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 シルバーノームを訪れてから数年が経ち、私はたくさんの幸せに出会うことができました。


 大きなスケッチブックを広げて、大好きな家の前の風景を描いていました。

 隣では、息子のウィルがグルグルと楽しそうにお絵かきをしています。

 父であるハーバートさんの髪にそっくりで、つい頭を撫でてしまいます。

 そうすると、顔を上げてにっこりと笑いかけてくれるので、今度はハーバートさんにそっくりなお目々が私を見てくれて、ふっくらとした頬を撫でてしまいます。

 もちろん、ハーバートさんに似ていなくても、愛らしいと思う気持ちは変わりません。

 私に似た女の子なら、また違う可愛さがあるのだろうと、ハーバートさんは言っていました。

「ウィル、上手に描けたね」

 色々な色で描かれたたくさんのグルグルは、虹色のお花畑のようでもありました。

 ウィルは褒められたのが嬉しいのか、またたくさんのグルグルを描き始めました。

「いい絵だな」

 背後からかけられたその声を聞くだけで、穏やかな気持ちにもなれるし、鼓動が跳ね上がりもします。

 ウィルはその姿を見て嬉しそうに立ち上がって、駆け寄っていきました。

 でも、歩き始めたばかりで、まだ覚束ないところがある足取りなので、走ればこけることも多く、

「あっ」

 何かに躓きかけたところを、ハーバートさんに抱き上げられていました。

 ホッと、一安心です。

「ぱぱ」

 大好きな父親に満面の笑顔で抱きつく姿は、宗教画で見た天使の姿のようでした。

 何かが満たされるような光景で、胸がいっぱいになります。

「さぁ、もう寒くなるから、体を冷やす前に、今日はもうこれくらいにして家に帰ろう」

「はい」

 身の回りに置いていた物を片付けてから、立ち上がります。

 立ち上がりながら考えていた事は、家では、温かいスープができているので、今日はそれにチーズを少しだけ入れて、パンと、町の人からいただいたお肉は、香草と一緒に焼いて……

「何かデザートを作ろうか?」

 私の思考に話しかけるようにハーバートさんが言ったので、やっぱり心が読めるのではないかと疑いましたが、

「パイが、食べたいです」

 遠慮なく希望を伝えます。

「分かった。食欲が戻ってくれて嬉しいよ。届けられたりんごでアップルパイを作るから、楽しみにしててくれ」

 いつもと変わらない微笑を向けられ、さりげない優しさにも甘えながら、家族みんなで家に帰りました。

 これが私の幸せです。















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