ふたりのコートで最高のバディを育てる方法〜屈辱と罰で繋ぐ、痛々しくも甘い共依存〜

kirisu

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第一章

第15話 秘密の隠蔽と、背徳のテーピング儀式


 分厚い遮光カーテンの隙間から、白々とした朝の光がホテルの部屋に一直線に差し込んでいた。
 無機質な空調の微かな稼働音だけが響く静寂の中、倉田真由は微かな呻き声を上げて目を覚ました。寝返りを打とうとした瞬間、下半身から腰にかけて、皮膚が引き攣るような鋭い痛みが走ったからだ。
「っ……あ……」
 シーツを握りしめ、顔をしかめる。しかし、その痛みは決して不快なものではなかった。むしろ、痛みが脳髄を刺激するたびに、昨夜の狂おしい記憶が鮮明にフラッシュバックし、下腹部の奥底がジンと熱を帯びる。
 トラウマの象徴であったケイン(鞭)の風切り音。皮膚が弾けるような激痛。そして、泣き叫ぶ真由を甘く慰め、身体の隅々まで蹂躙し尽くした日高夏帆の熱い体温。
 あの凄惨で甘い儀式を経て、真由の精神は完全に夏帆の所有物として作り変えられていた。痛みが残っているということは、自分が夏帆に愛されているという何よりの証拠なのだ。
「おはよう、真由。よく眠れた?」
 不意に頭上から降ってきた声に、真由の肩がビクッと跳ねる。
 見上げると、すでにシャワーを浴びて身支度を整えた夏帆が、ベッドの脇に立って真由を見下ろしていた。手には、真由の試合用のオレンジ色のビキニユニフォームが握られている。
「あ、か、夏帆……おはよう、ございます」
 真由は慌てて身を起こそうとしたが、お尻の痛みに「ひゅっ」と息を呑んで動きを止めた。
「無理しないで。昨日はあれだけ激しく叩いたんだから、痛くて当然よ」
 夏帆の口調は、まるで「練習で筋肉痛になったね」とでも言うようにあっけらかんとしていた。しかし、その瞳の奥には、真由の痛々しい姿を愛おしむような、ドロドロとした暗い独占欲が渦巻いている。
「さあ、試合会場に行く前に、昨日の『跡』を確認するわよ。下を脱いで」
 夏帆の冷徹な命令が、朝の静かな部屋に落ちた。

 真由の顔が一瞬にして沸騰したように赤く染まる。
 昨夜は暗い照明と狂気的な熱に当てられて自分からあられもない姿を晒したが、今は明るい朝の光の中だ。しかも、これから公式戦のコートに立つという現実が、真由の羞恥心を異常なまでに煽り立てていた。
「え、あ……でも、夏帆……もう、試合の、時間が……」
「口答えするの?」
 地を這うような夏帆の低い声。真由はビクンと身体を震わせ、力なく首を振った。
「……ごめんなさい。脱ぎます……」
 震える指先で、真由はパジャマ代わりに着ていたショートパンツの裾を掴んだ。ゆっくりと、躊躇うように引き下ろしていく。ショーツも一緒に足首まで下ろすと、181センチの長身の、下半身だけが完全に無防備な状態となった。
 しかし、明るい光の下に自らの恥部を晒すことに抵抗があるのか、真由は両手で股間を隠し、太ももを擦り合わせるようにもじもじと身をよじっていた。
パァァンッ!!
「あっ!?」
 突然、容赦のない平手が、真由の太ももの横を鋭く打ち据えた。
「もじもじしない。私に見られるのが嫌なの? それとも、昨日の痛みを忘れたの?」
「ち、違いますっ! 嫌じゃ、ないです……っ」
「なら、あそこの壁に手をついて、しっかりとお尻を突き出しなさい」
 夏帆が顎で示したのは、ホテルの部屋の無機質な白い壁だった。
 真由は涙ぐみながら立ち上がり、言われた通りに壁に両手をついた。足を肩幅に開き、腰を深く折り曲げて、昨夜徹底的に打ち据えられた自らの尻を、背後に立つ夏帆に向かって高く突き出す。
 それは、インドア時代に監督から体罰を受けた時と全く同じ、屈辱的で無様な姿勢だった。だが、真由の心を満たしているのは恐怖ではなく、自分を絶対的に支配してくれる存在への狂信的な依存だった。

「……ひどい有様ね。見事に真っ赤に熟れてるわ」
 背後から、夏帆の冷ややかな感嘆の声が聞こえた。
 続いて、ひんやりとした指先が、真由の尻に触れる。
「ひっ……ぁ、ああっ……」
 夏帆の指が、ケインによって刻まれた赤黒いミミズ腫れの痕を、なぞるようにゆっくりと這う。ヒリッ、と皮膚が裂けるような痛みが走るが、その痛みは真由の狂った脳内で即座に「夏帆からの寵愛」という極上の快感へと変換されていく。
「ここ、一番腫れてるわね。痛い?」
「い、たい……ですっ、でも……夏帆が触ってくれてるから……嬉しい、ですっ……」
「馬鹿な子。本当に頭の先まで私に飼い慣らされちゃって」
 クスクスと残酷に笑う夏帆の指が、傷跡から滑り落ち、無防備に晒された双丘の谷間へと侵入した。
「あっ、んんっ……!? か、夏帆……っ、そこは……」
「あら?」
 夏帆の指先が、真由の最も敏感な部分の入り口を軽く撫でた瞬間だった。真由の身体がビクンと大きく跳ね、突き出された尻の奥——お尻の穴が、きゅっ、きゅっと可哀想なくらいにヒクつき始めたのだ。
 同時に、真由の秘所からは、昨夜の余韻を引きずった粘着質な蜜が、太ももを伝ってタラリとこぼれ落ちそうになる。
「……信じられない。こんなに腫らして痛いはずなのに、私の指が触れただけで、またお仕置きされたくてヒクヒクしてるの?」
「あ、ちが、あぁっ……ちがうの、これは……っ」
「違わないでしょ。ほら、見てよ。穴の周りが痙攣してるし、前からはいやらしい汁が垂れそうになってる。これから爽やかな顔をしてビーチバレーの試合に出るアスリートが、こんなみだらな身体で、まだ私からの罰を期待してるの?」
「あ、ああぁ……っ、ごめんなさい……ごめんなさい、夏帆っ……私、いやらしい、ダメな子です……っ」
 夏帆の意地悪な言葉攻めに、真由の羞恥心は限界を突破した。壁に手をついたままポロポロと涙をこぼし、快感と恥辱でガタガタと全身を震わせる。
 世間からは「天才スパイカー」と持て囃されるこの圧倒的な肉体が、今、自分の言葉一つで雌犬のように喘ぎ、快楽を乞うている。夏帆の胸の奥で、自身の小柄な体格への劣等感を跡形もなく消し去るほどの、凄まじい優越感と支配欲が爆発した。

「……十分に反省したみたいね。こっちに来なさい」
 夏帆の声が、ふっと普段の「頼れるパートナー」のものに戻った。
 真由が涙目で振り返ると、夏帆の手には、試合の時に使う幅広のテーピングテープが握られていた。
「そのミミズ腫れ、水着の布地から確実にはみ出るわ。このままじゃ、審判や観客に『お仕置きの跡』が見られちゃうでしょ」
「あっ……」
「ベッドに横になりなさい。私が隠してあげる」
 言われるがままにベッドにうつ伏せになった真由の尻に、夏帆は手際よくテーピングテープを貼付していく。
 ビリッ、とテープを切る音が響く。痛々しい傷跡が、白いテープによって次々と覆い隠されていく。
 それは、周囲から見れば「アスリートが筋肉の疲労や怪我を保護するための処置」にしか見えないだろう。しかし、そのテーピングの下に隠されているのは、パートナーから与えられた過激な暴力の痕跡と、愛欲にまみれた背徳の記憶なのだ。
「……痛い?」
「ううん……夏帆の手、冷たくて、気持ちいい……」
「そう。これで、誰にもバレないわ。このテーピングの下にある痛みが私からの愛の印だってこと、知っているのは世界で私たち二人だけよ」
 最後の一枚を貼り終え、夏帆は真由の腰に唇を落とした。
 その言葉に、真由の心臓が甘く、激しく締め付けられる。
 世間には「爽やかで絆の深い最高のバディ」という嘘の顔を見せながら、ユニフォームの下には誰にも言えない秘密の痛みを共有している。その圧倒的な背徳感が、二人の共依存の鎖をさらに強固なものにしていく。

「よし、終わったわ。水着、着なさい」
 夏帆から渡されたオレンジ色のビキニを身につける。テーピングの端が水着のラインから少しだけ覗いているが、それがかえって、激しいスポーツをしているというカモフラージュになっていた。
「……ありがとう、夏帆。私、今日の試合も、夏帆のためだけに飛ぶから」
「当然よ。あなたがどれだけ歪んでいようと、私が全部拾って、最高の形に組み上げてあげる。さあ、行くわよ、私の可愛いお人形」
 太陽の光が降り注ぐコートへの扉を開く前、真由は夏帆の首筋にすりすりと顔を埋めた。
 秘密の痛みと快感をテーピングで厳重に封じ込め、二人の狂ったバディは、今日も「最高のパートナー」という仮面を被って砂の上へと向かうのだった。
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