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マリオンネ3
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「このようなところで、ムスタファ・ブレインが二人、ウロウロと何をしているのやら」
「ベリエル、それはこちらのセリフだな」
ごつい体で何かを含むような笑いをして近付くベリエルに、フルネミアは鋭く睨みつけた。
殺されたインリュオスを悼んで、彼の部屋の近くを歩いているわけではないだろう。
筋肉なのか肉なのか、体をすっぽり覆う白の衣装からでは分かりづらいが、きつそうなのは確かだ。マントに繋がる袖から出す腕も白の服だが、それも野太くがっちりしている。
ムスタファ・ブレインの象徴でもある、マントと上着が繋がっている白の衣装。ムスタファ・ブレイン全員がそれを着ているので、ベリエルの太さが良く分かる。
「運動不足で散歩でもしているのか。お前の部屋はこの通りではないだろう」
「何と失礼なのか。アンリカーダ様がムスタファ・ブレインを呼んでいる。探しにきたのだから礼くらい口にしてほしいものだね」
アンリカーダがムスタファ・ブレインを全員呼ぶのは珍しい。
元々あまり姿を現さないのに、呼び出すなどと。
一体何があったのか。アストラルと顔を見合わせる。
「女王は何を?」
「さて。物思いに耽っていらっしゃったが、皆を呼び出すよう命令された」
「インリュオスを殺した犯人でも分かったのかな?」
アストラルは冗談ぽく口にする。アストラルがそんなことを言うと、まるでベリエルが犯人のように思える。ベリエルは知らぬ顔をしてフルネミアとアストラルにアンリカーダのいるミーニリオンの小島へ行けと手を振った。
ベリエルは他の者たちも探してから行くようだ。
廊下を飛んでいた精霊たちがベリエルを見て天井に逃げていく。精霊たちがベリエルを恐れるように遠巻きにした。
「……ベリエルが、ムスタファ・ブレインを呼ぶお使いとはね」
アストラルが精霊のことは口にはせず、笑いながら揶揄するが、その目は笑っていない。フルネミアも妙な感じがした。アンリカーダの命令ならば小間使いのような真似をするのか。
余程アンリカーダに傾倒しているのか、それとも小間使いにされてもごまをすっているのか。
ベリエルの後ろ姿を見送りながら、フルネミアは久し振りに会う女王に会いに、ミーニリオンの小島へと足を向けた。
ミーニリオン。地上からの客が訪れた時やムスタファ・ブレインが集まる時などに使う場所だ。前女王エルヴィアナのように、アンリカーダはフルネミアを自室に呼んだりしないため、今では女王に会うにはそこに行かなければならない。
他の者は知らないが。
地上の人間が訪れる島と、マリオンネに住む者たちがいる島は別になっている。そこには住宅地や宮殿があり、地上の人間が入ることはできない。
宮殿は女王やムスタファブレインが集まる場所、いわばマリオンネの中枢で政治的な活動をする場所だ。
中で仕事をする者以外マリオンネの住民でも入ることはできないが、住民たちへ姿を見せるために、外向けの回廊を歩くことで気軽に拝見することができた。
もちろん催しなどで大々的に姿を現すことはあるが、警備があるとはいえ気安くお会いできることは住民にとっても安心だろう。
精霊たちはそこら中にいるが、精霊たちの住む島もいくつかある。そこに訪れなければならないことはないが、エルヴィアナ女王はたまに島に訪れて精霊たちと会話を交わした。
しかし、アンリカーダは閉じこもったまま。どこに行くつもりもなく、ただうつろうようにいるだけだ。
いや、どこにも行っていないように見せて、実は裏で何かをしているのだ。そうでなければ精霊たちの一部がおかしな動きをするわけがない。
女王になってから、アンリカーダを見ることは少なかった。女王になる前はアストラルに女王になるための学びを受けるため、宮殿をうろついているのは見掛けたが。
女王になってからそれはめっきりなくなった。ラータニアの件で王が精霊の力を剥奪された話を聞いたのも女王からではなく、ムスタファブレインでもなく、女王の身の回りの世話をする側仕えからだった。
そのアンリカーダがムスタファ・ブレインを全員呼んだ。
集まった面々を見ながら、フルネミアは女王の鎮座する階段の上を見上げる。
いつもならば壇上にいる女王の隣に補佐として立っていたが、遠く下がった階段の下で女王に会うのはいつぶりだろうか。あの頃はまだ若く、エルヴィアナ女王に側近として召し上げられていなかったため、畏怖の念を持って頭を下げていた。
しかし、今は————。
まだ全員集まっていないためか、階段上の椅子には誰もいない。椅子の隣に立つ者もいない。
集まっている者たちは皆階段の下。まだ跪くには早いと立ったままお互いの顔を確認している。
「インリュオスを殺した犯人はまだ見付かっていないのか?」
「まだ分かっていないことが多すぎる」
「一体何が起きたのだ……。女王はまだか?」
各々言いたいことを口々に言っているが、どこかざわめきが多いのは皆気付いているだろう。アンリカーダが女王になってから、ムスタファ・ブレインはほとんど呼ばれることがなくなり、名だけの暇人になりつつある。
やっと呼ばれたと思ったら、何事なのかよく分からない。何のために呼ばれたのか、それとなくお互いで確認する。
今までは女王に呼ばれ地上の王たちと会談し話を聞くこともあれば、マリオンネの住民たちとの会議に出席し人々の意見を聞くなど、国の政治家のような真似をしていたが、女王が出てこないので伺いもできないし会議の発案もできなくなった。
会議の席についても女王の決断がないため結果が出ない。話は聞けるがそれを女王に伝えても答えがない。それどころか謁見がほとんど許されないので、伝えることもできない。
やる気がないのか。
そう問うて罷免できれば良いが、女王は一人しかいない。
歴史の中、何もしない女王はいなかった。そのため女王が一人しかいなくても問題はなかった。例え何かあっても女王は脈々と受け継がれていたため、前女王が生きていることは多く対処のしようがあっただろう。
フルネミアはアストラルをちらりと見遣る。エルヴィアナ女王が生きていた時、女王の仕事を教えていたのはアストラルだ。教育は終わったはずだが、その後の行動を確認している者の中にアストラルは入っていないのだろうか。
本人はベリエルに聞けと言うが。
「アンリカーダ様!」
するりと真紅のスカートの裾を床に滑らせて、女王アンリカーダが現れた。 女王の登場にムスタファ・ブレインが床に片膝を付き、頭を下げる。
癖のない長い黒髪。紅色の瞳。血の色が皆を射竦める。
無言のまま座るアンリカーダは、座りなり肘掛けに腕を置くと、ムスタファ・ブレインを見おろすように頬杖をついた。
シンとする広間。言葉のないアンリカーダ。瞳の朱は力強く、どこか寒気がするほど迫力がある。
小娘の持つ瞳ではない。
そのアンリカーダの隣にはベリエルが立った。
「ラータニアの王族が禁忌を犯したことは、皆も知っているだろう」
微動だにせず、アンリカーダは話し始めた。
まるで水面に水が落ちた時のような、波紋のごとく響く声にぞくりとする。
顔を上げさせる許しも出さず、アンリカーダは続けた。
「昨今、精霊を蔑ろにする者が多いようだ。王族が精霊の力を借りることが仇となったのかもしれない」
精霊に何かをしているのは、お前ではないのか? そんな問いをしそうになる。
「長い時代、王族の権威を放置しすぎたのだろう。ラータニアは特に浮島のために、マリオンネの庇護に置かれていた。特別視は危険だ」
何を言う気か、頭を上げることができないため、誰も頷くことなくアンリカーダの声を聞いた。
「浮島はマリオンネが所有すべきだろう」
その言葉に皆が顔を上げた。
あの場所はマリオンネから遠くにあるからと、その管理をラータニアにさせているわけではない。
女王と相対する、精霊の王が眠っているから、その所有をマリオンネから外しているのだ。古き神のような存在。本来の、世界を統べる者。その仮の者としてマリオンネに住まう女王が、本来の王を管理するとなれば、精霊たちが混乱する。
「古き時代からのものです。それに、あそこには精霊の王が眠っております」
同じことを考えている者が反論した。頷く者たちもいたが、アンリカーダの冷眼が届き、直ぐに口を閉じる。
「だからこそ、マリオンネが管理すべきだろう。ラータニア王には二心があり、精霊を疎かにする真似をした。そも、女王になるはずの私の母を辱めたのもあの男である。エルヴィアナが管理を許した事態おかしな話なのだ」
頭を下げながら、フルネミアは奥歯を噛み締めた。
エルヴィアナ女王を呼び捨てるなど、孫娘でもあってはならない。元女王の存在を軽んじるなど。
ムスタファ・ブレインたちは頭を下げながらお互いの顔を見合った。
とんでもない話が出てきたと、他人の表情を横目にしながらどう対処すべきか探り合う。
「女王は、ラータニアをどうなさる気でしょうか!」
フルネミアは顔を上げ、女王に問うた。他のムスタファ・ブレインも同じことを思っただろう。ラータニア王を失脚させたが、あそこにはもう次に王となる者はいない。
失脚させたが最後、誰も継ぐことができない。なのに失脚させ、浮島の管理をマリオンネに変更するという。
側室の娘はいるが、あの娘は王の子ではない。世襲など気にしないと言うことか。
アンリカーダは蔑むようにフルネミアに視線を向けた。
「一人いるだろう」
「それは……」
ラータニアの王弟はグングナルドの王女と婚約している。その婚約を破棄させ、ラータニアの王にする気か。
それが自分の血を分けた弟と知ってラータニアに戻すとなれば。
「話は終わりだ。そなたたちに意見を聞いたわけではない。今後そのようにするという報告だ」
そう口にして、アンリカーダは立ち上がる。
ムスタファ・ブレインたちがざわめいたが、そんなものは耳に入らぬと、そのまま垂れ幕の影に隠れ、姿を消した。
「ベリエル、それはこちらのセリフだな」
ごつい体で何かを含むような笑いをして近付くベリエルに、フルネミアは鋭く睨みつけた。
殺されたインリュオスを悼んで、彼の部屋の近くを歩いているわけではないだろう。
筋肉なのか肉なのか、体をすっぽり覆う白の衣装からでは分かりづらいが、きつそうなのは確かだ。マントに繋がる袖から出す腕も白の服だが、それも野太くがっちりしている。
ムスタファ・ブレインの象徴でもある、マントと上着が繋がっている白の衣装。ムスタファ・ブレイン全員がそれを着ているので、ベリエルの太さが良く分かる。
「運動不足で散歩でもしているのか。お前の部屋はこの通りではないだろう」
「何と失礼なのか。アンリカーダ様がムスタファ・ブレインを呼んでいる。探しにきたのだから礼くらい口にしてほしいものだね」
アンリカーダがムスタファ・ブレインを全員呼ぶのは珍しい。
元々あまり姿を現さないのに、呼び出すなどと。
一体何があったのか。アストラルと顔を見合わせる。
「女王は何を?」
「さて。物思いに耽っていらっしゃったが、皆を呼び出すよう命令された」
「インリュオスを殺した犯人でも分かったのかな?」
アストラルは冗談ぽく口にする。アストラルがそんなことを言うと、まるでベリエルが犯人のように思える。ベリエルは知らぬ顔をしてフルネミアとアストラルにアンリカーダのいるミーニリオンの小島へ行けと手を振った。
ベリエルは他の者たちも探してから行くようだ。
廊下を飛んでいた精霊たちがベリエルを見て天井に逃げていく。精霊たちがベリエルを恐れるように遠巻きにした。
「……ベリエルが、ムスタファ・ブレインを呼ぶお使いとはね」
アストラルが精霊のことは口にはせず、笑いながら揶揄するが、その目は笑っていない。フルネミアも妙な感じがした。アンリカーダの命令ならば小間使いのような真似をするのか。
余程アンリカーダに傾倒しているのか、それとも小間使いにされてもごまをすっているのか。
ベリエルの後ろ姿を見送りながら、フルネミアは久し振りに会う女王に会いに、ミーニリオンの小島へと足を向けた。
ミーニリオン。地上からの客が訪れた時やムスタファ・ブレインが集まる時などに使う場所だ。前女王エルヴィアナのように、アンリカーダはフルネミアを自室に呼んだりしないため、今では女王に会うにはそこに行かなければならない。
他の者は知らないが。
地上の人間が訪れる島と、マリオンネに住む者たちがいる島は別になっている。そこには住宅地や宮殿があり、地上の人間が入ることはできない。
宮殿は女王やムスタファブレインが集まる場所、いわばマリオンネの中枢で政治的な活動をする場所だ。
中で仕事をする者以外マリオンネの住民でも入ることはできないが、住民たちへ姿を見せるために、外向けの回廊を歩くことで気軽に拝見することができた。
もちろん催しなどで大々的に姿を現すことはあるが、警備があるとはいえ気安くお会いできることは住民にとっても安心だろう。
精霊たちはそこら中にいるが、精霊たちの住む島もいくつかある。そこに訪れなければならないことはないが、エルヴィアナ女王はたまに島に訪れて精霊たちと会話を交わした。
しかし、アンリカーダは閉じこもったまま。どこに行くつもりもなく、ただうつろうようにいるだけだ。
いや、どこにも行っていないように見せて、実は裏で何かをしているのだ。そうでなければ精霊たちの一部がおかしな動きをするわけがない。
女王になってから、アンリカーダを見ることは少なかった。女王になる前はアストラルに女王になるための学びを受けるため、宮殿をうろついているのは見掛けたが。
女王になってからそれはめっきりなくなった。ラータニアの件で王が精霊の力を剥奪された話を聞いたのも女王からではなく、ムスタファブレインでもなく、女王の身の回りの世話をする側仕えからだった。
そのアンリカーダがムスタファ・ブレインを全員呼んだ。
集まった面々を見ながら、フルネミアは女王の鎮座する階段の上を見上げる。
いつもならば壇上にいる女王の隣に補佐として立っていたが、遠く下がった階段の下で女王に会うのはいつぶりだろうか。あの頃はまだ若く、エルヴィアナ女王に側近として召し上げられていなかったため、畏怖の念を持って頭を下げていた。
しかし、今は————。
まだ全員集まっていないためか、階段上の椅子には誰もいない。椅子の隣に立つ者もいない。
集まっている者たちは皆階段の下。まだ跪くには早いと立ったままお互いの顔を確認している。
「インリュオスを殺した犯人はまだ見付かっていないのか?」
「まだ分かっていないことが多すぎる」
「一体何が起きたのだ……。女王はまだか?」
各々言いたいことを口々に言っているが、どこかざわめきが多いのは皆気付いているだろう。アンリカーダが女王になってから、ムスタファ・ブレインはほとんど呼ばれることがなくなり、名だけの暇人になりつつある。
やっと呼ばれたと思ったら、何事なのかよく分からない。何のために呼ばれたのか、それとなくお互いで確認する。
今までは女王に呼ばれ地上の王たちと会談し話を聞くこともあれば、マリオンネの住民たちとの会議に出席し人々の意見を聞くなど、国の政治家のような真似をしていたが、女王が出てこないので伺いもできないし会議の発案もできなくなった。
会議の席についても女王の決断がないため結果が出ない。話は聞けるがそれを女王に伝えても答えがない。それどころか謁見がほとんど許されないので、伝えることもできない。
やる気がないのか。
そう問うて罷免できれば良いが、女王は一人しかいない。
歴史の中、何もしない女王はいなかった。そのため女王が一人しかいなくても問題はなかった。例え何かあっても女王は脈々と受け継がれていたため、前女王が生きていることは多く対処のしようがあっただろう。
フルネミアはアストラルをちらりと見遣る。エルヴィアナ女王が生きていた時、女王の仕事を教えていたのはアストラルだ。教育は終わったはずだが、その後の行動を確認している者の中にアストラルは入っていないのだろうか。
本人はベリエルに聞けと言うが。
「アンリカーダ様!」
するりと真紅のスカートの裾を床に滑らせて、女王アンリカーダが現れた。 女王の登場にムスタファ・ブレインが床に片膝を付き、頭を下げる。
癖のない長い黒髪。紅色の瞳。血の色が皆を射竦める。
無言のまま座るアンリカーダは、座りなり肘掛けに腕を置くと、ムスタファ・ブレインを見おろすように頬杖をついた。
シンとする広間。言葉のないアンリカーダ。瞳の朱は力強く、どこか寒気がするほど迫力がある。
小娘の持つ瞳ではない。
そのアンリカーダの隣にはベリエルが立った。
「ラータニアの王族が禁忌を犯したことは、皆も知っているだろう」
微動だにせず、アンリカーダは話し始めた。
まるで水面に水が落ちた時のような、波紋のごとく響く声にぞくりとする。
顔を上げさせる許しも出さず、アンリカーダは続けた。
「昨今、精霊を蔑ろにする者が多いようだ。王族が精霊の力を借りることが仇となったのかもしれない」
精霊に何かをしているのは、お前ではないのか? そんな問いをしそうになる。
「長い時代、王族の権威を放置しすぎたのだろう。ラータニアは特に浮島のために、マリオンネの庇護に置かれていた。特別視は危険だ」
何を言う気か、頭を上げることができないため、誰も頷くことなくアンリカーダの声を聞いた。
「浮島はマリオンネが所有すべきだろう」
その言葉に皆が顔を上げた。
あの場所はマリオンネから遠くにあるからと、その管理をラータニアにさせているわけではない。
女王と相対する、精霊の王が眠っているから、その所有をマリオンネから外しているのだ。古き神のような存在。本来の、世界を統べる者。その仮の者としてマリオンネに住まう女王が、本来の王を管理するとなれば、精霊たちが混乱する。
「古き時代からのものです。それに、あそこには精霊の王が眠っております」
同じことを考えている者が反論した。頷く者たちもいたが、アンリカーダの冷眼が届き、直ぐに口を閉じる。
「だからこそ、マリオンネが管理すべきだろう。ラータニア王には二心があり、精霊を疎かにする真似をした。そも、女王になるはずの私の母を辱めたのもあの男である。エルヴィアナが管理を許した事態おかしな話なのだ」
頭を下げながら、フルネミアは奥歯を噛み締めた。
エルヴィアナ女王を呼び捨てるなど、孫娘でもあってはならない。元女王の存在を軽んじるなど。
ムスタファ・ブレインたちは頭を下げながらお互いの顔を見合った。
とんでもない話が出てきたと、他人の表情を横目にしながらどう対処すべきか探り合う。
「女王は、ラータニアをどうなさる気でしょうか!」
フルネミアは顔を上げ、女王に問うた。他のムスタファ・ブレインも同じことを思っただろう。ラータニア王を失脚させたが、あそこにはもう次に王となる者はいない。
失脚させたが最後、誰も継ぐことができない。なのに失脚させ、浮島の管理をマリオンネに変更するという。
側室の娘はいるが、あの娘は王の子ではない。世襲など気にしないと言うことか。
アンリカーダは蔑むようにフルネミアに視線を向けた。
「一人いるだろう」
「それは……」
ラータニアの王弟はグングナルドの王女と婚約している。その婚約を破棄させ、ラータニアの王にする気か。
それが自分の血を分けた弟と知ってラータニアに戻すとなれば。
「話は終わりだ。そなたたちに意見を聞いたわけではない。今後そのようにするという報告だ」
そう口にして、アンリカーダは立ち上がる。
ムスタファ・ブレインたちがざわめいたが、そんなものは耳に入らぬと、そのまま垂れ幕の影に隠れ、姿を消した。
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