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水の精霊編
そーらーをじゆうにとびたいなー
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これで完成だ。
窓から魔法を飛ばすとこの箱の中に納まり周りに被害は出ないはずだ。
「ライカー、完成したよー」
「おつかれさまー、でもどうやって降りるの?」
え?
そういえば、どうしよう。
ついついなんとなくこの高さまで柱を作ってしまったけど、降りるときのことを考えていなかった。
だが、安心していい。俺には前世の記憶がある。
こんな時は。
だいたいバトルマンガだとこの程度の高さ、落ちても平気だろーな。ジャンプして届いたりするし。
それを真似るか?
【身体機能強化】してれば飛び降りても……
うーん、死にはしないとは思うけど、怖いな。却下。
だとすると、魔力の密度を上げて物理的に干渉するようにしてパラシュート的な形状を背中に着けて飛び降りる。メルヘン的な力が働いてふわっと降りれないかな?
いや、重力的な力は前世と同様だ。
パラシュートでゆっくり降りる程の高さはないし、急にメルヘン力に頼るのはダメだ。却下。
同じ理由で風船作ってメルヘン着地も却下か。
思い出せ、前世のアニメや漫画でありそうなの。
そうだ!
飛び降りて着地の前に地面に向けて爆発系の魔法を放って落下の衝撃を和らげるやーつ!
でもあれって、よく考えたら爆発の威力をまるまる体で受け止めるんだよな。
絶対、痛い。却下。
あとは、空飛ぶ仲間に……ってそんなのいないし。
ん?
そっか。空を飛べばいいのか。
確か、ドラゴン的なボールの偉い学者先生は言っていた。
気のコントロールだけなのでそんなに難しくはない、と。
そしてサタン的な娘に伝授していたのを俺は見た記憶がある。
あれを基本に考えればいいのだ。
気なんてものは現実には存在しないから、ここでは魔力に置き換えて考える。
体内にある魔力を物理的に干渉するレベルにまで密度を高める。
そして高めた魔力を持ち上げると体も一緒に持ち上がる……はず?
あれ? 上がらない。
密度をもう少し上げるべきか……あっ、ダメだ。
これ以上上げると血の巡りとかも悪くなりそうだ。
となると、体の表面を密度の高い魔力でコーティングするようにして、その魔力を動かせばいいか?
皮膚の上を少し光るくらいまで魔力密度を上げる……お、これならいける気がする。
念のため、体内の魔力密度も体に影響しない程度に高めておいて、コーティングした魔力と一緒に持ち上げる……お!
すこし浮いたぞ!!
そのまま体を少し動かしてみる
ちゃんとコーティングした魔力も体と一緒に動いてくる。
ちゃんと意識していないと体と魔力がズレて落ちてしまいそうになるけど、集中してれば大丈夫そうだ。
「ケンー大丈夫ー?」
俺が柱の上で固まっているのを心配そうに見ているライカ。
今は集中しているためサムズアップで返事にする。
目を閉じて集中し、体内とコーティングしてある魔力を一歩前に進ませる。
そして、少しずつ下降させる。浮遊している感覚から少しずつ体も下降をしているのが分かる。
ゆっくり、ゆっくりその動きを繰り返し足の裏に地面の感触を感じて目を開けた。
足元には地面があり、目の前には目を丸くしたライカの姿があった。
「すっごい! 今の、どうやったの??」
「へへっ! 思いついちゃったからやってみたんだけどうまくいったよ。でも結構難しいから今度ゆっくり教えるよ」
舞空術というか、トベルーラというか浮遊術というか。なんせ、その手がかりをつかんでしまったのだ!
夢が広がるぜ!
そーらーを自由にっ!とっびたいなー!!
はい、魔力操作ー!!
ってなもんだ。
「ボクにもできるのかな?」
「ライカならきっとできるよ! さて、部屋に戻ろうか」
「うん」
俺達は再度ダイナさんの部屋に戻った。
「窓の外に何か出来たようですが、これは?」
「はい、この箱の中に向けて魔法を撃てば周りに被害がでないでしょ!?」
「そんなものをこの短時間で!?」
「強度は十分に持たせたと思うんだけど、ちょっと試しに撃ってもらえますか?」
「わかりました」
そういってダイナさんは窓から手を出して魔法を詠唱、発動した。
箱に火の玉が飛んでいき、中で燃えそして消えた。
消えた後もコンクリートの箱はヒビが入ったりもしなかった。
頑丈に作ったから大丈夫だと思ったけど、試し撃ちで壊れたらかっこ悪すぎだもんね。
「大丈夫そうですね。ところで、ダイナさんは通常【火球】を何回使えるのですか?」
「この病気になる前は8回使えていました」
「では、試しに8回使ってもらえますか? それ以上使えるようならば制御不能な魔力が余剰分としてダイナさんの体内にあることが証明されます」
「お嬢様、今は発作が治まっているとはいえ無理をされないように」
「大丈夫です。様子を見ながら少しずつ使っていきます。それに、今はケン殿がいらっしゃるのです。何かあっても助けてくれます。それよりも、私はこの病気の対処法を早く習得したいのです」
「しかし、ラムサス様より、極力お嬢様が魔法を使わないようにと言われております。お体に障ります」
「ダイナさん、体がつらいようでしたら無理しないでくださいね?」
「ありがとうございます。でも、少しずつやってみます」
そういうと、ダイナさんは魔法を詠唱、発動、休憩という工程を8回繰り返した。
「病気の事が嘘みたい。まだ魔力に余裕がある感じがします」
「無理をしない程度に、撃てるだけ使ってみてください」
そういうとダイナさんは頷き、再び魔法を詠唱、発動した。
火の玉は窓の外の柱に乗っかっている箱に命中し消失した。さらにダイナさんはその工程を8回繰り返した。
「こんなにたくさん魔法を使えるなんて。でも、もうそろそろ限界のようです」
そういうと、窓際から離れベッドに腰かけた。
「やはりキュリーゼフ病とは魔力の流れが不自然になるため起こる病気ではなく、制御不能の魔力が暴走して起こっているもののようですね。つまり、魔力の流れを制御する術を覚えるよりも、制御できるレベルに魔力を消費してしまうほうが対処法としてはよさそうです」
説明していたがダイナさんはお疲れの表情だ。
「ダイナさん?」
「あっ、はい、そうですわね」
「限界まで魔力を使ってお疲れのようですね。これからは限界の16回も使う必要はないと思います。おそらく8回か9回使えば、残っている魔力は制御できる範囲内だと思います」
「はい、わかりました」
「それで数日様子を見るようにしましょう。念のため、私達も数日は近くにいるようにしますので何かありましたらお声掛けくださいね」
「ありがとうございます」
それを聞いて俺達は部屋を出た。
そしてダイナさんの父親であるカジット伯爵に会いたいと、部屋を出たところの兵士に伝え案内された部屋で待つことになった。
カジット伯爵に会えるかどうか聞いてくれるということだった。
待つこと小一時間。
まぁ、急に面会を希望してすぐに会えるとは思っていなかったけど、部屋にやってきたのはラムサスさんだった。
「やぁ、君たち。まだ旅立っていなかったんだね。それで、今日はどういう事だい?」
「いえ、ダイナさんの容体について数日様子見をしようとは思いますがカジット伯爵にも報告しておこうと思いました」
「そうかいそうかい。伯爵は今日は予定が立て込んでいてね。報告は私からしておく。どのような内容かな?」
「こちらでもキュリーゼフ病の事を調べてみました。そこで、根本的な治療は分かりませんでした」
「そうか、残念だ」
無表情で答えるラムサスさん。
「しかし、魔力による体への障害があるのであれば、その魔力を無くせば症状が現れないという話がありまして、しばらくそれを試してみようかと思います」
「ほう、、、その方法は?」
「簡単です。本人に魔法を使ってもらうんです」
「病人に魔法を使わせる?」
「はい、もちろん、様子を見ながら大丈夫な範囲で、ということになりますが」
「お嬢様は火の属性に適正があり病気になる前は確かに魔法が使えたが、火属性を使う場所は屋外じゃないと適さない。かなりお嬢様に負担がかかる方法だな。伯爵に報告しても許可を貰えるかどうか・・・」
「一応、数日間それで様子を見ようと思いますので伯爵への報告をお願いします」
「ということは、数日この屋敷に留まるのかい?」
「そうしようかと思いましたが、また前の部屋で男女別になるとライカと離れないといけないので通おうかと思います」
「そうかわかった。くれぐれもお嬢様に無理をさせないようにな」
「わかりました。では、今日はこれにて失礼します」
俺とライカは席を立つと、ラムサスさんに挨拶の会釈をして部屋を出た。
兵士の案内で屋敷の外まで出るとライカが話しかけて来た
「ねぇ、もう魔法使ってもらったよね?」
「そうだね。まだ使ってないとは言ってないし?」
「なんだか悪いケンが出てきてるみたい」
「悪いってひどいなぁ。ライカも見ただろ? ダイナさん平気な顔して魔法使ってた。魔法を使うのが平気なのにラムサスさんは反対したということは、きっとこの方法をラムサスさんはしてほしくないんだよ」
「そっか。でもなんでラムサスさんのしてほしくないことを?」
「俺の予想じゃ、あの人たぶんダイナさんを治すつもりない。今の状態を維持したいんじゃないかな。でもそれじゃダイナさんがかわいそうすぎる。あんなに美人なのに。偉い人の娘なのに威張ったりしないし、美人だし」
「美人って2回言った……」
「え? いやいや、言ってないよ。そんなことより、あのラムサスって人どう思う?」
「誤魔化した。もういいよ。ラムサスさん? よく分からないけど、魔法普通に使えたもんね。一度も試さずに反対するって過保護かなーって思った」
「あの人の立場で過保護ってのが違和感なんだよね。それよりも何か企みがあると考えたほうが自然なんだよ。大体読めて来たし、多少妨害される可能性もあるけどダイナさんを救う方向で動いてみよう」
そんな話をしながら宿に向って歩いていた時だった。
「おい、そこのガキ共!」
人気のない裏道だからってめっちゃ絡んできますやーん?誰ですのん?
「ボク達ですか?」
「他に誰がいる! お前らに決まってるだろ」
見るからに野盗という恰好の男5人だ。もちろん、全く見覚えはない。
「何か御用でしょうか」
「お前たちに恨みはないが、くたばってもらうぜ」
そう言いながら剣を片手に近づいてきた。
え?怖い怖い。過去の人攫いのほうがまだ油断させようといい人のフリをしていた。
今回は取り繕うこともなくいきなりかよ。
異世界ファンタジー怖すぎだろ。
俺はサッと剣を抜くと構えた。
ライカは俺の後ろで杖を構えつつ、小声で俺に呟く
「援護するね」
「了解」
一言、小声で返事をすると俺は剣気を纏った。
そして相手によく見えるように剣を大きく動かし、両手で持つと上段の構えをした。
と、同時に体には【身体機能強化】を掛ける。
こちらも準備が出来たときには最初の一人が俺に斬りかかってきたところだ。
ガキンッ!
相手の初撃をいなすと同時に足払い、続けて襲ってきた二人目をカウンターで籠手を決めると持っていた剣を落とし悶絶した。
それを見た三人目と四人目が同時にかかってきたので左手から【火壁】を作り出し動きを防いだ。突然火の壁が目の前に現れ一瞬動きを止めたところに【火球】を3発連続して発動すると、残りの三人に命中した。
火の玉が体にあたり衣服に燃え移ったため慌てて地面を転げまわる三人。
最初に足払いで倒れていた一人目が再度体制を整え向かってくる隙を伺っていたが、残りの四人がすぐに倒されたのを見て動きが止まった。
俺はそいつに剣を向け、
「まだやるって言うなら手加減しないけど、どうする?」
「くそっ!お前ら何者なんだ!?こんなガキがなんでこんなにつえーんだよ!!」
逃げ腰になった一人目は虚勢を張るかのように言い放った。
が、そのセリフは完全に負けを認めてますよ?
「何者かも知らずに襲ってきたの?」
「うっせーよ!」
「【火結界】」
俺は問答無用で5人まとめて火の壁で覆い、逃げ場を防いだ
「ひぇっ」
攻撃されると思ったのか一人目がなんとも情けない声をだしたのは無視した。
「で、これで逃げられなくなったね。丸焼けになるか無事に出られるかはおにーさん達次第だよ。まず、なんで僕たちを襲ってきたのかな?」
「お、俺達は……頼まれて……」
まぁ、タイミング的にラムサスさんだろーけど。
「頼まれた? 誰に??」
「名前は知らねぇ。ホントだ!!この道を少し行ったところで声を掛けられたんだ!金をやるから次にここを通る子供二人を倒してほしいって金を渡されたんだ!!」
「それはどんな人だった?」
「わからねぇ。フードを深くかぶっていたから。あ、女だ!声の感じからあれは女だった。なぁ頼む!許してくれっ!」
あれ?ラムサスさんじゃないのか。いや、その子飼いの者ってこともあるか。
「その女の情報をもっと聞きたいなぁ」
「ほんとにそれ以上は知らねぇんだ。ついさっきのことだったから今からいけばまだあの辺にいるかもしれねぇ。行ってみたらどうだ?」
いやいないだろ。普通に考えて。
「じゃあボク達の代わりにその女を探してくれるっていうなら解放してあげるけど、どお?」
「わかった!すぐに探してくる!」
その返事を聞いて火結界を解く。
「おい、行くぞ!起きろ!!」
悶絶してる人を抱え起こして5人そろって走り去っていった。
「ねぇ、よかったの? あの人達逃げちゃうよ?」
「いいんじゃない? もう襲って来ないだろうし。それに女を捕まえる事も出来ないだろうしね。それよりも、宿に行こう」
そういって俺達は歩き出した。
窓から魔法を飛ばすとこの箱の中に納まり周りに被害は出ないはずだ。
「ライカー、完成したよー」
「おつかれさまー、でもどうやって降りるの?」
え?
そういえば、どうしよう。
ついついなんとなくこの高さまで柱を作ってしまったけど、降りるときのことを考えていなかった。
だが、安心していい。俺には前世の記憶がある。
こんな時は。
だいたいバトルマンガだとこの程度の高さ、落ちても平気だろーな。ジャンプして届いたりするし。
それを真似るか?
【身体機能強化】してれば飛び降りても……
うーん、死にはしないとは思うけど、怖いな。却下。
だとすると、魔力の密度を上げて物理的に干渉するようにしてパラシュート的な形状を背中に着けて飛び降りる。メルヘン的な力が働いてふわっと降りれないかな?
いや、重力的な力は前世と同様だ。
パラシュートでゆっくり降りる程の高さはないし、急にメルヘン力に頼るのはダメだ。却下。
同じ理由で風船作ってメルヘン着地も却下か。
思い出せ、前世のアニメや漫画でありそうなの。
そうだ!
飛び降りて着地の前に地面に向けて爆発系の魔法を放って落下の衝撃を和らげるやーつ!
でもあれって、よく考えたら爆発の威力をまるまる体で受け止めるんだよな。
絶対、痛い。却下。
あとは、空飛ぶ仲間に……ってそんなのいないし。
ん?
そっか。空を飛べばいいのか。
確か、ドラゴン的なボールの偉い学者先生は言っていた。
気のコントロールだけなのでそんなに難しくはない、と。
そしてサタン的な娘に伝授していたのを俺は見た記憶がある。
あれを基本に考えればいいのだ。
気なんてものは現実には存在しないから、ここでは魔力に置き換えて考える。
体内にある魔力を物理的に干渉するレベルにまで密度を高める。
そして高めた魔力を持ち上げると体も一緒に持ち上がる……はず?
あれ? 上がらない。
密度をもう少し上げるべきか……あっ、ダメだ。
これ以上上げると血の巡りとかも悪くなりそうだ。
となると、体の表面を密度の高い魔力でコーティングするようにして、その魔力を動かせばいいか?
皮膚の上を少し光るくらいまで魔力密度を上げる……お、これならいける気がする。
念のため、体内の魔力密度も体に影響しない程度に高めておいて、コーティングした魔力と一緒に持ち上げる……お!
すこし浮いたぞ!!
そのまま体を少し動かしてみる
ちゃんとコーティングした魔力も体と一緒に動いてくる。
ちゃんと意識していないと体と魔力がズレて落ちてしまいそうになるけど、集中してれば大丈夫そうだ。
「ケンー大丈夫ー?」
俺が柱の上で固まっているのを心配そうに見ているライカ。
今は集中しているためサムズアップで返事にする。
目を閉じて集中し、体内とコーティングしてある魔力を一歩前に進ませる。
そして、少しずつ下降させる。浮遊している感覚から少しずつ体も下降をしているのが分かる。
ゆっくり、ゆっくりその動きを繰り返し足の裏に地面の感触を感じて目を開けた。
足元には地面があり、目の前には目を丸くしたライカの姿があった。
「すっごい! 今の、どうやったの??」
「へへっ! 思いついちゃったからやってみたんだけどうまくいったよ。でも結構難しいから今度ゆっくり教えるよ」
舞空術というか、トベルーラというか浮遊術というか。なんせ、その手がかりをつかんでしまったのだ!
夢が広がるぜ!
そーらーを自由にっ!とっびたいなー!!
はい、魔力操作ー!!
ってなもんだ。
「ボクにもできるのかな?」
「ライカならきっとできるよ! さて、部屋に戻ろうか」
「うん」
俺達は再度ダイナさんの部屋に戻った。
「窓の外に何か出来たようですが、これは?」
「はい、この箱の中に向けて魔法を撃てば周りに被害がでないでしょ!?」
「そんなものをこの短時間で!?」
「強度は十分に持たせたと思うんだけど、ちょっと試しに撃ってもらえますか?」
「わかりました」
そういってダイナさんは窓から手を出して魔法を詠唱、発動した。
箱に火の玉が飛んでいき、中で燃えそして消えた。
消えた後もコンクリートの箱はヒビが入ったりもしなかった。
頑丈に作ったから大丈夫だと思ったけど、試し撃ちで壊れたらかっこ悪すぎだもんね。
「大丈夫そうですね。ところで、ダイナさんは通常【火球】を何回使えるのですか?」
「この病気になる前は8回使えていました」
「では、試しに8回使ってもらえますか? それ以上使えるようならば制御不能な魔力が余剰分としてダイナさんの体内にあることが証明されます」
「お嬢様、今は発作が治まっているとはいえ無理をされないように」
「大丈夫です。様子を見ながら少しずつ使っていきます。それに、今はケン殿がいらっしゃるのです。何かあっても助けてくれます。それよりも、私はこの病気の対処法を早く習得したいのです」
「しかし、ラムサス様より、極力お嬢様が魔法を使わないようにと言われております。お体に障ります」
「ダイナさん、体がつらいようでしたら無理しないでくださいね?」
「ありがとうございます。でも、少しずつやってみます」
そういうと、ダイナさんは魔法を詠唱、発動、休憩という工程を8回繰り返した。
「病気の事が嘘みたい。まだ魔力に余裕がある感じがします」
「無理をしない程度に、撃てるだけ使ってみてください」
そういうとダイナさんは頷き、再び魔法を詠唱、発動した。
火の玉は窓の外の柱に乗っかっている箱に命中し消失した。さらにダイナさんはその工程を8回繰り返した。
「こんなにたくさん魔法を使えるなんて。でも、もうそろそろ限界のようです」
そういうと、窓際から離れベッドに腰かけた。
「やはりキュリーゼフ病とは魔力の流れが不自然になるため起こる病気ではなく、制御不能の魔力が暴走して起こっているもののようですね。つまり、魔力の流れを制御する術を覚えるよりも、制御できるレベルに魔力を消費してしまうほうが対処法としてはよさそうです」
説明していたがダイナさんはお疲れの表情だ。
「ダイナさん?」
「あっ、はい、そうですわね」
「限界まで魔力を使ってお疲れのようですね。これからは限界の16回も使う必要はないと思います。おそらく8回か9回使えば、残っている魔力は制御できる範囲内だと思います」
「はい、わかりました」
「それで数日様子を見るようにしましょう。念のため、私達も数日は近くにいるようにしますので何かありましたらお声掛けくださいね」
「ありがとうございます」
それを聞いて俺達は部屋を出た。
そしてダイナさんの父親であるカジット伯爵に会いたいと、部屋を出たところの兵士に伝え案内された部屋で待つことになった。
カジット伯爵に会えるかどうか聞いてくれるということだった。
待つこと小一時間。
まぁ、急に面会を希望してすぐに会えるとは思っていなかったけど、部屋にやってきたのはラムサスさんだった。
「やぁ、君たち。まだ旅立っていなかったんだね。それで、今日はどういう事だい?」
「いえ、ダイナさんの容体について数日様子見をしようとは思いますがカジット伯爵にも報告しておこうと思いました」
「そうかいそうかい。伯爵は今日は予定が立て込んでいてね。報告は私からしておく。どのような内容かな?」
「こちらでもキュリーゼフ病の事を調べてみました。そこで、根本的な治療は分かりませんでした」
「そうか、残念だ」
無表情で答えるラムサスさん。
「しかし、魔力による体への障害があるのであれば、その魔力を無くせば症状が現れないという話がありまして、しばらくそれを試してみようかと思います」
「ほう、、、その方法は?」
「簡単です。本人に魔法を使ってもらうんです」
「病人に魔法を使わせる?」
「はい、もちろん、様子を見ながら大丈夫な範囲で、ということになりますが」
「お嬢様は火の属性に適正があり病気になる前は確かに魔法が使えたが、火属性を使う場所は屋外じゃないと適さない。かなりお嬢様に負担がかかる方法だな。伯爵に報告しても許可を貰えるかどうか・・・」
「一応、数日間それで様子を見ようと思いますので伯爵への報告をお願いします」
「ということは、数日この屋敷に留まるのかい?」
「そうしようかと思いましたが、また前の部屋で男女別になるとライカと離れないといけないので通おうかと思います」
「そうかわかった。くれぐれもお嬢様に無理をさせないようにな」
「わかりました。では、今日はこれにて失礼します」
俺とライカは席を立つと、ラムサスさんに挨拶の会釈をして部屋を出た。
兵士の案内で屋敷の外まで出るとライカが話しかけて来た
「ねぇ、もう魔法使ってもらったよね?」
「そうだね。まだ使ってないとは言ってないし?」
「なんだか悪いケンが出てきてるみたい」
「悪いってひどいなぁ。ライカも見ただろ? ダイナさん平気な顔して魔法使ってた。魔法を使うのが平気なのにラムサスさんは反対したということは、きっとこの方法をラムサスさんはしてほしくないんだよ」
「そっか。でもなんでラムサスさんのしてほしくないことを?」
「俺の予想じゃ、あの人たぶんダイナさんを治すつもりない。今の状態を維持したいんじゃないかな。でもそれじゃダイナさんがかわいそうすぎる。あんなに美人なのに。偉い人の娘なのに威張ったりしないし、美人だし」
「美人って2回言った……」
「え? いやいや、言ってないよ。そんなことより、あのラムサスって人どう思う?」
「誤魔化した。もういいよ。ラムサスさん? よく分からないけど、魔法普通に使えたもんね。一度も試さずに反対するって過保護かなーって思った」
「あの人の立場で過保護ってのが違和感なんだよね。それよりも何か企みがあると考えたほうが自然なんだよ。大体読めて来たし、多少妨害される可能性もあるけどダイナさんを救う方向で動いてみよう」
そんな話をしながら宿に向って歩いていた時だった。
「おい、そこのガキ共!」
人気のない裏道だからってめっちゃ絡んできますやーん?誰ですのん?
「ボク達ですか?」
「他に誰がいる! お前らに決まってるだろ」
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「何か御用でしょうか」
「お前たちに恨みはないが、くたばってもらうぜ」
そう言いながら剣を片手に近づいてきた。
え?怖い怖い。過去の人攫いのほうがまだ油断させようといい人のフリをしていた。
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俺はサッと剣を抜くと構えた。
ライカは俺の後ろで杖を構えつつ、小声で俺に呟く
「援護するね」
「了解」
一言、小声で返事をすると俺は剣気を纏った。
そして相手によく見えるように剣を大きく動かし、両手で持つと上段の構えをした。
と、同時に体には【身体機能強化】を掛ける。
こちらも準備が出来たときには最初の一人が俺に斬りかかってきたところだ。
ガキンッ!
相手の初撃をいなすと同時に足払い、続けて襲ってきた二人目をカウンターで籠手を決めると持っていた剣を落とし悶絶した。
それを見た三人目と四人目が同時にかかってきたので左手から【火壁】を作り出し動きを防いだ。突然火の壁が目の前に現れ一瞬動きを止めたところに【火球】を3発連続して発動すると、残りの三人に命中した。
火の玉が体にあたり衣服に燃え移ったため慌てて地面を転げまわる三人。
最初に足払いで倒れていた一人目が再度体制を整え向かってくる隙を伺っていたが、残りの四人がすぐに倒されたのを見て動きが止まった。
俺はそいつに剣を向け、
「まだやるって言うなら手加減しないけど、どうする?」
「くそっ!お前ら何者なんだ!?こんなガキがなんでこんなにつえーんだよ!!」
逃げ腰になった一人目は虚勢を張るかのように言い放った。
が、そのセリフは完全に負けを認めてますよ?
「何者かも知らずに襲ってきたの?」
「うっせーよ!」
「【火結界】」
俺は問答無用で5人まとめて火の壁で覆い、逃げ場を防いだ
「ひぇっ」
攻撃されると思ったのか一人目がなんとも情けない声をだしたのは無視した。
「で、これで逃げられなくなったね。丸焼けになるか無事に出られるかはおにーさん達次第だよ。まず、なんで僕たちを襲ってきたのかな?」
「お、俺達は……頼まれて……」
まぁ、タイミング的にラムサスさんだろーけど。
「頼まれた? 誰に??」
「名前は知らねぇ。ホントだ!!この道を少し行ったところで声を掛けられたんだ!金をやるから次にここを通る子供二人を倒してほしいって金を渡されたんだ!!」
「それはどんな人だった?」
「わからねぇ。フードを深くかぶっていたから。あ、女だ!声の感じからあれは女だった。なぁ頼む!許してくれっ!」
あれ?ラムサスさんじゃないのか。いや、その子飼いの者ってこともあるか。
「その女の情報をもっと聞きたいなぁ」
「ほんとにそれ以上は知らねぇんだ。ついさっきのことだったから今からいけばまだあの辺にいるかもしれねぇ。行ってみたらどうだ?」
いやいないだろ。普通に考えて。
「じゃあボク達の代わりにその女を探してくれるっていうなら解放してあげるけど、どお?」
「わかった!すぐに探してくる!」
その返事を聞いて火結界を解く。
「おい、行くぞ!起きろ!!」
悶絶してる人を抱え起こして5人そろって走り去っていった。
「ねぇ、よかったの? あの人達逃げちゃうよ?」
「いいんじゃない? もう襲って来ないだろうし。それに女を捕まえる事も出来ないだろうしね。それよりも、宿に行こう」
そういって俺達は歩き出した。
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三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
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三歳で婚約破棄され
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