逃走中。待てと?殺されるのが分かってて待つわけないでしょぉぉぉ

奏千歌

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34 アンベールの嘆き

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 ユリウス様がティエラ様の捜索に出かけてから3ヶ月近くが過ぎようとしていた。

 王都ではアダム様指導による改革と再編が進んでいるが、ここ北方に展開されていた部隊は、戦後処理に忙しい。

 国を一つ丸々手中に収めて、暇な時があるわけがない。

 王都から多くの文官が応援に来ても、仕事が減ることはなかった。

 ユリウス様が不在でも混乱が起きていないのは、前もってアダム様が適切な人材を送ってくれたからだが。

 騎士学校の同期であったトリスタンから、ユリウス様は大丈夫だと聞いたが、アダム様が国王となった今は、本当に大丈夫なのか、不安しかなかった。

 ふと、遠くに見知った姿を見かけた。

 ティエラ様の暗殺未遂をしでかした、ラザールだ。

 ユリウス様に利き手を潰され、爵位を剥奪された今は、一般の兵士に混ざり傷病者の世話をしている。

 騎士であり身分至上主義であった者が、剣を二度と握れず、平民となり、平民と共に生活を共にしている。

 苦痛であろうが、罰としては軽いものだとしか思えない。

 多少の情けがかけられたのか。

 例え糞尿の始末をしたりだとか、使用後の蛆の湧いた包帯を洗わなければならないとしても、その命があるだけマシなのではないか?

 本人にしてみれば、死んだ方がマシだと思っているかもしれないが、逃亡も自棄も起こさずに真面目に働いているから、己の行いを反省しているのかもしれないな。

 元同僚のことよりも、目の前の書類の山だ。

 ユリウス様に帰ってきて欲しいが。

 そして、この書類の山を片付けて欲しいが。

 その望みは叶わないだろう。

「はぁ……休みが欲しい……異動したい……」

 人のいない場所でのため息だ。

 俺の嘆きが聞こえた者はいなかったのだが、意外にもその願いは、わりと早くに聞き入れられることになった。





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