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プロローグ
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プロローグ
昔々あるところに、それはそれは美しい公爵令嬢がおりました。秋に実る小麦の穂のような豊かな金髪と夜空のような煌めく蒼色の瞳。メリンダという名の彼女は世にも珍しい治癒の力を持っていました。
人と魔族が争う世界で彼女は戦地に赴き、その力でたくさんの人々を救いました。助けられた人々は彼女を聖女と崇め、その名声は国中に響き渡りました。
王太子や公爵令息、他国の貴族や王族がこぞって彼女に求婚しました。しかし彼女は一向に頷きません。
メリンダに母が問いかけます。貴方はどんな方となら結婚するの?
「わたくしは私を世界で一番愛してくださる方と結婚したいのです。」
そのとき、地響きが轟き地面が割れるほどの大地震が起きました。大きく割れた大地から現れたのは、真っ黒な鱗に覆われた巨大な竜。
「我が名は魔王ハデス。メリンダ、どうか私の妻になってほしい。」
突然現れた魔王に人間たちは戦々恐々。その硬い鱗には剣も弓矢も魔法も効きませんでした。
「私はそなたがこの世に生まれた時からその姿を見てきた。君が初めて笑ったとき、君が初めて歩いたとき、その全てを覚えている。君の全てを愛しているのだ。」
両親や兄妹が止めるのも聞かずメリンダは魔王ハデスの元に歩み出ました。
「どうかひとつだけお願いを聞いてください。人と魔族の争いを止めさせてほしいのです。」
「そのくらい容易いことだ。そなたの望みならなんだって叶えよう。」
メリンダが魔王の硬い鱗に触れると辺り一面を眩い光が包みました。
「貴方と共に参ります。」
こうして聖女メリンダと魔王ハデスは結ばれ、人と魔族の争いは終わったのでした。
それから300年の間、人間と魔族は共存し戦争をしていたことすらも忘れ去られた。
まさか伝説になった聖女が出戻ってくるなんて誰か想像したでしょう。
* * *
この世界で最大の領土を誇るバーランシー王国。秋の夜空を美しい白馬が駆けていく。大きな角を持った白馬はその背に美しい乙女を乗せ、まっすぐに夜空を進む。
「メリンダ?本当に良かったの?誰にも言わないで出てきちゃってさ。」
「いいのですわ。もうあんな方知りません。」
ため息をつきながらも白馬は優雅に駆けていく。キラキラと街の灯りが足元を通り過ぎた。
「夜なのにこんなに明るいなんて!」
この300年で魔法は魔道具によって魔力のない人間でも扱えるものになった。メリンダの治癒魔法でさえ、もう珍しいものじゃない。
ただでさえ世間知らずなメリンダが、300年も人間の世界を離れていたのにいきなり帰ってきて…。
「本当に大丈夫かなぁ。」
昔々あるところに、それはそれは美しい公爵令嬢がおりました。秋に実る小麦の穂のような豊かな金髪と夜空のような煌めく蒼色の瞳。メリンダという名の彼女は世にも珍しい治癒の力を持っていました。
人と魔族が争う世界で彼女は戦地に赴き、その力でたくさんの人々を救いました。助けられた人々は彼女を聖女と崇め、その名声は国中に響き渡りました。
王太子や公爵令息、他国の貴族や王族がこぞって彼女に求婚しました。しかし彼女は一向に頷きません。
メリンダに母が問いかけます。貴方はどんな方となら結婚するの?
「わたくしは私を世界で一番愛してくださる方と結婚したいのです。」
そのとき、地響きが轟き地面が割れるほどの大地震が起きました。大きく割れた大地から現れたのは、真っ黒な鱗に覆われた巨大な竜。
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「どうかひとつだけお願いを聞いてください。人と魔族の争いを止めさせてほしいのです。」
「そのくらい容易いことだ。そなたの望みならなんだって叶えよう。」
メリンダが魔王の硬い鱗に触れると辺り一面を眩い光が包みました。
「貴方と共に参ります。」
こうして聖女メリンダと魔王ハデスは結ばれ、人と魔族の争いは終わったのでした。
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まさか伝説になった聖女が出戻ってくるなんて誰か想像したでしょう。
* * *
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「夜なのにこんなに明るいなんて!」
この300年で魔法は魔道具によって魔力のない人間でも扱えるものになった。メリンダの治癒魔法でさえ、もう珍しいものじゃない。
ただでさえ世間知らずなメリンダが、300年も人間の世界を離れていたのにいきなり帰ってきて…。
「本当に大丈夫かなぁ。」
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