冬瑠とメル~異世界で猫(?)に保護された男子高校生の話~

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2 いーち、にーの、……さん!!

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「絶対に受け止めてくれるのね?」




ん? なに? やっぱり猫がしゃべってる? 俺、夢を見てるのか? 

あっそーだ、そもそもこれ夢だったよ。急に森にいたんだもん。



俺は気を取り直して答えた。


「あ、ああ! うん、絶対に受け止める!」


猫は涙目で俺を見つめている。まだ不安なようだ。


「君なんか、俺にしたら軽いもんだ。ほら、片手でも受け止められるんじゃないかな?」


俺はおどけて片手を下ろした。

余裕のあるふりをして、猫をリラックスさせようとしたのだ。


「ちゃんと両手で構えていて!」


猫が予想外に怯えたので、俺は慌てて両手構えに戻した。


「はいはい、ほら、これでいい? お嬢さん、いつでもどうぞ」


ーー猫が女の子口調なので、お嬢さんと呼んでみたーー



何とか猫を落ち着かせようと、俺は微笑みながら出来るだけ優しく声を掛ける。


「今から3つ数えるから、力を抜いて、爪をひっこめて……」



猫は意を決したようで、ぶるぶると震えながら顔を上に向きなおした。

どうやら両目を硬く閉じているようだ。


俺はカウントを始めた。



「行くよ~。いーち、にーの、……さん!!」




カウントの直後、猫の前足が木の枝から離れた。爪を引っ込められたようだ。


俺の腕をめがけて落ちて来る猫の姿がスローモーションになって見えた。





猫はしなやかに身体をひるがえし、くるりと空中で回転した。

優美なその動作に、俺はすっかり見惚れた。


(猫って、なんて美しい生き物なんだろう……)



怖がらなければ俺が助けなくても、自力でちゃんと着地出来たにちがいない。

スローモーションの世界の中、そんな事を考えていたら……





猫の身体が前転の途中から、大きく膨らんでいった。






むくむくと膨らみ続け、しまいには人間と同じぐらいの大きさになった。






そして、俺の腕の中に納まる頃には、グレーのもふもふ猫だったはずのその姿は、別の生き物に変化していた。






俺がお姫様抱っこで受け止めたのは、猫ではなく美しい少女だった。



少女が固く閉じていた目を開いて、透き通る緑の瞳で俺を見つめた。



腰までありそうな淡いグレーの髪は陽に透けると銀色に輝いた。

雪のように白い肌とばら色の頬。

俺は少女のあまりの美しさに、呆然として見とれていた。





が、その瞬間スローモーションの世界は終了し、俺の腕に少女の重みがのしかかった。




ズンッ!!!




少女の体重は見た目からするとそんなには重くなさそうだが、なんせ落下スピードが計算に入ってくるものだから、
少女の体重×高さ×落下スピード?

計算方法は良く分からないが、普段学校の体育の授業以外の運動なんてもの全くやってないし、身体を鍛えたりなんか一切してない俺のひょろい身体にはちょっとばかり、いや、そうとう酷な重さである。

夢なのに重力はリアルだ。
 

(え? 重っ……、腕の骨折れる……、無理無理無理!!)



俺の脳が瞬時にフル回転した。

『絶対に受け止める』と約束した以上は、何が何でも少女を受け止めなければならない。

いや、その約束は猫と交わしたはずなのだが、おかしいな。

まあ、いまさら話が違うなんて文句言っても仕方ない。

文句を言っている時間も無いが。

とにかく、あれだ、落とすのは絶対に無しだ!!

こう、あれだ、腹で受け止めるような形になるよう、俺の身体を女の子の下に滑り込ませてみるーーーー!!!



「ぐふうっ!!!」



俺は、自らをクッションにして、どうにかその少女(猫)を受け止めるのに成功したのだった。



夢なのに痛みもリアルだ。




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