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「メリンダ様!メリンダ様ー!」
魔王城の中をメリンダ直属の侍女たちが走り回っている。しかし、城のどこを探しても彼女の姿は見当たらない。
「どうしましょう…!」
式の開始まであと三時間。早く準備を始めなければ間に合わなくなってしまう。
人生で一度の結婚式。大切な主には誰よりも美しい姿でいてほしいのに。
魔王ハデスの浮気騒動から半年。ようやく執り行われる結婚式の直前。まさか主役のメリンダ様がいなくなるなんて。
* * *
「ねぇ、メリンダぁー。早くしないと準備に遅れちゃうよぉ?」
ユニコーンのユニフェが寝転ぶ中庭の芝生の横で、メリンダは座り込んでいる。
「だって…だって…。どうしましょう。緊張してドキドキが止まりませんの。」
「もう何年一緒にいるのさ。今さら緊張してどうするんだよ。」
魔界でも人間界でも聖女と崇められるメリンダは今までの人生で一番緊張していた。
「結婚式は…いいんですの。しっかり言葉も覚えましたわ。」
「覚えたって…花嫁は誓いますって言うだけじゃないか。」
生まれたときからメリンダと一緒にいるユニフェもこんなにあたふたしているメリンダは初めて見た。
「でも、き…キスしなくてはいけませんのよ?!たくさんの人たちの前で…!」
「すればいいじゃん。軽くチュッてするだけでしょ?」
「か…!軽くってなんですの?!キスに軽いとか重いとかがあるのですか?」
何を想像したのかメリンダは顔を真っ赤にしている。
「メリンダ…!ここに居たのか!」
息を切らし駆けてきたハデスはすでにタキシード姿だった。
「探したんだ!こんなところで一体なにをしてる?」
ここ最近メリンダはハデスを避けるように生活していた。彼の顔を見るとどうしてもキスを意識してしまうからだ。
「…え…えっと、その…。」
しどろもどろになりながら立ち上がるメリンダをユニフェは呆れ顔で見ていた。
「もう…戻りますわ!準備をしなくてはいけません!」
そそくさと立ち去ろうとする彼女の腕をハデスが掴む。
「メリンダ!なぜ俺を避ける?!」
手を握られただけで、メリンダの顔はさらに赤くなった。
「ふぇ…!さ、避けてなんていませんわ!」
「嘘だ。ここ最近一緒に食事もしないし、散歩だって…。」
浮気騒動のあとからハデスとメリンダは必ず一緒に食事をするようになり、食後は二人で散歩に出るのが日課になっていた。
そのおかげか二人の距離はぐっと近づいている…はずだ。
「違うのです。避けているわけではなくて…どうしたらいいか分からなくて。」
今日は二人が恋人になった記念日。わざわざこの日に式を挙げることを決めたのはハデスだった。
「なにか不満があるなら言ってほしい。必ず直すから。」
「本当に…違うのです!ただ、」
「ただ?」
ユニフェはもう興味を失ったように欠伸をしていた。
「キスが…恥ずかしいのです!!」
そう言った瞬間、ハデスの唇がそっとメリンダの唇に触れた。
「これで…もう恥ずかしくないか?」
メリンダからの返答はない。不思議そうにユニフェが顔を上げるのと、メリンダが倒れるのはほぼ同時だった。
「…メリンダ!!」
顔だけでなく全身茹でダコのように真っ赤になったメリンダはハデスの腕の中に倒れ込んだ。
「大丈夫か?」
「…陛下?メリンダ様に一体なにを?」
現れたのは魔王ハデスの秘書官であるエルフのオスカーだ。
「いや…別に…何も…。」
「式を挙げる前にも関わらず、彼女に手を出すなんて。」
「み、見てたのか!?」
バタバタと騒がしくなる庭で、ユニフェはまた欠伸をした。
「結婚式できるのかなぁ?」
大切な親友の結婚式はやはり一筋縄ではいかないみたいだ。
~終わり~
「メリンダ様!メリンダ様ー!」
魔王城の中をメリンダ直属の侍女たちが走り回っている。しかし、城のどこを探しても彼女の姿は見当たらない。
「どうしましょう…!」
式の開始まであと三時間。早く準備を始めなければ間に合わなくなってしまう。
人生で一度の結婚式。大切な主には誰よりも美しい姿でいてほしいのに。
魔王ハデスの浮気騒動から半年。ようやく執り行われる結婚式の直前。まさか主役のメリンダ様がいなくなるなんて。
* * *
「ねぇ、メリンダぁー。早くしないと準備に遅れちゃうよぉ?」
ユニコーンのユニフェが寝転ぶ中庭の芝生の横で、メリンダは座り込んでいる。
「だって…だって…。どうしましょう。緊張してドキドキが止まりませんの。」
「もう何年一緒にいるのさ。今さら緊張してどうするんだよ。」
魔界でも人間界でも聖女と崇められるメリンダは今までの人生で一番緊張していた。
「結婚式は…いいんですの。しっかり言葉も覚えましたわ。」
「覚えたって…花嫁は誓いますって言うだけじゃないか。」
生まれたときからメリンダと一緒にいるユニフェもこんなにあたふたしているメリンダは初めて見た。
「でも、き…キスしなくてはいけませんのよ?!たくさんの人たちの前で…!」
「すればいいじゃん。軽くチュッてするだけでしょ?」
「か…!軽くってなんですの?!キスに軽いとか重いとかがあるのですか?」
何を想像したのかメリンダは顔を真っ赤にしている。
「メリンダ…!ここに居たのか!」
息を切らし駆けてきたハデスはすでにタキシード姿だった。
「探したんだ!こんなところで一体なにをしてる?」
ここ最近メリンダはハデスを避けるように生活していた。彼の顔を見るとどうしてもキスを意識してしまうからだ。
「…え…えっと、その…。」
しどろもどろになりながら立ち上がるメリンダをユニフェは呆れ顔で見ていた。
「もう…戻りますわ!準備をしなくてはいけません!」
そそくさと立ち去ろうとする彼女の腕をハデスが掴む。
「メリンダ!なぜ俺を避ける?!」
手を握られただけで、メリンダの顔はさらに赤くなった。
「ふぇ…!さ、避けてなんていませんわ!」
「嘘だ。ここ最近一緒に食事もしないし、散歩だって…。」
浮気騒動のあとからハデスとメリンダは必ず一緒に食事をするようになり、食後は二人で散歩に出るのが日課になっていた。
そのおかげか二人の距離はぐっと近づいている…はずだ。
「違うのです。避けているわけではなくて…どうしたらいいか分からなくて。」
今日は二人が恋人になった記念日。わざわざこの日に式を挙げることを決めたのはハデスだった。
「なにか不満があるなら言ってほしい。必ず直すから。」
「本当に…違うのです!ただ、」
「ただ?」
ユニフェはもう興味を失ったように欠伸をしていた。
「キスが…恥ずかしいのです!!」
そう言った瞬間、ハデスの唇がそっとメリンダの唇に触れた。
「これで…もう恥ずかしくないか?」
メリンダからの返答はない。不思議そうにユニフェが顔を上げるのと、メリンダが倒れるのはほぼ同時だった。
「…メリンダ!!」
顔だけでなく全身茹でダコのように真っ赤になったメリンダはハデスの腕の中に倒れ込んだ。
「大丈夫か?」
「…陛下?メリンダ様に一体なにを?」
現れたのは魔王ハデスの秘書官であるエルフのオスカーだ。
「いや…別に…何も…。」
「式を挙げる前にも関わらず、彼女に手を出すなんて。」
「み、見てたのか!?」
バタバタと騒がしくなる庭で、ユニフェはまた欠伸をした。
「結婚式できるのかなぁ?」
大切な親友の結婚式はやはり一筋縄ではいかないみたいだ。
~終わり~
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ここまでお疲れ様でした!
感想を書かせていただくことは初めてですが、前々から作者 塔野明里様の他作品も読ませていただいていて、いつも楽しませていだだいています。
これからも頑張ってください!!
応援しています٩(๑>∀<๑)۶♥Fight♥
※文章が支離滅裂になっていたり誤字があっても気にしないでもらえると嬉しいです
感想ありがとうございます(◍•ᴗ•◍)
キャラクターたちを可愛いと言ってもらえて嬉しいです!初めてのギャグというかラブコメな作品だったので、そう言っていただけて本当に書いて良かったなぁと思います!
他の作品まで読んでいただいているんですね!本当に感謝感謝です( ꈍᴗꈍ)
完結ありがとうございます♪
( ;∀;)始終ハデスさまが不憫で可哀想でしたね(笑)
一途な紳士なのに扱いがヒドいよぅ(笑)
結婚式いつできるかなぁ(笑)
いつも感想ありがとうございます( ꈍᴗꈍ)
ハデスだめだめでしたねw私は書いていくうちにヒーローをダメにしちゃうみたいですwいつか最初から最後までカッコイイヒーローを書いてみたいです。
こりゃお互い結婚しない方が幸せだな
感想ありがとうございます(◍•ᴗ•◍)
ハデスの好感度が…!?