなんか嫌だな。
「危険を犯してまで取る必要はないけど、次に余裕があったら持ってきてね」
「分かりました」
「じゃあ、明日またおいでね商品を用意しておくわね」
ラミーレ商会のおばちゃんに見送られ店を出た。
「さて、とりあえずの予定は終わったけどどうする?」
「まだ他にもお店があるみたいだし見て回らない?」
ライカの意見採用!
「俺もそう思ってた」
というわけで、おばちゃんの店を出て俺達の船が停めてある方向へ順番に入ってみることにした。
隣の建物は商人ギルドと書かれていたのでスルー。
その隣は魔法薬のお店だった。
一応入ってみたが、回復薬などが俺達が知っている相場よりもべらぼうに高く売られていた。
まぁ、慌てて必要なものでもないし購入はしなかったけどね。
次の建物まではフェンスが続いていたので少し距離があったが、急ぐわけでもないのでゆっくり歩いた。
その建物は先ほど一度行った冒険者ギルド出張所。
そういえば、ここでは依頼を張り出している掲示板とかはなかったな。
運よく火の神殿まで護衛してほしいとかって依頼があればいいのに。ってそれは都合よすぎか。
そしてお次のお店は魔法道具店だった。
魔法鞄や血染めのナイフなど、すでに持っている物が多かった。
が、ここでもエクスカリバールが売られていたので買おうか迷ってしまった。
買わなかったけど。迷ったけど。
魔法道具店を出ると陽が暮れ始めていたので俺達は船に戻ることにした。
戻りながら建物ではなく露店みたいなお店がいくつかあったのでそこで今夜の食材を購入した。
肉・魚介・野菜など露店でも結構いろいろ入手できたので食事を
作ろうってことになった。
船に戻るとシーラックに言って船内の一部をキッチンに改造した。
これは思い描くだけであとは自動的にシーラックがやってくれたので簡単だしすぐに終わった。
さってと、まずは買ってきたダシ昆布を水に入れてゆっくりゆっくりと過熱していく。
沸騰した直後に火を止めて小魚の煮干しと感想したシイタケを入れる。
今日は完全に和風出汁だ。
続いて今日手に入れたばかりのエビ・ホタテ・ゴカジ芋・カボチャ・人参・ピーマン・一口サイズに切ったゴカジ鶏・白身の魚をそれぞれ出して、水と卵と小麦粉を溶いた液体に潜らせ食用油で揚げる!
そう、今日のメニューは天ぷーら!
だし汁に醤油と砂糖を加えて少し煮詰めて、天だしも完成っと。
隣ではユイが白ご飯を炊いて、味噌汁まで作っている。
ライカは興味深そうに俺達の料理を見ている。
が、見てるだけじゃというわけで、大根をライカに手渡すとおろし金を魔法で作った。
使い方を説明したのでしばらくすれば大根おろしもできあがるはずだ。
そうこうしていると、甲板で剣術の稽古をしていたはずのジーナとリンダがキッチンにやってきた。
出来上がるタイミングを完全に読んでいたかのようだ。
ほどなくして白ご飯も炊けたのでそれぞれを器に盛り本日の夕食が完成した。
じゃじゃーん!
てんぷらてーしょくー!!
三人とも揚げ物料理は初めてだったが、めちゃくちゃ喜んで食べてくれた。
食後はお風呂に入ろうと思ったが今のままだと外から丸見えなのでシーラックに言って甲板に作ったお風呂の周囲に目隠しを作ってもらいみんなで入った。
ちなみに寝室もシーラックに作ってもらい、そこで就寝となった。
さあ、明日は町に入れるかな?
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