34 / 103
19② ー謁見ー
しおりを挟む
どこかクラウディオに雰囲気が似ているような気がするが、短い金髪で深い藍色の瞳をしている。クラウディオに初めて会った時に感じた、蔑みの視線を向けられてそう感じるのかもしれない。
王はこちらを一瞥した程度で、クラウディオと話し始めた。セレスティーヌは無視だ。話に入れるつもりもないと、体の向きですら背けられている。
(これは、他の人に軽んじられて当然の態度だわ。ここまで王に嫌われているならば、擁護する必要がないもの)
絶対的権力者に楯突く理由などない。それが公爵家に金を払って嫁いでくるような女ならば、なおさら。
セレスティーヌの立場は女性たちの恨みによって確立されているわけではなく、王によっても疎外される立ち位置なのだ。
周囲もそれが分かっていると、セレスティーヌへの視線に嘲笑が混じっていた。針のむしろといっても過言ではない。
これでダンスの相手をクラウディオにしてもらえなかったとなれば、セレスティーヌが落胆するわけだ。
「女性たちが騒がしいと思ったら、珍しい雰囲気で驚いたぞ。皆の視線を手に入れることが容易いはずなのに、力を入れる理由でもあったのか」
衣装の話になり、王が言いながらちろっとこちらに視線を向けた。いかにも、お前がそんな派手な衣装着せたんだろう。の目だ。
(私じゃないですよ。クラウディオが決めたわけでもないと思うけれど)
「良い布ができたと連絡を受けて、こちらを作らせました」
「……そうなのか? 確かに品は良さそうだな」
予想外の答えで王は少しだけ逡巡した。フィオナもついクラウディオの顔を見上げてしまう。
(作らせた? 招待状が来てから作らせたってこと? いや、まさかね。そんな余裕ないだろうし、そうでなければ針子さんたちは寝ずに作ることになっちゃうわ)
王の嫌味をかわすために嘘を言ったのだろうか。きっと、これ以上面倒を被りたくないのだろう。
「領地の開拓が進み、道が開けたおかげか? これで少しは領土も潤うな。安心したぞ」
クラウディオは公爵領に力を入れているようだ。山間にある領土に商人が通りやすくなる道でも作ったのか、王は目尻を下げる。これで借金に苦しまないとでも言いたいようだ。
セレスティーヌは一切何も関わっていないので、フィオナは領土の話も聞いたことがない。
公爵家のことも分からないので当然か。公爵家でもセレスティーヌに関わる者はリディや身の回りのことを行うメイドたち、シェフのポールと執事のモーリスくらい。
元の体に戻るかしか考えていないので、公爵家や領土についてなどは、セレスティーヌではないと気付かれない程度しか学んでいない。
(お屋敷でほとんど会わないから知らないけど、クラウディオもきっと色々やってるのよね)
借金をしたのは不運が重なったせいでもあるようだし、しっかりと管理していれば借金をすることもなかったのだろう。
「都に近くともあの土地はあまりに過酷な場所だ。先祖を悪く言う気はないが、あの土地のせいで要らぬ苦労をすることになったのだから、私は心を痛めているのだ」
近くても住みにくい場所。そんな場所を古き王は公爵に与えたようだ。そんな土地を継承したクラウディオは、その割を食っているのである。
(だからって、こっち見て言うの、やめてくれないかしら)
王はどうしてもセレスティーヌを邪険にしたいらしい。嫌味を言う時は必ずセレスティーヌに視線を向ける。
フィオナはにこやかな笑顔を湛えたままクラウディオと王の話を聞いているが、クラウディオまでこちらをちらちら見てくる。フィオナは当事者ではないので痛む胸はないが、さすがにいい気持ちはしない。
「古い時代は弟をはるか遠くに追いやった王もいると言う。私は能力のある者をそのようにぞんざいに扱うつもりはないのだ。魔法継承できる者も少なくなっている。優秀な血筋を絶やしてもらいたくはない」
王の言い分はよく分かった。つまり、クラウディオの優秀な魔法を使える力を、子供に継承しないのはもったいないと言いたいのだ。ついでに言えば、優秀なクラウディオが子供をつくらないことを知っている。
(望まない結婚だものね。子供ができるわけないのだし、王の心配ももっともだわ)
ブルイエ家も同じような話をしているので、理解はできる。公爵という高い身分を持っているのだし、次の世代を考えるのは当然だ。
クラウディオからは離婚もできないので、セレスティーヌとの子をもうける気がなければ、拒否を続けるしかない。王にとってそれはとても歯がゆいのだろう。だったらセレスティーヌから離婚を口にすればいいのだと、態度で脅してくる。
セレスティーヌとの結婚は借金を作ったことによる契約結婚なのだから、王でも口出しできないわけだ。
それでもこちらを見ないでほしいものである。
王はこちらを一瞥した程度で、クラウディオと話し始めた。セレスティーヌは無視だ。話に入れるつもりもないと、体の向きですら背けられている。
(これは、他の人に軽んじられて当然の態度だわ。ここまで王に嫌われているならば、擁護する必要がないもの)
絶対的権力者に楯突く理由などない。それが公爵家に金を払って嫁いでくるような女ならば、なおさら。
セレスティーヌの立場は女性たちの恨みによって確立されているわけではなく、王によっても疎外される立ち位置なのだ。
周囲もそれが分かっていると、セレスティーヌへの視線に嘲笑が混じっていた。針のむしろといっても過言ではない。
これでダンスの相手をクラウディオにしてもらえなかったとなれば、セレスティーヌが落胆するわけだ。
「女性たちが騒がしいと思ったら、珍しい雰囲気で驚いたぞ。皆の視線を手に入れることが容易いはずなのに、力を入れる理由でもあったのか」
衣装の話になり、王が言いながらちろっとこちらに視線を向けた。いかにも、お前がそんな派手な衣装着せたんだろう。の目だ。
(私じゃないですよ。クラウディオが決めたわけでもないと思うけれど)
「良い布ができたと連絡を受けて、こちらを作らせました」
「……そうなのか? 確かに品は良さそうだな」
予想外の答えで王は少しだけ逡巡した。フィオナもついクラウディオの顔を見上げてしまう。
(作らせた? 招待状が来てから作らせたってこと? いや、まさかね。そんな余裕ないだろうし、そうでなければ針子さんたちは寝ずに作ることになっちゃうわ)
王の嫌味をかわすために嘘を言ったのだろうか。きっと、これ以上面倒を被りたくないのだろう。
「領地の開拓が進み、道が開けたおかげか? これで少しは領土も潤うな。安心したぞ」
クラウディオは公爵領に力を入れているようだ。山間にある領土に商人が通りやすくなる道でも作ったのか、王は目尻を下げる。これで借金に苦しまないとでも言いたいようだ。
セレスティーヌは一切何も関わっていないので、フィオナは領土の話も聞いたことがない。
公爵家のことも分からないので当然か。公爵家でもセレスティーヌに関わる者はリディや身の回りのことを行うメイドたち、シェフのポールと執事のモーリスくらい。
元の体に戻るかしか考えていないので、公爵家や領土についてなどは、セレスティーヌではないと気付かれない程度しか学んでいない。
(お屋敷でほとんど会わないから知らないけど、クラウディオもきっと色々やってるのよね)
借金をしたのは不運が重なったせいでもあるようだし、しっかりと管理していれば借金をすることもなかったのだろう。
「都に近くともあの土地はあまりに過酷な場所だ。先祖を悪く言う気はないが、あの土地のせいで要らぬ苦労をすることになったのだから、私は心を痛めているのだ」
近くても住みにくい場所。そんな場所を古き王は公爵に与えたようだ。そんな土地を継承したクラウディオは、その割を食っているのである。
(だからって、こっち見て言うの、やめてくれないかしら)
王はどうしてもセレスティーヌを邪険にしたいらしい。嫌味を言う時は必ずセレスティーヌに視線を向ける。
フィオナはにこやかな笑顔を湛えたままクラウディオと王の話を聞いているが、クラウディオまでこちらをちらちら見てくる。フィオナは当事者ではないので痛む胸はないが、さすがにいい気持ちはしない。
「古い時代は弟をはるか遠くに追いやった王もいると言う。私は能力のある者をそのようにぞんざいに扱うつもりはないのだ。魔法継承できる者も少なくなっている。優秀な血筋を絶やしてもらいたくはない」
王の言い分はよく分かった。つまり、クラウディオの優秀な魔法を使える力を、子供に継承しないのはもったいないと言いたいのだ。ついでに言えば、優秀なクラウディオが子供をつくらないことを知っている。
(望まない結婚だものね。子供ができるわけないのだし、王の心配ももっともだわ)
ブルイエ家も同じような話をしているので、理解はできる。公爵という高い身分を持っているのだし、次の世代を考えるのは当然だ。
クラウディオからは離婚もできないので、セレスティーヌとの子をもうける気がなければ、拒否を続けるしかない。王にとってそれはとても歯がゆいのだろう。だったらセレスティーヌから離婚を口にすればいいのだと、態度で脅してくる。
セレスティーヌとの結婚は借金を作ったことによる契約結婚なのだから、王でも口出しできないわけだ。
それでもこちらを見ないでほしいものである。
391
あなたにおすすめの小説
嫌われ皇后は子供が可愛すぎて皇帝陛下に構っている時間なんてありません。
しあ
恋愛
目が覚めるとお腹が痛い!
声が出せないくらいの激痛。
この痛み、覚えがある…!
「ルビア様、赤ちゃんに酸素を送るためにゆっくり呼吸をしてください!もうすぐですよ!」
やっぱり!
忘れてたけど、お産の痛みだ!
だけどどうして…?
私はもう子供が産めないからだだったのに…。
そんなことより、赤ちゃんを無事に産まないと!
指示に従ってやっと生まれた赤ちゃんはすごく可愛い。だけど、どう見ても日本人じゃない。
どうやら私は、わがままで嫌われ者の皇后に憑依転生したようです。だけど、赤ちゃんをお世話するのに忙しいので、構ってもらわなくて結構です。
なのに、どうして私を嫌ってる皇帝が部屋に訪れてくるんですか!?しかも毎回イラッとするとこを言ってくるし…。
本当になんなの!?あなたに構っている時間なんてないんですけど!
※視点がちょくちょく変わります。
ガバガバ設定、なんちゃって知識で書いてます。
エールを送って下さりありがとうございました!
公爵令息様を治療したらいつの間にか溺愛されていました
Karamimi
恋愛
マーケッヒ王国は魔法大国。そんなマーケッヒ王国の伯爵令嬢セリーナは、14歳という若さで、治癒師として働いている。それもこれも莫大な借金を返済し、幼い弟妹に十分な教育を受けさせるためだ。
そんなセリーナの元を訪ねて来たのはなんと、貴族界でも3本の指に入る程の大貴族、ファーレソン公爵だ。話を聞けば、15歳になる息子、ルークがずっと難病に苦しんでおり、どんなに優秀な治癒師に診てもらっても、一向に良くならないらしい。
それどころか、どんどん悪化していくとの事。そんな中、セリーナの評判を聞きつけ、藁をもすがる思いでセリーナの元にやって来たとの事。
必死に頼み込む公爵を見て、出来る事はやってみよう、そう思ったセリーナは、早速公爵家で治療を始めるのだが…
正義感が強く努力家のセリーナと、病気のせいで心が歪んでしまった公爵令息ルークの恋のお話です。
追放された悪役令嬢はシングルマザー
ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。
断罪回避に奮闘するも失敗。
国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。
この子は私の子よ!守ってみせるわ。
1人、子を育てる決心をする。
そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。
さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥
ーーーー
完結確約 9話完結です。
短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
【完結】転生したらラスボスの毒継母でした!
白雨 音
恋愛
妹シャルリーヌに裕福な辺境伯から結婚の打診があったと知り、アマンディーヌはシャルリーヌと入れ替わろうと画策する。
辺境伯からは「息子の為の白い結婚、いずれ解消する」と宣言されるが、アマンディーヌにとっても都合が良かった。「辺境伯の財で派手に遊び暮らせるなんて最高!」義理の息子など放置して遊び歩く気満々だったが、義理の息子に会った瞬間、卒倒した。
夢の中、前世で読んだ小説を思い出し、義理の息子は将来世界を破滅させようとするラスボスで、自分はその一因を作った毒継母だと知った。破滅もだが、何より自分の死の回避の為に、義理の息子を真っ当な人間に育てようと誓ったアマンディーヌの奮闘☆
異世界転生、家族愛、恋愛☆ 短めの長編(全二十一話です)
《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、いいね、ありがとうございます☆
完】異端の治癒能力を持つ令嬢は婚約破棄をされ、王宮の侍女として静かに暮らす事を望んだ。なのに!王子、私は侍女ですよ!言い寄られたら困ります!
仰木 あん
恋愛
マリアはエネローワ王国のライオネル伯爵の長女である。
ある日、婚約者のハルト=リッチに呼び出され、婚約破棄を告げられる。
理由はマリアの義理の妹、ソフィアに心変わりしたからだそうだ。
ハルトとソフィアは互いに惹かれ、『真実の愛』に気付いたとのこと…。
マリアは色々な物を継母の連れ子である、ソフィアに奪われてきたが、今度は婚約者か…と、気落ちをして、実家に帰る。
自室にて、過去の母の言葉を思い出す。
マリアには、王国において、異端とされるドルイダスの異能があり、強力な治癒能力で、人を癒すことが出来る事を…
しかしそれは、この国では迫害される恐れがあるため、内緒にするようにと強く言われていた。
そんな母が亡くなり、継母がソフィアを連れて屋敷に入ると、マリアの生活は一変した。
ハルトという婚約者を得て、家を折角出たのに、この始末……。
マリアは父親に願い出る。
家族に邪魔されず、一人で静かに王宮の侍女として働いて生きるため、再び家を出るのだが………
この話はフィクションです。
名前等は実際のものとなんら関係はありません。
【完結】記憶喪失の令嬢は無自覚のうちに周囲をタラシ込む。
ゆらゆらぎ
恋愛
王国の筆頭公爵家であるヴェルガム家の長女であるティアルーナは食事に混ぜられていた遅延性の毒に苦しめられ、生死を彷徨い…そして目覚めた時には何もかもをキレイさっぱり忘れていた。
毒によって記憶を失った令嬢が使用人や両親、婚約者や兄を無自覚のうちにタラシ込むお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる