6 / 42
第五話 予選
しおりを挟む
「この無能め! 覚悟しろ!」
「あははは! 怖くて足が竦んでるみたいよ」
「竦むってどういう意味?」
「ママ助けてって泣いても許さないぞ」
「うーん。なんだこの状況は……」
カラフルな少年少女に取り囲まれていた。ごめん、俺、どうしても高三の記憶があるから違和感しか覚えない。日本では逆だったし。子供達に取り囲まれるどころか、近づくだけで逃げ出していたからな。見た目で変質者扱いしないで欲しい。
「食らえ! 『ウォーターボール!』」
「おお!?」
魔法を初めて見た。うちの連中は全員近接スタイルで誰も使えないのだ。まあ、魔法といっても小さな子供が出すものなので、ちょっと大きい水風船だ。首を傾けてそれを躱す。
「無能の癖によけるなんて生意気!」
バチバチバチと電気のようなものを纏った剣が俺の顔の前を通りすぎる。これって当たるとやっぱり痺れるのかな。
「この! ちょこまかと! 貫けシャイニングアロー!」
凄いな。弓にも属性を乗せれるのか。まあ、へなへなに飛んできて俺の手前で落ちたけどね。
「なあ、僕よりも周りの奴らの方が弱いと思うぞ」
「ふざけるな! 無能が強いわけあるか!」
「無能なんて生きてる価値がないって父さんが言ってた!」
「神に見放された人種なのよね!」
なんか腹が立ってきた。この子らにというよりも、それを教育している大人連中に。
「はあ、世界が変わっても大人は腐っているということか」
武闘大会予選はバトルロワイヤル形式。児童の部の参加者は三百人超。結構多いよな。まあ、半分くらいは俺のようにこの街の外から参加しているようだが。これが十六グループに分けられて予選が行われている。本選出場枠はグループにつき一つ。最後までステージに残った者に与えられる。
「こら逃げるな!」
「自分からステージの外に落ちる気か!」
「敵前逃亡は死刑よ!」
逃げは常套手段だろ。敵わない相手ならさっさと身を隠す。それを選択できるかどうかが生死を決める。俺はVRゲームでそれを思い知った。ただ、今回はそういうわけじゃない。俺はステージの端で立ち止まる。
「食らえ! うわぁぁああ」
「これならどうだ! あっ――」
斬りかかってきたのを躱して軽く背中を押す。それだけで場外失格。体当たりしてきた子供は跳び箱の要領で飛び越した。それだけで勝手に外へと落ちていく。
さて、問題は遠距離に離れて攻撃する奴らだな。どうしようか。
「あれれ?」
すでにステージには誰も残っていなかった。いや――。
「随分とまどろっこしいことするんだね」
ステージの中央で口角を吊り上げるローブ姿の小さな少年。俺と同じか、もしくは歳下かもしれない。
「いやいや、この程度の実力しかないからさ」
「何いってるの? ぼく驚いたよ。属性なしでもそんなに強くなれるんだね」
素直に感心していた。あ、こいつやばいな。髪が真っ白だよ。混じりっ気が一切ない。
「お前さ、この一瞬でどうやって他の奴らを仕留めたんだ? みなバラバラに距離をとっていただろ」
「簡単だよ。こうしたのさ」
少年が両手を開いた状態で静止する。柏手をパンと打つ前の姿といえばいいだろうか。掌の五十センチほど上空、そこに左右それぞれ三本の氷の杭を浮かべていた。まじかよ……。
「無詠唱で同時発動かよ」
「ふふふふ、杭一つから制御できるんだ。これで一瞬だったよ」
まさか児童の部にこんな使い手がいるとは……。まずいな。まともに戦っても勝てる気がしない。
「降参してくれないかな?」
「ふふふふ、きみ面白い。降参するじゃなくて、僕に降参してくれっていうなんて」
「いやまあ、お前にアレが防げるのかと思ってさ……」
そう言って俺は少年の頭上を見上げる。
「なんだと言うの? ぼくにはなにも――。あっ!?」
少年が上を見た瞬間に距離を詰める。純粋な少年を騙すような戦法でごめん。でも俺は本選出場の祝い金が欲しいのだ。綺麗ごと言ってる場合じゃない。
慌ててアイスニードルを放つ少年。だが冷静さに欠けていた。大人だって奇襲されると焦るんだから当然だろう。
ジグザグに走るだけで、氷の杭が俺の脇を通り抜けていく。よし、全部躱したぞ。あとはあいつを蹴り飛ばせば――。
「嘘だろ!」
思わず驚きが口を突いた。なぜなら、少年の体が白い光に包まれていたのだ。いつのまにか両手に細長い剣を持っていた。無論、剣にも氷属性が付与されていた。まじかよ。その歳で肉体強化使えるのかよ。ていうか魔法と剣のダブルかよ!?
「ふふふふ、残念だったね」
相手が構えている所に突撃していく格好だ。しかも相手は二刀流だ。剣一つを弾いたとしても、その間にもう一方で斬られそうだ。なんてこった。追いつめられた状況に俺は唇を強く噛む。
「ふふふふ、ここは特別だから死なないけど、痛みは変わらないよー」
「糞がっ! ガキの癖に生意気なんだよ!」
走りながら剣を斜め左下へと引き絞る。全速で斬り上げるしかない。それを迎え撃つ少年は片手は上段、もう一方は下段に構えていた。一つ一つの動作が流れるようで、俺よりも格段に速い。
「子供なのは、きみも同じ――。ああっ!?」
相手が目を瞑っている隙に俺は剣を振り上げた。それは無防備な少年に見事に命中、ステージ外にまで吹っ飛んでいった。
「ふう、なんとか勝ったな」
「第五グループ、勝者ルイス=ファイゴス!」
その瞬間、コロセウムが揺れた。大盤狂わせに大歓声? いや違うな。これは完全にブーイングだ。
「きみ! 卑怯じゃないか!?」
先ほどの少年が目を擦りながら俺に詰め寄ってきた。おお、タフだな。ダメージないのかよ。
「なにがだ?」
「なにがじゃない! 目つぶしに血反吐なんて最低な屑のすることだ」
そう、唇を切った血を唾に混ぜ、相手が剣を振りかぶった瞬間に目へと吐き出したのだ。前世でよく飛ばしてたからね。高三で痰が良く絡むってどうなんだ、と自分でも思ってたけど。
「これが野外での戦闘だったら、お前は文句を言わなかっただろう」
「は!? なんでだ!」
「いまごろ、出血多量で死んでるからさ」
「うっ――」
少年は首を押さえてだまってしまった。そこにはハッキリと赤いミミズ腫れができていた。
「ふ、ふふふふ、いつかこの借りを返してやる……」
「そんなもんいらん」
「ふふふふ、本選でぼくの兄弟子たちにボコボコにされたらいい……」
えっ!? 嘘でしょ。こいつよりも強いのが本選ではゴロゴロと出て来るのか? あー、本選で勝ち抜くことは到底無理そうだ。卑怯な手は一度きりしか使えないからな。ま、本選に出ることが目的だったし、そこは諦めるか。
俺が闘技場のステージから消えるまで野次は止まらなかった。卑怯者とか無能はわかるが、金返せとはどういうことだ。もしかして、賭けでも行われているのか。
そして午後は観客席から兄たちの戦いを観戦した。
「糞っ! あともう少しだったのに。男なら剣で勝負しやがれってんだ」
「近接スタイル相手に魔法使いが魔法使うのは当然だけどな」
「煩い!」
むしゃむしゃと肉をがっつくボッシュにレオンが突っ込んでいた。今日もテーブルの上には肉が並ぶ。本選出場を祝ってのご馳走だ。ボッシュの場合は違うけどね。開始早々、ファイアボールを顔面に受けて一発ノックアウトされていた。
「レオンは危なげなく本選出場だったね」
「当たりがよかったんだな」
「ルイスもおめでとう」
「あ、うん……」
「おめーは卑怯な手を使いやがって! うちの家名に泥を塗るつもりか。だから無能は――」
「「ボッシュ!」」
「確かに手としては褒められるものではない。だが、ルイスはああでもしないと勝てなかっただろう」
「そうだね。カラード相手だったし」
「逆によく勝てたと感心したぞ」
父とレオンは真剣な表情で頷きあっていた。
「カラード?」
「ああ、ルイスは知らないか」
「原色至上主義集団とでもいえばいいのか」
「混じってる奴らは自分達の奴隷になるべきだと思ってるイカれた連中だな」
なんだその白人至上主義みたいなのは。
「だが強いのは確かだ」
「俺が昨年負けた相手もカラードだった」
うちの長兄でも勝てない相手って相当なもんだな。
「連中は力が高いので国の中枢に入り込んでいる」
「それが各国での差別を助長しているんだ」
「獣人に対しては?」
「人とすらカウントしていない。人目を忍んで狩ってるという噂が絶えない」
カラード、許せん……。モフモフさんを虐めやがって。
「ルイス、明日はこれで武具でも新調してこい」
「え? こんなに……」
父から手渡された布袋には硬貨がぎっしりと詰まっていた。銅貨だけでなく銀貨も数枚入っているようだ。こんな大金どうしたんだ? この前の魔結晶を売ってもここまではいかないだろ。
「好きにしろ。それはお前の稼いだ金だ」
「え……。あ、父さんまさか」
「ぼろ儲けだ。半分は父さんの取り分な」
夕食の間、父はずっと上機嫌だった。もしかして子供達が本選に進んだからではなく金が儲かったからなのか?
「でも、僕なんかに賭けたの?」
「僅かにでも勝つ可能性があれば息子に賭けるのは当然だろ」
「父さん、わりーな。期待に応えられなくて。損した金は来年返すわ」
「いや、ボッシュには賭けてないから問題ない」
「なんでだよ!?」
「俺は勝つ可能性があればと言ったんだ。自分の実力がわかっただろ。村に戻ったらたっぷりとしごいてやるからな」
「ぐっ……」
「父さん、俺は?」
「レオン、お前は倍率悪すぎだぞ。賭けても一割しか金が増えないんだ。面白味が足りん」
「面白味って……」
「まあ、レオンは優勝候補筆頭だから仕方ないよ」
「本選の賭けになればもう少し倍率も上がるだろう。楽しみだな」
うちが貧乏なのって父さんが賭けで大金をすったとかじゃないだろうな。少し心配になってきた。
「いずれにしろ、明日の成人の部を見てから買い物に行った方がいいぞ。大人の闘い方をみてよく学ぶといい」
「うん、わかった」
もしかしたら、カラードに一矢報いる手が見つかるかもしれない。本選も一回位は勝ちたいしな。
「あははは! 怖くて足が竦んでるみたいよ」
「竦むってどういう意味?」
「ママ助けてって泣いても許さないぞ」
「うーん。なんだこの状況は……」
カラフルな少年少女に取り囲まれていた。ごめん、俺、どうしても高三の記憶があるから違和感しか覚えない。日本では逆だったし。子供達に取り囲まれるどころか、近づくだけで逃げ出していたからな。見た目で変質者扱いしないで欲しい。
「食らえ! 『ウォーターボール!』」
「おお!?」
魔法を初めて見た。うちの連中は全員近接スタイルで誰も使えないのだ。まあ、魔法といっても小さな子供が出すものなので、ちょっと大きい水風船だ。首を傾けてそれを躱す。
「無能の癖によけるなんて生意気!」
バチバチバチと電気のようなものを纏った剣が俺の顔の前を通りすぎる。これって当たるとやっぱり痺れるのかな。
「この! ちょこまかと! 貫けシャイニングアロー!」
凄いな。弓にも属性を乗せれるのか。まあ、へなへなに飛んできて俺の手前で落ちたけどね。
「なあ、僕よりも周りの奴らの方が弱いと思うぞ」
「ふざけるな! 無能が強いわけあるか!」
「無能なんて生きてる価値がないって父さんが言ってた!」
「神に見放された人種なのよね!」
なんか腹が立ってきた。この子らにというよりも、それを教育している大人連中に。
「はあ、世界が変わっても大人は腐っているということか」
武闘大会予選はバトルロワイヤル形式。児童の部の参加者は三百人超。結構多いよな。まあ、半分くらいは俺のようにこの街の外から参加しているようだが。これが十六グループに分けられて予選が行われている。本選出場枠はグループにつき一つ。最後までステージに残った者に与えられる。
「こら逃げるな!」
「自分からステージの外に落ちる気か!」
「敵前逃亡は死刑よ!」
逃げは常套手段だろ。敵わない相手ならさっさと身を隠す。それを選択できるかどうかが生死を決める。俺はVRゲームでそれを思い知った。ただ、今回はそういうわけじゃない。俺はステージの端で立ち止まる。
「食らえ! うわぁぁああ」
「これならどうだ! あっ――」
斬りかかってきたのを躱して軽く背中を押す。それだけで場外失格。体当たりしてきた子供は跳び箱の要領で飛び越した。それだけで勝手に外へと落ちていく。
さて、問題は遠距離に離れて攻撃する奴らだな。どうしようか。
「あれれ?」
すでにステージには誰も残っていなかった。いや――。
「随分とまどろっこしいことするんだね」
ステージの中央で口角を吊り上げるローブ姿の小さな少年。俺と同じか、もしくは歳下かもしれない。
「いやいや、この程度の実力しかないからさ」
「何いってるの? ぼく驚いたよ。属性なしでもそんなに強くなれるんだね」
素直に感心していた。あ、こいつやばいな。髪が真っ白だよ。混じりっ気が一切ない。
「お前さ、この一瞬でどうやって他の奴らを仕留めたんだ? みなバラバラに距離をとっていただろ」
「簡単だよ。こうしたのさ」
少年が両手を開いた状態で静止する。柏手をパンと打つ前の姿といえばいいだろうか。掌の五十センチほど上空、そこに左右それぞれ三本の氷の杭を浮かべていた。まじかよ……。
「無詠唱で同時発動かよ」
「ふふふふ、杭一つから制御できるんだ。これで一瞬だったよ」
まさか児童の部にこんな使い手がいるとは……。まずいな。まともに戦っても勝てる気がしない。
「降参してくれないかな?」
「ふふふふ、きみ面白い。降参するじゃなくて、僕に降参してくれっていうなんて」
「いやまあ、お前にアレが防げるのかと思ってさ……」
そう言って俺は少年の頭上を見上げる。
「なんだと言うの? ぼくにはなにも――。あっ!?」
少年が上を見た瞬間に距離を詰める。純粋な少年を騙すような戦法でごめん。でも俺は本選出場の祝い金が欲しいのだ。綺麗ごと言ってる場合じゃない。
慌ててアイスニードルを放つ少年。だが冷静さに欠けていた。大人だって奇襲されると焦るんだから当然だろう。
ジグザグに走るだけで、氷の杭が俺の脇を通り抜けていく。よし、全部躱したぞ。あとはあいつを蹴り飛ばせば――。
「嘘だろ!」
思わず驚きが口を突いた。なぜなら、少年の体が白い光に包まれていたのだ。いつのまにか両手に細長い剣を持っていた。無論、剣にも氷属性が付与されていた。まじかよ。その歳で肉体強化使えるのかよ。ていうか魔法と剣のダブルかよ!?
「ふふふふ、残念だったね」
相手が構えている所に突撃していく格好だ。しかも相手は二刀流だ。剣一つを弾いたとしても、その間にもう一方で斬られそうだ。なんてこった。追いつめられた状況に俺は唇を強く噛む。
「ふふふふ、ここは特別だから死なないけど、痛みは変わらないよー」
「糞がっ! ガキの癖に生意気なんだよ!」
走りながら剣を斜め左下へと引き絞る。全速で斬り上げるしかない。それを迎え撃つ少年は片手は上段、もう一方は下段に構えていた。一つ一つの動作が流れるようで、俺よりも格段に速い。
「子供なのは、きみも同じ――。ああっ!?」
相手が目を瞑っている隙に俺は剣を振り上げた。それは無防備な少年に見事に命中、ステージ外にまで吹っ飛んでいった。
「ふう、なんとか勝ったな」
「第五グループ、勝者ルイス=ファイゴス!」
その瞬間、コロセウムが揺れた。大盤狂わせに大歓声? いや違うな。これは完全にブーイングだ。
「きみ! 卑怯じゃないか!?」
先ほどの少年が目を擦りながら俺に詰め寄ってきた。おお、タフだな。ダメージないのかよ。
「なにがだ?」
「なにがじゃない! 目つぶしに血反吐なんて最低な屑のすることだ」
そう、唇を切った血を唾に混ぜ、相手が剣を振りかぶった瞬間に目へと吐き出したのだ。前世でよく飛ばしてたからね。高三で痰が良く絡むってどうなんだ、と自分でも思ってたけど。
「これが野外での戦闘だったら、お前は文句を言わなかっただろう」
「は!? なんでだ!」
「いまごろ、出血多量で死んでるからさ」
「うっ――」
少年は首を押さえてだまってしまった。そこにはハッキリと赤いミミズ腫れができていた。
「ふ、ふふふふ、いつかこの借りを返してやる……」
「そんなもんいらん」
「ふふふふ、本選でぼくの兄弟子たちにボコボコにされたらいい……」
えっ!? 嘘でしょ。こいつよりも強いのが本選ではゴロゴロと出て来るのか? あー、本選で勝ち抜くことは到底無理そうだ。卑怯な手は一度きりしか使えないからな。ま、本選に出ることが目的だったし、そこは諦めるか。
俺が闘技場のステージから消えるまで野次は止まらなかった。卑怯者とか無能はわかるが、金返せとはどういうことだ。もしかして、賭けでも行われているのか。
そして午後は観客席から兄たちの戦いを観戦した。
「糞っ! あともう少しだったのに。男なら剣で勝負しやがれってんだ」
「近接スタイル相手に魔法使いが魔法使うのは当然だけどな」
「煩い!」
むしゃむしゃと肉をがっつくボッシュにレオンが突っ込んでいた。今日もテーブルの上には肉が並ぶ。本選出場を祝ってのご馳走だ。ボッシュの場合は違うけどね。開始早々、ファイアボールを顔面に受けて一発ノックアウトされていた。
「レオンは危なげなく本選出場だったね」
「当たりがよかったんだな」
「ルイスもおめでとう」
「あ、うん……」
「おめーは卑怯な手を使いやがって! うちの家名に泥を塗るつもりか。だから無能は――」
「「ボッシュ!」」
「確かに手としては褒められるものではない。だが、ルイスはああでもしないと勝てなかっただろう」
「そうだね。カラード相手だったし」
「逆によく勝てたと感心したぞ」
父とレオンは真剣な表情で頷きあっていた。
「カラード?」
「ああ、ルイスは知らないか」
「原色至上主義集団とでもいえばいいのか」
「混じってる奴らは自分達の奴隷になるべきだと思ってるイカれた連中だな」
なんだその白人至上主義みたいなのは。
「だが強いのは確かだ」
「俺が昨年負けた相手もカラードだった」
うちの長兄でも勝てない相手って相当なもんだな。
「連中は力が高いので国の中枢に入り込んでいる」
「それが各国での差別を助長しているんだ」
「獣人に対しては?」
「人とすらカウントしていない。人目を忍んで狩ってるという噂が絶えない」
カラード、許せん……。モフモフさんを虐めやがって。
「ルイス、明日はこれで武具でも新調してこい」
「え? こんなに……」
父から手渡された布袋には硬貨がぎっしりと詰まっていた。銅貨だけでなく銀貨も数枚入っているようだ。こんな大金どうしたんだ? この前の魔結晶を売ってもここまではいかないだろ。
「好きにしろ。それはお前の稼いだ金だ」
「え……。あ、父さんまさか」
「ぼろ儲けだ。半分は父さんの取り分な」
夕食の間、父はずっと上機嫌だった。もしかして子供達が本選に進んだからではなく金が儲かったからなのか?
「でも、僕なんかに賭けたの?」
「僅かにでも勝つ可能性があれば息子に賭けるのは当然だろ」
「父さん、わりーな。期待に応えられなくて。損した金は来年返すわ」
「いや、ボッシュには賭けてないから問題ない」
「なんでだよ!?」
「俺は勝つ可能性があればと言ったんだ。自分の実力がわかっただろ。村に戻ったらたっぷりとしごいてやるからな」
「ぐっ……」
「父さん、俺は?」
「レオン、お前は倍率悪すぎだぞ。賭けても一割しか金が増えないんだ。面白味が足りん」
「面白味って……」
「まあ、レオンは優勝候補筆頭だから仕方ないよ」
「本選の賭けになればもう少し倍率も上がるだろう。楽しみだな」
うちが貧乏なのって父さんが賭けで大金をすったとかじゃないだろうな。少し心配になってきた。
「いずれにしろ、明日の成人の部を見てから買い物に行った方がいいぞ。大人の闘い方をみてよく学ぶといい」
「うん、わかった」
もしかしたら、カラードに一矢報いる手が見つかるかもしれない。本選も一回位は勝ちたいしな。
0
あなたにおすすめの小説
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
魔力ゼロの俺だけが、呪いの装備を『代償なし』で使い放題 ~命を削る魔剣も、俺が持てば『ただのよく切れる剣』~
仙道
ファンタジー
現代日本で天才研究者だった相模登(さがみ のぼる)は、ある日突然、異世界へ転移した。 そこは『スキル』と『魔力』が全てを決める世界。
しかし登には、ステータス画面もなければ、魔力も、スキルも一切存在しなかった。
ただの一般人として迷宮に放り出された彼は、瀕死の女騎士と出会う。彼女の前には、使う者の命を瞬時に吸い尽くす『呪いの魔剣』が落ちていた。
武器はそれしかない。女騎士は絶望していたが、登は平然と魔剣を握りしめる。 「なぜ……生きていられるの?」 登には、剣が対価として要求する魔力は存在しない。故に、魔剣はデメリットなしの『ただのよく切れる剣』として機能した。
これは、世界で唯一「対価」を支払う必要がない登が、呪われた武具を次々と使いこなし、その副作用に苦しむ女騎士やエルフ、聖女を救い出し、無自覚に溺愛されていく物語。
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する
namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。
転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。
しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。
凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。
詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。
それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。
「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」
前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。
痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。
そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。
これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる