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エステル
6 会いたいと願った人
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自業自得ではあっても、薬物依存の後遺症で苦しんでいる人には立ち直ってもらいたいとは思っていた。
だから再びこのとても素晴らしい植物園にお邪魔させてもらったのだけど、今日はシリルも大人しくしてくれると約束したのに、やたら植物園の管理者さんに絡んでいた。
いつもと違う様子に私も戸惑って、無理矢理にでも置いてくればよかったと思ったところで、魔法使いさんがディランの恋人かもしれないとは、私も初めて聞いた。
ディランはあの時、彼女の姿を探していたの?
魔法使いさんなら私には簡単に言えないはずだろうけど、じゃあ、ステラは?って思ったところで、信じられない暴言を聞いた。
『ディランの本命は君かなぁ?でも彼、辺境伯爵家の人間だったよね。平民の君がただの愛人にしかならなかったら困るなぁ。それって、惨めだよね。彼、領地でたくさんの女達に囲まれて選び放題らしいし、どこか良いところの御令嬢を本妻に迎えて、君は日陰の存在に』
「シリル!!」
酷すぎる。
あり得ない。
今日の不機嫌全開は、私がディランに結婚の相談をした事が気に入らなかったのでしょうけど、何の関係もない魔法使いさんに当たり散らすだなんて。
そもそもディランだって関係ないのに。
魔法使いさんが逃げるように去っていくと、シリルを睨みつけていた。
「どうしてあんな事言ったのよ!彼女の事を侮辱して、ディランが大切にしている女性を愛人扱いするわけないじゃない!」
『日替わりで女を変えるようなやつだろ。あれで拗れればいいんだ』
「拗れているのは貴方の頭よ!女性の事だって事情があるのだろうし、ディランに八つ当たりしても仕方がないでしょ!」
『高級料理店の個室に貴族女性連れ込んだと思えば、女学生に手を出し、町中で異国の少女をナンパして、本命は自国の魔法使い?それとも、国から命令された政略結婚だから仕方なく?どこの国でも、魔法使いを繋ぎ止めるのに必死だからね』
「シリル!いい加減にして!」
うちの父親が原因で恋愛潔癖症にでもなってしまったのか、でもディラン関係でやたら絡むのは、明らかに理不尽な怒りを向けているからだ。
それに、ディランが日替わりで女性と付き合うなんて事をするはずがない!
主がいなくなった植物園で、最悪の空気の中しばらく無言だった。
その沈黙を破ったのは、
「失礼していいかしら?」
アリソンであって、彼女の登場に驚いていた。
「アリソン……」
そして、ものすごく怒り狂っているのがわかった。
表面上はいつものアリソンだけど、植物園に入ってきた彼女の目に炎が見えた。
「彼女、しばらく戻ってこられないの」
「それはそうだろうね」
シリルが皮肉げに言った。
「貴方、もうここには来ないでくださる?」
「君は何?ただの公爵令嬢が俺にそんな命令をするんだ」
「ええ。私の大切な友人を傷付けたようですもの。全力で、貴方の性根を叩き直してさしあげますわ」
「はっ!この俺を?」
「ええ。どんな事情があるかは存知ませんけど、年下の女の子に当たり散らすことしかできないような小さい男は、何も守れず、何も手に入れられず、盛大に後悔する時が来ますわ。あら、もしかして、今がすでに後悔している時かしら?」
アリソンを睨みつけながら、シリルが椅子から立ち上がった。
「シリル!いい加減にして!」
「あらあら。随分と図星だったようですわね。貴方みたいな人は結局、何か大きなものに逆らってまでは、それこそ自分の命をかけてまでは、自分の大切なものを守ろうとはしないのでしょうね。性根を叩き直すとは言いましたが、腐り切ったものは手の施しようがありませんわ」
トドメとばかりにアリソンは侮蔑するようにシリルを見ると、
「ちょうど調べ物をしたくて、図書館まで持ってきていたところでしたの。この本でも読んで、ご自分を見つめ直してはいかが」
バンっと、彼の胸に本を押し付けていた。
それはステラから借りたものだ。
このタイミングで?と不思議に思ってはいた。
でも、咄嗟に受け止めたその本を信じられないといった様子で凝視していたのはシリルだった。
「どうして君がこの本を持っているんだ?これは、俺がステラにあげたものだ」
「え?」
今度は私がシリルに聞き返していた。
「ステラの5才の誕生日に、俺がステラの好きな話を集めて、特別に製本して渡した。だから、この本はこの世界に一冊しかない。ステラの形見だから、エステルが貸したのか?」
「待って、これは、学園の同級生から借りたもので……私と、アリソンがそれぞれ一冊ずつ……」
でも、その子は“ステラ”だ。
「ステラに、俺は上下巻で二冊プレゼントした」
「待って、待って、まさか、そんな事ってあり得る?あの子が本当にステラなの?」
「どういう事だ?」
ステラと一緒にいたディラン……
「ディラン……ディランに聞かないと……あの子とディランが学園で一緒にいたの。知り合いみたいだったから、もしかしたら、そういう関係なのかと思ったけど、植物園の魔法使いさんと……まさか……だから、タリスライトの言葉を理解できたの?」
あの子が買ったカフスボタンの色、黒、黒曜石だった。
“ステラ”の髪の色。
あの魔法使いさんを表す宝石は“黒曜石”。
「可愛らしいあの子の事になれば、誰もが慎重になるのはわかりますわ。大切にしたい子ですもの。ミナージュ家のあの方はバラしたいのか、隠したいのか。私は、細かな事情など存じ上げませんけど、どんな事情があっても、会いたい人が目の前にいるのに会わないのは不自然ですわ。疑問を抱いたのなら、とっとと会いに行くべきではないかしら。知らなかったとは言え、そこの貴方が泣いて赦しを乞う姿が目に浮かびますけど」
「ごめん、アリソン。別の所で話してくる」
アリソンの怒りに煽られるようにシリルの腕を掴むと、そこから出て、場所を移動していた。
まずは話を整理して、シリルに説明しないと。
シリルと場所を移して、彼女の事を説明する。
ここで、シリルは表情を変えていた。
ステラが生きていて、あの魔法使いさんがステラかもしれないという事実。
自分が何を言ったか思い出して、シリルは動揺していた。
まずは、あの子に会って無事を確かめなければ。
傷付けてしまった私達が行ったところで、直接会ってはもらえないだろうから、騎士団の敷地の方にディランを探しに行ったけど、でも、さすがに約束もないのにこの時間に会えるはずがなかった。
だから再びこのとても素晴らしい植物園にお邪魔させてもらったのだけど、今日はシリルも大人しくしてくれると約束したのに、やたら植物園の管理者さんに絡んでいた。
いつもと違う様子に私も戸惑って、無理矢理にでも置いてくればよかったと思ったところで、魔法使いさんがディランの恋人かもしれないとは、私も初めて聞いた。
ディランはあの時、彼女の姿を探していたの?
魔法使いさんなら私には簡単に言えないはずだろうけど、じゃあ、ステラは?って思ったところで、信じられない暴言を聞いた。
『ディランの本命は君かなぁ?でも彼、辺境伯爵家の人間だったよね。平民の君がただの愛人にしかならなかったら困るなぁ。それって、惨めだよね。彼、領地でたくさんの女達に囲まれて選び放題らしいし、どこか良いところの御令嬢を本妻に迎えて、君は日陰の存在に』
「シリル!!」
酷すぎる。
あり得ない。
今日の不機嫌全開は、私がディランに結婚の相談をした事が気に入らなかったのでしょうけど、何の関係もない魔法使いさんに当たり散らすだなんて。
そもそもディランだって関係ないのに。
魔法使いさんが逃げるように去っていくと、シリルを睨みつけていた。
「どうしてあんな事言ったのよ!彼女の事を侮辱して、ディランが大切にしている女性を愛人扱いするわけないじゃない!」
『日替わりで女を変えるようなやつだろ。あれで拗れればいいんだ』
「拗れているのは貴方の頭よ!女性の事だって事情があるのだろうし、ディランに八つ当たりしても仕方がないでしょ!」
『高級料理店の個室に貴族女性連れ込んだと思えば、女学生に手を出し、町中で異国の少女をナンパして、本命は自国の魔法使い?それとも、国から命令された政略結婚だから仕方なく?どこの国でも、魔法使いを繋ぎ止めるのに必死だからね』
「シリル!いい加減にして!」
うちの父親が原因で恋愛潔癖症にでもなってしまったのか、でもディラン関係でやたら絡むのは、明らかに理不尽な怒りを向けているからだ。
それに、ディランが日替わりで女性と付き合うなんて事をするはずがない!
主がいなくなった植物園で、最悪の空気の中しばらく無言だった。
その沈黙を破ったのは、
「失礼していいかしら?」
アリソンであって、彼女の登場に驚いていた。
「アリソン……」
そして、ものすごく怒り狂っているのがわかった。
表面上はいつものアリソンだけど、植物園に入ってきた彼女の目に炎が見えた。
「彼女、しばらく戻ってこられないの」
「それはそうだろうね」
シリルが皮肉げに言った。
「貴方、もうここには来ないでくださる?」
「君は何?ただの公爵令嬢が俺にそんな命令をするんだ」
「ええ。私の大切な友人を傷付けたようですもの。全力で、貴方の性根を叩き直してさしあげますわ」
「はっ!この俺を?」
「ええ。どんな事情があるかは存知ませんけど、年下の女の子に当たり散らすことしかできないような小さい男は、何も守れず、何も手に入れられず、盛大に後悔する時が来ますわ。あら、もしかして、今がすでに後悔している時かしら?」
アリソンを睨みつけながら、シリルが椅子から立ち上がった。
「シリル!いい加減にして!」
「あらあら。随分と図星だったようですわね。貴方みたいな人は結局、何か大きなものに逆らってまでは、それこそ自分の命をかけてまでは、自分の大切なものを守ろうとはしないのでしょうね。性根を叩き直すとは言いましたが、腐り切ったものは手の施しようがありませんわ」
トドメとばかりにアリソンは侮蔑するようにシリルを見ると、
「ちょうど調べ物をしたくて、図書館まで持ってきていたところでしたの。この本でも読んで、ご自分を見つめ直してはいかが」
バンっと、彼の胸に本を押し付けていた。
それはステラから借りたものだ。
このタイミングで?と不思議に思ってはいた。
でも、咄嗟に受け止めたその本を信じられないといった様子で凝視していたのはシリルだった。
「どうして君がこの本を持っているんだ?これは、俺がステラにあげたものだ」
「え?」
今度は私がシリルに聞き返していた。
「ステラの5才の誕生日に、俺がステラの好きな話を集めて、特別に製本して渡した。だから、この本はこの世界に一冊しかない。ステラの形見だから、エステルが貸したのか?」
「待って、これは、学園の同級生から借りたもので……私と、アリソンがそれぞれ一冊ずつ……」
でも、その子は“ステラ”だ。
「ステラに、俺は上下巻で二冊プレゼントした」
「待って、待って、まさか、そんな事ってあり得る?あの子が本当にステラなの?」
「どういう事だ?」
ステラと一緒にいたディラン……
「ディラン……ディランに聞かないと……あの子とディランが学園で一緒にいたの。知り合いみたいだったから、もしかしたら、そういう関係なのかと思ったけど、植物園の魔法使いさんと……まさか……だから、タリスライトの言葉を理解できたの?」
あの子が買ったカフスボタンの色、黒、黒曜石だった。
“ステラ”の髪の色。
あの魔法使いさんを表す宝石は“黒曜石”。
「可愛らしいあの子の事になれば、誰もが慎重になるのはわかりますわ。大切にしたい子ですもの。ミナージュ家のあの方はバラしたいのか、隠したいのか。私は、細かな事情など存じ上げませんけど、どんな事情があっても、会いたい人が目の前にいるのに会わないのは不自然ですわ。疑問を抱いたのなら、とっとと会いに行くべきではないかしら。知らなかったとは言え、そこの貴方が泣いて赦しを乞う姿が目に浮かびますけど」
「ごめん、アリソン。別の所で話してくる」
アリソンの怒りに煽られるようにシリルの腕を掴むと、そこから出て、場所を移動していた。
まずは話を整理して、シリルに説明しないと。
シリルと場所を移して、彼女の事を説明する。
ここで、シリルは表情を変えていた。
ステラが生きていて、あの魔法使いさんがステラかもしれないという事実。
自分が何を言ったか思い出して、シリルは動揺していた。
まずは、あの子に会って無事を確かめなければ。
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