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3 大切な思い出
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私には、ティエラとしてこの世に生を受けた時から、別の世界を生きた記憶があった。
ティエラとして生まれる前の記憶だ。
前世の俺は、リシュアと言う名前だった。
そう言えば、同じ蜂蜜色の髪に榛色の瞳をしていたなと思い出す。
日々食べるのがやっとの賎民に近い平民の家に生まれて、兄弟は上に5人。
子供の俺がどれだけ必死になって働いても、家の生活が楽になる事はなかった。
そしてとうとうある冬の寒い日に、8歳の俺は、食い扶持を減らすために親の手によって、山に捨てられていた。
泣いて呼び止めても、父親は振り向かないし、木に縛り付けられた俺の体に、どんどん縄がくい込んでいくだけだった。
そこら中から何かの唸り声が聞こえていて、いつ俺が喰い殺されてもおかしくはない状況で、ここで獣か、もしくは、もっと恐ろしい魔物に、魂まで食べられてしまうんだと、絶望に打ちひしがれていた。
でも、俺は、運が良かったんだ。
たまたまそこを通りがかった冒険者に助けられて、荷物持ちをしながら、冒険者ギルドまで連れて行ってもらうことができた。
それから2年ほどは見習いをしながら生活していたんだけど、冒険者なら魔法が使えた方が有利な世界で、いつまで経っても何もできない俺は、拾ってくれたパーティにいる事ができなくなっていた。
まだ10歳で一人で生計を立てないといけなくなったけど、俺を拾ってくれたその人達にこれ以上迷惑をかけるわけにはいかない。
役に立たない俺をもっと早くに放り出せたはずなのに、ずっとクエストの難易度を落としてまで、俺が最低限一人で食べていけるようにはしてくれていた。
属性魔法の使えないポンコツな俺は、その後も、どのパーティにも入れなかった。
一人でなんとかやっていけたのは、唯一使えるようになっていた、時を止めるストップの魔法が、ほんの短時間の間、対象の動きを止める事ができていたから。
それで魔物の動きを止めて、その間にとどめを撃っていたから、レベル上げや路銀稼ぎは辛うじてできていた。
俺がパーティを抜けてからずっと1人だったわけじゃない。
俺には、唯一の相棒で大切な家族がいた。
茶色のモフモフの塊の小さな犬、ルゥ。
1人と1匹でずっと旅を続けていた。
ルゥと出会ったのは、パーティを抜けたすぐ後のことだった。
ルゥは森の中で親とはぐれたのか、心細そうに彷徨っていたんだ。
俺と目が合ったルゥは後をついてきて、本当は自分の事だけで手一杯だったけど、冷たくあしらう事なんかできなくて、結局一緒に過ごしていた。
少ない食べ物を分け合って、魔物から逃げ回って、ようやく冒険者らしい生活ができるようになった頃には、ルゥと出会って2年が経過していた。
俺は12歳になっていた。
世間一般で言えば、まだまだ子供だ。
ルゥも、小型の種族だったのかあんまりサイズは変わらなかった。
可愛いから、何でも良かった。
結局、ルゥがいたから、子供の俺でも1人で生きていけたんだ。
「焚き火よりもルゥの方が暖かいよ。朝までくっついていようね」
俺を見上げてパタパタと尻尾を振っているルゥに話しかける。
雪が降り積もる寒い夜でもルゥを抱きしめて寝たら、朝まで生き残ることができた。
怖い思いを何度もしたけど、ルゥを守らなきゃって思えば、どんなピンチも乗り切ることができたんだ。
いつも俺の足下をついて来てくれて、守るばかりじゃなくて、時々食べられる物も見つけてくれる頼れる相棒でもあった。
ルゥが好きでも、俺が食べることができない花を持ってこられた時は、どうやって断るべきかちょっと悩んだけど、
「ルゥ。ちょっと休憩しよう」
そう声をかけると、胡座をかいた俺の膝の上にすぐに乗ってくる。
俺の膝の上が、ルゥの指定席だった。
ずっと、ルゥと一緒にいられるものだと思っていた。
でも、前世の最後の記憶、最期の時は、大型の魔物に遭遇した時の事だった。
それがルゥとの別れの時でもあった。
ティエラとして生まれる前の記憶だ。
前世の俺は、リシュアと言う名前だった。
そう言えば、同じ蜂蜜色の髪に榛色の瞳をしていたなと思い出す。
日々食べるのがやっとの賎民に近い平民の家に生まれて、兄弟は上に5人。
子供の俺がどれだけ必死になって働いても、家の生活が楽になる事はなかった。
そしてとうとうある冬の寒い日に、8歳の俺は、食い扶持を減らすために親の手によって、山に捨てられていた。
泣いて呼び止めても、父親は振り向かないし、木に縛り付けられた俺の体に、どんどん縄がくい込んでいくだけだった。
そこら中から何かの唸り声が聞こえていて、いつ俺が喰い殺されてもおかしくはない状況で、ここで獣か、もしくは、もっと恐ろしい魔物に、魂まで食べられてしまうんだと、絶望に打ちひしがれていた。
でも、俺は、運が良かったんだ。
たまたまそこを通りがかった冒険者に助けられて、荷物持ちをしながら、冒険者ギルドまで連れて行ってもらうことができた。
それから2年ほどは見習いをしながら生活していたんだけど、冒険者なら魔法が使えた方が有利な世界で、いつまで経っても何もできない俺は、拾ってくれたパーティにいる事ができなくなっていた。
まだ10歳で一人で生計を立てないといけなくなったけど、俺を拾ってくれたその人達にこれ以上迷惑をかけるわけにはいかない。
役に立たない俺をもっと早くに放り出せたはずなのに、ずっとクエストの難易度を落としてまで、俺が最低限一人で食べていけるようにはしてくれていた。
属性魔法の使えないポンコツな俺は、その後も、どのパーティにも入れなかった。
一人でなんとかやっていけたのは、唯一使えるようになっていた、時を止めるストップの魔法が、ほんの短時間の間、対象の動きを止める事ができていたから。
それで魔物の動きを止めて、その間にとどめを撃っていたから、レベル上げや路銀稼ぎは辛うじてできていた。
俺がパーティを抜けてからずっと1人だったわけじゃない。
俺には、唯一の相棒で大切な家族がいた。
茶色のモフモフの塊の小さな犬、ルゥ。
1人と1匹でずっと旅を続けていた。
ルゥと出会ったのは、パーティを抜けたすぐ後のことだった。
ルゥは森の中で親とはぐれたのか、心細そうに彷徨っていたんだ。
俺と目が合ったルゥは後をついてきて、本当は自分の事だけで手一杯だったけど、冷たくあしらう事なんかできなくて、結局一緒に過ごしていた。
少ない食べ物を分け合って、魔物から逃げ回って、ようやく冒険者らしい生活ができるようになった頃には、ルゥと出会って2年が経過していた。
俺は12歳になっていた。
世間一般で言えば、まだまだ子供だ。
ルゥも、小型の種族だったのかあんまりサイズは変わらなかった。
可愛いから、何でも良かった。
結局、ルゥがいたから、子供の俺でも1人で生きていけたんだ。
「焚き火よりもルゥの方が暖かいよ。朝までくっついていようね」
俺を見上げてパタパタと尻尾を振っているルゥに話しかける。
雪が降り積もる寒い夜でもルゥを抱きしめて寝たら、朝まで生き残ることができた。
怖い思いを何度もしたけど、ルゥを守らなきゃって思えば、どんなピンチも乗り切ることができたんだ。
いつも俺の足下をついて来てくれて、守るばかりじゃなくて、時々食べられる物も見つけてくれる頼れる相棒でもあった。
ルゥが好きでも、俺が食べることができない花を持ってこられた時は、どうやって断るべきかちょっと悩んだけど、
「ルゥ。ちょっと休憩しよう」
そう声をかけると、胡座をかいた俺の膝の上にすぐに乗ってくる。
俺の膝の上が、ルゥの指定席だった。
ずっと、ルゥと一緒にいられるものだと思っていた。
でも、前世の最後の記憶、最期の時は、大型の魔物に遭遇した時の事だった。
それがルゥとの別れの時でもあった。
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