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水の精霊編
奴隷売買契約?
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「ケン君、ちょっといいかな?」
サーシェさんに声を掛けられたのは俺が目覚めた後見張りをこなして、見張り台から降りて来た時だった。
「はい、なんでしょう」
「では、私の部屋までついてきてくれ」
そういうと、俺の前を歩き始めた。
甲板から船内に入り、通路を一番奥まで進むとさらに階段を降りた。
普段はサーシェさんの私室ということで立ち入り禁止だった場所だ。
階段を降りるとすぐ右手の部屋に入った。
そこはサーシェさんの仕事部屋なのか書類がたくさん積まれた机、書類がたくさん突っ込まれている棚、そして簡易用のソファーとテーブルがあった。
「まぁ、かけてくれ」
促されて俺は簡易用のソファーに腰を下ろす。
「それで、改まってどうされましたか?」
「実は君と交渉をしたいと思っていてね。それで来てもらったんだ」
あら、商人とサシで商談なんて不利な匂いしかしませんがな。
「お話をお伺いしましょう」
「何、難しい話ではないよ。単にうちの奴隷を一人買い取ってもらえないかと思ってね。君にずいぶん懐いているようだし」
「懐いているって……レンですか?」
「その通り。本人は性奴隷なんて言っているが実際は雑用奴隷だ。雑用奴隷だったら別にレンでなくても問題ない。ただあの子は魔族だ。300歳とちょっとという若い年齢ではあるが、人族の奴隷になるなんてことは滅多にあるもんじゃない。だから少々値は張るが君たちの旅に同行すれば役に立つと思ってね」
「ちなみに、レンの意向は聞いているんでしょうか?」
「ははは、奴隷の意向を聞いて売買するなんてことは普通ないよ。まったく、変わったことを言うね」
「まぁそうかもしれませんが……」
本人の意向に反して俺達に同行さすなんていうのはお断りだしね。
「ただ、今回に関してはちょっと特殊でね。その本人から君に買い取ってもらえないかと打診があったんだよ」
「なるほど。本人の意向があるのであれば検討しましょうか」
人の金額なんてとても考えられない。がこの世界ではそう甘いことも言ってられないか。
じゃあレンの金額を決めるというよりこの場では割り切って、単純に商品の金額を交渉するつもりでいかないとかなりの額を吹っ掛けられそうだ。
「ふふ、そう背伸びしなくてもいいよ。ここまで護衛してくれたこともある。無茶な額を吹っ掛けるつもりはない」
「見ての通り、一介の冒険者ですので奴隷を購入できるほどではないと思っていますので」
「ハハハ、その年で謙虚だな。レンについてはもうよく知っていると思うが少々特殊な性癖を持っている。まぁ私も人のことは言えないがね。そしてレンが君に飼われたいと言っている以上、君もその仲間ということだろう。ただ、私はどうしても男性とそういう関係になることに違和感があってね。まぁレンは男性ではないが、それでもあの恰好だろ?」
「え? レンって男の子じゃないんですか?」
まさかまたこのパターンか?
実は女の子でしたーってか??
「ん? 知らなかったのかい? レンは魔族だから両性体だよ」
「両性体??」
「つまり、性器が男性用と女性用と両方あるってことだ。魔族ってのは本人の心持次第でどちらを顕著に表現するか自由に選べるらしいんだがレンは少年のような男の体をメインにしているだろ? どちらもあるとは言え何度言っても女性メインの体にはなろうとしなかったから本人は性奴隷希望だったんだろうが雑用奴隷として使っていたのさ」
魔族ってつまりはふたなりだったのか。知らなかった。
てっきり前世の二次元にしか存在しな架空の存在だとばかり思っていたが、さすが異世界ファンタジーだ。
「まぁ本人の意向があるとは言えだからと言って私も商人だからね。損するような価格では売却できないが白銀貨100枚でどうだ?」
白銀貨100枚ってことは……えーと、1億円相当!?
この人よく一介の冒険者にそんな金額吹っ掛けて来たな。
「ご存知の通り私は一介の冒険者ですよ?」
「冒険者なのは知っているよ。あのクラーケンを討伐した優秀な冒険者だってこともね。魔族の奴隷としては破格だと思うが」
なるほど、こちらの懐事情は調査済みってことか?
「サーシェさんが商人だってことは知っています。商品を安く買って高く売るのが基本ですものね。ただ、レンは購入したわけではないのでしょう? 本人から志願されて手に入れたわけですからね」
「ははは、まぁそうだな。だが、だからと言って魔族の評価が下がるわけではないよ」
「魔族とはいえ、原価0が白銀貨100枚ってのは少々やりすぎじゃないですか?」
「なるほど。しかし原価0と言う訳ではないんだよ? 奴隷にするにはそれなりに奴隷商のところで手数料もかかるし、レンを奴隷にしてから今日まで衣食住すべてを面倒見てきているわけだからね」
「食に関してはサーシェさんは例え奴隷でもしっかり食べさせて健康に気を使っておられるようですね。素晴らしい方針だと思います。しかし、武器防具の類を買い与えたりもされていないようですので、衣は下帯だけですかね。住はゴカジとシーマのご自宅とこの船と予想しますがいかがですか?」
「なかなかよく見ているじゃないか。だがそれはあくまでも維持費についてだ。魔族の奴隷という点についてはこれ以上ないほどの安価を提示したつもりだよ」
「話は変わりますが、今回の護衛について我々の報酬をご存知ですか? 白銀貨どころか、金貨レベルなんですよ」
「もちろん知っているさ、私が設定したからね。まさか幽霊船が襲ってくるのは想定外ではあったが報酬が少ないとでも言いたいのかな?」
「いえいえ、そんなつもりはありません。しかし我々の今後を考えると、今回のような仕事をしていくわけですから生活レベルもそのくらいになります。ですので、出せるのは白銀貨50枚までかと考えています」
「おいおい、そんな額で動くわけないだろう」
「時にサーシェさん。この船を購入なさったのは単に金額の問題だけではなかったそうですね」
「この船かい? そうだね。いや、相場より安かったのは事実だよ」
「いえ、ギルドが売却するときに相場より高く買ってくれたと聞いています。その理由は、帆が光っている珍しくも目立つ船だったからじゃないですか? そしてわざわざ追加で発光する魔法陣までつけて今でも利用していますね」
「何が言いたいのかな?」
「いえ、私はお金はないですが魔力はあるほうだと思っています。もし、今回の話がこちらの提示した額で取引が成立するならば、この船のお好きな場所に同じような光を発する魔法をかけることができます」
「なるほど、そうきたか。しかし、君の魔法はどのくらい持つのかな?」
「それは自分でも分かりませんが、私が5歳の時に軽い魔力で着けた光で2年ほどは持ったということです。そして私は5歳の頃よりも魔法の腕は上がっていると自負しています」
「なるほど。ではその条件で白銀貨85枚。これでどうだ?」
「当時よりも魔法の腕が上がっているということに追加する形になりますが、今の私であればただ光るだけのものではなく、例えばお好きな色に発光させたり、点滅させたりもできます。また、見張りのために設置したサーチライト風のものや、ぼんやり光らせるなど種類もいろいろ選べますよ? 帆先が点滅している船なんて、世界中探してもありません。どうですか?」
「うむぅ……」
この人ほんとに目立ちたがり屋なんだなぁ。正直、個人的にはどうでもいいレベルなんだけど。
「サーチライトを設置してる見張り台、そういえばあれも私が今回の護衛をする上で必要だと思ったから設置させてもらいましたが、今後も必要ですか? 不要なら私の魔法で作ったものですので即解除可能です。が、必要というならそのまま置いておきますよ。白銀貨60枚でいかがでしょう」
「君は見た目子供なのになかなか食えない男のようだ。最初から本気で交渉すればよかったと今更ながらに後悔しているよ。75枚だ。それ以上は勘弁してくれ」
大阪人だったらここからが交渉の本番なんだろうけど、さすがに相場も分からない奴隷の金額で争っている以上この辺が頃合いかな。
「分かりました。では、その額で購入するか仲間と相談しますね。返事は改めて」
というと驚いた顔をされた。
「まさかここまで話したのに即決しないのか」
「一応僕がリーダーということにはなっているのですが、僕の手持ち金額だけではお支払い出来そうもありません。仲間と出し合う方向で話し合いますので少しだけ待ってもらえれば。その間、この船のどこを発光するようにするか考えてはいかがでしょう」
「普通なら断るがまぁいいだろう。どこにも逃げられない船の上だ。で、返事はいつ貰えるのかな?」
「パーティーで話すだけなので今日中には。あ、そうだ。野暮なことを聞きますがこの階の他の部屋にベッドがあればムーディーにライティングしますしステージのような場所があるのであればそこにスポットライトを設置しておきますよ。これは待ってもらえる時間分のサービスとして」
「ステージなど……あぁ、そうか。分かった。それは頼もうか」
「では、一度失礼します」
といって俺はサーシェさんの部屋を出た。
そしてリビングに寄ると、ちょうどこれから交代に行こうとしていたジーナとお茶を飲んでいたライカがいたので声をかけて一緒に見張り台に上がった。
「というわけで、レンが俺達について来たいらしいんだ。しかし、あの子の立場は奴隷だからさ。売買としてきちんと譲り受けてほしいって事なんだけど、どう思う?」
「本人が来たいってことならボクはいいと思うな」
「金額については私にも相場とか分かりませんが、この前のクラーケン討伐報酬を出し合えば出せなくはないですね」
「私はどっちでもいいにゃ」
「じゃあ、念のため本人の意思をこちらで確認して間違いがなければそれでいいかな?」
「いいと思う」
という訳でみんなの了承も得られたのでユイとジーナを残して俺達は見張り台から降りた。
そこでちょうどレンを見つけた。
「レンー、ちょっといいかい?」
「はい?なんでしょうか」
周りには誰もいないし、ここで話してみるか。
「実はサーシェさんから君を買い取って欲しいという話を貰ってね。聞いていると君から話が出たっていうじゃないか。ほんとうかい?」
「わぁ、サーシェ様はついにその話をしてくれたんですね。もちろん本当ですよ。以前からケン様の性奴隷になりたいと考えておりましたからサーシェ様にはお話ししておいたのです。でも立場上意見が通るなんて思っていませんでしたので他にもいろいろ策を講じていたのですが、さすがサーシェ様だ! 話の分かるいいご主人様だ」
「そ、そっか。君の意思に反して譲渡するとかそういう話ではないという確認が取れただけで十分だ。ただ、俺達について来ても君が楽しめるかどうかは分からないよ?」
「それは間違いなく大丈夫です!ほんの数日の間ご一緒させてもらっただけでもたくさんの発見がありましたしこれからも大丈夫ですよ! もし、私に飽きたら売却してもらっても構いませんので、ぜひお願いします」
どうして自分のことをそこまで言えるのか俺にはさっぱり分からない。魔族特有の価値観なのか、それともレンが変わっているだけなのか。
まぁどちらにしても仲間になる以上俺は簡単に見捨てたりなんかしないけど。
「わかった、また決まったら話すね」
とだけ伝えると仕事に戻っていった。
「じゃあ今の話、上の二人にも伝えておこうか」
というわけでパーティー全員の了承と一人白銀貨15枚ずつ出し合うということ、それに本人の意思の確認も出来たということで話がまとまった。
俺はさっそくサーシェさんの私室を訪ね、今回の話を受けることを話した。
サーシェさんは喜んでくれていたが、正式にはゴカジに着いて奴隷商のところでいろいろ登録とかがあるらしいのでそこで正式売買成立となる段取りを聞いた。
その後、別の私室を案内されてそこにあった磔用の器具にスポットライトをいくつか設置した。ベッド周りには柔らかい光でちょっとラブホテルみたいにしておいた。
この世界のそういう趣味の人の部屋をこの歳で見ることになるとはね。
その後、ゴカジまであと2~3日で到着するらしいという話も聞いた。
この護衛任務ももう少しで終わりだな。
サーシェさんに声を掛けられたのは俺が目覚めた後見張りをこなして、見張り台から降りて来た時だった。
「はい、なんでしょう」
「では、私の部屋までついてきてくれ」
そういうと、俺の前を歩き始めた。
甲板から船内に入り、通路を一番奥まで進むとさらに階段を降りた。
普段はサーシェさんの私室ということで立ち入り禁止だった場所だ。
階段を降りるとすぐ右手の部屋に入った。
そこはサーシェさんの仕事部屋なのか書類がたくさん積まれた机、書類がたくさん突っ込まれている棚、そして簡易用のソファーとテーブルがあった。
「まぁ、かけてくれ」
促されて俺は簡易用のソファーに腰を下ろす。
「それで、改まってどうされましたか?」
「実は君と交渉をしたいと思っていてね。それで来てもらったんだ」
あら、商人とサシで商談なんて不利な匂いしかしませんがな。
「お話をお伺いしましょう」
「何、難しい話ではないよ。単にうちの奴隷を一人買い取ってもらえないかと思ってね。君にずいぶん懐いているようだし」
「懐いているって……レンですか?」
「その通り。本人は性奴隷なんて言っているが実際は雑用奴隷だ。雑用奴隷だったら別にレンでなくても問題ない。ただあの子は魔族だ。300歳とちょっとという若い年齢ではあるが、人族の奴隷になるなんてことは滅多にあるもんじゃない。だから少々値は張るが君たちの旅に同行すれば役に立つと思ってね」
「ちなみに、レンの意向は聞いているんでしょうか?」
「ははは、奴隷の意向を聞いて売買するなんてことは普通ないよ。まったく、変わったことを言うね」
「まぁそうかもしれませんが……」
本人の意向に反して俺達に同行さすなんていうのはお断りだしね。
「ただ、今回に関してはちょっと特殊でね。その本人から君に買い取ってもらえないかと打診があったんだよ」
「なるほど。本人の意向があるのであれば検討しましょうか」
人の金額なんてとても考えられない。がこの世界ではそう甘いことも言ってられないか。
じゃあレンの金額を決めるというよりこの場では割り切って、単純に商品の金額を交渉するつもりでいかないとかなりの額を吹っ掛けられそうだ。
「ふふ、そう背伸びしなくてもいいよ。ここまで護衛してくれたこともある。無茶な額を吹っ掛けるつもりはない」
「見ての通り、一介の冒険者ですので奴隷を購入できるほどではないと思っていますので」
「ハハハ、その年で謙虚だな。レンについてはもうよく知っていると思うが少々特殊な性癖を持っている。まぁ私も人のことは言えないがね。そしてレンが君に飼われたいと言っている以上、君もその仲間ということだろう。ただ、私はどうしても男性とそういう関係になることに違和感があってね。まぁレンは男性ではないが、それでもあの恰好だろ?」
「え? レンって男の子じゃないんですか?」
まさかまたこのパターンか?
実は女の子でしたーってか??
「ん? 知らなかったのかい? レンは魔族だから両性体だよ」
「両性体??」
「つまり、性器が男性用と女性用と両方あるってことだ。魔族ってのは本人の心持次第でどちらを顕著に表現するか自由に選べるらしいんだがレンは少年のような男の体をメインにしているだろ? どちらもあるとは言え何度言っても女性メインの体にはなろうとしなかったから本人は性奴隷希望だったんだろうが雑用奴隷として使っていたのさ」
魔族ってつまりはふたなりだったのか。知らなかった。
てっきり前世の二次元にしか存在しな架空の存在だとばかり思っていたが、さすが異世界ファンタジーだ。
「まぁ本人の意向があるとは言えだからと言って私も商人だからね。損するような価格では売却できないが白銀貨100枚でどうだ?」
白銀貨100枚ってことは……えーと、1億円相当!?
この人よく一介の冒険者にそんな金額吹っ掛けて来たな。
「ご存知の通り私は一介の冒険者ですよ?」
「冒険者なのは知っているよ。あのクラーケンを討伐した優秀な冒険者だってこともね。魔族の奴隷としては破格だと思うが」
なるほど、こちらの懐事情は調査済みってことか?
「サーシェさんが商人だってことは知っています。商品を安く買って高く売るのが基本ですものね。ただ、レンは購入したわけではないのでしょう? 本人から志願されて手に入れたわけですからね」
「ははは、まぁそうだな。だが、だからと言って魔族の評価が下がるわけではないよ」
「魔族とはいえ、原価0が白銀貨100枚ってのは少々やりすぎじゃないですか?」
「なるほど。しかし原価0と言う訳ではないんだよ? 奴隷にするにはそれなりに奴隷商のところで手数料もかかるし、レンを奴隷にしてから今日まで衣食住すべてを面倒見てきているわけだからね」
「食に関してはサーシェさんは例え奴隷でもしっかり食べさせて健康に気を使っておられるようですね。素晴らしい方針だと思います。しかし、武器防具の類を買い与えたりもされていないようですので、衣は下帯だけですかね。住はゴカジとシーマのご自宅とこの船と予想しますがいかがですか?」
「なかなかよく見ているじゃないか。だがそれはあくまでも維持費についてだ。魔族の奴隷という点についてはこれ以上ないほどの安価を提示したつもりだよ」
「話は変わりますが、今回の護衛について我々の報酬をご存知ですか? 白銀貨どころか、金貨レベルなんですよ」
「もちろん知っているさ、私が設定したからね。まさか幽霊船が襲ってくるのは想定外ではあったが報酬が少ないとでも言いたいのかな?」
「いえいえ、そんなつもりはありません。しかし我々の今後を考えると、今回のような仕事をしていくわけですから生活レベルもそのくらいになります。ですので、出せるのは白銀貨50枚までかと考えています」
「おいおい、そんな額で動くわけないだろう」
「時にサーシェさん。この船を購入なさったのは単に金額の問題だけではなかったそうですね」
「この船かい? そうだね。いや、相場より安かったのは事実だよ」
「いえ、ギルドが売却するときに相場より高く買ってくれたと聞いています。その理由は、帆が光っている珍しくも目立つ船だったからじゃないですか? そしてわざわざ追加で発光する魔法陣までつけて今でも利用していますね」
「何が言いたいのかな?」
「いえ、私はお金はないですが魔力はあるほうだと思っています。もし、今回の話がこちらの提示した額で取引が成立するならば、この船のお好きな場所に同じような光を発する魔法をかけることができます」
「なるほど、そうきたか。しかし、君の魔法はどのくらい持つのかな?」
「それは自分でも分かりませんが、私が5歳の時に軽い魔力で着けた光で2年ほどは持ったということです。そして私は5歳の頃よりも魔法の腕は上がっていると自負しています」
「なるほど。ではその条件で白銀貨85枚。これでどうだ?」
「当時よりも魔法の腕が上がっているということに追加する形になりますが、今の私であればただ光るだけのものではなく、例えばお好きな色に発光させたり、点滅させたりもできます。また、見張りのために設置したサーチライト風のものや、ぼんやり光らせるなど種類もいろいろ選べますよ? 帆先が点滅している船なんて、世界中探してもありません。どうですか?」
「うむぅ……」
この人ほんとに目立ちたがり屋なんだなぁ。正直、個人的にはどうでもいいレベルなんだけど。
「サーチライトを設置してる見張り台、そういえばあれも私が今回の護衛をする上で必要だと思ったから設置させてもらいましたが、今後も必要ですか? 不要なら私の魔法で作ったものですので即解除可能です。が、必要というならそのまま置いておきますよ。白銀貨60枚でいかがでしょう」
「君は見た目子供なのになかなか食えない男のようだ。最初から本気で交渉すればよかったと今更ながらに後悔しているよ。75枚だ。それ以上は勘弁してくれ」
大阪人だったらここからが交渉の本番なんだろうけど、さすがに相場も分からない奴隷の金額で争っている以上この辺が頃合いかな。
「分かりました。では、その額で購入するか仲間と相談しますね。返事は改めて」
というと驚いた顔をされた。
「まさかここまで話したのに即決しないのか」
「一応僕がリーダーということにはなっているのですが、僕の手持ち金額だけではお支払い出来そうもありません。仲間と出し合う方向で話し合いますので少しだけ待ってもらえれば。その間、この船のどこを発光するようにするか考えてはいかがでしょう」
「普通なら断るがまぁいいだろう。どこにも逃げられない船の上だ。で、返事はいつ貰えるのかな?」
「パーティーで話すだけなので今日中には。あ、そうだ。野暮なことを聞きますがこの階の他の部屋にベッドがあればムーディーにライティングしますしステージのような場所があるのであればそこにスポットライトを設置しておきますよ。これは待ってもらえる時間分のサービスとして」
「ステージなど……あぁ、そうか。分かった。それは頼もうか」
「では、一度失礼します」
といって俺はサーシェさんの部屋を出た。
そしてリビングに寄ると、ちょうどこれから交代に行こうとしていたジーナとお茶を飲んでいたライカがいたので声をかけて一緒に見張り台に上がった。
「というわけで、レンが俺達について来たいらしいんだ。しかし、あの子の立場は奴隷だからさ。売買としてきちんと譲り受けてほしいって事なんだけど、どう思う?」
「本人が来たいってことならボクはいいと思うな」
「金額については私にも相場とか分かりませんが、この前のクラーケン討伐報酬を出し合えば出せなくはないですね」
「私はどっちでもいいにゃ」
「じゃあ、念のため本人の意思をこちらで確認して間違いがなければそれでいいかな?」
「いいと思う」
という訳でみんなの了承も得られたのでユイとジーナを残して俺達は見張り台から降りた。
そこでちょうどレンを見つけた。
「レンー、ちょっといいかい?」
「はい?なんでしょうか」
周りには誰もいないし、ここで話してみるか。
「実はサーシェさんから君を買い取って欲しいという話を貰ってね。聞いていると君から話が出たっていうじゃないか。ほんとうかい?」
「わぁ、サーシェ様はついにその話をしてくれたんですね。もちろん本当ですよ。以前からケン様の性奴隷になりたいと考えておりましたからサーシェ様にはお話ししておいたのです。でも立場上意見が通るなんて思っていませんでしたので他にもいろいろ策を講じていたのですが、さすがサーシェ様だ! 話の分かるいいご主人様だ」
「そ、そっか。君の意思に反して譲渡するとかそういう話ではないという確認が取れただけで十分だ。ただ、俺達について来ても君が楽しめるかどうかは分からないよ?」
「それは間違いなく大丈夫です!ほんの数日の間ご一緒させてもらっただけでもたくさんの発見がありましたしこれからも大丈夫ですよ! もし、私に飽きたら売却してもらっても構いませんので、ぜひお願いします」
どうして自分のことをそこまで言えるのか俺にはさっぱり分からない。魔族特有の価値観なのか、それともレンが変わっているだけなのか。
まぁどちらにしても仲間になる以上俺は簡単に見捨てたりなんかしないけど。
「わかった、また決まったら話すね」
とだけ伝えると仕事に戻っていった。
「じゃあ今の話、上の二人にも伝えておこうか」
というわけでパーティー全員の了承と一人白銀貨15枚ずつ出し合うということ、それに本人の意思の確認も出来たということで話がまとまった。
俺はさっそくサーシェさんの私室を訪ね、今回の話を受けることを話した。
サーシェさんは喜んでくれていたが、正式にはゴカジに着いて奴隷商のところでいろいろ登録とかがあるらしいのでそこで正式売買成立となる段取りを聞いた。
その後、別の私室を案内されてそこにあった磔用の器具にスポットライトをいくつか設置した。ベッド周りには柔らかい光でちょっとラブホテルみたいにしておいた。
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