【R18】魔王陛下とわたし~キャバ嬢から魔王の妃に転職します~

塔野明里

文字の大きさ
26 / 45
第三章

24話

しおりを挟む
 24話

 そして、いま私はその御茶会へ向かっている馬車の中。付き添いは侍女のリリーさんだけ。ギルと離れて、城から出るのは初めてだ。正直、不安もあるが、それよりも私は興味があった。私は今日、どんな人に会い、どんなことを言われるのだろう。

 招待状をもらい、私はすぐに、参加しますという旨の返事を出してもらった。ギルに許可を取る前にだ。聞いたら、止められるに決まっている。案の定、彼は行く必要はないと言った。

「誰がなんと言おうとアヤは私の伴侶だ。」

 でも、私は知りたかった。彼女たちが私を呼んだ理由を。

そして、私と出会う前のギルのことを。


 人間界で私と出会った頃のギルは本当に追い込まれていた。招待状をもらったあとに、田中さんから聞いたことだ。
 あの時、ギルの魔力はとても不安定だった。魔力を補給しても1ヶ月も持たず、公務もままならなかった。その為に人間界で伴侶を探しながら、魔力を安定させる旅が計画されたそうだ。

 しかし、そこである提案をした者がいた。死霊国ゴシカ宰相オアゾ・ローゼンフェルドだ。私はあの何を考えているか分からない、黄色い瞳を思い出してちょっと震えた。彼は言ったそうだ、魔王の魔力の干渉力の範囲を狭くしてはどうかと。

 この魔界には魔法が存在する。でも、それは人が考えるような大げさなものではなかった。暖炉に火をくべたり、水をお湯に変えたり、人間界で電気を使ってやっていることを魔法を使ってできる。その源が魔力だ。でもこの魔界の人はほとんど魔力を持っていない。その人たちは、火をおこすにはマッチを使い、その火を使って、お湯をわかし、キャンドルを灯している。巨大な火の玉を出したり、氷の矢を飛ばしたりはしない。

 では、魔力とはなんなのか。魔王の力とはなんなのか。私はまだはっきりと理解していないと思う。でもなんとなく理解したところだと、それは影響力やカリスマ性のようなものだ。魔力を持つ者が側にいると、人は無意識のうちに、その人についていこう、この人なら大丈夫だと思う。それが魔力の強い人なら、さらにその範囲が広がり、人々を導く力になる。歴代の魔王はみな、魔界全体をそうやって支配してきたそうだ。

 その魔力の範囲を狭めればたしかに、ギルは魔力の消費が少なくなる。しばらくは安定するだろう。しかし、それは同時に魔界全体への干渉をやめるということだ。獣人国ビスティア、死霊国ゴシカに魔王の力が届かなくなる。それは何を意味するのか。それは魔王の存在意義を脅かす考え方ではないのか。

 状況も状況なので、彼の発言はひとつの提案として取り上げられただけだった。しかし、ギルとその周りの者は危機感をもった。あのローゼンフェルドなら、望みかねない。魔王という存在の排除を……。

 それについて、私はよく分からない。正直、ローゼンフェルド様は権力とかそういうものに執着するような人には見えなかった。なにかもっと別の原理で動いているような感じがした。
 まぁあの人のことは置いといて。結果、私と出会い、伴侶を得たことでギルの魔力は安定し、問題は解決した。

 でも、思うのだ。ギルの問題が解決したことで、ギルの周りにいた人たち、魔力の補給としてギルを支えていた女性たちはどう思ったんだろう。突然現れた、私みたいなやつを御茶会に呼んで、怒りたい?懲らしめたい?泣かせたい?

 わたしがその立場だったら、どう思うだろう。

 そんなことを考えているうちに会場である、マリア・オフェール様の邸に着いてしまった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

肉食御曹司の独占愛で極甘懐妊しそうです

沖田弥子
恋愛
過去のトラウマから恋愛と結婚を避けて生きている、二十六歳のさやか。そんなある日、飲み会の帰り際、イケメン上司で会社の御曹司でもある久我凌河に二人きりの二次会に誘われる。ホテルの最上階にある豪華なバーで呑むことになったさやか。お酒の勢いもあって、さやかが強く抱いている『とある願望』を彼に話したところ、なんと彼と一夜を過ごすことになり、しかも恋人になってしまった!? 彼は自分を女除けとして使っているだけだ、と考えるさやかだったが、少しずつ彼に恋心を覚えるようになっていき……。肉食でイケメンな彼にとろとろに蕩かされる、極甘濃密ラブ・ロマンス!

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

処理中です...