私を処刑しようとしたくせにお前達なんか助けるわけないだろ!!

奏千歌

文字の大きさ
6 / 45
前編

6 王立学園

しおりを挟む
 12~18歳までの間の6年、貴族の子供は学園に通う義務がある。

 3学年までは基礎知識を学び、16歳となる4年生からは希望者は騎士科に進むこともできる。

 家を継ぐ予定のない殆どの男子学生は、騎士科へ進む。

 聖獣の加護である防護壁がこの国を守る以上、他国に攻め込まれる事はないから、国内の治安維持に努めればいい、人気の職業でもあった。

 だから絶対にソレを壊して嘲笑ってやるんだと、決意を固める。

 体の中を巡る煮えたぎった思いを抱えて、付き添いも誰もいない私は、家から一人で馬車に乗り、学園の門から少し離れた所で馬車から降りると一人で門をくぐり、そして一人で校舎へ向かった。

 ヒソヒソと、私を見て何かを言っている声が聞こえるけど、聞く気はない。

 どうせ、この髪の色の事だ。

 石畳の上を少し進むと、今来た方向、校門の方が騒がしかった。

 そっちを見ると、人に囲まれながら、王太子であるリュシアンが立っていた。

 ローザの乗る馬車が到着したから、婚約者を出迎えに来たらしい。お優しいことで。

 私はそれを冷めた目で見て、ローザの姿が見える前に建物の中へと入っていた。

 広い建物の中を、案内に従って歩く。

 自分の教室に入ると、意外なことに会いたいのか会いたくないのか、微妙な奴がいた。

 人との交流がない私に、知り合いなんかいない。

 唯一知っている奴と言えば、

「よぉ!」

 その人は、私の顔を見るなり、片手を上げて随分と軽い挨拶をむけてくる。

 その気軽さに呆れる。

 そういえば、これまでどこの家の人か聞いた事がなかったな。世間体などは気にしないのか。

「よく、平然と私に話しかけられるわね」

 テオはさも当然とばかりに私を見る。

「別に構わないだろ」

「貴方が変な目で見られる」

「気にする必要もないだろ」

「………」

 何も考えていないようで、呆れる。

「仲良くしようぜ、キーラ。俺ん家は、アニストン伯爵家だ」

 手を差し出しながら、何の含みもない笑顔を向けてくるものだから、そんな人の手に触れることに躊躇してしまい、結局握り返す事はしなかった。

「別に、気にしなくていいのに」

 私の気持ちも知らずに、そんな事を言ってくる。

「貴方がよくても、私が嫌なのよ」

「キーラはいい奴だな」

 どこをどう解釈すればそうなるのか、私の心でも読めるのかと首を掴んで問い詰めたかった。

 そんな事を私が思っているとも知らずに、テオは何が面白いのか吹き出して、そして口を押さえて笑いをこらえているようだった。

 我慢し過ぎて、肩が震えている。

 ちょっと笑い過ぎじゃないか?失礼な奴だな。

「横、座れよ。隣が俺の方が、知らない奴よりはまだマシだろ?」

 まだ笑いを噛み締めている彼から促され、確かにそうだと、テオの隣の席に落ち着く。

 ひと息つく間もなく、また廊下の方が騒がしくなって、案の定そっちを見ると、リュシアンがローザをエスコートして教室へ向かっているようだった。

 あの二人と同じクラスではなくて本当に良かった。

「へー。アレがお前の妹か。今までまともに見たことがなかったな」

 隣から声がかかる。

「綺麗なものしか見ない奴だな。リュシアンの婚約者があんなので大丈夫なのか?未来の王妃だろ」

 テオの感想に驚く。

 10人が10人、ローザの事を善と呼ぶのだと思っていたのに、テオの言い方では、ローザのことを全否定している。

 正にその通りなのだけど。あの子は、自分に都合の悪い事は全く見ようとしない。

 あんなんでも王妃教育を受け始めているはずなのに。

 そしてみんな、精巧に作られたあの子の綺麗な笑顔に騙されて、ローザの本質を知ろうともしない。

「意外か?」

 机に頬杖をついたテオからそんな風に聞かれたけど、特に返事もしたくないから、鞄から本を取り出して自分の世界に入ることにした。










しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

そんなに妹が好きなら死んであげます。

克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。 『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』 フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。 それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。 そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。 イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。 異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。 何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

病弱を演じる妹に婚約者を奪われましたが、大嫌いだったので大助かりです

克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」「ノベルバ」に同時投稿しています。 『病弱を演じて私から全てを奪う妹よ、全て奪った後で梯子を外してあげます』 メイトランド公爵家の長女キャメロンはずっと不当な扱いを受け続けていた。天性の悪女である妹のブリトニーが病弱を演じて、両親や周りの者を味方につけて、姉キャメロンが受けるはずのモノを全て奪っていた。それはメイトランド公爵家のなかだけでなく、社交界でも同じような状況だった。生まれて直ぐにキャメロンはオーガスト第一王子と婚約していたが、ブリトニーがオーガスト第一王子を誘惑してキャメロンとの婚約を破棄させようとしたいた。だがキャメロンはその機会を捉えて復讐を断行した。

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

【完結】さようなら。毒親と毒姉に利用され、虐げられる人生はもう御免です 〜復讐として隣国の王家に嫁いだら、婚約者に溺愛されました〜

ゆうき
恋愛
父の一夜の過ちによって生を受け、聖女の力を持って生まれてしまったことで、姉に聖女の力を持って生まれてくることを望んでいた家族に虐げられて生きてきた王女セリアは、隣国との戦争を再び引き起こした大罪人として、処刑されてしまった。 しかし、それは現実で起こったことではなく、聖女の力による予知の力で見た、自分の破滅の未来だった。 生まれて初めてみた、自分の予知。しかも、予知を見てしまうと、もうその人の不幸は、内容が変えられても、不幸が起こることは変えられない。 それでも、このまま何もしなければ、身に覚えのないことで処刑されてしまう。日頃から、戦争で亡くなった母の元に早く行きたいと思っていたセリアだが、いざ破滅の未来を見たら、そんなのはまっぴら御免だと強く感じた。 幼い頃は、白馬に乗った王子様が助けに来てくれると夢見ていたが、未来は自分で勝ち取るものだと考えたセリアは、一つの疑問を口にする。 「……そもそも、どうして私がこんな仕打ちを受けなくちゃいけないの?」 初めて前向きになったセリアに浮かんだのは、疑問と――恨み。その瞬間、セリアは心に誓った。自分を虐げてきた家族と、母を奪った戦争の元凶である、隣国に復讐をしようと。 そんな彼女にとある情報が舞い込む。長年戦争をしていた隣国の王家が、友好の証として、王子の婚約者を探していると。 これは復讐に使えると思ったセリアは、その婚約者に立候補しようとするが……この時のセリアはまだ知らない。復讐をしようとしている隣国の王子が、運命の相手だということを。そして、彼に溺愛される未来が待っていることも。 これは、復讐を決意した一人の少女が、復讐と運命の相手との出会いを経て、幸せに至るまでの物語。 ☆既に全話執筆、予約投稿済みです☆

処理中です...