異世界でボッチになりたいが、なれない俺

白水 翔太

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第二十話 パーティ効果

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「うぉりゃぁああ!」

 鋭い拳の一撃を受けた犬頭が爆ぜた。

「ちょこまかと逃げてるんじゃねーよ!」

 逃げ惑う犬を犬が追いかけていた。これこそ犬のお巡りさん。

「ルイスさん……。失礼な心の声がだだ漏れてますよ。そして私たちは犬ではありません!」

「あ、すまん……」

「はははは! よえー! お前ら弱すぎだぞ!」

 レッドが無双している相手はコボルトの集団だ。

 駆け出しの冒険者泣かせとも言われる魔物。単体ではゴブリンよりも少し強い程度だが、より群れを作る習性がある。そしてそれよりも厄介なのは吐き出す唾が銀を溶かすことだ。

 王都は銀の採掘量が豊富なので銀製品が非常に安い。属性も通り易い素材であるため、初心者は銀の武器や防具で身を固めるのが一般的だ。なけなしの金を費やして揃えた武器や防具が一瞬で溶けるのだ。そりゃ泣くよね。

「きたねー唾を飛ばすんじゃねーよ! オラオラオラ!」

 しかし、うちのメンバーには関係ない。俺は鉄の剣と革の装備だ。レッドは完全に素手で殴ってるし。約一名はただのドレス姿だし……。

「なあ、アクア」

「なんですか?」

「レッドっていまバーサク状態なのか?」

「あ、いえ。あれは普段のお兄ちゃんです」

「でも、一人で勝手に奥まで突っ込んでいってるぞ」

「そうですね……。あっ! そこは駄目――」

「うわぁぁああああ!?」

 通路の奥まで追いかけていったレッドの姿が一瞬で視界から消え去った。まあ、つまりは落とし穴に落ちたということだ。

「レオーラあそこを見て!」

「あらあら素敵なお花畑ですわね」

「記念にお花を摘みに行きましょうよ!」

 背後からダンジョンに似つかわしくない会話が聞こえてきた。嫌な予感を覚えつつも振り返る。

 二人の女性が向かう先。そこには色鮮やかな花々が咲き誇る地面があった。ちなみにここは地下ダンジョン。日光が当たるはずもない。

「なあ、アクア」

「なんですか! 早く、お兄ちゃんを助けないと!」

「大丈夫だ。あいつは単に下の階に落ちただけだ。この程度のレベルの魔物ならたいした問題はない。むしろ少しくらいは痛い目に遭った方が反省するだろ」

「まあ、確かにそうですが……」

「それよりあっちは問題ないのか?」

「えっ!? あの人達は何をしているんですか! 駄目に決まっているじゃないですか!」

「だよなあ。あ、二人して倒れた」

「はへ? はぬかからほがほびれろ……」

「こへは ちぬろせにともじいでしる……」

 どうやら花に触れると麻痺するようだ。レオーラは治療しようとしているようだが、いかんせん舌先まで痺れてうまく詠唱できないようだ。ああ、馬鹿ばっかり。



「折角の罠解除スキルが意味をなさねーじゃねーか!」

「「「ごめんなさい……」」」

 地下五階の床で正座する三人。

「しかもレオーラは回復役なんだぞ。お前まで一緒になって罠にかかってどうする! へたしたら全滅すらありえるんだぞ!」

「申し訳ありません。少しだけ油断していましたわ」

「これからは勝手な行動を慎むように。罠のないことをアクアが確認した範囲のみ行動を許す。わかったな!」

「「「はい……」」」

「そうですよ。まだ浅い階なのでわかりやすい罠しかありませんが、下層にいけばいくほど見抜くのが難しいんです。ダンジョン全体が砂漠になったり、氷で覆われた世界に代わるそうです。そうなると一目見て罠だとわかるものはなくなってきます」

 どうみてもわかりやすい罠に嵌った連中。この先すごい不安だ。

「まあいい、それでこの先に階層のボスがいるんだったよな?」

「そうです。ソロだとDランク以上のレベルの魔物になりますね」

「兄貴、これだけメンバーいるんだから大丈夫だって!」

「それよりさっきから何か音が聞えない?」

 たしかに、シャーシャー煩いな。左右を見回しても何も見当たらないけど。

「上です!」

「色鮮やかで綺麗な天井ね」

「でも、天井の模様が動いていますわ」

「違うな。あれは――」

 キシャァアアア! と叫びながら天井から落ちて来た。それは夥しいほどの蛇だった。

「きゃぁあああ!? シ、『シャイニングレイン!』」

 黄金に輝く雨が辺り一面に降り注ぐ。雨粒一滴に触れるだけで蛇が消し飛んでいく。まさに一瞬のことだった。改めて魔法の凄さを思い知った。

「おおすげー! やるな狐の姉ちゃん!」

「えへへへ! そうでしょ! 私の魔法は最強なんだから」

「殲滅したのはいいが、あんなの撃って魔力に余裕あるのか?」

「あっ!? やり過ぎたかも! なんか凄い頭痛がしてきた! 痛い痛い痛い!」

「あら大変! 魔力切れの症状ですわ。ヒールでなんとか持たせましょう」

「その頭痛って直るのにどれくらいかかる?」

「一晩寝て魔力を戻さないと駄目ですわ」

「これからボス戦なんだけど」

「頑張ってくださいまし」

 戦う前から二人脱落かよ。

「はあ……。もういいや。ボス部屋には地上に戻る転移石もあるだろ。さっさと倒すぞ」

「兄貴ちょっと待ってくれ!」

「今度はなんだよ」

「落ちた時に足を挫いたみたいだ。ちょっとうまく歩けない」

「ったく……。レオーラ、ちょっとこいつの足を診てやってくれ」

「同時発動は無理ですわ」

「アンヘレスのを一旦やめればいいだろ」

「いま止めますとアンヘレスが気絶してしまいますわ。そうなると誰か担ぐ人が必要になりますわよ」

「ダンジョンでの魔力枯渇は命取りなのよね……」

 ならなんで全部使い果たすんだよ。おバカすぎる。

「おい、アクア。レッドに肩を貸してやれ。敵は俺が倒す」


 無心で黙々と敵を屠りながらダンジョンを進む。何か考えると苛々が高まりそうだったから。幸いにも魔物はコボルト数体とスネークくらいだったので問題なかった。


「それで? これを一人で倒せと?」

「兄貴やっちまえ!」

「そうよ! ルイスなんかの敵じゃないわ!」

 威勢のいい声援が俺の背中から聞こえる。片や妹の、もう一人は友の肩を借りている。ここまでの流れが違えば感動的な場面だったのかもしれない。

「ウゴォォオオオ!?」

 筋骨隆々の牛面が片手ずつに握る斧を打ち合わせた。体長は三メートル程度か? まあ、ゲームではお馴染みのミノタウロスだ。なのでその異形に恐れをなしたりはしない。

「ルイスさん後ろ!」

「うおっと! あぶねーな!」

 ただ、四体に囲まれていた。片手ずつに武器をもっているから八個の斧が次々と俺に襲いかかって来るのだ。

「これってソロ攻略にはきつい設定だよな」

「ねっ? あのとき私がパーティを組まないとキツイっていった意味がわかるでしょ」

 ねっ、じゃねーよ! お前、絶対に「ほら私の言った通りでしょ」ってどや顔をしているだろ。攻撃を躱す合間にアンヘレスの表情を窺う。

 ドヤ顔じゃなくて、狐顔だった……。

「うわっ!? あぶねー!」 

 一瞬の隙をつかれて攻撃を食らうところだった。アンヘレスの野郎……。

 だいたいパーティ組んでもソロで戦ってたら意味ないじゃねーか。ほんと使えねーやつらだな。しかし、四方からの攻撃はほんとやっかいだ。

「兄貴! 避けているばっかじゃいつまでたっても倒せないぞ!」

 はい、調教確定――。

    ****

「はぁ、はぁ、はぁ……。なんとか倒せたか」

 思った以上にミノタウロスの肉体が硬かった。鉄の剣が三本ほど駄目になってしまった。魔武具の剣を使えば余裕で倒せた相手だ。もちろん使わなかったけど。知り合って間もないメンバーだ。信用できるかどうかもわからない。少なくとも二人の女性はこの国でそれなりの地位にいるようだし。インフィニティは暫くお蔵入りかもしれないな。

「ルイスさん。お疲れ様でした。役に立たなくてすみません」

「いや、アクアはまったく悪くないぞ。むしろ弱点が角であることを教えてくれたから感謝してるぞ」

「兄貴、早く街に戻って飯にしよーぜ! おれ腹へったよ」

「俺は宿に直帰する」

「今日はパーティ結成を祝って皆でお食事会だね!」

「食事は一人で食べるものだ」

「アンヘレス。それは無理ですわ」

「どうして!? レオーラは何か予定があるの?」

「晩餐会は毎日はいってますわ。でもそれはキャンセルできますのよ」

「なら行きましょう!」

「ですが、私の魔力がもう尽きそうですわ。アンヘレスの回復もできませんわよ」

「よし、解散すべきだな」

「ええ!? あっ、そうだ! うちに帰ったら魔力回復ポーションがあるわ! 一緒にあれを飲んでからいきましょ!」

「あら、その手がありましたわね。私ったら気がまわりませんでしたわ」

「魔力回復ポーションって五万ギルもするのに……」

 二人の会話に唖然とするアクア。

「なあ、アクア。やっぱり今日は解散するべきだよな」

「そうですね……。あの二人は寝れば治りますからね。ポーションだなんて勿体ないですよ」

「お薦めのステーキ屋さんがありますわよ」

「お肉っ!? ルイスさん何しているんですか! 早く行きますよ!」

 そして味方は誰もいなくなった。

 ああ、食事の時くらい一人で静かに食べたい……。

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