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第四章
38話~ラディアル視点~
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38話~ラディアル視点~
そこからは驚くほどあっという間でした。魔界に戻った我々を待ち構えていたのは、見たこともないほどの威圧感を放つ魔王陛下と護衛隊員たち。綾さんが一緒に居なければ、我々の命はなかったかもしれませんね。
そこまでオアゾ様の計算だったのかもしれませんが。
オアゾ様の説明と共に犯人の引き渡しが行われる間も、魔王陛下の威圧は続き我々秘書官たちは正直限界でした。綾さんと離れ魔力の補給をしていないにも関わらずこの威力です。陛下の威光は少しのことでは揺らがないでしょう。綾さんに何かが起きない限り。
「綾さん、ご褒美はまたお会いしたときにとっておきます。楽しみにしてますよ。」
オアゾ様が綾さんの髪先に口づけた瞬間。場の空気が凍りつきました。
綾さんがその手を払いのける前に、オアゾ様の腕は陛下に掴まれ、ミシミシと音を立てました。
「触るな。ローゼンフェルド、三度目は無い。」
あぁ、陛下が図書館の地下室でのことを知ったらオアゾ様は確実に処刑です。
「今ので首が飛ばないとは、陛下はお優しくなられました。」
オアゾ様の言葉を無視した陛下に手を引かれ綾さんは馬車に向かわれます。乗り込む前にこちらに頭を下げる姿のいじらしいこと。
こうして呆気なく事件は幕を閉じました。
* * *
それから二週間ほど経った頃でしょうか。私宛に小包が届きました。差出人はなんと綾さんです。中身は可愛らしいクッキーとシフォンケーキ。もちろん綾さんの手作り。
丁寧な御礼状とともに、それらは我々秘書官3人とオアゾ様の分まであります。あんなことをされてもわざわざお礼なんて。綾さんの慈悲深さはもはや人間の域を越えています。
これにはさすがのオアゾ様も驚いた様子でした。
「こんなに美味しいクッキーは生まれて初めてですね。彼女の手で作られたというだけでこれほど味が変わるものでしょうか。」
「あーあ、結局僕は一回しか撫でてもらえませんでした。次会ったらまたお願いしてみます。」
「フィールディくん、死にたいんですか?」
今回は本当に肝が冷える思いでした。あの威圧感に晒されながら、そんなことを言える2人の心臓はどれほど強いのでしょう。
「彼女のあの怯えた瞳。本当に素晴らしい。」
私の仕えるオアゾ様の欠点。そのひとつがこの方の性癖。
自分を嫌っている者が、好きで好きでたまらないということ。
どこをどう育ってくればこんな方が出来上がるのでしょう。犬になって彼女に飼われたいというフィールディの方がまだ分かりやすい。
オアゾ様は魔王陛下のことを決して嫌っているわけではありません。むしろ好き過ぎるあまり、困らせたくてたまらないのです。綾さんにちょっかいを出すのもそのためかと思っていましたが、どうやら綾さんのオアゾ様を見る嫌悪の瞳が性癖に刺さったらしいですね。
「またあの女ですか?もうお止めください!」
オアゾ様を神のように崇拝している姉のリディアルの言葉など耳に入りません。オアゾ様にとって自分を好いている者の価値などないに等しいのですから。
「今回は本当に死ぬかと思いました。どうかしばらくは自重してくださいませ。」
オアゾ様は聞いているのかいないのか、気味悪く笑っていらっしゃいました。
今回の事件、たしかに犯人は捕まりました。陛下はその地位を剥奪、幽閉が決定し一件落着です。
しかし、私はどうしても分からないことがございます。犯人の計画の杜撰さ、あっけなく捕まったことと、脅迫状を魔王城に置いた者の完璧さがどうしても噛み合わない。綾さんの身柄に関しても、私が迎えに行くことが分かっていたかのような動き。
調べても結局証拠はない。しかし、私はやはり我が主を疑わずにはいられません。
しかしそれは胸の内にしまっておくことにいたしましょう。綾さんとお茶会をする夢がまだ叶っていませんから。
そこからは驚くほどあっという間でした。魔界に戻った我々を待ち構えていたのは、見たこともないほどの威圧感を放つ魔王陛下と護衛隊員たち。綾さんが一緒に居なければ、我々の命はなかったかもしれませんね。
そこまでオアゾ様の計算だったのかもしれませんが。
オアゾ様の説明と共に犯人の引き渡しが行われる間も、魔王陛下の威圧は続き我々秘書官たちは正直限界でした。綾さんと離れ魔力の補給をしていないにも関わらずこの威力です。陛下の威光は少しのことでは揺らがないでしょう。綾さんに何かが起きない限り。
「綾さん、ご褒美はまたお会いしたときにとっておきます。楽しみにしてますよ。」
オアゾ様が綾さんの髪先に口づけた瞬間。場の空気が凍りつきました。
綾さんがその手を払いのける前に、オアゾ様の腕は陛下に掴まれ、ミシミシと音を立てました。
「触るな。ローゼンフェルド、三度目は無い。」
あぁ、陛下が図書館の地下室でのことを知ったらオアゾ様は確実に処刑です。
「今ので首が飛ばないとは、陛下はお優しくなられました。」
オアゾ様の言葉を無視した陛下に手を引かれ綾さんは馬車に向かわれます。乗り込む前にこちらに頭を下げる姿のいじらしいこと。
こうして呆気なく事件は幕を閉じました。
* * *
それから二週間ほど経った頃でしょうか。私宛に小包が届きました。差出人はなんと綾さんです。中身は可愛らしいクッキーとシフォンケーキ。もちろん綾さんの手作り。
丁寧な御礼状とともに、それらは我々秘書官3人とオアゾ様の分まであります。あんなことをされてもわざわざお礼なんて。綾さんの慈悲深さはもはや人間の域を越えています。
これにはさすがのオアゾ様も驚いた様子でした。
「こんなに美味しいクッキーは生まれて初めてですね。彼女の手で作られたというだけでこれほど味が変わるものでしょうか。」
「あーあ、結局僕は一回しか撫でてもらえませんでした。次会ったらまたお願いしてみます。」
「フィールディくん、死にたいんですか?」
今回は本当に肝が冷える思いでした。あの威圧感に晒されながら、そんなことを言える2人の心臓はどれほど強いのでしょう。
「彼女のあの怯えた瞳。本当に素晴らしい。」
私の仕えるオアゾ様の欠点。そのひとつがこの方の性癖。
自分を嫌っている者が、好きで好きでたまらないということ。
どこをどう育ってくればこんな方が出来上がるのでしょう。犬になって彼女に飼われたいというフィールディの方がまだ分かりやすい。
オアゾ様は魔王陛下のことを決して嫌っているわけではありません。むしろ好き過ぎるあまり、困らせたくてたまらないのです。綾さんにちょっかいを出すのもそのためかと思っていましたが、どうやら綾さんのオアゾ様を見る嫌悪の瞳が性癖に刺さったらしいですね。
「またあの女ですか?もうお止めください!」
オアゾ様を神のように崇拝している姉のリディアルの言葉など耳に入りません。オアゾ様にとって自分を好いている者の価値などないに等しいのですから。
「今回は本当に死ぬかと思いました。どうかしばらくは自重してくださいませ。」
オアゾ様は聞いているのかいないのか、気味悪く笑っていらっしゃいました。
今回の事件、たしかに犯人は捕まりました。陛下はその地位を剥奪、幽閉が決定し一件落着です。
しかし、私はどうしても分からないことがございます。犯人の計画の杜撰さ、あっけなく捕まったことと、脅迫状を魔王城に置いた者の完璧さがどうしても噛み合わない。綾さんの身柄に関しても、私が迎えに行くことが分かっていたかのような動き。
調べても結局証拠はない。しかし、私はやはり我が主を疑わずにはいられません。
しかしそれは胸の内にしまっておくことにいたしましょう。綾さんとお茶会をする夢がまだ叶っていませんから。
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