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第四章
37話
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37話
「千春!千春?」
見慣れた部屋のベッドに横たわる姉はいつもと変わらない寝顔をしていた。
「薬で眠らされていたようですが、特に後遺症も見られません。そのうち目を覚まされるでしょう。」
あのあとすぐに駆けつけたラディアルさんと共に人間界にやってきた私はここで待つようにと言われている。
「ラディアルさんすみません。せっかく匿ってくれてたのに、勝手に外に出てしまって。」
「とんでもありません。仕方のないことです。まさかあの場所が知られるとは思っていませんでした。」
結局ラディアルさんにも迷惑をかけてしまった。できることなら彼女への処罰が無いようにしてほしいけど…。
「ラディアルさん…わたし…。」
ピピピピピっ
彼女の電話が鳴ると同時にその表情が変わる。いつもの笑顔はなくなり、瞳の色がひどく冷たい。
「綾さん行きましょう。準備が整ったようです。」
「あの…どこへ行くんですか?」
「行けばすぐに分かります。オアゾ様もそちらでお待ちですよ。」
オアゾ・ローゼンフェルドの名前に不安しか感じない。
* * *
「ここですか?」
「間違いありません。綾さんには懐かしいでしょうか。」
連れていかれた先はたしかに私にとって懐かしい場所。何年もキャバ嬢として働いたクラブアイリスだった。
昼間ここに来るのは初めてだ。照明も点いていない入口を入ると、薄暗い店内でひとつだけ灯りのついたテーブルがある。ラディアルさんに続いて中を進むと、そこにはよく知った人が座っていた。
「オーナー?どうしてここに?」
私が働いていたクラブアイリスのオーナー。名前はたしか…。
「高吉というのは偽名です。彼は死霊族の貴族の出身なんですよ?ご存知なかったですか?」
突然暗闇から聞こえた声に驚いた。現れたのはフィールディ、リディアル、そしてオアゾ・ローゼンフェルド。人間界仕様なのかスーツを着た姿は疲れたサラリーマンみたいだ。
「死霊族?オーナーが?」
「そうですよ、そして今回の事件の犯人は彼です。実行犯は別にいますが、指示していたのは彼で間違いありません。」
言葉を失った。どうして?
「お前が悪いんだ!お前さえいなければ…!」
* * *
オーナーには娘がいるらしい。それすら私には初耳だ。
本来魔王の伴侶になるのは彼の娘のはずだった。ローゼンフェルドはそう語った。
魔力の補給のため伴侶探しに出たギルにとって、日本が最後のチャンスだ。ここで相手が見つからなければ魔界に帰るしかない。その最後の見合い相手がオーナーの娘だった。しかし、その見合いの前にギルは私と出逢い伴侶にすると言い出した。
オーナーにとってそれは青天の霹靂。彼の計画が破綻した瞬間だった。魔力の補給問題はギルにとって深刻なもの。魔界に仮の婚約者はいるものの、それだけで補えないために計画された伴侶探しだ。
この日本で最後に見合いをする自分の娘を魔王の仮の伴侶として連れ帰らせる。そのあとは既成事実を作るなり、理由は後付けでも構わない。
魔王の伴侶の父親という地位はそれほどまでに魅力的だそうだ。
「なんともお粗末な計画。それが成功したとして、長続きするはずもない。」
わたしとしては、そもそもローゼンフェルドの発言のせいでギルは魔力補給問題を解決しなきゃいけなくなった訳でしょ。伴侶探しを焦ったのも全部貴方のせいじゃん!
「どうかしましたか?綾さんが接客してくれるお店、私も行ってみたかったですね。」
「あっ僕も!僕も行きたかったです!」
空気を読まないローゼンフェルドとフィールディの発言に女性陣は絶対零度の態度だ。なぜかリディアルさんは私を睨み付けている。
「オーナーをどうするんですか?」
「魔界に連行し、陛下に判断を仰ぎます。じゃないと私が犯人だと疑われたままですから。」
たしかに怒りはある。私への逆恨みで千春を巻き込んだことは許せない。けどいきなり処刑とか殺すとか言われなくてよかった。
「綾さんは優しいですね。こんな奴にも慈悲深いなんて。」
さっき私にしたことなんてなかったことみたいに話しかけないで欲しい。
「それじゃあ行きましょうか。愛しの陛下がお待ちですよ。」
「千春!千春?」
見慣れた部屋のベッドに横たわる姉はいつもと変わらない寝顔をしていた。
「薬で眠らされていたようですが、特に後遺症も見られません。そのうち目を覚まされるでしょう。」
あのあとすぐに駆けつけたラディアルさんと共に人間界にやってきた私はここで待つようにと言われている。
「ラディアルさんすみません。せっかく匿ってくれてたのに、勝手に外に出てしまって。」
「とんでもありません。仕方のないことです。まさかあの場所が知られるとは思っていませんでした。」
結局ラディアルさんにも迷惑をかけてしまった。できることなら彼女への処罰が無いようにしてほしいけど…。
「ラディアルさん…わたし…。」
ピピピピピっ
彼女の電話が鳴ると同時にその表情が変わる。いつもの笑顔はなくなり、瞳の色がひどく冷たい。
「綾さん行きましょう。準備が整ったようです。」
「あの…どこへ行くんですか?」
「行けばすぐに分かります。オアゾ様もそちらでお待ちですよ。」
オアゾ・ローゼンフェルドの名前に不安しか感じない。
* * *
「ここですか?」
「間違いありません。綾さんには懐かしいでしょうか。」
連れていかれた先はたしかに私にとって懐かしい場所。何年もキャバ嬢として働いたクラブアイリスだった。
昼間ここに来るのは初めてだ。照明も点いていない入口を入ると、薄暗い店内でひとつだけ灯りのついたテーブルがある。ラディアルさんに続いて中を進むと、そこにはよく知った人が座っていた。
「オーナー?どうしてここに?」
私が働いていたクラブアイリスのオーナー。名前はたしか…。
「高吉というのは偽名です。彼は死霊族の貴族の出身なんですよ?ご存知なかったですか?」
突然暗闇から聞こえた声に驚いた。現れたのはフィールディ、リディアル、そしてオアゾ・ローゼンフェルド。人間界仕様なのかスーツを着た姿は疲れたサラリーマンみたいだ。
「死霊族?オーナーが?」
「そうですよ、そして今回の事件の犯人は彼です。実行犯は別にいますが、指示していたのは彼で間違いありません。」
言葉を失った。どうして?
「お前が悪いんだ!お前さえいなければ…!」
* * *
オーナーには娘がいるらしい。それすら私には初耳だ。
本来魔王の伴侶になるのは彼の娘のはずだった。ローゼンフェルドはそう語った。
魔力の補給のため伴侶探しに出たギルにとって、日本が最後のチャンスだ。ここで相手が見つからなければ魔界に帰るしかない。その最後の見合い相手がオーナーの娘だった。しかし、その見合いの前にギルは私と出逢い伴侶にすると言い出した。
オーナーにとってそれは青天の霹靂。彼の計画が破綻した瞬間だった。魔力の補給問題はギルにとって深刻なもの。魔界に仮の婚約者はいるものの、それだけで補えないために計画された伴侶探しだ。
この日本で最後に見合いをする自分の娘を魔王の仮の伴侶として連れ帰らせる。そのあとは既成事実を作るなり、理由は後付けでも構わない。
魔王の伴侶の父親という地位はそれほどまでに魅力的だそうだ。
「なんともお粗末な計画。それが成功したとして、長続きするはずもない。」
わたしとしては、そもそもローゼンフェルドの発言のせいでギルは魔力補給問題を解決しなきゃいけなくなった訳でしょ。伴侶探しを焦ったのも全部貴方のせいじゃん!
「どうかしましたか?綾さんが接客してくれるお店、私も行ってみたかったですね。」
「あっ僕も!僕も行きたかったです!」
空気を読まないローゼンフェルドとフィールディの発言に女性陣は絶対零度の態度だ。なぜかリディアルさんは私を睨み付けている。
「オーナーをどうするんですか?」
「魔界に連行し、陛下に判断を仰ぎます。じゃないと私が犯人だと疑われたままですから。」
たしかに怒りはある。私への逆恨みで千春を巻き込んだことは許せない。けどいきなり処刑とか殺すとか言われなくてよかった。
「綾さんは優しいですね。こんな奴にも慈悲深いなんて。」
さっき私にしたことなんてなかったことみたいに話しかけないで欲しい。
「それじゃあ行きましょうか。愛しの陛下がお待ちですよ。」
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