逃走中。待てと?殺されるのが分かってて待つわけないでしょぉぉぉ

奏千歌

文字の大きさ
30 / 39

30 鬼が追ってくるよ。逃げないと

しおりを挟む
 南へ、南へと移動していた。

 多分、無意識のうちに北の方には行きたくなかったのだと思う。

 北側が戦争中なのもあるけど、北にはあの人がいると思うと、そっちに行く気にはなれなかった。

 東か西にも行くことはできたけど、結局、より遠くへ離れたいと、真逆の南を選んでいたのだと思う。

 少しずつこの生活にも慣れた私は大型の魔獣を仕留めることにも成功していて、途中に寄った町にあるギルドに核を納品すると、ランクアップの手続きができるようになっていた。

「アイーダさんが身元保証人なのね。だから信用度が違うから、手続きもスムーズなのよ」

 ギルドの受け付のお姉さんから、そんな説明を受けた。

 犯罪歴とかが調べられるから、ここの保証人欄に誰かの名前があるのとないのでは手続きの内容が変わるらしい。

 それがギルド創設者のアイーダさんだから、顔パスに近い手続きでランクアップできていた。

 離れていてもアイーダさんに助けてもらっていて、とても有難い。

 未だに私の捜索は続いているようだから、いつになるかは分からないけどアイーダさんにちゃんと御礼を言いに行きたいなと思った。

 ここまでの道中も、何で私の居場所が分かるのか、何度か騎士らしき人に遭遇した。

 攻撃してくる様子はなかったけど、連れ戻すつもりでも困るから魔法を使って逃げていた。

 でも、ここはさすがに大丈夫だろうと、のんびりと町中を歩いて、ランクアップの自分へのご褒美に、何か甘い物を食べようかなと思っていた時だった。

 店へ向かう途中で、外套を頭から深く被った背の高い人の視線がこっちに向けられていることに気付いた。

 まだ遠くにいるその人の顔は分からない。

 相手は一人だけど、嫌な予感がする。

 気配を消すのが上手いところがもう不審者でしかないから、踵を返して猛ダッシュしていた。

 チラッと後ろを見ると、

 げー、やっぱり追ってきているよ。

 キョロキョロと、周りを見渡した。

 逃げ場は、海しかない。

 船が停泊している港へ走る。

 ちょうど離岸しかけている船を見つけて、ストップの魔法をかけていた。

 片付けられる寸前の縄梯子に飛びつき、それから、魔法を解くと、船はゆっくりと岸から離れていく。

 縄梯子を登りながら後ろを見てギョッとした。

 私を追ってきた人は、そこに立っていた人は、ユリウスだった。

 外套のフードが外れて、その顔が露わになっている。

「何で……」

 思わず声が漏れる。

 波止場では、ユリウスが何かを叫びながらこっちを見ているのを横目に、縄梯子を登りきる。

 待てと聞こえた気がしたけど、待つわけない。

 自分の命が大事だ。

「駆け込み乗船は危ないのでおやめ下さい」

 強引な乗船で困り顔の乗組員さんには怒られたけど、更新したばかりの冒険者証を見せて多めのお金を払ったらそのまま乗せてくれた。

 高位ランクの冒険者証になったから、その信頼度も変わってくるから、助かった。

 冒険者ギルド創設者の人達が、知名度を上げる為に頑張っているからってのも大きい。

 船上で、やっと一息つける。

 何で、ユリウスがわざわざ?

 自らその手で殺したいから?

 えー……

 それって、どれだけよ。

 どれだけ私に恨みがあるんだって話だ。

 港で待ち伏せの可能性は、先回りの手段はあるかな?

 あっちは王子様だし、どんな手を使うか分からないな。

 さっきの町の美味しいワッフルを食べ損なったのが、ちょっとだけ残念だったってのを頭の片隅で思いながら、この船の目的地に着いた後のことを考えていた。

 この船は国外に向かう船じゃない。

 王国の半島から別の半島を結ぶ貨物船らしい。

 船が陸地から離れていく様子と、波飛沫が船にぶつかる様子をしばらく甲板で眺めてすごした。

 それから数時間が経ち、今度は船が目的地へ間もなく接岸しようとしていた。

 甲板から見る限りは、岸辺に気になるところはない。

 周りを気にしながらタラップを降りて、急いで港から繋がっている地下水路に潜り込む。

「ティエラ!!」

 あぶなっ

 水路に入った途端に、ここからでは姿は見えないけど、ユリウスの声が頭上から聞こえてきていた。

「微かに残り香はあるのに、どこに……」

 残り香って、そんなので追ってきたの?

 どこの犬よ!

 水辺の、海の近くだから、匂いが分かりにくいのか。

 結局、しばらくそこから動けずに、地下水路の水が流れていない端っこに座って、外が暗くなるのを待っていた。




しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

妾の子だからといって、公爵家の令嬢を侮辱してただで済むと思っていたんですか?

木山楽斗
恋愛
公爵家の妾の子であるクラリアは、とある舞踏会にて二人の令嬢に詰められていた。 彼女達は、公爵家の汚点ともいえるクラリアのことを蔑み馬鹿にしていたのである。 公爵家の一員を侮辱するなど、本来であれば許されることではない。 しかし彼女達は、妾の子のことでムキになることはないと高を括っていた。 だが公爵家は彼女達に対して厳正なる抗議をしてきた。 二人が公爵家を侮辱したとして、糾弾したのである。 彼女達は何もわかっていなかったのだ。例え妾の子であろうとも、公爵家の一員であるクラリアを侮辱してただで済む訳がないということを。 ※HOTランキング1位、小説、恋愛24hポイントランキング1位(2024/10/04) 皆さまの応援のおかげです。誠にありがとうございます。

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

【完結】たぶん私本物の聖女じゃないと思うので王子もこの座もお任せしますね聖女様!

貝瀬汀
恋愛
ここ最近。教会に毎日のようにやってくる公爵令嬢に、いちゃもんをつけられて参っている聖女、フレイ・シャハレル。ついに彼女の我慢は限界に達し、それならばと一計を案じる……。ショートショート。※題名を少し変更いたしました。

【完結】聖女の手を取り婚約者が消えて二年。私は別の人の妻になっていた。

文月ゆうり
恋愛
レティシアナは姫だ。 父王に一番愛される姫。 ゆえに妬まれることが多く、それを憂いた父王により早くに婚約を結ぶことになった。 優しく、頼れる婚約者はレティシアナの英雄だ。 しかし、彼は居なくなった。 聖女と呼ばれる少女と一緒に、行方を眩ませたのだ。 そして、二年後。 レティシアナは、大国の王の妻となっていた。 ※主人公は、戦えるような存在ではありません。戦えて、強い主人公が好きな方には合わない可能性があります。 小説家になろうにも投稿しています。 エールありがとうございます!

妹と寝たんですか?エセ聖女ですよ?~妃の座を奪われかけた令嬢の反撃~

岡暁舟
恋愛
100年に一度の確率で、令嬢に宿るとされる、聖なる魂。これを授かった令嬢は聖女と認定され、無条件で時の皇帝と婚約することになる。そして、その魂を引き当てたのが、この私、エミリー・バレットである。 本来ならば、私が皇帝と婚約することになるのだが、どういうわけだか、偽物の聖女を名乗る不届き者がいるようだ。その名はジューン・バレット。私の妹である。 別にどうしても皇帝と婚約したかったわけではない。でも、妹に裏切られたと思うと、少し癪だった。そして、既に二人は一夜を過ごしてしまったそう!ジューンの笑顔と言ったら……ああ、憎たらしい! そんなこんなで、いよいよ私に名誉挽回のチャンスが回ってきた。ここで私が聖女であることを証明すれば……。

とっていただく責任などありません

まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、 団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。 この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!? ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。 責任を取らなければとセルフイスから、 追いかけられる羽目に。

婚約破棄イベントが壊れた!

秋月一花
恋愛
 学園の卒業パーティー。たった一人で姿を現した私、カリスタ。会場内はざわつき、私へと一斉に視線が集まる。  ――卒業パーティーで、私は婚約破棄を宣言される。長かった。とっても長かった。ヒロイン、頑張って王子様と一緒に国を持ち上げてね!  ……って思ったら、これ私の知っている婚約破棄イベントじゃない! 「カリスタ、どうして先に行ってしまったんだい?」  おかしい、おかしい。絶対におかしい!  国外追放されて平民として生きるつもりだったのに! このままだと私が王妃になってしまう! どうしてそうなった、ヒロイン王太子狙いだったじゃん! 2021/07/04 カクヨム様にも投稿しました。

私の手からこぼれ落ちるもの

アズやっこ
恋愛
5歳の時、お父様が亡くなった。 優しくて私やお母様を愛してくれたお父様。私達は仲の良い家族だった。 でもそれは偽りだった。 お父様の書斎にあった手記を見た時、お父様の優しさも愛も、それはただの罪滅ぼしだった。 お父様が亡くなり侯爵家は叔父様に奪われた。侯爵家を追い出されたお母様は心を病んだ。 心を病んだお母様を助けたのは私ではなかった。 私の手からこぼれていくもの、そして最後は私もこぼれていく。 こぼれた私を救ってくれる人はいるのかしら… ❈ 作者独自の世界観です。 ❈ 作者独自の設定です。 ❈ ざまぁはありません。

処理中です...