逃走中。待てと?殺されるのが分かってて待つわけないでしょぉぉぉ

奏千歌

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21 ハンターズギルドでの騒動

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「ダメだ、ダメだ、こんなもの信用できるか!!」

 現役ではないにしろハンターのはずなのに、見るからに動き辛そうな脂肪をまとった壮年の男性にそんな言葉を浴びせられて、戸惑いしかない。

 どことなく寂れた感じのするこの施設は、いくつかある主要拠点のうちの一つであり、わりと大きなハンターズギルドのはずだ。

 王都から逃走して隣町にたどり着くと、真っ先にここに来て紹介状を出したにもかかわらず、ギルド長だという人に邪険に扱われていた。

「どうしてですか?」

「こんな古いもの、無効だ!」

「えー、じゃあ時間がかかってもいいので、ハンター証を発行してもらえますか?」

「よりにもよって、アイーダの紹介状を持ってきた者の証なんぞ、発行するわけないだろ!!帰れ、帰れ!!」

「なんで、ちょっと!」

 私が反論する間もなく出入口から外に向かって突き飛ばされて、後ろに2、3歩下がると目の前で扉が音を立てて閉ざされていた。

 扉越しに呼びかけても反応を返してもらえずに、結局、訳がわからないままハンターズギルドを追い出されていた。

「何が、一体……」

 呆然としたまま立ち尽くす。

 通りを行き交う人が何人かこっちをみていたから、これ以上注目を浴びるのもまずい。

 考えるのは後にして移動しかけたところ、

「あなた、ちょっとこっち来て」

 女性が、ギルドの裏手の方から私を呼んでいた。

 ハンターズギルドの腕章を付けているので、ギルド所属の受付担当の人だと分かる。

 呼ばれるがままに近付くと、

「あなた、アイーダさんの紹介なのね」

「アイーダさんを知ってるの?」

「ちょっとタイミングが悪かったわね。ここじゃ話せないから、向こうで詳しく教えてあげる」

 ギルドの裏手側から、通りを挟んだ反対側の路地裏に連れて行かれていた。

 人気のないそこで、そのギルドのお姉さん、リンダさんはここ数ヶ月に起きたギルドでの騒動を教えてくれた。

 曰く、ここ最近のハンターズギルド上層部の腐敗が酷くて、不正や横領、横流しなどが横行していたらしい。

 それでとうとう我慢できなくなった上位ランクのハンター達がこぞって独立して、新たに冒険者支援ギルドを立ち上げたと。

 アイーダさんがその創設者の筆頭で、だからハンターズギルドではその名前がタブーになっていた。

「アイーダさんは、今どこにいるか分かりますか?」

 そう言えば、働いていた酒場でしばらくアイーダさんの姿を見ていない。

 ここでのハンター登録を断られるのなら、とりあえずアイーダさんを訪ねてみようと思った。

「そこにいるかは分からないけど、冒険者ギルドがここの隣町にあるから、そこに行って聞いてみてはどう?」

 リンダさんが教えてくれた場所は、そんなに遠くないからどうにかなるか。

「私も近いうちに、冒険者ギルドに転職すると思うから、そこで会ったらよろしくね」

 リンダさんに丁寧に御礼を伝えて、そこで私達は一度別れた。

 ここ最近の私は、運が悪い気がする。

 少しだけ重い足取りで、目的地の方角へ進んで行く。

 私がいなくなった事は、もうユリウスに伝わっているのかな。

 話す相手もいない一人で歩く道のりは、そんな事を考えていた。

 何て思っているんだろう。

 殺そうとしたわけだから、心配……はするわけないか。

 ほくそ笑んでいたとしたら……

 それをちょっとだけ想像して、ムカッとして、手近な木を蹴り付けて、痛む足に悲しくなって、ため息をついて、そしてまた歩き出す。

 一体何をやっているんだろうと、夕暮れ時なのがまた、私の物悲しい思いを増長させていた。








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