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第一世界 ロージェン(さあ、魔王討伐だ!)
第十六話 職業授与
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「ユーキ、そんなに落ち込まなくても大丈夫よ!」
魔導王が勇者を宥める。
「そうそう、あのときはユーキさんのレベルもまだ低かったのですから」
「でも……」
何か言おうとする勇者の顔を黙って胸に押し抱く大司教さま。
「ちょっと何してるのよ(んだ)!」
「うぅぅうう!?」
勇者が苦しそうに顔を交互にふる。その度にユサユサと揺れる双丘。
「だからなにしてるのよ(んだ)!」
先ほどから俺と魔導王の言葉がハモる。なんだよ気が合うじゃないか。たぶん逆の意味だろーがな。
「ハァハァハァ……。ソフィなにをするんだよ! 危なく窒息するとこだったじゃないか」
桃源郷から抜け出した勇者は四つん這いになって苦しそうに咳き込んでいた。なんて軟弱な。俺ならそこで死ねるぞ。それこそ男としての本懐じゃないか。
「あれから大分レベルあがったよ~。ここのダンジョンなら更にあがるよ~。大丈夫~」
猫耳の拳闘鬼が勇者の頭をナデナデする。
「えっ、なにかしらこの禍々しいオーラ!? もしかして魔王が攻めてきたのかしら……」
大司教が両腕で自らの体を抱えて震えあがる。そして俺と目が合った。
「ど、どうしたのですか!?」
俺は拳を握り締め、目からは赤い涙を流していた。
「ゆ、許せん……」
ハーレムチートを満喫しやがって。
「カイトなんで僕を睨むの!? そ、そういえばカイトもダンジョンに潜るの?」
「ちょっと待ってくれないか」
俺は深呼吸を繰り返す。すーはーすーはー。昂った気持ちを押さえないと俺はこいつに「決闘だ!」とかモブキャラっぽい宣言をしてしまいそうだ。
「ああ、俺のパーティはまだまだ未熟だから低層だけでもいけたらと思ってる」
「そうなんだ。僕達も今日は下見なんだ。ダンジョンに着いた頃には夕方近いだろうしね。明日の朝から本格的に潜ろうと思う」
「そうか」
「ところで、ターウォの街のお薦めスポットってどこ?」
「観光かよ」
「せっかく異世界に来たんだからね。少しは楽しまないと」
「観光スポットというか、ここには幻の魚と言われているプリスマが獲れるぞ。あれはまじで――」
「それほんと!?」
「うぉっ!?」
「ねえ、どこで食べれるの! 聞いてる!?」
「くっ!? だから――」
「焼き魚!? 煮魚!? 何が美味しいの!?」
「ま、待て――」
「早く答えろ!」
「それが質問する態度かぁあああ!!」
そういって俺は猫を蹴飛ばす。動物愛護団体さん怒らないでください。質問するたびにアダマンタイト製のナックルが顔面に飛んで来るのです。流石に耐えられません。さっきまでのんびりとした雰囲気だったのに。一変して鬼のような形相で迫って来やがった。まじ怖かった。
「あはは……。ごめんね。ララは食べ物には目がないんだよ。魚は特にね。でも、やっぱりカイトは強かったね」
「あのララの猛攻が掠りもしないなんて……」
いや、やばかったすよ。ほとんど残像しか見えなかった。シックスセンスで避けてました。
「プリスマは――」
やべ、また来る。
「街の小綺麗な食堂なら大抵のところに置いてあるぞ! 値段は高いけどな! 俺は煮魚派だ!」
「ユーキ!? 早く街にいこう!」
「いや、ダンジョンが先だよ」
「じゃあダンジョンに行こう! いますぐ!」
そう言うと猫耳少女は物凄い勢いで走り去って行った。なんなんだあいつ……。
「カイト、ごめんね。また明日にでもダンジョンで会おう。じゃー、僕らもいこっか」
そして勇者様の大名行列は森の奥へと入っていった。
◇◇◇
「はー、なんか疲れた」
「おかえりなさい」
宿に戻るとルシアとオーグが食堂でお茶をして待っていた。
「勇者には会えたの?」
「……」
ああ、無い物ねだりをしても仕方ないよな。
「どうしたのカイト俯いて」
いいなあ、パフパフ。これじゃーどう頑張っても無理だよなぁ。
「カイト……。なんか失礼なこと考えてない?」
「ん? い、いや、そんなことないぞ! 勇者たちにはちゃんと会えたぞ」
「やっぱり強かったダか?」
「ああ、むちゃ苦茶だ。あいつらに囲まれたら俺でも勝てないぞ」
「嘘っ……。カイトでもそうなの。勇者がってこと?」
「それもあるがパーティの連中達が半端なかった」
そうして、俺はあれからの出来事を二人に伝える。
「そうだったの……。ごめんね。私達って正直、足手纏いよね」
「じゃあついて来るの諦めるか?」
ルシアが唇を噛んで下を俯く。あ、ちょっと意地悪な質問だったかな。
「ううん……ついて行く。そう決めたから。だから強くなるしかない」
「オラももっと頑張るダ!」
「そうか……。俺も考えが甘かったんだよな。もう少し何とかなると勝手に思っていたよ」
「ああそうだ! カイト、教会に行ってみましょうよ」
「俺は宗教が嫌いなんだよ」
「別に帰依しろとは言ってないわよ。職業授与を試してみたら?」
「でもあれって八歳にならないと駄目なんだろ」
「なんか、カイトなら出来そうな気がして」
「カイトが職業授与されたらさらに強くなるダ!」
いや、多分。これ以上変わらないと思うけどな。だって異世界トラベラーっていうチート職にちゃんとついているからな。
「まあでも、夕食まで時間もあるしな。聖堂ってのがどんな所なのか興味もあるし、行ってみるか」
「じゃあ、私もいくわ。結果が楽しみね」
「オラもお布施してくるだ。ジョブのランクアップに感謝してるダ」
****
「わぁ……。綺麗」
「ああ」
この街の大聖堂はこの国一番と自負しているらしい。それも納得の光景だった。白く煌めく太い石柱が高い天井を支えていた。
青を基調とした色鮮やかなステンドグラス。それが天井と側面の大部分を覆っていた。陽光を受けて輝く室内はまさに神々しいの一言だ。礼拝堂は十二の台座に囲まれた作りをしており、台座にはそれぞれ異なる神が祭られていた。
あれ、そういえばこの光景って転生前にいった集会場と似ているな。でも、神様の見た目はちょっと違うかも。
「ようこそターウォの神殿へ。御三方はどのようなご用件で?」
厳かな服装をした神父さんが声をかけて来た。
「ああ、ちょっと職業授与ができないかと思って」
「そうですか。では、そちらの席にお掛けになって神に祈りを捧げてください」
「あ、私達は付き添いなんですが」
「構いません。神に祈るのに特別な理由など必要ないのですから」
言われた席に腰かける。祈るっていってもどうするんだよ。脇を見るとルシアもオーグも目を瞑って手を組んでいた。あー、主よって祈るあのポーズね。俺もそれに倣って同じ体勢で目を瞑る。俺って無宗教なんだけどなー。
「罰当たりなやつめ」
ん? なんか変な声が聞こえたぞ。目を開けてみるとそこは真っ白な空間だった。そして囲まれていた。あーこの感じ。なんか見覚えあるわー。
「ここは?」
「天界じゃ。特別な信者のみ稀にここに来ることができる。はずなのじゃが、なぜお前のような――」
「ちょっと待ってください! 其方はもしや……。カイト様っ!?」
年寄の話を途中で遮る若い女性。おそらく二人ともキラキラしているので神だと思われる。
「あ? そうだけど。あんたは誰?」
「し、失礼しました! 少々お待ちください!」
キラキラ光る女性が慌ててどこかへ走って行った。
「え? あんたたち何してるの!?」
残ったおそらく神と思わしき十一人が平伏していました。なにこれ……。
「ああ、カイトさん。 やっと神殿に顔を出しましたね」
「ん? 誰? いや、なんか見覚えがあるな」
キラキラが一層に強い神が現れた。黒いのにキラキラしていて不思議だったので覚えていたのだ。異世界に来る前に囲まれた十二人神の一人だ。
「私は闇を司る最高神ミヤロス。この世界にあっては創造神とも呼ばれています」
「まじっすか。で? そんな世界の元締めの神様が何用?」
「ふふふ。カイトさんは相変わらずですね。どうです? 転生してみて問題ありませんか?」
「ああ、楽しくやらせてもらってるよ。ただ魔王が強すぎるだろ」
「そうでしょうか。いつもとあまり変わらないようにも思えますが。下界にはあまり干渉できないので細かいことまではわかりかねますが……」
「おいおい、そんなんで勇者勝てるのかよ」
「勿論、勝てますよ。いつもはそうですね。五人目の勇者くらいで倒しているかと思います。少しずつ削っていき、最後の勇者が止めを刺すといった流れですね」
哀れ勇者。捨て駒扱いだよ。
「で? いまの勇者は何人目?」
「今代の魔王が復活して初めての勇者になりますね」
おいおい。ユーキくんよ。どうやら君は死ぬ運命にあったようだぞ。ハーレムの呪いだな。合掌。
「で、世間話するのが用だと? もう帰っていいか」
「ああいえいえ。折角来てくれたのですから、なにか職業を授与して差し上げましょう」
「異世界トラベラーがあるじゃないか」
「それだと他の民には意味不明ですし。何か希望はありますか?」
「あー目立たない感じで。地味に普通が一番。平凡で宜しく」
「欲のないかたですねえ」
「じゃーもういいか」
「もう、つれないですね。またどこかの街で教会があったら寄ってくださいね」
「気が向いたらな」
「ではカイトさん良い旅を……」
視界がぼやけてホワイトアウトする。目をあけると聖堂に戻っていた。はあ、なんかこういう展開ってラノベでたまに見かけるから嫌な予感はしていたんだよな。それで何が授与されたんだ。
□職業:創造神の使徒《異世界トラベラー》
聖堂には静寂な時が流れていた。が、それは直ぐに破られた。俺に。
「はぁぁあっ!?」
目の前では神父様が頭を地にこすりつけて俺を拝んでいました。俺いったよね。普通がいいと。落としたのは銅の斧って言ったのに。勝手に金と銀の斧にすり替えられた木こりの気持ちがわかった気がする。
「くそ神が! なにしてくれてやがる!」
「カ、カイト! どうしたのいきなり大声をあげて」
「驚いたダ!」
なんか嫌な予感がひしひしとする。念のため二人を鑑定した。やっぱりな。
「ルシアもオーグも職業変わっているぞ」
「「え!?」」
「ひぃっ!? な、なんで!? これってエルフの伝承に残っている神代の……」
ルシアはエンシェントエルフ LV1に変わっていました。
「オラ、オラ、オラは……」
オーグは完全にぱにくっていた。幻獣王 LV1。すでに豚でも猪でもなくなっていた。そして二人とも創造神の寵愛という馬鹿げたスキルがついていた。
「あの野郎。次あったら覚えとけよ」
最近疲れが溜まっていくような気がする。主に精神的に。はぁ……。
「もういいから、とにかく帰ろうぜ」
「オラ、オラ、オラは……」
オーグが現実に戻って来る気配がなかった。ここから宿まで引きずって帰るのも面倒だな。
「オーグ、今日はプリスマ食べ放題だ」
「ほんとだか!?」
「回復、はええなオイ」
「さあ帰るど! ほらほらルシアちゃんも早く!」
あ、デジャブ……。猫耳偽幼女の姿が想い浮かんだ。
「ねえ、カイト。まさかあなた……。何かしでかしてない?」
ジトっとした瞳でルシアが俺を見つめる。いやいやいや、俺はまったく悪くないぞ。
「ルシアはアイス食べ放題だ!」
「きゃー! って騙されないわよ!」
「いいからいいから」
「あっ――」
そう言ってルシアの手を握って走りだす。まんざらでもなさそうな顔だった。どいつもこいつも食べ物で釣れるなんて軽いよな。
明日からはダンジョン。気を引き締めていかないとな。
魔導王が勇者を宥める。
「そうそう、あのときはユーキさんのレベルもまだ低かったのですから」
「でも……」
何か言おうとする勇者の顔を黙って胸に押し抱く大司教さま。
「ちょっと何してるのよ(んだ)!」
「うぅぅうう!?」
勇者が苦しそうに顔を交互にふる。その度にユサユサと揺れる双丘。
「だからなにしてるのよ(んだ)!」
先ほどから俺と魔導王の言葉がハモる。なんだよ気が合うじゃないか。たぶん逆の意味だろーがな。
「ハァハァハァ……。ソフィなにをするんだよ! 危なく窒息するとこだったじゃないか」
桃源郷から抜け出した勇者は四つん這いになって苦しそうに咳き込んでいた。なんて軟弱な。俺ならそこで死ねるぞ。それこそ男としての本懐じゃないか。
「あれから大分レベルあがったよ~。ここのダンジョンなら更にあがるよ~。大丈夫~」
猫耳の拳闘鬼が勇者の頭をナデナデする。
「えっ、なにかしらこの禍々しいオーラ!? もしかして魔王が攻めてきたのかしら……」
大司教が両腕で自らの体を抱えて震えあがる。そして俺と目が合った。
「ど、どうしたのですか!?」
俺は拳を握り締め、目からは赤い涙を流していた。
「ゆ、許せん……」
ハーレムチートを満喫しやがって。
「カイトなんで僕を睨むの!? そ、そういえばカイトもダンジョンに潜るの?」
「ちょっと待ってくれないか」
俺は深呼吸を繰り返す。すーはーすーはー。昂った気持ちを押さえないと俺はこいつに「決闘だ!」とかモブキャラっぽい宣言をしてしまいそうだ。
「ああ、俺のパーティはまだまだ未熟だから低層だけでもいけたらと思ってる」
「そうなんだ。僕達も今日は下見なんだ。ダンジョンに着いた頃には夕方近いだろうしね。明日の朝から本格的に潜ろうと思う」
「そうか」
「ところで、ターウォの街のお薦めスポットってどこ?」
「観光かよ」
「せっかく異世界に来たんだからね。少しは楽しまないと」
「観光スポットというか、ここには幻の魚と言われているプリスマが獲れるぞ。あれはまじで――」
「それほんと!?」
「うぉっ!?」
「ねえ、どこで食べれるの! 聞いてる!?」
「くっ!? だから――」
「焼き魚!? 煮魚!? 何が美味しいの!?」
「ま、待て――」
「早く答えろ!」
「それが質問する態度かぁあああ!!」
そういって俺は猫を蹴飛ばす。動物愛護団体さん怒らないでください。質問するたびにアダマンタイト製のナックルが顔面に飛んで来るのです。流石に耐えられません。さっきまでのんびりとした雰囲気だったのに。一変して鬼のような形相で迫って来やがった。まじ怖かった。
「あはは……。ごめんね。ララは食べ物には目がないんだよ。魚は特にね。でも、やっぱりカイトは強かったね」
「あのララの猛攻が掠りもしないなんて……」
いや、やばかったすよ。ほとんど残像しか見えなかった。シックスセンスで避けてました。
「プリスマは――」
やべ、また来る。
「街の小綺麗な食堂なら大抵のところに置いてあるぞ! 値段は高いけどな! 俺は煮魚派だ!」
「ユーキ!? 早く街にいこう!」
「いや、ダンジョンが先だよ」
「じゃあダンジョンに行こう! いますぐ!」
そう言うと猫耳少女は物凄い勢いで走り去って行った。なんなんだあいつ……。
「カイト、ごめんね。また明日にでもダンジョンで会おう。じゃー、僕らもいこっか」
そして勇者様の大名行列は森の奥へと入っていった。
◇◇◇
「はー、なんか疲れた」
「おかえりなさい」
宿に戻るとルシアとオーグが食堂でお茶をして待っていた。
「勇者には会えたの?」
「……」
ああ、無い物ねだりをしても仕方ないよな。
「どうしたのカイト俯いて」
いいなあ、パフパフ。これじゃーどう頑張っても無理だよなぁ。
「カイト……。なんか失礼なこと考えてない?」
「ん? い、いや、そんなことないぞ! 勇者たちにはちゃんと会えたぞ」
「やっぱり強かったダか?」
「ああ、むちゃ苦茶だ。あいつらに囲まれたら俺でも勝てないぞ」
「嘘っ……。カイトでもそうなの。勇者がってこと?」
「それもあるがパーティの連中達が半端なかった」
そうして、俺はあれからの出来事を二人に伝える。
「そうだったの……。ごめんね。私達って正直、足手纏いよね」
「じゃあついて来るの諦めるか?」
ルシアが唇を噛んで下を俯く。あ、ちょっと意地悪な質問だったかな。
「ううん……ついて行く。そう決めたから。だから強くなるしかない」
「オラももっと頑張るダ!」
「そうか……。俺も考えが甘かったんだよな。もう少し何とかなると勝手に思っていたよ」
「ああそうだ! カイト、教会に行ってみましょうよ」
「俺は宗教が嫌いなんだよ」
「別に帰依しろとは言ってないわよ。職業授与を試してみたら?」
「でもあれって八歳にならないと駄目なんだろ」
「なんか、カイトなら出来そうな気がして」
「カイトが職業授与されたらさらに強くなるダ!」
いや、多分。これ以上変わらないと思うけどな。だって異世界トラベラーっていうチート職にちゃんとついているからな。
「まあでも、夕食まで時間もあるしな。聖堂ってのがどんな所なのか興味もあるし、行ってみるか」
「じゃあ、私もいくわ。結果が楽しみね」
「オラもお布施してくるだ。ジョブのランクアップに感謝してるダ」
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「わぁ……。綺麗」
「ああ」
この街の大聖堂はこの国一番と自負しているらしい。それも納得の光景だった。白く煌めく太い石柱が高い天井を支えていた。
青を基調とした色鮮やかなステンドグラス。それが天井と側面の大部分を覆っていた。陽光を受けて輝く室内はまさに神々しいの一言だ。礼拝堂は十二の台座に囲まれた作りをしており、台座にはそれぞれ異なる神が祭られていた。
あれ、そういえばこの光景って転生前にいった集会場と似ているな。でも、神様の見た目はちょっと違うかも。
「ようこそターウォの神殿へ。御三方はどのようなご用件で?」
厳かな服装をした神父さんが声をかけて来た。
「ああ、ちょっと職業授与ができないかと思って」
「そうですか。では、そちらの席にお掛けになって神に祈りを捧げてください」
「あ、私達は付き添いなんですが」
「構いません。神に祈るのに特別な理由など必要ないのですから」
言われた席に腰かける。祈るっていってもどうするんだよ。脇を見るとルシアもオーグも目を瞑って手を組んでいた。あー、主よって祈るあのポーズね。俺もそれに倣って同じ体勢で目を瞑る。俺って無宗教なんだけどなー。
「罰当たりなやつめ」
ん? なんか変な声が聞こえたぞ。目を開けてみるとそこは真っ白な空間だった。そして囲まれていた。あーこの感じ。なんか見覚えあるわー。
「ここは?」
「天界じゃ。特別な信者のみ稀にここに来ることができる。はずなのじゃが、なぜお前のような――」
「ちょっと待ってください! 其方はもしや……。カイト様っ!?」
年寄の話を途中で遮る若い女性。おそらく二人ともキラキラしているので神だと思われる。
「あ? そうだけど。あんたは誰?」
「し、失礼しました! 少々お待ちください!」
キラキラ光る女性が慌ててどこかへ走って行った。
「え? あんたたち何してるの!?」
残ったおそらく神と思わしき十一人が平伏していました。なにこれ……。
「ああ、カイトさん。 やっと神殿に顔を出しましたね」
「ん? 誰? いや、なんか見覚えがあるな」
キラキラが一層に強い神が現れた。黒いのにキラキラしていて不思議だったので覚えていたのだ。異世界に来る前に囲まれた十二人神の一人だ。
「私は闇を司る最高神ミヤロス。この世界にあっては創造神とも呼ばれています」
「まじっすか。で? そんな世界の元締めの神様が何用?」
「ふふふ。カイトさんは相変わらずですね。どうです? 転生してみて問題ありませんか?」
「ああ、楽しくやらせてもらってるよ。ただ魔王が強すぎるだろ」
「そうでしょうか。いつもとあまり変わらないようにも思えますが。下界にはあまり干渉できないので細かいことまではわかりかねますが……」
「おいおい、そんなんで勇者勝てるのかよ」
「勿論、勝てますよ。いつもはそうですね。五人目の勇者くらいで倒しているかと思います。少しずつ削っていき、最後の勇者が止めを刺すといった流れですね」
哀れ勇者。捨て駒扱いだよ。
「で? いまの勇者は何人目?」
「今代の魔王が復活して初めての勇者になりますね」
おいおい。ユーキくんよ。どうやら君は死ぬ運命にあったようだぞ。ハーレムの呪いだな。合掌。
「で、世間話するのが用だと? もう帰っていいか」
「ああいえいえ。折角来てくれたのですから、なにか職業を授与して差し上げましょう」
「異世界トラベラーがあるじゃないか」
「それだと他の民には意味不明ですし。何か希望はありますか?」
「あー目立たない感じで。地味に普通が一番。平凡で宜しく」
「欲のないかたですねえ」
「じゃーもういいか」
「もう、つれないですね。またどこかの街で教会があったら寄ってくださいね」
「気が向いたらな」
「ではカイトさん良い旅を……」
視界がぼやけてホワイトアウトする。目をあけると聖堂に戻っていた。はあ、なんかこういう展開ってラノベでたまに見かけるから嫌な予感はしていたんだよな。それで何が授与されたんだ。
□職業:創造神の使徒《異世界トラベラー》
聖堂には静寂な時が流れていた。が、それは直ぐに破られた。俺に。
「はぁぁあっ!?」
目の前では神父様が頭を地にこすりつけて俺を拝んでいました。俺いったよね。普通がいいと。落としたのは銅の斧って言ったのに。勝手に金と銀の斧にすり替えられた木こりの気持ちがわかった気がする。
「くそ神が! なにしてくれてやがる!」
「カ、カイト! どうしたのいきなり大声をあげて」
「驚いたダ!」
なんか嫌な予感がひしひしとする。念のため二人を鑑定した。やっぱりな。
「ルシアもオーグも職業変わっているぞ」
「「え!?」」
「ひぃっ!? な、なんで!? これってエルフの伝承に残っている神代の……」
ルシアはエンシェントエルフ LV1に変わっていました。
「オラ、オラ、オラは……」
オーグは完全にぱにくっていた。幻獣王 LV1。すでに豚でも猪でもなくなっていた。そして二人とも創造神の寵愛という馬鹿げたスキルがついていた。
「あの野郎。次あったら覚えとけよ」
最近疲れが溜まっていくような気がする。主に精神的に。はぁ……。
「もういいから、とにかく帰ろうぜ」
「オラ、オラ、オラは……」
オーグが現実に戻って来る気配がなかった。ここから宿まで引きずって帰るのも面倒だな。
「オーグ、今日はプリスマ食べ放題だ」
「ほんとだか!?」
「回復、はええなオイ」
「さあ帰るど! ほらほらルシアちゃんも早く!」
あ、デジャブ……。猫耳偽幼女の姿が想い浮かんだ。
「ねえ、カイト。まさかあなた……。何かしでかしてない?」
ジトっとした瞳でルシアが俺を見つめる。いやいやいや、俺はまったく悪くないぞ。
「ルシアはアイス食べ放題だ!」
「きゃー! って騙されないわよ!」
「いいからいいから」
「あっ――」
そう言ってルシアの手を握って走りだす。まんざらでもなさそうな顔だった。どいつもこいつも食べ物で釣れるなんて軽いよな。
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−−−−−−
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会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
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